住宅ローンを払えない人が急増?!原因や破綻を回避する方法を解説

本記事では、住宅ローンを払えない人が急増している理由や、対処法を解説します。住宅ローンを払えなくなってからではなく、早めの対処が大切です。本記事を読み、できることから対策しましょう。
記事の目次
住宅ローンを払えない人が急増している理由

住宅ローンを払えない人が急増しているのはなぜなのでしょうか。独立行政法人 住宅金融支援機構の「統合報告書2023」によると、新型コロナウイルス感染症にともなう返済方法変更の承認実績は2022年(令和4年)度までに1万8,541件となっています。しかし、これはあくまで住宅金融支援機構で承認した数であるため、他の金融機関も合わせると、実際はこれ以上と考えられます。払えない人が急増した理由は次の3つです。
収入が減少した
住宅ローンを払えない人が急増している理由の1つに、「収入が減少した」ことが挙げられます。新型コロナウイルス感染症の流行によって、国内経済は悪化しました。特に飲食業や旅行業など、外出しなければならない業種は大きく影響を受け、倒産したり、リストラがおこなわれました。NHK出版の「世帯年収の違いによるコロナ禍の影響と その背景にあるデジタル化の恩恵の濃淡」によると、年収が低いほど、コロナ禍によって「収入が減った」人が多かったという調査結果が出ています。
世帯 年収 |
300万円未満 | 300〜600万円 | 600〜900万円 | 900万円以上 |
---|---|---|---|---|
減った | 36% | 29% | 26% | 17% |
変わらない | 62% | 69% | 69% | 79% |
増えた | 2% | 2% | 4% | 4% |
参照:NHK出版「世帯年収の違いによるコロナ禍の影響とその背景にあるデジタル化の恩恵の濃淡」
「変わらない」と回答している方が一番多いものの、新型コロナウイルス感染症によって影響を受けた方は少なからずいることがわかります。
また、国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、民間企業で一年を通じて勤務した人の平均給与は458万円で、500万円以下の方の割合は66.4%となっています。先ほどの調査結果を見ると、「収入が減った」と回答した方は、「300万円未満」と「300〜600万円」で多くなっていることから、新型コロナウイルス感染症によって収入が減少した方は多いと考えられます。
支出が増加した
住宅ローンを払えない人が急増している理由に、「支出が増加した」ことも挙げられます。特に物価上昇からの値上げラッシュは、実感されている方も多いのではないでしょうか。実際に、チラシ・買い物情報サービス「トクバイ」を運営する株式会社ロコガイドが実施した「物価高に関するアンケート調査」では、9割以上の方が「昨年よりも家計への影響が大きいと感じる」、「昨年と比べて支出が増えた」と回答しています。
また、食費や光熱費などの生活費だけでなく、ライフステージにあった支出も考慮しなければなりません。具体的には、子どもの教育費や親の介護費用などがあります。他にも、冠婚葬祭や家電製品の修理・買い替えなど、万一の場合に備えた資金も必要です。
返済計画に問題があった
住宅ローンを払えない人に共通している理由に、返済計画に問題があったことも挙げられます。大和総研のレポート「家計の住宅ローンを点検する」によると、借入当初の返済負担率が「25〜30%以下」「35%超」といった比較的返済負担率が高い層が増えていることがわかっています。
住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」では年収400万円未満の方は返済負担率が30%となっていますが、一般的に無理のない返済負担率は20%以下とされています。返済負担率が高ければ、収入が減ったり、支出が増えたりした時、住宅ローンの返済が厳しくなるでしょう。また、変動金利を選択している方は、金利の上昇によって返済額が増えることも考えられます。
住宅ローンを払えなくなるとどうなる?

住宅ローンが払えなくなると、せっかく購入した家が競売にかけられ、最終的には手放さなければなりません。具体的にどういう手順で競売にかけられるのかを見ていきましょう。
督促状が届く
住宅ローンが払えなくなると、金融機関から督促状が届きます。金融機関によって文言は異なりますが「住宅ローンの滞納分を支払ってください」と返済を催促するような内容です。金融機関と住宅ローンの返済について相談できるのは、この督促状が最後の機会となります。
住宅ローン残債の一括返済を求められる
督促状が届いたあとも滞納を続けていると、「期限の利益喪失通知」が届き、「期限の利益」を喪失します。「期限の利益」とは、住宅ローンを毎月分割で返済するという権利のことです。この権利を失うと、住宅ローンの残債を一括返済しなければなりません。
一括返済できない場合、代位弁済といい、保証会社が残債を金融機関へ支払うことになります。保証会社が支払ってくれたからといって住宅ローンの返済義務がなくなるわけではありません。保証会社に対して返済をしなければならないことを理解しておきましょう。
自宅が差し押さえられる
住宅ローンを契約する際、自宅に抵当権を設定します。抵当権とは、万一契約者が住宅ローンを払えなくなった場合、債権者が自宅を競売にかけ、債権の回収をおこなう権利のことです。この権利を実行するため、債権者は所有者が勝手に自宅を処分することのないよう、不動産を差し押さえます。同時に、裁判所に競売の申し立てをおこないます。
自宅が競売にかけられる
裁判所から「競売開始決定通知書」が送られてきます。これは、債権者がおこなった競売の申し立てが、受理されたというお知らせです。「競売開始決定通知書」が届いた1〜2カ月後、競売の準備のため、裁判所の職員が不動産鑑定士と一緒に不動産の調査に来ます。室内の写真を撮ったり、基準価格を決めるための査定をおこなったり、隅々までチェックされることになります。
住宅ローン破綻を回避する方法

