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団信に加入した住宅ローン契約者が死亡するとどうなる?手続きを解説

団信に加入した住宅ローンの契約者が死亡した時は保険金が支払われます
住宅ローンの契約者が死亡した時、契約者が団体信用生命保険(以下、団信)に加入している場合は、手続きすることで保険金が支払われ、住宅ローンの残高が返済されます。そのため、正しく手続きすれば、債務が遺族に残ることなく、ローンで購入した住宅を遺族に残すことが可能です。今回は、住宅ローンの契約者が死亡した時の手続きや注意点を解説し、死亡した契約者が団信に加入しなかった場合はなにが起こるのかもあわせてご紹介します。

住宅ローンの契約者が死亡した場合の残高はどうなる?

契約者が団信に加入しているかで返済方法が変わります

住宅ローンの返済をおこなっている契約者が死亡した時、計画的な返済は不可能になります。返済できずに残った住宅ローンの残債は、大きくわけて以下の3つのケースにより返済されます。

  • 団信によって保障される
  • 連帯保証人が支払う
  • 法定相続人が債務を引き継ぐ

それぞれ詳しく見ていきましょう。

団信によって保障される

団信は住宅ローンの契約者が死亡した場合など、特定の条件を満たした時、返済されなかった住宅ローンの残債を保障する制度です。団信では、契約者の死亡などの条件に加えて、特約をつけることで3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)による返済不可能な状況の保障も可能です。

団信に加入している場合は所定の手続きをすることで、死亡時に残っている住宅ローンの残高を保険金により返済できます。このケースでは、住宅ローンの契約者が死亡した際には住宅ローンの残高はなくなります。

連帯保証人が支払う

団信に加入しておらず、連帯保証人を立てている場合は、住宅ローンの債務が移ります。連帯保証人は債務のある契約者が返済できない状況に陥った際、返済の義務を負う立場にあるため、配偶者や家族がその立場にあるなら契約者に代わって住宅ローンの残高を支払う必要があります。

住宅ローンを組む際に夫婦で収入合算しており、連帯債務者の立場にある場合も同様に、配偶者が死亡した際は住宅ローンの残高を1人で支払う必要があります。

法定相続人が債務を引き継ぐ

団信への加入もなく、連帯保証人・連帯債務者が存在しない場合は、住宅ローンで購入した住宅を相続する法定相続人が債務を引き継ぎます。相続においてプラスの資産である住宅を引き継ぐ場合は、マイナスの残債も含めて相続するため、法定相続人が継続して返済します。

団信に加入した住宅ローンの契約者が死亡した時の手続き

フラット35の機構団信における手続きを紹介します

団信に加入した住宅ローンの契約者が死亡した時は、所定の手続きが必要です。住宅金融支援機構のフラット35が提供している機構団信(機構団体信用生命保険)では、債務弁済請求のために以下の必要書類を用意して手続きを進めます。

必要書類

手続きに必要な書類は以下のとおりです。

  • 団信弁済届
  • 死亡証明書

どちらも住宅ローンを返済している金融機関から受け取る書類であり、必要事項を記入して提出します。死亡証明書は、医師に記入を依頼します。金融機関によって手続きに必要な書類が異なる場合もあるので、金融機関の指示を受けて書類を用意しましょう。

手続きの流れ

機構団信の債務弁済を受けるために必要な手続きの流れは以下のとおりです。

  • STEP 1必要書類を準備し金融機関に提出する
  • STEP 2提出した書類をもとに保険会社の審査を受ける
  • STEP 3死亡保険金の支払いの可否が決定する

保険会社の審査で書類内容の不備や判断が難しい事項があった場合は、契約者の家族や医師に対して確認がおこなわれることがあります。所定の条件を満たしていると認められた場合は、死亡保険金が支払われるため、住宅ローンは完済となります。

団信に加入していない住宅ローンの契約者が死亡した時の手続き

フラット35で法定相続人が債務を引き継ぐ際の手続きを紹介します

団信に加入していない住宅ローンの契約者が死亡した時、法定相続人が債務を引き継ぐ場合も所定の手続きが必要です。フラット35では以下のとおりに手続きを進めます。

必要書類

住宅ローンを返済中の金融機関に提出が必要な書類は以下のとおりです。

  • 相続届
  • 法定相続人全員が把握できる戸(除)籍謄本、抄本等の写し
  • 債務の相続を証明できる書類
  • 相続登記後の登記事項証明書

債務の相続を証明できる書類には、遺産分割協議書の写しや家庭裁判所の調停書の写しが該当します。その他にも金融機関から書類を求められることがあります。

手続きの流れ

住宅ローンの返済を引き継ぐにあたって必要な手続きは以下のとおりです。

  • 必要書類である相続届に抄本等の写しや相続を証明する書類を添付して金融機関に提出
  • 金融機関が提出書類を精査して債務の相続を確認する
  • 相続登記後の登記事項証明書を提出し返済を開始する

法定相続人が複数いる場合も、そのなかで返済能力がある1人が債務を引き継ぐことになります。手続きが終了すると、住宅ローンの残高の返済が法定相続人に引き継がれます。

団信に加入した住宅ローンの契約者が死亡した時の注意点

団信に加入している場合でも住宅ローンの残高がなくならないケースもあります

団信に加入した住宅ローンの契約者が死亡した時の注意点を3つ紹介します。

  • 手続きは早めにおこなう
  • 返済が遅れると保障を受けられない可能性がある
  • ペアローンの場合は残高の全額が支払われない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

