住宅ローンでがん団信は必要?加入するメリットやデメリットを徹底解説

本記事では、住宅ローンのがん団信とは何かについて詳しく解説します。がん団信に加入するメリットやデメリットなどもまとめていくので、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
団体信用生命保険とは

住宅ローンのがん団信について説明する前に、まずは「団体信用生命保険」(以降、団信)とは何なのかについて理解しておく必要があります。団信とはローン契約者がなくなったり、働けなくなったりするほどの高度障害を負った場合などに、ローンの残債を保険会社が負担して支払いしてくれる保険のことです。
基本的に、ほとんどの住宅ローンでは団信への加入が義務付けられています。ただし、団信に加入した場合は、ローンの返済とは別に保険料を支払わなければならないため、毎月の支払いが増えます。
月々の支払い額が増えるものの、ローン契約者に万が一のことがあった場合、残された家族に負担をかけることはありません。稀に団信への加入が義務付けられていない住宅ローンもありますが、万が一の際でもマイホームが残せるため、家族を守るためにも加入しておいたほうがよいでしょう。
がん団信とは

がん団信の正式名称は、「がん保障特約付団信」、「がん診断特約付団信」などです。こちらは団信にがん特約を追加したものを指します。
通常の団信では、契約者に万が一の事態が起きた時に住宅ローンを保険会社が代わりに支払うのが特徴です。がん団信では上記に付け加え、ローンの契約者ががんと診断された場合もローンの返済が免除されます。
住宅ローンでがん団信に加入するメリット

住宅ローンでがん団信に加入する際は、以下の5つのメリットが得られます。
- 住宅ローンの返済が免除される
- 治療に専念できる
- 適用される基準がわかりやすい
- 低金利の時代なら支払いの負担が少ない
- がん保険よりも保障金額に対して保険料が安い
それぞれのメリットを詳しく解説します。
住宅ローンの返済が免除される
がん団信に加入しておくことで、がんと診断された際に住宅ローンの返済が免除されます。大きな病気を患うと、薬代や治療代など多額の費用がかかります。保険に加入しているからといっても、追加で支払わなければならない費用も多くあるでしょう。
がん団信に加入していれば、免除されたローンの代金を治療代に充てられます。
治療に専念できる
がん団信に加入しておけば、がんと診断された場合、毎月のローン支払いの必要がなくなるため、治療に専念できます。「病院代がかかるのに、ローンの支払いもしなければならない」となれば、ストレスも大きくのしかかるでしょう。
働かなければローンが支払えないからと、治療を途中でやめてしまう方も少なくありません。一番大切なのは自分の命です。がん団信に加入しておけばローンの支払いが免除されるため、しっかり治療に専念できるでしょう。また、「毎月ローンの支払いをしなければならない」という精神的負担も減らすことができます。
さらに、がん保険に加入していればがん治療に必要な検査や手術、入院にかかる費用もカバーできます。いざがん治療をおこなう際に、経済的な負担を感じたくない方は、がん団信だけではなくがん保険にも加入しておくと安心でしょう。
適用される基準がわかりやすい
団信にはさまざまな種類があり、代表例には「3大疾病保障付団信」「8大疾病保障付団信」「要介護状態の保障付団信」などが挙げられます。上記の団信も病気になった際に役立つものですが、適用される基準がわかりにくい場合があります。
例えば、3大疾病保障付団信に加入していて、急性心筋梗塞を患ったとしましょう。その場合は、医師から「急性心筋梗塞を患い、初診療を受けた日からその日を含めて60日以上労働ができないもしくは制限される状態が続いた」と診断されなければ、保障の適用が却下されます。
がん団信の場合は、医師からがんと診断が確定された際に保障が適用されるケースが多いため、基準がわかりやすいのがメリットです。ただし、以下のデメリットで詳しく説明しますが、がんの種類によっては保障が適用されないケースもあるので注意が必要です。
低金利の時代なら支払いの負担が少ない
近年では住宅ローンは低金利となっています。そのため、比較的ローンの負担は低いといえるでしょう。あわせて、がん団信に今加入したとしても、負担額を抑えられるのがメリットの1つです。
現在、国の政策として長期金利が低下しているため、その影響で住宅ローンの金利も低下傾向にあります。金利が低い時代にローンを組めれば、総合的な負担額も抑えられるでしょう。
がん保険よりも保障金額に対して保険料が安い
がん団信は、がん保険に加入するよりも補償金額に対して保証料が安いのもメリットの1つです。がん保険は保障内容や年齢、プランによって月々の金額が変わりますが、例えばがん診断給付金100万円のプランの場合は月々約3,000円の保険料が住宅ローンの返済に上乗せされることになります。
一方でがん団信は、借入金や金利年率、期間によって異なりますが、2,000万円を35年1.5%と設定した場合の上乗せ額は2,000円程度です。月々1,000円しか変わらないと思うかもしれませんが、それが何年、何十年と続けば大きな差になります。総合的な返済負担を抑えたい場合は、がん保険よりもがん団信に加入して、がんに備えるほうがおすすめです。
住宅ローンのがん団信におけるデメリット

