団体信用生命保険に入れない理由は?加入条件や対処法を解説

記事の目次
団体信用生命保険とは

団信とは生命保険の一種で、住宅ローンの名義人が万が一死亡した場合に、ローン残債を保障してもらえる制度のことです。
生命保険は通常、契約者が死亡した際に死亡保険金の受取人となった家族や親族に保険金が支払われますが、団信の場合では、死亡保険金の相当額が住宅ローンを契約した金融機関に直接支払われるため、明確な違いがあります。
団体信用生命保険の加入条件
団信は、誰でも加入できるわけではありません。加入する際は、健康状態の告知が必要です。団信は生命保険の一種なので、現在の自分の健康状態を告知しなければなりません。
金融機関によって内容が異なる場合がありますが、代表的なものとして以下のようなものが挙げられます。
- 最近3カ月以内に医師の治療(指示・指導を含む)や投薬を受けたか
- 過去3年以内に、該当する病気で手術を受けたこと、または2週間以上に渡り医師の治療(指示・指導を含む)や投薬を受けたか
- 手・足の欠損または機能に障害があるかなど
金融機関が定めたもののうち、ひとつでも該当する告知内容がある場合は、詳細に記載しなければなりません。治療期間や入院、手術の有無、現在の状況などを詳しく説明する必要があるため、申し込みまでに時間がかかることもあるでしょう。
また、金融機関によって判断基準は異なり、どの金融機関が受かりやすいかなどは一概にはいえません。とはいえ、告知を怠るとのちのちトラブルが発生する可能性があるため、該当する告知内容がある場合は偽りなく正直に答えることが大切です。
団体信用生命保険に入れない人の特徴

団信に申し込んでも審査に通らないと加入できません。団信に加入できない理由としては、基本的に年齢もしくは健康状態が挙げられます。
- 年齢
一般的な加入年齢の目安は満20歳〜65歳未満。保険会社により異なる。 - 健康
各保険会社の審査に通らなければ加入できない。審査基準は公開されていない。
保険会社の規定によって審査基準が異なるため、健康状態においては「この状態なら入れる」と明確に決まっているわけではありません。まずは年齢条件をクリアしているかを確認したうえで、健康状態や過去の傷病歴をしっかり伝えて審査を受けましょう。
ここからは、団信に入れない人の特徴を詳しく解説していきます。
告知する必要がある病気を持っている
団体信用生命保険の告知書は保険会社によって異なります。とはいえ、一般的には下記の病気を患っている場合は、申告が必要です。
心臓 | 狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症、先天性心臓病、心筋症、高血圧症、不整脈、その他心臓病 |
---|---|
脳 | 脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)、脳動脈硬化症、その他脳の病気 |
精神疾患・ 認知症 |
精神病、うつ病、神経症、てんかん、自律神経失調症、アルコール依存症、薬物依存症、知的障害、認知症など |
胃腸 | 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、すい臓炎、クローン病など |
肝臓 | 肝炎、肝硬変、肝機能障害など |
腎臓 | 腎炎、ネフローゼ、腎不全など |
眼疾患 | 緑内障、網膜の病気、角膜の病気など |
がん | がん、肉腫、白血病、腫瘍、ポリープなど |
代謝異常・ 免疫疾患 |
高血圧症、糖尿病、貧血症、紫斑病など |
呼吸器疾患 | 喘息、慢性気管支炎、肺結核、肺気腫、気管支拡張症など |
婦人科系 | 子宮筋腫、子宮内膜症、乳腺症、卵巣のう腫など |
※保険会社によって異なるため、上記の病気はあくまでも一例として参考にしてください
上記の病気以外にも、糖尿病などの生活習慣病も告知が必要です。たとえ、病状が軽い場合でも、現在は完治している状態でも告知しなければなりません。
また、健康診断や人間ドックの結果で治療や検査の指示を受けた場合も告知しなければならないケースが多いため注意が必要です。
高血圧
高血圧の方も、程度によっては団信に加入できない場合があります。日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019によると、診療室での血圧が140/90㎜Hg以上ある人は高血圧とされています。
分類 | 診察室血圧(mmHg) | 家庭血圧(mmHg) | ||
---|---|---|---|---|
拡張期血圧 | 拡張期血圧 | |||
正常血圧 | <120 かつ <80 | <115 かつ <75 | ||
正常高値血圧 | 120~129 かつ <80 | 115~124 かつ <75 | ||
高値血圧 | 130~139 かつ/または 80~89 |
125~134 かつ/または 75~84 |
||
I度高血圧 | 140~159 かつ/または 90~99 |
135~144 かつ/または 85~89 |
||
II度高血圧 | 160~179 かつ/または 100~109 |
145~159 かつ/または 90~99 |
||
III度高血圧 | ≧180 かつ/または ≧110 |
≧160 かつ/または ≧100 |
||
(孤立性) 収縮期高血圧 |
≧140 かつ <90 | ≧135 かつ <85 |
ただし、高血圧でも比較的症状が軽度な場合や、薬で血圧値を安定的に抑えられている場合は、団信に加入できる可能性はあります。他の告知内容も合わせたうえで審査されますが、加入できる可能性は高いでしょう。
うつ病や適応障害など精神的な病気
団信では、うつ病や適応障害などの精神的な病気を持っている場合も入れない可能性が高いです。近年では、精神的な病気を抱えている患者の数が大幅に増えており、高血圧と同様に身近な存在となっています。
ただし、うつ病や適応障害などの精神的な病気を持っていても、症状の程度次第では団信に加入できる可能性はあります。保険会社によって審査基準が異なるものの、正直に告知をして申し込むことが重要です。
団体信用生命保険に入れないとどうなる?

