固定資産税を滞納するとどうなる?延滞・差し押さえのリスクと対処法

不動産を所有している間は毎年納める必要があるため、特に評価額が高いエリアにある不動産や広大な土地を所有している人にとって、負担額は軽いものではありません。もし固定資産税が支払えず、滞納をするとどうなるのでしょうか。この記事では固定資産税を滞納した場合に取られる措置や、納税が困難になった場合の対処法などを解説します。
記事の目次
固定資産税の支払いが遅れるとどうなる?段階別に解説

固定資産税を滞納した場合に、どのようなステップで対処が進んでいくのかを解説します。さらに、滞納をすることで生じる延滞金や財産の差し押さえなどのリスクについても見ていきましょう。
① 延滞金が発生する
固定資産税を納期限までに納めなかった場合、納期限の翌日から延滞金が発生します。延滞金は下図のとおり、納期限の翌日から1カ月を経過する日までの期間と、1カ月を経過した日以降の期間で適用される率が変わります。
延滞金の割合
期間 | 延滞金の割合 | 延滞金特例基準割合 | |
納期限の翌日から1ヵ月を経過する日までの期間 延滞金特例基準割合+1% ※上限7.3% |
納期限の翌日から1ヵ月を経過した日以降の期間 延滞金特例基準割合+7.3% ※上限14.6% |
||
2021年1月1日~ 2021年12月31日 |
2.5% | 8.8% | 1.5% |
2022年1月1日~ 2022年12月31日 |
2.4% | 8.7% | 1.4% |
2023年1月1日~ 2023年12月31日 |
2.4% | 8.7% | 1.4% |
出典:「東京都主税局ホームページ」
延滞金の計算方法・シミュレーション
ここからはどのくらい延滞金が発生するのか、計算方法とシミュレーションを見てみましょう。
仮に納期限が2023年5月31日の固定資産税10万円を、2023年8月9日(滞納期間70日)に納付した場合、延滞金は1,100円となります。
計算方法は以下の通りです。
(a)納期限の翌日から1カ月を経過する日までの期間(6/1~6/30)
(100,000円×2.4%×30日)÷365日=197円
(b)納期限の翌日から1カ月を経過した日以降の期間(7/1~8/9)
(100,000円×8.7%×40日)÷365日=953円
(a)+(b)=1,150円
100円未満の端数又は全額が1,000円未満の延滞金は、切り捨てのためこの場合1,100円が課税されます。
② 督促状が届く

固定資産税を納期限までに納付しなかった場合、納期限から20日以内に督促状が自治体から送付されます。督促状の送付から10日経過すると、法律上は財産の差し押さえが可能になります。
③ 文書や電話などで催告される
督促状の送付から10日経過しても対応せずにいると、すぐに財産を差し押さえられることはありませんが、再度文書の送付あるいは電話や自宅訪問で催告を受けます。
④ 財産調査、身辺調査がおこなわれる
催告を無視して納税しないままでいると、役所は差し押さえの準備として、滞納者の財産調査や身辺調査をおこないます。滞納者が会社員であれば、会社が役所に提出している給与支払報告書から給与額を確認したり、金融機関に照会を求めて預貯金額を調査したりします。
⑤ 財産の差し押さえがおこなわれる
差し押さえがおこなわれる前に、差押予告通知書が送付されるのが一般的です。差押予告通知書に記載された期限までに滞納した税金を納めなかった場合、財産の差し押さえが実行されます。差し押さえの対象となるのは預貯金(銀行口座)、給与債権(勤務先から支払われる給与)、不動産やその他の財産です。預貯金や給与債権などの現金資産は優先的に差し押さえられるケースが多いようで、生活に必要な食料や衣服は差し押さえられることはありません。なお、差し押さえがおこなわれる際は、予告なしに実行される場合もあります。
固定資産税を払えない場合の対処法

