このページの一番上へ

住宅ローンのオーバーローンとは?メリット・デメリットも詳しく解説

オーバーローンのメリットやデメリットを解説します
住宅ローンは低金利のため、物件価格よりも多めに借りたいと考えたことはありませんか?このように「住宅ローンを物件価格よりも多く借り入れること」をオーバーローンと呼びます。また、オーバーローンには別の意味もあります。今回は2つあるオーバーローンの意味、メリット・デメリット、注意点を解説します。無理のない返済を計画するためにも、よく理解しておきましょう。

2つの意味があるオーバーローン

オーバーローンには2つの意味があります

オーバーローンは、住宅ローンの借入時と住宅の売却時に使われる言葉ですが、それぞれ意味が異なります。まず、どういう意味なのかを理解しておきましょう。

住宅ローンの借入金が物件価格を上回る

住宅ローンの借入時に、借入金が物件価格を上回ることをオーバーローンと呼びます。物件価格だけでなく、諸費用も含めて借り入れた時に起こる現象です。例えば、物件価格が3,000万円、諸費用が300万円の場合、住宅ローンの借入金は3,300万円となります。

フルローンとの違い

「フルローン」を耳にしたことはありませんか?オーバーローンとの違いは、借り入れる資金用途の範囲です。オーバーローンは、物件価格と諸費用を含めて借りることを指しますが、フルローンは頭金なしで物件価格のみを借りることを指します。例えば、4,000万円の物件を、頭金なしで4,000万円借り入れることがフルローンです。諸費用は自己資金でまかなう必要があります。

売却時に住宅ローンの残債が売却価格より上回る

物件の売却時に、住宅ローンの残債が売却価格よりも上回る状態も「オーバーローン」といいます。物件を購入する際には、抵当権が設定されます。抵当権とは、万一住宅ローンの返済が滞った場合、金融機関が物件を競売にかけ、住宅ローンで貸したお金を回収する権利のことです。住宅ローンの完済後に手続きをすると抵当権を外すことができます。しかし、オーバーローンの状態にあり、物件を売却してもローンが返済できない場合には外せません。足りない分を自己資金でまかなったり、住み替えローンで借り換えをおこない、住宅ローンを完済する必要があります。

住宅ローン借入時におけるオーバーローンのメリット

借入時のオーバーローンには3つのメリットがあります

住宅ローンを借り入れる際に、物件価格と諸費用をまとめて借りるオーバーローンには、次の3つのメリットがあります。それぞれ詳しくみていきましょう。

頭金なしで物件を購入できる

借入時におけるオーバーローンのメリットの1つ目は、頭金なしでも物件を購入できることです。従来の住宅ローンでは、購入する物件の価格の一部を頭金として支払う必要がありました。しかし、物件価格を上回る借入金を借りることで、手元の資金が少なくても、気に入った物件があればすぐに購入できます。ただし、頭金を支払わない代わりに、返済額が増えたり、金利が高くなったり、負担が増える可能性があります。ご自身の資金状況に合っているかよく考えることが大切です。

諸費用を安く借りられる

借入時におけるオーバーローンのメリットの2つ目は、諸費用を安く借りられることです。住宅の購入には、登録免許税や仲介手数料など、さまざまな費用がかかります。諸費用を、低金利の住宅ローンでまとめて借りることができると、経済的負担を軽減できます。

例えば、auじぶん銀行の「住宅ローン商品詳細説明書」では、印紙税や登録免許税、事務手数料などの諸費用も借入金の資金使途として認めています。しかし、なかには諸費用に関して、物件購入とは違う金利を適用する金融機関もあります。住宅ローンに諸費用も含められるか、適用される金利に違いはあるか、よく確認しておきましょう。

住宅ローン控除額が増える

借入時におけるオーバーローンのメリットの3つ目は、住宅ローンの控除額が増えることです。住宅ローンの控除は、物件購入費用のみが対象となります。印紙税や仲介手数料、登録免許税は対象外です。しかし、オーバーローンは物件価格すべてを住宅ローンでまかなっているため、頭金を入れて購入する場合と比べて控除額が増えます。

