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住宅ローンを頭金なしで組むとどうなるか?厳しいのは審査だけじゃない?

住宅ローンを頭金なしで組むとどうなるか?厳しいのは審査だけじゃない?
近年増えてきているといわれているのが、頭金なしで住宅ローンを利用する人です。住宅ローンの低金利も味方して、すぐにマイホームが欲しい人にとってはありがたいのですが、安易に利用してよいのでしょうか。この記事では、頭金なしで住宅ローンを検討している人に向けて、利用すると起こりうるデメリットとメリットを徹底的に検証しています。頭金なしの住宅ローンを検討する前に、知っておくべきことを盛り込みました。

住宅ローンを頭金なしで組むとどうなるのか?

頭金なしで住宅ローンを組むとどうなるのでしょうか

近年、頭金なしで住宅ローンを組む人が増えています。頭金を支払わずに住宅を購入することで、迅速に住宅を購入できるのは利点の一つです。また、低金利の時期に購入することで返済額や総返済額が削減される可能性もあります。もし、頭金が貯まっていないからといって住宅購入を控えていると、住宅ローンの開始が遅れ、完済時期も遅れてしまいます。定年退職後まで返済が続くスケジュールとなれば、経済的な負担が増えてしまうので、慎重に考慮すべきです。

しかし、頭金なしで住宅ローンを利用する際には、利点と同時にいくつかの懸念点も存在します。住宅ローンを頭金なしで組むべきかは、デメリットとメリット、そして家計の収入や将来の資金状況によって異なります。では、デメリットとメリットとはどのようなことでしょうか。

次章から、頭金なしで住宅ローンを組む際のデメリットとメリットについて詳しく説明していきます。

審査が厳しいのは当然?頭金なしで住宅ローンを組むデメリットとは

頭金なしで住宅ローンを組むとどのようなことが起こるのでしょうか

頭金なしで住宅ローンを組むと審査が厳しくなることは、知っている方も多いかもしれませんが、他にはどのようなことが起こりうるのでしょうか。この章では、頭金なしで住宅ローンを組むデメリットを詳しく解説します。

ローンの審査が通りにくくなる

頭金を支払わずに住宅ローンを借りる際のデメリットは、住宅ローンの審査が通りにくくなることです。その主な理由は以下のとおりです。

  • 返済能力の審査が厳しくなる
  • 返済負担率が高いとリスクとみられる
  • 抵当権が設定される

頭金なしでも住宅ローンを組むことは可能です。しかし、継続的かつ安定的な収入があるか、年収に対する借入金額が適切かなどを審査で厳しくチェックされます。頭金がないと借入金額が増え、月々のローン返済額も増加します。そのため、返済負担率が高いと返済が困難になり、貸し倒れのリスクが懸念され、さらに審査が厳しくなる傾向があります。
また、借入金額が大きい場合、金融機関は物件に抵当権を設定します。万が一返済ができなくなり、物件を売却することになると、物件の売却価格が住宅ローンの残高を下回るリスクが高まります。このリスクを回避するため、審査が通りにくくなるのです。

総支払額が増える

頭金なしで住宅ローンを借りるということは、住宅の全額をローンで賄うことを意味します。頭金なしで住宅ローンを借りると、頭金を入れた時に比べ、借入金額が増えます。借入金額が増えると、利息や毎月の支払い額が増加。その結果、完済までの総支払額も増えることになります。
また、住宅ローン返済額が家計を占める割合が大きくなり、返済が困難になる可能性もあります。

実際に、頭金がある時とない時で支払総額にどのくらい差がでるのかを検証します。

  頭金なし 頭金あり
物件価格 3,000万円 3,000万円
頭金 0円 500万円
借入額 3,000万円 2,500万円
住宅ローンの金利 1.90% 1.76%
毎月の返済額 9万7,846円 7万9,769円
総支払額 4,109万5,123円 3,850万3,184円
差額 259万1,939円

<試算条件>
住宅保証機構株式会社が提供する住宅ローンシミュレーションツールを使用
※物件価格は3,000万円、返済期間は35年、全期間固定金利、元利均等返済の場合を想定
※金利は、21年以上~35年以下の借入期間でフラット35を利用する時の最も多い借入金利水準(2023年6月)を使用
※各返済額はあくまで概算値です。実際には融資実行日によりわずかな差額が生じる場合があります。