何らかの理由で、固定資産税を払えない場合はどうすればいいのでしょうか。ここでは具体的な対処法を3つ紹介します。
自治体に連絡・相談する
固定資産税は必ず納めなければなりません。納税が困難でも督促状を無視するのではなく、まずは自治体の担当部署に連絡して相談する必要があります。固定資産税は地方税の一種です。当該固定資産の所在する自治体が課税することになっており、資産税課(固定資産税課)や市税事務所などの窓口が設けられています。納付書や督促状にお問い合わせ先が記載されているため、なるべく早めに連絡しましょう。
相談の結果、分納が認められるケースもあります。病気や失業などで、どうしてもすぐに支払えない理由がある場合は、それを証明するもの(医師の診断書や失業認定書など)を持参するとよいでしょう。しかし納税義務が免除されるわけではありません。分納であっても納税する意思があることを伝えることが大切です。
徴収・換価の猶予を受けられる場合もある
以下のような理由で納税が困難な場合は、役所に申請することで徴収猶予(納税の猶予)が受けられる場合があります。
- 納税者の財産が災害・盗難を受けた場合
- 納税者またはその生計を一にする親族などが病気にかかった場合
- 納税者が営む事業を廃止または休止した場合
- 納税者が営む事業で著しい損失が生じた場合
猶予期間中は延滞金の全部または一部も免除されます。ただし、原則として猶予期間は1年以内で、審査があります。また申請が承認された場合でも、猶予期間中に猶予の取消事由に該当した時は、猶予が取消になることがあるため注意が必要です。
徴収猶予の条件に該当せず、すでに財産が差し押さえられても、申請によって換価の猶予が認められるケースがあります。換価とは資産の売却のことです。猶予が認められれば一定期間(通常は1年以内)は財産の売却が猶予され、その間の延滞金の一部が免除されます。ただし、必ずしも換価の猶予が認められるとは限りません。なお、納めるべき固定資産税と、すでに生じた延滞金は猶予期間中に分割で納付する必要があります。
固定資産税の軽減措置も存在する
一定の条件に該当する不動産には固定資産税の軽減措置が適用されます。
土地は、住宅用地であれば課税標準が3分の1に減額され、そのうち200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)は課税標準が6分の1に減額されます。
一方、住宅では、新築の戸建て住宅は固定資産税額の2分の1が3年間減額、新築のマンション(3階建て以上の耐火・準耐火建築物)は固定資産税額の2分の1が5年間減額されます。ただし、いずれも2024年3月31日までに新築された物件に限り、また1戸あたり120平方メートル相当分までを限度とします。
固定資産税の軽減について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
固定資産税の納税忘れを防ぐには?

固定資産税は原則4回に分けて納付するため、うっかりすると2回目以降の納付を忘れることも。忘れないようにするには手帳やカレンダーアプリなどで納付日を管理したり、資金に余裕があれば分割ではなく一括で納付したりする方法があります。一番確実な方法は口座振替を利用することです。口座振替であれば指定の口座から自動で振り替えられるため納税忘れの心配がありません。クレジットカードやスマホ決済(バーコード決済)に対応している自治体もあるので、支払い方法に関しては各自治体のホームページなどで確認してください。
固定資産税に関するよくある質問

Q. 固定資産税はいつ、どのように支払う?
固定資産税納付書は毎年4月~5月頃に郵送で届き、基本的には4期に分けて分納しますが、1年分の一括納付もできます。納期限は自治体によって異なります。納付書が届いたら納期限を必ず確認しましょう。
Q. 固定資産税の滞納はいつまで待ってもらえる?いつ差し押さえが発生する?
納期限の翌日から延滞金が発生し、20日以内に督促状が送付されます。督促状の送付から10日経過すると法律上は財産の差し押さえが可能になります。しかし実際にはすぐに差し押さえされず、文書や電話、自宅訪問などによる催告があり、そのうえで差押予告通知書が送付されるのが通例です。最終的に差押予告通知書に記載された期日までに納付をしなければ、差し押さえが実行されます。経済的に納付が難しい理由がある場合は、分納や徴収猶予の適用などを早めに自治体の窓口に相談しましょう。
Q. 固定資産税納付書を紛失してしまったら?
固定資産税は原則4期に分けて納税しますが、納付書は一度にまとめて届きます。もし固定資産税納付書を紛失した場合は、市区町村の自治体の役所にある納税課で再発行が可能です。ただし、納付書と一緒に届く納税通知書は再発行されないため、納税通知書・納付書ともに、なくさないよう大切に保管しておきましょう。
Q. 固定資産税の滞納は自己破産や債務整理で免除される?
自己破産すれば通常の借金は免除されますが、滞納した税金は自己破産や債務整理をしても免除されません。したがって自治体の担当部署と相談したうえで、分割納付をしてでも必ず納める必要があります。ただし、生活保護を受給した場合は、受給開始から3年経過すると滞納した税金の支払い義務が免除されます。
Q. 固定資産税の価格に同意できない場合は?
固定資産の評価額に納得できない場合は、納税通知書の交付日から3カ月以内であれば固定資産評価審査委員会に再審査を求めることが可能です。再審査の結果、固定資産税額が減ったケースも実際にあります。
Q. 固定資産税の支払いに時効はある?
税金にも時効はあり、固定資産税は納期限から5年で時効になります。ただし、実際には時効が成立することはほとんどありません。なぜなら、督促状などが届くと、その時点で時効が中断するからです。役所が滞納を放置して督促しないことはありえません。時効が成立することもほぼないため、時効を待てば支払い義務がなくなるとは考えないようにしましょう。
まとめ
不動産を所有すると固定資産税の支払いは必ず発生します。支払いが難しくても、放置すればするほど厳しい状況になることも。まずは計画的に納税の準備をしておくことが大事です。もし一時的に支払いが難しくなった場合は、早めに自治体に相談するようにしましょう。活用していない不動産の固定資産税が負担になる場合は、売却も視野に入れて対策を考えたほうがよいかもしれません。
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