同性パートナーと利用できる住宅ローンを紹介!注意点やリスク、必要書類も解説

このようななか、メガバンク以外にも多くの金融機関が、同性のカップルが利用できる住宅ローンを提供するようになりました。ただし、法律上の夫婦とは異なる同性パートナー同士が住宅ローンを組むのはメリットばかりではありません。リスクもあるため注意が必要です。
この記事は、同性カップルが利用できる住宅ローンの現状や住宅ローンの種類、同性パートナーとローンを組むうえで知っておくべきリスクと対策を解説します。
記事の目次
同性パートナーと利用できる住宅ローンが増加中

以前は、同性カップルが家を購入する場合、一方が単独で住宅ローンを組むことしかできませんでした。しかし、今では数多くの金融機関で同性パートナーと利用できる住宅ローンを取り扱っています。その背景を解説します。
同性カップル向けの住宅ローンが生まれた背景
2015年に東京都渋谷区と世田谷区が、性的少数者(LGBTQ)のパートナー関係を自治体が公的に認める「パートナーシップ制度」を導入しました。これを皮切りに、企業でも同性パートナーを配偶者として認める施策が進められました。
ジェンダー平等への理解や取り組みが広がるなか、2017年みずほ銀行が、住宅ローンのペアローンや収入合算で、配偶者に同性パートナーを含める対応を始めました。
続けて2020年には、三井住友銀行が連帯債務型借入の配偶者の定義に、同性パートナーを加え、同性カップル向けの住宅ローンの取扱いが広がってきました。
フラット35の同性パートナーとの申し込みが2023年より開始
2023年1月には、住宅金融支援機構が提供する「フラット35」でも、同性パートナーの連帯債務での申し込みが可能となりました。同時に、同性パートナーを収入合算者および融資対象不動産の共有者として追加できるようになりました。
また、フラット35では、連帯債務型の住宅ローン返済期間中、夫婦どちらか一方が死亡または高度障害状態になった場合、持分や返済額に関係なく残りの住宅ローンが全額弁済される「夫婦連生団信(デュエット)」を提供していますが、同性パートナーも利用可能です。
地域金融機関でも同性カップル向け商品が広がっている
先に述べたように性的マイノリティへの対応の変化を踏まえ、同性パートナーにも利用できる商品設計に取り組む金融機関が増えました。
現在では、ネット銀行や地方銀行、地域密着の信用金庫なども、同性パートナー向けの住宅ローン商品を取り扱うようになっています。
みずほリサーチ&テクノロジーズがおこなった調査によると、性的マイノリティの人を前提とした商品の提供を始めた時期は、8割の金融機関が2021年から2023年と回答しており、この数年で急速に広がっていることがわかります。
同性パートナーと組める3種類の住宅ローン
金融機関によって取扱いは異なりますが、同性パートナーと組める住宅ローンには3つの種類があります。
- ペアローン
- 収入合算(連帯債務型)
- 収入合算(連帯保証型)
それぞれのメリット・デメリットを見てみましょう。
ペアローン
ペアローンは、2人がそれぞれ独立した住宅ローンを組み、お互いが連帯保証人になる方法です。住宅の所有権は、お互いの出資割合に応じて共有持分があります。
ペアローンのメリット
ペアローンはそれぞれの収入に応じて借入金額を設定し、借入可能額を増やせます。また、2人とも団体信用生命保険(以下「団信」)や住宅ローン控除を適用できる点もメリットでしょう。
団体信用生命保険は、住宅ローン契約者が死亡もしくは高度障害状態になった場合に、住宅ローンが完済される保険です。一般団信のほか、がんや3大疾病、7大疾病など特約付き団信があります。
それぞれが独立した契約のため、金利タイプを変えたり、団信特約の内容を変えたりすることも可能です。
ペアローンのデメリット
ペアローンは、諸費用がかかりやすい点がデメリットとして挙げられます。また、どちらか1人が病気やケガなどで返済ができなくなった場合、連帯保証人であるもう1人が返済しなければなりません。そのため、負担が増え返済が厳しくなる可能性があります。
収入合算(連帯債務型)

