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住宅ローンは1億円以上でも組める?借りられる人の年収と返済シミュレーションも徹底解説

「1億円以上の住宅ローンなんて現実的ではない」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし最近では、東京23区の新築マンションの平均価格は1億円を超えることから高額な物件を購入する方も増え、金融機関の対応も多様化しています。そこで本記事は、1億円以上の住宅ローンを検討している方に向けて、その仕組みや条件、返済計画の目安、注意点などを解説します。「高額な物件を購入したいが、自分に合ったローンがあるのか不安」「返済計画を立てるポイントを知りたい」とお悩みの方は、本記事を参考にしてください。高額な住宅ローンでもスムーズに返済する方法を解説いたします。

1億円以上の住宅ローンは組める?

そもそも1億円以上の住宅ローンは組めるのでしょうか
そもそも1億円以上の住宅ローンは組めるのでしょうか

1億円以上の住宅ローンと聞くと、あまり現実味がないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。そもそも、1億円以上の住宅ローンは組めるのでしょうか。本章では、1億円以上の住宅ローンは組めるのか、また1億円以上の物件を購入するケースはあるのかをみていきます。

1億円以上の住宅ローンを取り扱う銀行

これまでの住宅ローンは1億円以下が一般的でしたが、近年では1億円を超える住宅ローンに対応する金融機関が増えています。その要因の一つが、住宅ローンのデフォルト率(返済不能率)が低いからです。
ネット銀行や大手銀行だけでなく、地方銀行でも高額ローンへの対応が進んでいます。

1億円以上の住宅ローンを扱う銀行一覧(2025年2月現在)

銀行名 商品名 限度額
SMBC信託銀行
プレスティア
住宅ローン 5億円
SBI新生銀行 パワースマート住宅ローン 3億円
みずほ銀行 ネット住宅ローン 3億円
住信SBI
ネット銀行
住宅ローン 3億円
三井住友信託銀行 三井住友トラスト保証(株)
保証付住宅ローン
3億円
auじぶん銀行 住宅ローン 2億円
PayPay銀行 住宅ローン 2億円
ソニー銀行 住宅ローン 2億円

紹介した銀行は一部ですが、各銀行の条件や規定は予告なく変更される可能性があるため、利用前に必ず確認をしましょう。

銀行によっては「ペアローン」を活用して上限額が引き上げられる場合もあるため、確認してみましょう。例えば、2人でペアローンを組めば、最大で2億円までの融資が可能なケースもあります。そうなると、1億円を超える高額物件の購入も可能になります。高額融資の選択肢が広がり、多様な資金計画を立てられそうですね。

1億円以上の物件が増えている

近年の不動産市場の動向を見ると、こうした1億円を超える不動産取引は特別めずらしいものではなくなっています。

1戸の販売価格が1億円以上のマンションを「億ション」といいますが、東京や神奈川をはじめとする首都圏では広く取引されています。不動産調査会社の東京カンテイの「全国 新築億ション住戸の供給戸数 2023」によれば、全国での新築億ション住宅の累計供給戸数は2023年末時点で6万2,798戸でした。分譲年ベースで見ても、年々増えているとわかります。価格高騰の長期化を受け、直近5年間の億ション供給戸数はバブル期の合計を上回るほどです。

東京都は4万4,556戸で最多、続いて神奈川県で4,925戸など、戸数が1,000戸を超える地域は三大都市圏となっています。地方圏では中枢都市を有する福岡県(939 戸)や北海道(449 戸)が比較的多くなっています。首都圏からのアクセスがよいリゾート地の軽井沢がある長野県も263 戸あり、首都圏のみでなく地方都市でも億ションの需要が見て取れるでしょう。

億ションを購入できる層は限られますが、決して非現実的な選択肢ではないとわかります。

1億円以上の住宅ローンを組む人の年収は?