検証の結果、頭金がある場合とない場合を比較すると、借入金額に差が生じるうえ、住宅ローンの金利にも差が出ます。その結果、頭金がない場合は、頭金がある場合に比べ、支払総額が約260万円も増えることがわかります。また、頭金がない場合は頭金がある場合に比べ、毎月の返済額が約18,000円多くなることがわかります。

頭金がない住宅ローンを選択すると、メリットもありますが、月々の返済金額が多くなり家計に負担をかけるうえ総支払額も大きくなってしまいます。もし、頭金なしで住宅ローンを借り入れるなら、入念にシミュレーションをして本当に無理がないのかよく確認しましょう。

借入金利が高くなる

金融機関や商品によって、頭金が物件価格の何割かで借入金利が変わる場合があります。前述の返済額シミュレーションで使用したフラット35(借入期間21年〜35年)の金利を例にすると、融資率9割以下の場合に年率は1.760%ですが、融資率が9割超だと年率は1.90%となります(2023年6月時点、フラット35借入金利水準で最も多いもの)。頭金なしで住宅ローンを組むと、借入金額が大きくなるうえ借入金利も高くなり、総返済額はさらに増大します。一見わずかな差にみえるかもしれませんが、住宅ローンは金額が大きく返済期間も30年近く設定することがあるので、最終的には大きな差になってきます。

金利上昇時の負担が大きくなる

金利が上昇すると、住宅ローンの返済負担が大きくなる可能性があります。借入をしていれば誰にでも起こりうるリスクですが、借入額が大きくなるフルローンでは特に注意が必要です。借入時には低金利で問題なく返済できるかもしれませんが、将来的に金利が上昇すれば月々の返済額も増えます。また、借入金額が大きいほど住宅ローンの利息も増加するため、変動金利や固定金利期間選択型の契約の際にはリスクが高まります。

変動金利の場合、住宅ローン契約時には低金利で借り入れられますが、半年ごとに金利が見直され、上昇すれば返済額が増えます。固定金利期間選択型の場合も、固定期間終了後に金利が上昇していれば返済額が増えます。特に現在の住宅ローン金利は非常に低水準であり、将来的に上昇する可能性は高いと考えられます。頭金なしで住宅ローンを借りると、予想以上に総返済額が膨らむ可能性が大きくなります。

頭金なしで住宅ローンを借りる際には、金利上昇により返済額が増え、支払いが困難になる可能性に注意が必要です。

担保割れが発生する場合がある

頭金なしで住宅ローンを借りるデメリットの一つは、借入額が購入価格に対して高い割合となるため、住宅ローンの残債が担保の住宅の時価額を上回る可能性が高くなることです。これにより、住宅価格が下落した場合などに、担保割れの状態になるリスクが増えます。担保割れが発生すると、住宅を売却する際に売却代金だけでローンを完済することができず、差額を自己資金で補填しなければなりません。フルローンを利用する場合、住宅を売却する際にはこの点に注意が必要です。

住宅売却時にローンが完済できない場合がある

頭金を用意せずに借りると、借入金額が増えるため、自宅の売却価格だけではローンを完済できない可能性があります。その場合、住宅を売却しようとした時にローンが残っている可能性があります。

新築住宅の資産価値は購入後に下落することが一般的です。また、国土交通省の調査「中古住宅流通、リフォーム市場の現状(平成22年)」によれば、木造戸建住宅の市場価値は5年後には約80%、20年後には20%以下になるとされています。さらに、戸建住宅の販売価格はハウスメーカーや不動産会社の利益を含んでおり、売却価格は販売価格を上回ることはまずありません。

このような理由から、住宅を売却しても、住宅を手放したにもかかわらず、ローンは残る状況に陥る可能性が高まります。特に短期間での売却や返済困難時の売却では、住宅価値の下落と返済額の差が大きくなり、ローン完済が困難になります。

問題点はあれど頭金なしで住宅ローンを組みたい!そのメリットとは

頭金なしで住宅ローンを組むメリットとは

頭金なしで住宅ローンを組むと、さまざまなデメリットがありましたが、それでも頭金なしの住宅ローンを利用するメリットはあるのでしょうか。この章では、頭金なしで住宅ローンを組むメリットを解説します。

手元資金を減らさないで済む

住宅ローンを頭金なしで組むメリットの一つは、手元資金を減らさないで済むことです。
頭金を支払わずに住宅ローンを組むことで、手元に残る資金を他の用途に充てることができます。例えば、住宅購入以外の教育費や緊急の出費など、生活のさまざまな面で資金を必要とする場合に有利です。さらに頭金を他の投資に回せることで、複数の資産クラスに分散投資することも可能です。