収入合算の連帯債務型は、主債務者に連帯債務者の収入を合算して1本の住宅ローンを組む方法です。連帯債務者は、主債務者と同様に借入金額全額の返済義務を負います。
収入合算(連帯債務型)のメリット
2人の収入を合算できるため、1人で住宅ローンを組むより借入金額を増やすことが可能です。ペアローンと異なり、住宅ローン契約は1つのため諸費用を抑えやすい点もメリットでしょう。また、住宅ローン控除は、2人の収入に適用できます。
収入合算(連帯債務型)のデメリット
2人の収入を前提として借入しているため、途中どちらか一方の収入が減ると返済が厳しくなる可能性があります。
また、団信はどちらか一方しか加入できないため、団信に加入しない方が亡くなった場合でも引き続き返済を続けなければなりません。
収入合算(連帯保証型)
収入合算の連帯保証型は、住宅ローン契約者(債務者)の収入に、もう一方の収入を合算し連帯保証人となる方法です。連帯保証人は、住宅ローン契約者が返済できなくなった場合に返済義務を負います。
収入合算(連帯保証型)のメリット
連帯保証型も収入合算することで借入可能額を増やすことが可能です。また、住宅ローンの諸費用も1つの契約分で済みます。
収入合算(連帯保証型)のデメリット
連帯保証型は、住宅ローンの契約者(債務者)は1人です。そのため、連帯保証人には団信も住宅ローン控除も適用されません。連帯保証人が亡くなった場合、変わらず返済は続きます。
同性カップル向けの住宅ローン一覧
同性カップル向けの住宅ローンについて紹介していきます。下表は、同性パートナーが利用できる金融機関の一部を一覧にしたものです。
利用できる住宅ローンの種類は、金融機関によって違いがあります。また、利用できる条件や手続き、必要書類は、金融機関によって異なるため、詳細は各金融機関に確認してください。
なお、担保提供とは、購入する物件を共有する場合に、共有者の人が担保提供者になり、共有物件を担保として提供することをいいます。
金融機関 | 種類 | |
---|---|---|
都市銀行 | みずほ銀行 | 収入合算 |
三井住友銀行 | 連帯債務型(収入合算) | |
りそな銀行 | 収入合算・ペアローン | |
信託銀行 | 三井住友信託銀行 | 収入合算・ペアローン・ 担保提供 |
ネット銀行 | 住信SBIネット銀行 | 収入合算・ペアローン・ 担保提供 |
auじぶん銀行 | 収入合算・ペアローン・ 担保提供 |
|
SBI新生銀行 | 収入合算・ペアローン・ 担保提供 |
|
楽天銀行 | 収入合算 | |
ソニー銀行 | ペアローン・担保提供 | |
地方銀行 | 横浜銀行・東日本銀行 | 収入合算・ペアローン |
千葉銀行 | 連帯債務住宅ローン | |
百十四銀行 | 連帯債務・所得合算・ 担保提供 |
|
西日本シティ銀行 | 連帯債務・収入合算 | |
広島銀行 | 収入合算・担保提供 | |
沖縄銀行 | 収入合算 | |
信用金庫 | 富士信用金庫 | 収入合算 |
京都中央信用金庫 | 連帯債務 | |
労働金庫 | 沖縄ろうきん | 収入合算 |
同性パートナーと住宅ローンを組む時の注意点

同性パートナーと住宅ローンを組む時の注意点を解説します。
これから結婚する男女がペアローンや収入合算で住宅ローンを組む場合、契約時までに入籍を確認できる書類の提出を求める金融機関はありますが、同居していることを条件としていません。
ところが、同性パートナーが住宅ローンを組む時は、すでに同居していることが条件として金融機関から求められます。そのため別々に住んでいるカップルは、住宅ローン利用にあたって同居を求められる可能性があるでしょう。
一方で、住宅ローン返済中に同居を解消した場合でも、住宅ローンの返済義務は完済まで続く点にも注意が必要です。
同性パートナーと住宅ローンを組むリスクと対策
同性パートナーと組む住宅ローンは、法律婚の場合とは異なるリスクもあります。その対策を含めて解説します。
関係解消のリスク
同性パートナーが住宅ローンを組むリスクは、カップルとしての関係が解消されても、住宅ローン返済の関係性は解消されない点です。
法律婚の夫婦が離婚する場合も同様です。ペアローンや収入合算は、2人の収入を前提として住宅購入する制度であり、この前提は住宅ローン完済まで続きます。
ローン返済中にパートナーとの関係を解消し、一方が家を出ることになっても、住宅ローンの返済義務は変わりません。
ペアローンで別々の住宅ローンを組んでも、それぞれが連帯保証人となるため、関係解消後に相手が返済できなくなった場合、相手の住宅ローンも返済しなければなりません。
2人で住宅を売却することに合意し、売却収入でローンを完済できればよいですが、難しいケースもあります。
パートナーシップ契約書を公正証書として作成する
関係解消リスクの対策として、パートナーシップ契約書を公正証書で作成しておく方法があります。
パートナーシップ契約書は、万が一パートナーの関係を解消し、一方がどちらかが家を出た場合の住宅ローン返済をどうするか話し合い、合意した内容を記載した書類です。これを公正証書として作成しておくことで返済をめぐるトラブルを回避しやすくなるでしょう。
公正証書は、公務員である公証人がその権限に基づき作成する公文書です。紛争や裁判になった場合にも強い証拠力があります。
相続トラブルのリスク