例えば、4,000万円の物件を購入し、頭金を800万円入れて、住宅ローンで3,200万円を借り入れた時と、4,000万円すべて住宅ローンで借り入れた時の控除額をシミュレーションしてみましょう。

<条件>
物件:新築の一般住宅
返済期間:35年
ボーナス返済:なし
金利タイプ:全期間固定
金利:1.5%
年収:700万円
扶養家族:1人

シミュレーション1:頭金を800万円入れて、住宅ローンで3,200万円を借り入れた時

住宅ローン残債 住宅ローン控除額
2023年 3,182万5,844円 21万円
2024年 3,112万2,656円 21万円
2025年 3,040万8,847円 21万円
2026年 2,968万4,259円 20万7,700円
2027年 2,894万8,727円 20万2,600円
2028年 2,820万2,085円 19万7,400円
2029年 2,744万4,166円 19万2,100円
2030年 2,667万4,800円 18万6,700円
2031年 2,589万3,812円 18万1,200円
2032年 2,510万1,031円 17万5,700円
2033年 2,429万6,276円 17万円
2034年 2,347万9,364円 16万4,300円
2035年 2,265万115円 15万8,500円
13年間の住宅ローン控除額の合計 246万6,200円

シミュレーション2:物件価格4,000万円をすべて住宅ローンで借り入れた時

住宅ローン残債 住宅ローン控除額
2023年 3,978万2,308円 21万円
2024年 3,890万3,333円 21万円
2025年 3,801万1,083円 21万円
2026年 3,710万5,357円 21万円
2027年 3,618万5,951円 21万円
2028年 3,525万2,660円 21万円
2029年 3,430万5,272円 21万円
2030年 3,334万3,575円 21万円
2031年 3,236万7,352円 21万円
2032年 3,137万6,387円 21万円
2033年 3,037万454円 21万円
2034年 2,934万9,327円 20万5,400円
2035年 2,831万2,779円 19万8,100円
13年間の住宅ローン控除額の合計 271万3,500円

※あくまでシミュレーションであり、控除や金額を保証するものではありません
※一定要件をクリアし最長13年間の住宅ローン控除が受けられることを前提としています

オーバーローンで借り入れた時の方が、控除額が24万7,300円増えているのがわかります。また、頭金を入れた場合、4年目以降からは最大控除額を下回りますが、オーバーローンの場合は、11年目まで控除額の上限まで控除されます。

住宅ローン借入時におけるオーバーローンのデメリット

オーバーローンで借り入れる際にはデメリットもあります

オーバーローンで借り入れる際には、デメリットがあることも理解しておきましょう。具体的には次の3つです。
以下でそれぞれ詳しくみていきましょう。

返済額が増える

借入時におけるオーバーローンのデメリットの1つ目は、返済額が増加することです。借り入れ金額が増えるため、月々の返済額も増えます。例えば、物件価格3,000万円と諸費用300万円をオーバーローンで借り入れた時と、フルローンで借り入れた時と比較してみましょう。

<条件>
返済期間:35年
返済方法:元利均等返済方式
金利タイプ:固定金利
金利:1.5%(諸費用も物件価格と同じ金利と仮定)

オーバーローン
(物件価格+諸費用)
フルローン
(物件価格のみ)
借入金額 3,300万円 3,000万円
月々の返済額 10万1,040円 9万1,855円
総返済額 4,243万6,997円 3,857万9,007円

オーバーローンで借り入れた時の方が、月々の返済額が約9,000円、総返済額は約386万円増えました。返済額が増えればその分、負担が大きくなり、より無理のない返済計画が求められます。オーバーローンでの借り入れは事前によく検討しましょう。

金利が高くなる

オーバーローンのデメリットとして、金利が高くなることも挙げられます。金融機関からすると、オーバーローンは物件価格以上に融資することになるため、貸し倒れのリスクが高くなります。そのため、金利を高くすることで、確実に返済できる人のみ貸し付ける形を取ります。例えば、住宅金融支援機構の「フラット35」では、融資率によって金利が異なっています。

融資率 金利の範囲 もっとも多い金利
9割以下 年1.800%~年3.360% 年1.800%
9割超 年1.940%~年3.500% 年1.940%

出典:住宅金融支援機構 新機構団信付きの【フラット35】等の借入金利水準(2023年9月)