次に、団信に入れないとどうなるのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。
多くの金融機関では、団信に加入できなければ住宅ローンの申し込みができないようになっています。まれに、団信に入っていなくても加入できる住宅ローンはありますが数少ないのが現状です。住宅ローンを検討する際には、団信に加入する必要性の有無を、事前に確認しておくことが大切です。
もし団信に入れなかった場合は、住宅ローンの種類を変更するなどの対策が必要になるため、審査が不安な方は事前に確認しておきましょう。
団体信用生命保険に入れない場合の対処法5選

ここからは、団信に入れない場合の対処法をご紹介します。具体的な対処法としては、以下の5つが挙げられます。
- 特約を外して申し込む
- ワイド団信を検討する
- フラット35を利用して住宅ローンを組む
- 健康状態がよくなるまで待機する
- 配偶者をメインの債務者にする
それぞれの対処法を、以下で詳しく見ていきましょう。
特約を外して申し込む
特約をつけて団信に入れなかった場合は、特約を付けない団信に申し込みましょう。団信では三大疾病保障やがん保障などの特約を付帯できます。しかし、特約をつければつけるほど告知項目が多くなり、審査も厳しくなります。
特に、過去にがんや三大疾病で治療を受けた経験がある方は、疾病保障特約をつけると審査に受からない可能性が高いでしょう。過去にがんや三大疾病の治療を受けた方で審査に落ちた場合は、特約を外して申し込んでみましょう。
ワイド団信を検討する
通常の団信でも審査に通らなかった場合は、ワイド団信を検討してみてください。ワイド団信では通常の団信よりも審査基準が緩和されているため、過去にがんや三大疾病で治療を受けた方でも審査に受かる可能性が高いです。
とはいえ、審査の際は検査書類や診断書などの提出が求められる場合があります。スムーズに審査を受けるためにも、事前に保険会社に確認しておきましょう。
ただし、注意しなければならないポイントがあります。それは、ワイド団信に加入すると住宅ローンの金利が上乗せされる点です。期間や金額によって異なるものの、金利がどれほど上乗せされるか事前に確認しておくことが大切です。
フラット35を利用して住宅ローンを組む
フラット35を利用して住宅ローンを組むのもひとつの手です。フラット35は住宅金融支援機構が金融機関と提携して提供している住宅ローンです。団信の加入が義務付けられていないため、団信の審査に落ちても住宅ローンを組める可能性が高いです。
しかし、フラット35で住宅ローンを組めたとしても、団信の付加がないため、数千万円の負債を負うことになります。契約者に万が一のことがあっても、そのまま住宅ローンの債務が残るため、遺族に大きな返済負担を残してしまうかもしれません。住宅ローンの返済が難しい場合は、夢のマイホームを手放さざるをえない状況になる可能性も考えられます。
とはいえ、契約者に万が一の場合があった時のリスクに備えることは可能です。それは、住宅ローン相当額の死亡保険に備える方法です。
そもそも、団信は住宅ローンの返済中に契約者が死亡した場合のリスクに備える目的として提供されています。もし入れなくても、自身の生命保険の内容次第では団信と同様に備えられます。
万が一のリスクに備えるためにも、団信の代わりとなる対策を考えておいたほうがよいでしょう。
健康状態がよくなるまで待機する
現在治療を受けている方は、健康状態がよくなるまで住宅ローンの申し込みを待機するのもひとつの手です。治療次第で回復する見込みがある場合は、治療に専念したほうがよいでしょう。
現在治療中となると、多額の費用がかかる可能性もあります。治療費に加えて住宅ローンの返済となると、返済負担が大きくかかるでしょう。さらに精神的にも不安定になると治療に悪影響をおよぼすことも。
しかし、健康状態がよくなるまで治療に専念していれば、その間に貯蓄を増やすことも可能です。金融機関によっては、まとまった頭金を用意すれば優遇金利を受けられる可能性もあるため、返済負担を抑えられるでしょう。焦って住宅を購入するのではなく、自分の健康状態と相談したうえで住宅を購入するタイミングを見極めることも大切です。
配偶者をメインの債務者にする
審査に通らなかった場合は、契約者を変更することで審査に通ることもあります。住宅ローンでは夫婦どちらが申し込んでも問題はないため、健康状態が問題で審査に落ちた場合は、配偶者をメインの債務者にしてもう一度審査を受けてみるといいでしょう。
ただし、共働き前提で住宅ローンを利用する場合は、万が一自分が働けなくなった時の保障を考慮する必要があります。配偶者をメインの債務者にしても、自分が働けなくなった場合は相手に大きく返済負担がのしかかります。万が一のことを考えて、追加の保障も検討しておいたほうがよいでしょう。
また、住宅ローンでは長期の返済になるのが一般的です。夫婦でよく話し合ったうえで、どちらをメインの債務者にするのか、どちらかが働けなくなった場合はどうするのかなどを細かく話し合っておきましょう。
まとめ
本記事では、団信に入れない理由や対処法を詳しく解説しました。保険会社によって健康状態の基準は異なるものの、該当する病気にかかった経験がある場合は告知が必須となります。
万が一、健康状態が理由で団信に入れない場合には、対策を講じる必要があります。近年ではワイド団信やフラット35などの選択肢もあるため、健康状態に不安がある方でもあきらめる必要はありません。審査に落ちた場合は、家族と話し合ってどの選択肢を取るか慎重に決めましょう。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