住宅ローンが払えなくなってからではなく、その前の段階でできることはしておきましょう。具体的にできることを解説します。
家計を見直す
住宅ローンが払えなくなる前に、まずは家計を見直しましょう。家計の収支を把握し、無駄な支出を削減することで、住宅ローンの返済に充てる資金を確保しやすくなります。例えば、保険料やインターネットの通信料など、固定費を見直すと節約効果も大きくなります。どこを見直したらいいかわからない場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しましょう。
金融機関に相談する
住宅ローンの返済が厳しくなったら、金融機関に相談することが重要です。例えば、住宅金融支援機構は返済に困った方への対応として、下記のことを実施したとしています。
- 毎月の返済額を減らす
- 一定期間の毎月の返済額を減らす
- ボーナス返済月を変更する
- 毎月分・ボーナス返済分の返済額の内訳を変更する
- ボーナス返済をやめる
参照:住宅金融支援機構「統合報告書2023機構の住宅ローンの返済にお困りのお客様への対応」(PDF)
毎月の返済額を減らせるため、経済的な負担は軽くなるでしょう。しかし、返済額を減らした分、元本の減りが遅く、利息がかかるため総返済額が増える点に注意しましょう。
住宅ローンの借り換えを検討する
住宅ローンの返済が苦しくなってきた時、住宅ローンの借り換えを検討してみましょう。金利の低い住宅ローンに借り換えた場合、返済額の減額や金利負担の軽減を図ることができます。次の条件が揃っている時、大きな効果があるとされています。
- 金利が1%以上低い
- 住宅ローンの残りの返済期間が10年以上ある
- 住宅ローンの残債が1,000万円以上
しかし、3つとも揃っていなくても、条件のいい住宅ローンに借換えると、効果が得られる可能性があります。「不動産情報サイト アットホーム」の「不動産 資金計算シミュレーションでは、簡単にシミュレーションができるため、一度試してみましょう。ただし、借り換える際には手数料などの諸費用がかかるため、それらを考慮したうえで検討しましょう。
住宅ローンが払えない時の対処法

本章では住宅ローンが「どうしても払えない」方に向けて対処法を解説します。制度を活用すると、住宅を手放さずに済む可能性もあります。専門知識が必要になるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら進めましょう。
個人再生を利用する
個人再生を利用すると、自宅を残したまま借金を整理できます。個人再生とは、裁判所を通じておこなう債務整理の1つで、借金を減額してもらう手続きのことです。「住宅資金特別条項」という特則があり、住宅ローンを返済し続けることで、自宅を処分されないようにできます。また、返済のスケジュールを立て直すことも可能です。ただし、減額された借金は3年ほどかけて完済しなければなりません。住宅資金特別条項を利用するためには条件があるため、詳細は弁護士などの専門家に確認しましょう。
任意整理を検討する
任意整理をすると、住宅ローン以外の借金を整理できます。任意整理とは、金融機関と交渉し、借金の返済条件を見直すことで、毎月の負担を減らし完済を目指す手続きのことです。例えば、「毎月の返済額を下げる」「今後の利息をカットする」などの返済条件を、金融機関と相談して決めます。ただし、先述したように、住宅ローンは対象外である点に注意しましょう。また、任意整理をすると信用情報に傷がつくため、8〜10年は新たに住宅ローンを組むことが難しくなります。
リースバックを検討する
住宅ローンを払えない時の対処法として、リースバックがあります。リースバックとは、自宅を売却し、不動産会社に家賃を支払って自宅に住み続けることです。売却することでまとまった資金が手に入るため、住宅ローンを完済できる可能性があります。また、住み慣れた自宅に住み続けられる点もメリットでしょう。ただし、物件や売却価格によっては利用できない場合もあります。不動産会社に査定を依頼し、利用できるか確認しましょう。
リバースモーゲージを検討する
リバースモーゲージを利用し、住宅ローンの返済に充てることもできます。リバースモーゲージとは、自宅を担保にして融資を受け、契約者が亡くなった際に自宅を売却することで、住宅ローンを一括返済するものです。毎月の返済が利息のみとなるため、月々の負担を減らせるでしょう。また、引き続き自宅に住める点もメリットです。ただし、シニア向けの商品であることが多いため、事前に利用できる年齢を確認しておきましょう。
任意売却を検討する
住宅ローンが払えない時、任意売却をする方法もあります。任意売却とは、金融機関の承諾を得て、家を売却するものです。通常、住宅ローンを組む際に抵当権を設定するため、住宅ローンを完済しなければ売却できません。しかし、任意売却では条件付きで承諾してもらい、抵当権を外して売却できます。もし、売却代金で住宅ローンを一括返済できない場合、手持ちの資金が必要となります。ですが、金融機関との交渉次第では、住宅ローンを分割して返済することも可能です。ただし、売却価格は市場価格の8割程度と低くなることを理解しておきましょう。
まとめ
本記事では、住宅ローンが払えない人が急増している理由や払えなくなった時に起こることを解説しました。どうしても払えなくなった場合は、自宅を手放すことも考えなければなりません。そのような事態を防ぐためにも、払えなくなってからではなく、払えなくなる前の対処が大切です。お金の不安は精神的にも辛いものです。自分たちだけで抱え込むのではなく、ファイナンシャルプランナーなどの専門家の力を借りながら、できることから対処しましょう。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