融資率が高い、つまり物件価格に対して住宅ローンの借入金の割合が高いほど、金利が高くなっています。金利が高くなれば、月々の返済額も増えます。また、金融機関によっては、諸費用は住宅ローンと別の金利を設定しているところもあるため、事前に確認しておきましょう。

審査が厳しくなる

オーバーローンで借り入れると、審査が厳しくなることも覚えておきましょう。先ほども説明したように、金融機関は、物件価格以上の借り入れはリスクが高いと判断します。そのため住宅ローンの審査では、より厳しく借り手の返済能力を評価します。無理のない返済計画を立てることも大切ですが、基準を満たすため、他の借り入れを返済するなどしましょう。1つの金融機関に絞るのではなく、複数の金融機関を比較検討すると、より自分に合ったローンと出合える可能性も高まります。

住宅ローン借入時のオーバーローンにおける注意点

オーバーローンで借り入れる際には気をつけなければならない点があります

住宅ローンを物件価格以上に借り入れる際、以下の注意点を押さえておきましょう。

  • 目的以外のことに借入金を使わない
  • 貯金ゼロで住宅を購入できるわけではない

一つずつ解説していきます。

目的以外のことに借入金を使わない

オーバーローンでは物件価格以上に借り入れるため、お金が余ってしまう可能性がありますが、物件の購入と諸費用にしか使ってはいけません。もし目的以外のことに使った場合、住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。例えば、イオン銀行の「住宅ローン規定」では次のように規定されています。

第1条(住宅ローン規定の承認)
借主は、本ローン契約による借入金を借入申込時の資金使途およびこれらに供する諸費用のみに使用します。

第17条(期限前の全額返済義務)
2.次の各号の事由が一つでも生じた場合には、借主は銀行からの請求によって、本ローン契約による債務全額について期限の利益を失い、借入要項記載の返済方法によらず、直ちに本ローン契約による債務全額を返済するものとします。
(2)借主が銀行または保証会社との取引約定ならびに本規定の一つにでも違反したとき

引用:イオン銀行「住宅ローン規定

わかりやすくまとめると、規定に定められた資金使途と諸費用にしか使ってはならない、もしそれを違反した場合には、住宅ローンの一括返済を求めるということです。オーバーローンで借り入れる際には、何の費用を含めることができるのか、確認しておきましょう。

貯金ゼロで住宅を購入できるわけではない

オーバーローンで諸費用も含めて借り入れることができますが、貯金がまったくない状態で住宅を購入できるわけではありません。不動産の売買契約を結ぶ時には「手付金」を支払う必要があります。手付金は、不動産売買の契約が成立したことを証明するものです。

もし、買主が契約をキャンセルした場合には手付金は没収され、売主が契約をキャンセルした場合は、買主に対して手付金の2倍の金額が支払われます。手付金は物件価格の5〜10%が相場で、現金で支払う必要があるため、貯金がゼロの状態では住宅を購入できません。また、引越し代や家具・家電の購入代などもかかります。住宅ローンをオーバーローンで借り入れる場合でも、手元の資金はある程度必要であることを理解しておきましょう。

売却時におけるオーバーローンのデメリット

オーバーローンの状態で売却をする時には抵当権を外す必要があります

売却時におけるオーバーローンは、先述したように、住宅ローンを完済し、抵当権を外す必要があります。また、オーバーローンであることによってさまざまな弊害が生まれます。本章では、売却時におけるオーバーローンのデメリットを3つ紹介します。

売却が難しい

売却時におけるオーバーローンのデメリットとして、そもそも売却が難しい点が挙げられます。転勤や離婚など、やむを得ない事情で住宅の売却を考えることもあるでしょう。もし、住宅の売却価格より住宅ローンの残高が上回っているオーバーローンの場合、住宅ローンを完済するためには、不足分を自己資金でまかなう必要があります。すぐに用意ができれば問題ありませんが、そうでない場合、金融機関から売却を認めてもらえない可能性があります。

