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【実例】古民家リノベーションの魅力とは?メリット・デメリットや費用・補助金について解説

昔ながらのレトロな情緒あふれる「古民家」。その独特の雰囲気からカフェや古着ショップなどのおしゃれなお店として再利用されているケースが多いイメージでしたが、最近では、居住用として利用する「古民家リノベーション」の人気が高まってきています。
ちなみにこうした古民家は都市整備が進む栄えた市街地よりも、のどかな農村などに残っていることが多く、地方移住時の新居に活用されることも。「風情を感じる古民家で、のんびり自然に囲まれて生活したい!」など、憧れの田舎暮らしのイメージもあるかもしれません。そこで今回は、古民家をリノベーションして住むメリット・デメリットも含めて、実際にどのような暮らしができるのかご紹介。おしゃれなリノベーション実例や、使える補助金なども含めて解説していきます。

記事の目次

そもそも古民家とは

古民家とは、どのくらい古い家のことなのでしょうか
古民家とは、どのくらい古い家のことなのでしょうか

法律上の定義などはありませんが、「一般社団法人全国古民家再生協会」が定めるところによれば、次のような条件に当てはまる古い一般住宅を“古民家”としています。

  • 昭和25年(1950年)の建築基準法制定前に完成済み
  • 伝統的建造物(伝統工法による古い住宅)

なお登録有形文化財における要件としては、「築50年以上の木造軸組構法による住宅」とされており、それぞれで細かな定義は異なっています。このように古民家としてのはっきりとした線引き自体はありませんが、古い木造住宅で、なおかつ以下のような特徴が見られるのが基本です。

  • 茅葺・草葺(ススキ・アシ・ワラなど)や、日本瓦の屋根
  • 土間付き
  • 太い柱や梁

いずれにしても洋館などの近代的な外観や構造ではなく、古い町家や農村民家のイメージで間違いありません。ちなみに上記のような昔ながらの建物ではないものの、現在使われていない古い住宅は、一般的に「空き家」と呼ばれます。

古民家リノベーションが注目されている理由

古民家リノベーションが人気の理由とは
古民家リノベーションが人気の理由とは

価値観や働き方の多様化が進む昨今では、賑やかな都市部だけでなく、自然に囲まれた地方での暮らしも高い注目を浴びています。こうしたのどかな地方には、古きよき趣を感じる古民家が多く残っており、空き家になったまま使われていない場合も多数。

そこで各自治体では、地方への移住希望者と古い空き家を結び付ける取り組みが積極的に進められていることもあり、古民家をリノベーションして転居するケースが多々見られるようになってきました。また近年では、持続可能な社会を目指すSDGsの考え方が世界的に広まっていることもあり、大切な資源として古民家の再活用が支持されている一面も。さらに古民家のリノベーションは、以下のようなさまざまな魅力からも人気を集めています。

古民家リノベーションの魅力

古民家リノベーションの魅力とは
古民家リノベーションの魅力とは

古民家リノベーションは、次のような独自の魅力もあることから、高い人気を集めています。

風格・趣がある

古民家の魅力といえば、古い伝統的な建築様式から生み出される独特の雰囲気。現代の新しい住宅ではなかなか見られない木造ならではの温かな風合いや純和風の建材、大胆な構造などは、まさに古民家ならではの味わい深さです。古民家の活用により、こうした昔ながらの佇まいを残した、古きよき風格や趣を感じられる住まいを実現できます。

広々とした間取り

かつては親子三世代などの大人数で住むケースが多く、また農村の広い土地に建てられていることから、広々とした間取りになっているのも古民家の特徴です。また各部屋は襖一枚の仕切りのみで、それぞれを一つの空間としてつなげるなど、開放的に使いやすい間取りになっている場合も多数。のびのびと開放的な居住スペースを確保しやすいのも、古民家リノベーションの魅力です。

天然素材を使用している

古民家では、建物の基礎構造や建材など、基本的には天然素材が使われています。例えば中毒症状を引き起こすシックハウス症候群やアレルギーの原因となる、化学物資が含まれる素材が使用されていないため、衛生的にも安心できる魅力があります。

自然豊かな環境

古民家は、現代でよく見られる密集した住宅街ではなく、緑に囲まれた農村や田園地帯に残されているケースが多々見られます。家のすぐそばに、森林や山岳などの自然あふれる環境が広がっていることも多く、きれいな空気のもとで心地よい暮らしができます。

地域住民と交流が持てる

近年の都市部や新興住宅地では、ご近所付き合いはだんだん薄れてきていますが、古民家の多く集まる地方では昔ながらの地域交流が見られるケースも多くあります。古くから長年にわたって住み続けている世帯も多々あり、顔なじみとして家同士で自然に親睦を深めている地域も珍しくありません。こうした地方ならではの温かみのあるコミュニケーションを楽しむ暮らしがしやすいのも、古民家リノベーションの魅力でしょう。