手続きは早めにおこなう

団信に加入した住宅ローンの契約者が死亡した時、団信に加入していなければ債務を引き継ぐ立場にある法定相続人の方は、できる限り手続きを早めにおこなうことをおすすめします。なぜなら団信の保険金は手続きをしなければ下りないため、手続きをしなければ完済できないからです。

手続きが遅れたことにより、不利益が発生する可能性もあるため、手続きは早めにおこないましょう。契約者の方は、万が一に備えてご家族に団信の手続きについて伝えておくとよいでしょう。

返済が遅れると保障を受けられない可能性がある

団信に加入している場合も住宅ローンの契約者の返済が滞っている状態にあると、保障を受けられない可能性があります。例えば、返済が遅れ団信の保険料も支払っていないことで、団信が失効している状態にある場合です。返済状況によっては、団信に加入していても完済にならない場合もあるため注意が必要です。

ペアローンの場合は残高の全額が支払われない

住宅ローンの契約形態がペアローンだと、団信に加入した契約者が死亡した場合でも住宅ローンが完済できない場合があります。なぜなら、ペアローンでは夫婦でそれぞれ住宅ローンを組み、団信に加入するため、配偶者が亡くなった場合は配偶者の返済している住宅ローンは完済されますが、ご自身の契約している住宅ローンの返済は続くからです。

ペアローンは夫婦の収入を合算して住宅ローンを組めるため、借入金額を増やしやすいメリットがありますが、それぞれ団信を組む性質から契約者が死亡しても住宅ローンが必ずしも完済されません。

団信に加入していない住宅ローンの契約者が死亡した場合にできること

法定相続人は住宅ローンの債務を引き継ぐ以外にも2つの選択肢があります

団信に加入していない住宅ローンの契約者が死亡した場合は、法定相続人は債務を引き継ぐ立場になりますが、以下のことをおこなえば債務を引き継がなくてもよい場合があります。

  • 相続放棄で債務と住宅を失う
  • 限定承認で財産を清算する

それぞれ詳しく解説します。

相続放棄で債務と住宅を失う

法定相続人が債務を履行することが難しい場合は、相続放棄を選択すれば住宅ローンを返済する必要はなくなります。ただし、相続放棄すると契約者が購入した住宅は失われます。
住宅ローンを契約する際は金融機関が抵当権を設定するのが一般的です。抵当権は契約者が債務不履行に陥った時、金融機関は土地と建物をもって弁済を受けられます。相続放棄で誰も住宅ローンを返済しなければ、抵当権により住宅と土地を手放すことになります。

限定承認で財産を清算する

相続放棄ではなく限定承認を選ぶ場合は、相続した財産をもって住宅ローンの残債を含む負債を清算できます。清算によって財産が余れば相続が可能です。法定相続人に債務の履行が難しい場合でも、限定承認で財産と負債を清算できれば、住宅ローンを完済したうえで住宅を手放さないことも可能です。

団信の加入で参考になる日本人の死因の事情

団信の加入や特約をつけるうえで参考になる死因のデータを紹介します

住宅ローンの契約者が死亡した時、団信に加入していない場合では家族に負担をかけることになります。多くの金融機関では団信の加入が義務付けられていますが、フラット35では団信の加入を義務としていません。

また、団信に加入するだけでなく、死亡以外の3大疾病を理由に住宅ローンの返済ができないリスクも考えられることでしょう。保障を充実させるなら、団信への加入だけでなく特約をつけることも検討したいところです。最後に団信の加入や特約の有無を判断するうえで参考になる厚生労働省が発表している『令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況』から日本人の死因に関するデータを紹介します。

日本人男性の死因

死因 死亡数 死亡総数に占める
割合
悪性新生物(がん) 222,467人 30.1%
心疾患 103,700人 14.0%
脳血管疾患 51,594人 7.0%
肺炎 42,341人 5.7%
老衰 41,286人 5.6%
誤嚥性肺炎 29,319人 4.0%
不慮の事故 22,026人 3.0%
腎不全 15,080人 2.0%
慢性閉塞性疾患(COPD) 13,670人 1.9%
間質性肺疾患 13,581人 1.8%

日本人女性の死因

死因 死亡数 死亡総数に占める
割合
悪性新生物(がん) 159,038人 22.7%
心疾患 111,010人 15.8%
老衰 110,741人 15.8%
脳血管疾患 53,001人 7.6%
肺炎 30,853人 4.4%
誤嚥性肺炎 20,169人 2.9%
不慮の事故 16,329人 2.3%
アルツハイマー病 14,973人 2.1%
血管性等の認知症 14,181人 2.0%
腎不全 13,608人 1.9%

3大疾病である悪性新生物(がん)・心疾患・脳血管疾患の割合は男女ともに高く、日本人男性の死因ではそれぞれ1~3位の高い死亡率の疾病となっています。上位となる病気は住宅ローンの返済中に罹患するリスクの高い病気といえるでしょう。

日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳となっています。住宅ローンを契約する年齢が高いほど死亡のリスクも高まるため、万が一のことがあった場合に家族に負担をかけないためにも、ご自身の年齢や健康状態にあわせて団信の加入や特約の有無を判断するようにしましょう。

まとめ

団信に加入している住宅ローンの契約者が死亡した場合は、親族が手続きすることで保険金により住宅ローンが完済されます。契約者が死亡した場合は、ご家族が速やかに団信の手続きを進めるようにしましょう。
一方で、契約者が団信に加入せずに死亡した場合は、法定相続人を中心とする親族に不利益や負担がかかることがあります。リスクを理解したうえで団信の加入や特約の有無を検討し、健康上の理由で団信に加入できない場合は生命保険に加入するなどして、遺された家族の負担を軽減できるようにしましょう。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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