売却できても住宅ローンを完済できない

オーバーローンの場合、売却できても住宅ローンを完済できない点がデメリットとして挙げられます。先述したように、売却額で住宅ローンを完済できない場合、自己資金でまかなう必要があります。もしまかなえない場合は、任意売却をおこなうか、住み替えローンの検討をしなければなりません。しかし、任意売却で売却しても、住宅ローンの返済は続きます。

また、住み替えローンは住宅ローンの残債分と新しい住宅の購入資金をまとめて借りるため、借入金が高額になります。金利が高いため、審査も厳しい傾向にあります。いずれの方法でも、住宅を売却しても住宅ローンの返済が続くため、経済的・精神的な負担が大きくなることを把握しておきましょう。

離婚時に財産分与の対象とならない可能性がある

売却時にオーバーローンの状態にある住宅は、離婚時に財産分与の対象とならない可能性がある点に注意が必要です。財産分与は、夫婦の婚姻中に協力して得た財産を分け合うことです。通常、住宅も共有財産として分けられるものですが、オーバーローンの場合、不動産の価値がないものとして、財産ではなく負債として扱われる可能性があります。
売却しても返済できなかった分のローンは、離婚後も返済する必要があります。

オーバーローンでも売却したい時の対処法

オーバーローンでも住宅を売却したい時には任意売却か住み替えローンの利用を検討しましょう

オーバーローンでも住宅を売却したい時には、2つの対処法があります。以下で詳しく説明いたします。

任意売却をする

オーバーローンでも売却をしたい時は、任意売却を検討してみましょう。任意売却とは、金融機関の許可を得て一般の市場で売却することです。オーバーローンの状態で任意売却をすると、住宅ローンの残債があるため、返済を続けなければなりません。しかし、住宅ローンの残債は減り、金融機関と相談して返済額を交渉することも可能です。

住み替えローンを利用する

オーバーローンでも住宅を売却したい時には、住み替えローンを利用する方法もあります。住み替えローンは、現在住んでいる住宅のローンの残債と新しく購入する住宅の資金をまとめて借り入れるものです。新しく購入する住宅の物件以上に借り入れるため、再度オーバーローンの状態になります。また、住み替えローンは、通常の住宅ローンと比べて金利が高く設定されているため、返済額が増える可能性もあります。専門家と相談しながら、返済プランを立てるなどして、過度な借り入れは避けるようにしましょう。

この記事のまとめ

オーバーローンとフルローンの違いは?

オーバーローンは、物件価格に加えて諸費用も借りることが可能ですが、フルローンは頭金なしで物件価格のみを借りることのため、諸費用は自己資金でまかなう必要があります。

オーバーローンのメリット・デメリットは?

住宅を購入する際のオーバーローンには以下のメリット・デメリットがあります。メリットだけでなくデメリットについてもしっかりと確認しましょう。

メリット

  • 頭金なしで物件を購入できる
  • 諸費用を安く借りられる
  • 住宅ローン控除額が増える

デメリット

  • 返済額が増える
  • 金利が高くなる
  • 審査が厳しくなる

オーバーローン状態にある家を売却するには?

オーバーローン状態にある家を売却することは可能です。方法のひとつとして任意売却があります。任意売却とは、金融機関の了承のもとで売却することをいいます。しかし、オーバーローンの状態で任意売却をおこなうと住宅ローンの残債があるため、ローンの返済は続きます。

また、いったん売却をしてから住み替えを検討しているのであれば、住み替えローンを利用する方法もあります。
住み替えローンは、通常の住宅ローンに比べて金利が高い傾向にあるため注意が必要です。

オーバーローンは住宅ローンの借入時と住宅の売却時でそれぞれ意味が異なります。
住宅ローンの借入時には、諸費用も含めて借り入れることを指しますが、借入金を目的以外のことに使うことは違反行為となります。また、手付金は現金で用意する必要があり、貯金ゼロの状態で住宅を購入できるわけではありません。オーバーローンでの借り入れは返済額が増えたり、審査が厳しくなる傾向にあります。

売却時におけるオーバーローンは、売却自体が難しくなる可能性があります。任意売却や住み替えローンといった方法もありますが、住宅ローンの返済は続きます。いずれのオーバーローンについても、メリットがデメリットを上回るのか、よく検討しましょう。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
関連する記事を見る
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る