古民家リノベーションのメリット

古民家リノベーションのメリットとは
古民家リノベーションのメリットとは

さまざまな魅力にあふれる古民家から、実際にリノベーションして新たな住まいにすることで、次のようなメリットがあります。

唯一無二の住まいが実現できる

リノベーションを通じて、自分たちのライフスタイルや好みのデザインなどに応じた住まいにできるため、たった一つのこだわりのマイホームを生み出すことが可能。さらに古民家ならではの伝統工法を活かすことで、古風な味わいと現代のモダンな雰囲気を融合させることができ、オリジナリティあふれる唯一無二の住まいを実現できます。「他とは被らないような、個性派の家にしたい!」などの場合にも、古民家リノベーションがおすすめです。

安価で購入できる

古民家は基本的に築年数の長さから資産価値が低く、なおかつ都市部よりも土地代が大幅に安い地方に建っていることが多いため、一般的な新築などに比べて安価に入手しやすいのも利点。他の中古住宅と比較しても、古民家のほうが、建物の古さからリーズナブルになるケースが多々見られます。古民家ならではの広々とした居住スペースを確保しつつも、費用を抑えながら購入しやすいメリットがあります。

高い耐久性が確保できる

築年数が長い分、もちろん補修すべき部分も出てきますが、昔ながらの多くの古民家では老朽化が進みにくい非常に耐久性の高い資材が使われています。また古民家で見られる伝統的な工法では、自然災害にも強い構造や建築技術が取り入れられており、建物としての強度も高いのが特徴。長年にわたって倒壊せずに残っているのは、まさに耐久性に優れている証明といえるでしょう。

資産価値を高めることができる

例えば建物の安全性・強度を高めたり、より機能性に優れた間取りや構造にしたりなど、リノベーションによって資産価値を高める方法はいくつもあります。リノベーションを通じて、さまざまな付加価値を取り入れていくことで、古民家ならではの魅力を活かしつつ資産価値を向上させることが可能。さらに古民家は、伝統的な歴史を残した貴重な建物でもあり、希少性も高い利点があります。

固定資産税が軽減できる

固定資産税は、築年数などに応じた不動産評価をもとに金額が決定され、古民家のような古い物件では経年減価によって税額が安くなる傾向が見られます。さらに国が推奨する環境保護などに向けた施工をしたり、地域によっては古民家再生支援制度に該当していたりすると、税制優遇措置を受けられるケースもあります。ただし、リノベーションを通じて資産価値が高くなりすぎると、反対に固定資産税が上がってしまう場合も。こうした固定資産税の金額も考慮しつつ、どのようなリノベーションをしていくのか検討してみるのがおすすめです。

補助金が利用できる

リノベーションの施工内容や、その古民家のある自治体によっては、補助金を使って工事ができるケースもあります。後述で詳しく解説しますが、政府や各地方では古民家再生を助成するさまざまな取り組みを進めており、補助金でお得にリノベーションができる可能性があるのも大きな利点です。

古民家リノベーションのデメリット

古民家リノベーションのデメリットとは
古民家リノベーションのデメリットとは

古民家リノベーションには、たくさんの魅力やメリットがありますが、一方で古い建物ならではの難点もあります。古民家リノベーションをお考えの際には、次のような注意点も想定しながら検討してみましょう。

耐震性や断熱性が劣っている場合もある

古民家は耐久性に優れた物件が多いですが、築年数が長い分、最新の耐震基準に適していないケースも見られます。なお新耐震基準が施行されたのは1981年6月(2003年改正)で、古民家では築50年以上の場合も多々あるため、地震に対する性能が懸念されるリスクも。また古民家では、夏場の風通しを重視した構造になっている傾向もあり、隙間風が入りやすく寒さの厳しい冬場は過ごしにくい一面もあります。こうした安全性や断熱性の確保に向けた、さまざまな対策を考える必要もあります。

一般的なリノベーションよりも高額になりやすい

前述にもあるような、新耐震基準や断熱性に向けた施工は、構造部分からの工事が必要になるため費用が高額になりやすい一面があります。また古民家は比較的耐久性が高いとはいえ、メンテナンスがされないまま長年が経っていると、害虫や湿気による腐食などが進んで大きく劣化している場合も。いずれにしても建物が古い分、リノベーションにかかるコストがかさみやすい部分は、あらかじめ想定しておいたほうが無難です。