1億円以上の住宅ローンを組む人はどのような職業でいくらの年収でしょうか
1億円以上の住宅ローンを組む人はどのような職業でいくらの年収でしょうか

前章では、1億円以上の物件が増えてきていることを解説しました。本章では、実際に1億円以上の住宅ローンを組む人の職業や年収を解説いたします。

1億円以上の住宅ローンを組む人の職業

1億円以上の資金が必要な高額物件を購入する層は、「資産家」や「パワーカップル」が中心です。それぞれの特徴をみていきましょう。

資産家

多額の資産を保有する資産家層も、1億円以上の住宅ローンを利用します。彼らは、1億円以上の住宅ローンを利用し、快適な生活を実現するための手段として高額物件を購入するでしょう。高品質な設備や交通の利便性、周辺環境の充実など、億ションが提供する条件は資産家の生活の質を向上させるのに最適です。また、都市部に位置する億ションは資産価値の維持が期待できるため、資産保全の観点からも選ばれるでしょう。

パワーカップル

パワーカップルとは「世帯年収1,000万円以上」または「夫婦それぞれの年収が700万円以上」を基準に定義された夫婦、あるいはカップルを指す言葉です。共働き夫婦の場合は、仕事が忙しいため、生活の利便性を重視して物件を選ぶ傾向があります。利便性や生活の質を重視するパワーカップルが選ぶのは、交通の便がよい立地や都市部になるため、結果的に高額な物件が選択肢になるでしょう。

二次取得者

1億円以上の住宅ローンを利用するのは、元から資産を持っていたり運用していたり、年収が高い人だけではありません。自宅を売却して資金を手に入れた「二次取得者」も、高額物件を購入するケースが見られます。例えば、退職金や自宅を売却して資産を得た人が売却益を活用し、新たに高額物件を購入し1億円以上の住宅ローンを組むケースです。首都圏を中心に中古マンションの価格も高騰しているため、自宅の売却額が想定以上に高額となる方もいるでしょう。そのような二次取得者も、1億円以上の住宅ローンを組む人に入ります。

1億円の住宅ローンを組む人の年収

1億円を超える住宅ローンを組む場合、返済額がかなり大きくなるため、それに見合った高い年収が求められることは当然でしょう。単に収入が多ければよいわけではなく、その収入が安定しており、実質的な返済能力がある点も条件です。

例えば、自営業者で収入自体は高額でも、経費を差し引いたあとの「所得」が低い場合、銀行はその所得額を基準に融資可能額を計算します。そのため、自営業者で収入全体が多くても、融資額が希望に届かないケースは少なくありません。また、収入が事業収入に依存している場合は、その収入が長期間にわたり安定しているか重視されます。

年収倍率で考える場合

一般的に、1億円の住宅ローンを35年間で組む場合には、最低でも年収1,200万円~1,300万円が必要でしょう。銀行によって審査基準が異なるため一概にはいえませんが、年収倍率は「8~9倍」程度を上限に設定する金融機関が多いです。

なお、年収倍率とは住宅ローンを借りる際に、借入金額が年収の何倍に相当するかを示す指標のこと。例えば年収1,200万円の場合、借入上限額は約1億800万円です。ただし、返済負担率や頭金の額で借入可能額は変動するため、あくまで目安として考えましょう。

返済負担率で考える場合

1億円の住宅ローンを組む理想の年収目安は、1,500万円~1,900万円程度と考えられます。この範囲内であれば、返済負担率(手取り収入に占める住宅ローン返済額の割合)を手取り額の20%~25%以内に抑えることができ、無理なく返済を続けられるでしょう。例えば、夫の年収が1,000万円、妻の年収が600万円の世帯なら、1億円以上の物件を購入する理想的な条件を満たします。

また、1億円以上の借り入れを希望する場合、一人の年収が基準に届かないケースもあるでしょう。その際は、収入のあるパートナーとペアローンを利用すると、借入可能額を増やせます。例えば、夫婦の収入を合算すると最大2億円近くの借り入れができる可能性も。ただし、この場合も返済計画が無理のない範囲内でなければなりません。なお、このような高収入世帯の場合、年収が2,000万円を超えると住宅ローン控除は適用されないため、注意が必要です。

1億円の住宅ローンを組んだ時の返済額

1億円の住宅ローンを組んだ時の返済額をシミュレーションします
1億円の住宅ローンを組んだ時の返済額をシミュレーションします

本章では、1億円の住宅ローンの返済額が月々いくらになるのかをシミュレーションしてみます。条件は下記です。

【条件】

  • 借入金額:1億円
  • 返済方式:元利均等方式
  • ボーナス返済:なし
  • 返済期間:35年
金利 月々の返済額 総返済額
固定1.4% 30万1,309円 1億2,654万9,839円

試算の結果、月々の返済額は25万円以上になり、高額になることがわかります。また、利息だけでも2,600万円を超えていることに驚く方もいらっしゃるのではないでしょうか。さらに返済期間を短くしたり、借入金額を増やせば返済額も増えるため、このようなローンを組める人は年収が高くなければ難しいでしょう。