住宅ローン控除を活用できる

住宅ローンを頭金なしで組むメリットの一つは、住宅ローン控除を活用できることです。
住宅ローン控除は、返済期間が10年以上あることを条件に、年末時点の住宅ローン借入残高の0.7%が所得税と住民税の一部から控除される制度です。そのため、頭金なしで住宅ローンを組むと借入金額が増えるため、住宅ローン控除をより利用できる可能性があります。

また、住宅ローン控除の増加分が利息の増加分を上回る場合には、借入金額を増やすと有利です。住宅ローン控除の対象となる期間は繰上返済をしないで資金をできるだけ増やし、控除期間が終了したら繰上返済をすると、控除を最大限に活用することができる場合があります。
ただし、住宅ローン控除は自身が支払う所得税額と住民税額の一部(97,500円または課税所得の5%のいずれか少ない金額)が限度です。そのため、控除可能額が大きくなっても、元々支払う税額が限度を超えない場合は、控除ができないこともあるので確認が必要です。

今すぐ住宅を購入できる

住宅ローンを頭金なしで組むメリットの一つは、理想の住宅の買い逃しを防ぎ今すぐ住宅が購入できることです。住宅は一点ものであり、理想の住宅が見つかっても、タイミングを逃せば手に入れることができなくなってしまいます。通常のローンでは、頭金が必要であれば購入を諦めるしかありません。しかし、頭金なしで住宅ローンを組むことができれば、すぐに住宅を購入することができます。これにより、理想の住宅を逃すことなく、即座に快適な生活を始めることができます。
頭金なしで住宅ローンを組む選択肢がある場合、頭金が貯まるまで購入を先延ばしにする必要がありません。これにより、希望の住宅が見つかった際に、すぐに購入できるという利点があります。

返済開始が早い

住宅ローンを頭金なしで組むメリットの一つは、返済開始が早いことです。住宅ローンの返済はできる限り早期に組めば、返済開始も早くなります。例えば、早くからローンの返済を開始すれば、定年退職後の返済期間や返済額が少なくなることが期待できます。つまり、頭金を準備するのに時間をかけずに住宅ローンを組むことで、将来的な返済の負担を軽減できるのです。

また、マイホーム購入を目指し頭金を貯めながら平行して家賃を払っている場合、実質、家賃を二重に支払っていることになります。住宅を購入する意思が固まっているなら、頭金なしで早期に住宅ローンを組んでしまえば、余分な家賃支払いを避けることができます。

ただし、とにかく早くマイホームを購入してしまうのか、頭金を貯めてから購入するかは、毎月の返済額や総返済額をシミュレーションして検証することが重要です。個々の状況に合わせて返済の負担や将来の計画を考慮し、最適な選択をすることが大切です。

記事のおさらい

Q:頭金なしで住宅ローンを借りることはできるの?

A:頭金なしでも住宅ローンを借りることは可能です。以前よりも、頭金なしで住宅ローンを借りる人は増えてきています。

Q:頭金なしで住宅ローンを借りるときのデメリットとメリットは?

A:頭金なしで住宅ローンを借りる主なデメリットは、そもそも審査が通りにくいこと、金利が高まり、総支払額が増えること、ローン返済が困難になるリスクが高いことです。メリットは、手元資金を残したまま早急に住宅が購入でき、返済開始も早いことです。

Q:頭金なしで住宅ローンを借りるのは良いのか良くないのか?

A:頭金なしで住宅ローンを借りること自体が良くないのではなく、年収や資金状況と照らし合わせて自分に合っているかが重要です。専門家に相談のうえ、返済計画を入念にシミュレーションし、慎重に検討しましょう。

まとめ

この記事では、頭金なしで住宅ローンを検討している人に向けて、利用すると起こりうるデメリットとメリットを徹底的に検証しました。頭金なしで住宅ローンを借りる主なデメリットは、審査が通りにくいことや金利が高くなること、総支払額が増えローン返済が困難になるリスクが高いことでした。一方、メリットは、手元資金を残して必要な出費に回せることや、欲しい住宅が早急に購入でき返済開始が早いことでした。頭金なしの住宅ローンを検討するなら、事前にこれらのことを十分に確認しておくことが重要です。頭金がいらないからといって安易に利用するのではなく、余裕を持った返済計画に基づいて活用するようにしましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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