住宅ローン返済中に、どちらか一方が亡くなった時のリスクも考えられます。
ペアローンであれば、亡くなった方の借入金額は団信で完済され、もう一方のローンの返済のみ続きます。また、連帯債務型は、主債務者が亡くなればローンは団信によって完済されますが、連帯債務者が亡くなった場合はローンの返済は続きます。
ペアローンや連帯債務型で住宅ローンを組む場合、一般的には、それぞれ住宅購入資金の出資割合や収入に応じて共有持分を設定します。
ただし、相続が発生しても残されたパートナーは、法律が定める法定相続人ではないため、亡くなったパートナーの持分を相続しません。状況によりますが、亡くなったパートナーの親や兄弟姉妹が共有持分を相続することがあります。
この時亡くなったパートナーの相続人から、相続財産として持分に相当するお金を請求され、そのまま住み続けることが困難になる可能性があるでしょう。
遺言書を用意する
このように相続トラブルのリスクを回避するために、遺言書を用意しておくことが対策として考えられます。
自分が亡くなったあと、住宅の共有持分をパートナーに相続させる旨の遺言書を作成しておくことで、パートナーに住宅を残しやすくなるでしょう。
ただし、法律上、兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分の最低限の相続分が認められており、この権利は遺言でも侵害はできません。その点も理解したうえで、遺言書を作成することが大切です。
同性カップルの住宅ローンに必要な書類

同性カップルが2人で住宅ローンを借りるのに必要となる書類を紹介します。
パートナーシップ証明書
パートナーシップ証明書は、パートナーシップ制度を導入する自治体が2人の関係を婚姻と同等であると承認し、自治体が独自に発行する証明書です。
2015年に渋谷区と世田谷区から始まったパートナーシップ制度ですが、今では、少なくとも全国450を超える自治体がパートナーシップ制度を導入しています(2024年5月13日時点)。
法律上の婚姻の成立と認められるわけではありませんが、公営住宅の入居が認められたり、医療機関にかかった時に家族として扱われたりなどの効果があります。
ただし、パートナーシップ証明書による効力は、発行する自治体のなかでしか生じない点には注意が必要です。
参考:公益社団法人Marriage For All Japan「日本のパートナーシップ制度」
合意契約に係る公正証書
合意契約に係る公正証書は、2人の交際が真剣であることを示したり同居を進めたりするべく、双方の責任や費用の分担などの約束を公正証書として作成した書類です。
合意契約は、いわば、パートナーとの同居にあたっての約束を記したものです。日常の家事の分担や病気になった時委任する内容、相手に不貞行為があった時の損害賠償も定められます。
合意契約の内容を公証役場で公正証書としたものが「合意契約に係る公正証書」です。
任意後見契約に係る公正証書および登記事項証明書
任意後見契約は、将来、認知症のような疾病で判断能力が低下した場合に備えて、自分の判断能力がまだ十分あるうちに、自分の生活や財産管理に関することを代わりにおこなってもらえるよう、あらかじめ依頼しておく契約です。
これによって、万一本人の判断能力が不十分になっても、もう一方のパートナーは契約内容に基づいて本人の生活をサポートできます。
任意後見契約は、法律上、公正証書にしなければなりません(任意後見契約に関する法律第3条(※))。
そのため、公証役場で公証人によって作成され、2人の立ち合いのもと署名・捺印し完成します。
また、登記事項証明書は、任意後見契約が登記されていることを証明する文書です。登記は、公証人が法務局に嘱託しておこなわれるため、当事者が登記の申請は必要ありません。
同性パートナーと組む住宅ローンに関するまとめ

最後に、同性パートナーと組む住宅ローンのポイントを簡潔にまとめます。
同性パートナーと組める3種類の住宅ローン
同性カップル2人で住宅ローンを組む方法は、ペアローンと収入合算の連帯債務型と連帯保証型があります。
ペアローンは、それぞれが別のローンを組み、お互いが連帯保証人となる方法です。収入合算の連帯債務型は、主債務者と連帯債務者の収入を合算し、それぞれが全額の返済義務を負います。一方、連帯保証型は、債務者が住宅ローン契約者となり、連帯保証人の収入を合算し借入額を決めます。
同性パートナーと住宅ローンを組むリスクと対策
同性パートナーと住宅ローンを借りる際、関係を解消した時の返済義務や一方が亡くなり相続が発生した場合に購入した住宅に住み続けられなくなるリスクがあるでしょう。
このようなリスクには、関係を解消した時の取り決め定めたパートナーシップ契約書を公正証書で作成する方法や住宅の持分の遺言書を作成しておくなどの対策があります。
同性パートナーと住宅ローンを申し込む際に必要な書類
同性カップルが住宅ローンを申し込む際には、次の書類が必要です。
- 自治体が婚姻関係と同等を認める「パートナーシップ証明書」
- パートナーとの同居の約束を定めた「合意契約に係る公正証書」
- 将来パートナーの判断能力が低下した場合に備える「任意後見契約に係る公正証書」
パートナーシップ制度を設けていない自治体もあり、パートナーシップ証明書を不要とする金融機関もあります。住宅ローンを申し込む際にはあらかじめ必要な書類を確認し、不備なく揃えておくようにしましょう。
最近では、同性のカップル同士で利用可能な住宅ローンの取り扱いが増え、1人では購入が難しかった価格の住宅も検討することができるようになってきています。ただし、長い間返済しなければならない住宅ローンにはリスクや注意点もあります。
この記事が、パートナーと理想の住まいを手に入れるサポートになれば幸いです。
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