1億円以上の住宅ローンを組む際の注意点

1億円以上の住宅ローンを組む際に注意すべき点は何でしょうか
1億円以上の住宅ローンを組む際に注意すべき点は何でしょうか

1億円以上の住宅ローンは借入金額の多さゆえ、注意すべき点があります。本章では、1億円を超える住宅ローンを組む際に注意すべき点をみていきましょう。

事務取扱手数料が高額になる

1億円を超える住宅ローンを組む際には、借入金額だけでなく、事務取扱手数料にも注意が必要です。事務取扱手数料には「定額型」と「定率型」の2種類があり、それぞれ計算方法やコストに大きな違いがあります。高額の借り入れでは、特に定率型の手数料が大きな負担になるため、事前にしっかり確認しましょう。

定額型の手数料は、借入金額に関係なく一定の金額で、5万5,000円や11万円などと決まっています。一方、定率型では借入金額に対して一定の割合、例えば2.2%(税込)などと決まっており、借入金額が高くなるほど手数料も比例して高額になります。

具体的に、3,000万円の住宅ローンを組む場合と、1億円を超えるローンを組む場合で手数料を比較してみましょう。まず、定額型の場合、どちらも同じく固定金額の5万5,000円や11万円なので、借入金額に関わらず手数料は変わりません。

しかし、定率型では3,000万円を借りる場合、2.2%の手数料だと約66万円(税込)です。一方、1億円を借り入れる場合は、その3倍以上の220万円(税込)もの手数料が発生します。この差額は大きく、高額な借り入れの際にはコスト負担として無視できません。1億円以上の住宅ローンを検討する場合は、事務取扱手数料をはじめ、金利や返済期間も含めた総合的なコストを考慮する必要があります。

わずかな金利差も大きな影響になる

1億円を超える住宅ローンを組む際には、金利が総返済額に大きな影響を与えるため、注意が必要です。特に高額の借り入れでは、わずかな金利差でも返済負担が大幅に変わるため、金利タイプや利率を慎重に選ぶ必要があります。

例えば、金利が0.1%異なるだけで、総返済額にどのような違いが生じるのかを計算してみましょう。

【条件】

  • 借入金額:1億円
  • 返済方式:元利均等方式
  • ボーナス返済:なし
  • 返済期間:35年
金利 月額 総返済額 利息分
固定1.9% 32万6,154円 1億3,698万4,624円 3,698万4,624円
固定2.0% 33万1,263円 1億3,913万363円 3,913万363円

金利が1.9%の場合と2.0%の場合を比較すると、毎月の返済額は5,000円程しか変わりませんが、総返済額の差額は約214万円です。このように、わずかな金利の違いでも返済期間全体で見ると大きな負担増となることがわかるでしょう。

今回は固定金利で計算をしましたが、金利タイプにも注意が必要です。変動金利は当初の利率が低い傾向にありますが、将来的な金利変動リスクがともないます。一方、固定金利は借入期間をとおして一定の利率が保証されるため、返済計画が立てやすい点はメリットになるでしょう。ただし、固定金利は通常、変動金利よりも金利が高めに設定されているため、長期的な総返済額に影響する可能性があります。

1億円を超えるような高額の住宅ローンを組む場合は、少しの金利差で返済額に与える影響が大きくなります。そのため、複数の金融機関の金利や条件の比較検討が欠かせません。最終的には、金利だけでなく事務取扱手数料や付帯サービスなども考慮し、総合的なコストを理解して判断しましょう。

高額物件は維持・管理費も高い傾向にある

1億円以上の住宅ローンを組む際、物件そのものの価格やローンの返済額に目がいきがちですが、購入後に発生する維持費や管理費も見逃せません。特に「億ション」と呼ばれる高額なマンションでは、建物の価値や設備のクオリティが高いため、これらの費用が一般的なマンションよりも高額になるケースが多いです。

また、定期的に建物をメンテナンスするための修繕積立金も高額となるでしょう。

さらに、建物の評価額が高いため、固定資産税も同様に高額になります。この固定資産税は毎年支払う必要があるため、ローン返済に加えて大きな負担です。こうした費用を考慮せずにローンの返済額だけを見て購入を決めてしまうと、将来的に予算が不足し、生活全体に影響をおよぼす可能性があります。そのため、維持費や管理費を含めたトータルコストをあらかじめシミュレーションしておくようにしましょう。