住宅ローンでがん団信に加入する際は多くの利点があります。しかし利点だけではなく、デメリットもあるので事前の確認が必要です。
- 月々の支払額が増える
- あとから加入はできない
- 適用されないがん疾患がある
- 途中解約ができないケースもある
- 保障開始まで待機期間がある
それぞれのポイントを以下で詳しく解説します。
月々の支払額が増える
がん団信に加入することで、月々の支払い額が増えます。ほとんどの住宅ローンでは、団信の加入は義務づけていますが、がん団信の加入は個人の自由です。通常の団信に追加でつける特約のため、保障範囲が広がる代わりに月々の支払い額はどうしても増えてしまいます。
毎月のローン返済が厳しい方にとっては、月々数千円の上乗せでも家計を圧迫してしまうでしょう。がん団信の上乗せ金額は、金融機関や借入金額、期間、金利などによって異なります。がん団信への加入を検討している方は、月々数千円の上乗せ額も考慮したうえで、住宅ローンの返済期間や返済額を決めることが大切です。
月々具体的にいくら返済しなければならないのかは、金融機関に相談すれば丁寧に教えてもらえます。月々の支払いの負担を具体的にイメージするためにも、細かいことでもしっかり相談しましょう。
あとから加入はできない
がん団信は基本的に、住宅ローンの借り入れタイミングでしか加入はできません。あとからの加入はできないため、あらかじめ慎重に検討する必要があります。
20代などの若いタイミングで住宅ローンを契約する際は、「健康診断で問題がなかったから大丈夫だろう」「自分はがんにならないだろう」と思って、がん団信への加入を見送ることもあるでしょう。しかし、若い頃は病気の心配をしていなくても、歳を重ねるに連れて不安を感じるケースも少なくありません。
もし、歳を重ねた時に不安を感じても、がん団信の追加はできないため、後悔してしまうかもしれません。がん団信のみならず、基本的に特約部分の途中付帯はできないため、慎重に検討することが大切です。
どうしても契約内容を変更したい場合は、住宅ローンの借り換えをおこない、団信を見直す方法があります。ただ、借り換え時には審査があるだけではなく、手数料や登記費用などがかかるため、資金が必要です。住宅ローンを契約する際は家族と話し合って慎重に決めるようにしましょう。
適用されないがん疾患がある
がん団信はすべてのがんに対応しているわけではありません。「所定の悪性新生物」の保障に限られているため、場合によっては保障が受けられないケースもあります。
ただし、金融機関によって適用となるがんの種類は異なります。がん団信に加入する際は、どこまで適用の範囲内となるのか事前に確認しておきましょう。
途中解約ができないケースもある
「月々の返済額を抑えたいから、がん団信を途中解約したい」「がん保険に入ったから、がん団信の必要がなくなった」というケースもあるでしょう。しかし、がん団信は基本的に途中解約ができません。一度契約すると完済まで継続するのが基本なので、注意が必要です。
どうしても途中解約したい場合は、上記でも説明しましたが、住宅ローンを借り換えるタイミングでがん団信を見直す方法があります。しかし、住宅ローンの審査を再度受ける必要がありますし、手数料などのコストもかかるため、得策とは言い難いでしょう。
コストがかかることが気にならず、住宅ローンの審査も問題ないという方は、上記の方法を検討してみてください。
保障開始まで待機期間がある
がん団信に加入したからといって、すぐに保障が始まるわけではありません。保障が開始されるまでには待機期間があり、基本的には「借り入れ日から90日を経過した日の翌日以降」と決められています。
がん団信付きの住宅ローンを契約したあと、1〜2カ月後にがんを患っても、保障は適用されないため注意が必要です。
がん団信に加入する時の注意点

がん団信に加入する際には、注意するべきポイントがあります。
- 生命保険料の控除は受けられない
- 健康状態や年齢によっては加入できないことがある
- 免責事項がある
それぞれの注意点を、以下で詳しく見ていきましょう。
生命保険料の控除は受けられない
がん団信に加入しても、生命保険料の控除は受けられません。これはどの団信でも同じことがいえます。
国税庁のホームページには生命保険料の控除について詳しく説明されているので、保険料の控除を受けたい方はチェックしてみるといいでしょう。
健康状態や年齢によっては加入できないことがある
がん団信は誰でも加入できるわけではありません。健康状態や年齢によっては、加入できないケースもあります。
基本的に加入する際は、健康状態をあらかじめ告知する必要があります。すでに持病を患っていたり、現在の健康状況が芳しくなかったりした場合は、加入できないケースもあるので注意が必要です。
また、住宅ローンで団体信用生命保険の加入が必須だった場合は、加入が断られると住宅ローンの契約もできません。その際は、他の家族が住宅ローンの契約者になるか、加入条件が比較的緩和されているワイド団信への加入を検討してみるとよいでしょう。
さらに、場合によっては年齢制限を設けている金融機関もあります。金融機関によって異なりますが、借入時の年齢を50歳と区切っているところが多く見られます。特に住宅ローンの借り換えを検討する場合は、年齢にも注意が必要です。
免責事項がある
基本的に団信には免責事項が設定されています。例えば、契約者が死亡した場合、保険金は支払われるものの、自殺の場合、理由によっては保険が適用されないことも。
また、審査に受かるために虚偽の健康状態を告知した場合も、保障の対象外となってしまいます。保険会社ごとに決められている免責事項は異なるため、事前に確認しておきましょう。
まとめ
本記事では住宅ローンを組む際にがん団信は必要なのかについてまとめました。がん団信に加入しておくと、万が一契約者ががんを患った際に住宅ローンの支払いを免除してもらえるので、メリットは大きいといえるでしょう。残された家族の住居も守れるため、加入しておいて損はないでしょう。
ただし、がん団信への加入には注意すべきポイントがあります。途中解約できない、月々の返済額が増加するなどのデメリットもあるので、加入する際は慎重に検討してから決めましょう。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