返済が難しくなるリスクがある

1億円を超える住宅ローンを組む場合、はじめは問題なく返済できていても、さまざまな要因により返済が難しくなるかもしれません。特に、収入の減少や自然災害、離婚などのライフイベントが発生すると、返済計画が大きく狂い、家計が圧迫される可能性があります。

例えば、ペアローンや連帯債務を利用して夫婦で住宅ローンを組むケースでは、離婚によって世帯収入が半減すると、ローンの維持が困難になるでしょう。また、子どもの誕生や育児などで、収入が一時的に減少することも想定しておかなければなりません。これらのライフイベントは、家計の余裕を縮小させ、予想外の負担を引き起こす可能性があるため、事前にリスクヘッジを検討しておくべきです。ライフプランをしっかり見据え、無理のない選択を心がけましょう。

売却時には買い手が付きにくい

1億円以上の住宅ローンを組む場合、将来的に売却を考える際に重要なことが、「買い手がつきにくい可能性」です。高額物件を購入する層は限られているため、売却時にすぐに買い手が見つからないケースがあると理解しておきましょう。

特に、億ションのような高額な物件の場合、購入希望者は限られます。 高級な設備や立地条件が揃っているため資産価値自体は高いものの、売却は物件の状況や市場の需要に大きく左右されます。市場全体が好調で需要が多ければ売却しやすくなりますが、逆に市場が冷え込んでいる時期や、需要の少ない物件になると、思うように売却できないでしょう。

このようなリスクを回避するためには、購入前に売却時の流れや物件の価値がどれくらい安定しているか、把握することが必要です。立地や物件の状態、周辺環境などが、将来的に売却しやすい要素となるかを確認し、買い手が付きやすい条件を整えておきましょう。また、億ションの場合、通常の物件よりも高額なため、売却時に必要な手続きやコストも増える点を覚えておく必要があります。 高額物件を購入する場合、資産価値が高い点に加え、将来的な売却のしやすさを考慮し、慎重な判断が肝心です。

1億円以上の住宅ローンに関するよくある質問

1億円以上の住宅ローンに関するよくある質問をまとめました。

1億円以上の住宅ローンを組むことができるか?

1億円以上の住宅ローンは、以前は一部の金融機関によってのみ可能でしたが、現在ではネット銀行や地方銀行でも取り扱いが増えました。1億円以上の住宅ローンを組むためにはさまざまな条件を満たす必要がありますが、近年の高額マンション数の増加を考えても、非現実的な選択肢ではなくなってきています。共働き世帯が増加したことにより、パワーカップル、DINKsの方々がペアローンを組むことも可能でしょう。とはいえ、子育てに必要な教育費や老後の生活費、共働き世帯の場合はどちらか片方の収入が不安定になるリスクなどを考慮に入れて、自分のライフプランに適した返済可能額を見極めることが重要です。

1億円以上の住宅ローンを組む人の年収は?

1億円を超えるローンを組むには、年収倍率で考えると年収1,200万円〜1,300万円が目安です。ただし、収入に対する返済負担率を25%以下と考えるなら、理想的な年収は1,500万円〜1,900万円程度でしょう。夫婦でペアローンを組む場合、借入金額は最大で2億円まで可能と考えられます。とはいえ、無理なく返済できる範囲に留めておくことが大切です。

1億円を超える住宅ローンの月々の返済額は?

借入金額を1億円、返済方式を元利均等方式、ボーナス返済なしで返済期間が35年と設定すると、固定金利1.9%の場合の月々の返済額は32万6,154円です。

1億円以上の住宅ローンを組む際の注意点は?

まず、事務取扱手数料に注目しましょう。特に定率型の手数料は借入金額が大きくなるほど負担が増えるため、事前に確認する必要があります。

また、金利差がわずかでも総返済額に大きな影響を与えるため、金利タイプや利率を慎重に選ぶ視点が大切です。さらに、高額物件では維持費や管理費が通常よりも高額になるため、これを予算に組み込んだ資金計画を立てましょう。

最後に、将来的な売却時に買い手が付きにくいリスクも考慮し、売却時の流動性や市場の需要を確認する点も忘れてはなりません。

まとめ

本記事では、1億円以上の住宅ローンに関する基本的な知識から、具体的な返済シミュレーション、年収の目安、さらに借り入れ時の注意点まで解説しました。金利や事務取扱手数料、維持費などの要素を見落とすと、将来的に負担が大きくなるかもしれません。特に高額物件の購入を検討している方は、無駄なく効率的な資金計画を立てるための情報に役立ててください。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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