対応できる工務店やハウスメーカーが限られる

古民家では、現代に見られないような特有の伝統工法や構造などが取り入れられている場合も多く、リノベーションの施工の難易度が高いケースもあります。豊富なノウハウや経験がないと、リノベーションに対応できないこともあり、依頼できる工務店やハウスメーカーが限定されてしまうことも。古民家の状態次第では、そもそもリノベーションを頼める工務店やハウスメーカーを探すのが難しい可能性もあります。

住みはじめるまでに時間がかかる

当然ながら、リノベーションが完了するまでは住むことができないため、購入してもしばらくは引越しや入居はできません。さらにリノベーションに向けた建物検査や打ち合わせなど、いざ工事をはじめるまでの過程も多く、購入から入居まで時間がかかることも。また古民家の場合は、「前居住者の残置物が大量に残っている」などのケースもあり、通常のリノベーションよりも作業工程が増えやすい一面もあります。ある程度の期間が空いても問題ないか、あらかじめ検討しておくこともおすすめします。

古民家リノベーションの費用・相場

古民家リノベーションにかかる費用はおおよそいくらなのでしょうか
古民家リノベーションにかかる費用はおおよそいくらなのでしょうか

古民家リノベーションにかかる費用の目安は、実際におこなう工事内容に応じて異なります。ちなみに古民家リノベーション全体としての相場は、総合して1,500万円~2,000万円程度。なお古民家リノベーションでよくある施工例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 耐震工事:150万円~250万円
  • 基礎部分の補修:50万円~300万円
  • 屋根の補強:50万円~300万円
  • 外壁の補強:50万円~200万円
  • 断熱施工:100万円~500万円
  • 水回りのリフォーム:50万円~400万円

どのような工事を組み合わせるか次第で変動しますが、おおむね上記のような費用を想定しておくとよいでしょう。

おしゃれな古民家リノベーション実例

ではここからは、実際の古民家リノベーションの事例をいくつかピックアップしてご紹介。古民家を使ったこだわりのおしゃれな家づくりをしたい場合には、ぜひチェックしてみてください。

150余年の伝統的建造物をリノベーション

こちらは、江戸時代の残り香を感じる歴史の長い古民家を活用したリノベーション実例です。昔ながらの梁・柱などの構造部分や土間を存分に活かしつつ、レンガ造りや色鮮やかな壁紙といったモダンな雰囲気もアクセント的に導入。現代らしいスタイリッシュな佇まいと、古民家らしさを両立した住まいになっています。

築60年の日本家屋を複合住宅としてリノベーション

こちらは、昭和時代の温かみが残る古民家を使ったリノベーション実例です。むき出しの屋根による吹き抜けや、部屋を仕切る壁上の格子状の木舞から、のびのびと開放的な佇まいを演出。アンティーク感のある戸棚やテーブルなどのインテリアを取り入れることで、古きよき雰囲気を醸し出しています。

築60年の平屋を戦後のモダニズム住宅をイメージしてリノベーション

こちらも、高度成長期のレトロ感をふんだんに活かしている古民家リノベーションの実例です。木目のやさしい雰囲気や、天井の高い開放的な空間により、のどかな空気感が漂うノスタルジックな印象が醸し出されています。

築60年の空き家をホームオフィスにリノベーション

こちらは築60年の古民家を活用し、昔ながらの温かみを残しつつも、どこか落ち着いたシックな空間を実現している実例です。スケルトンな柱や廊下、木造の大きな窓により、昭和を感じる昔懐かしい雰囲気を演出。またテーブルやチェア、収納などのモダンなインテリアで、現代らしい佇まいも演出しています。

要伝統的建造物群保存地区に建つ築53年の平屋をリノベーション

こちらは、伝統的な文化財ならではの品のある雰囲気と、高床の構造を活用してリノベーションした実例です。居住スペースの一部を深く掘り下げることで、平屋ながらも奥行き感を演出。かつての構造を維持しつつ、ハイセンスな個性派の住まいを実現しています。

古民家リノベーションで利用できる補助金

古民家リノベーションに使える補助金とは
古民家リノベーションに使える補助金とは

古民家や空き家の再生利用が推奨されている現在では、施工内容や自治体などによって異なりますが、次に挙げていくような補助金が適用されるケースがあります。

耐震リフォームの補助金

まず政府で推進する、国土交通省の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」では、耐震リフォームを含めた住宅性能向上工事を対象とした補助金を出しています。原則80万円(戸)を上限として、専門家による建物状況調査をおこなったうえで適用されます(認定長期優良住宅では最大160万円)。なお補助金の受給に向けては、工事後の評価基準適合など、さまざまな条件を満たす必要があります。もしくは各地域で進められている、自治体独自の耐震リフォームの補助金制度も利用できます。こちらは地域ごとに、金額や条件などの内容は異なるため、各自治体のホームページなどで確認してみましょう。

バリアフリーリフォームの補助金

厚生労働省では、要支援・要介護者認定を受けた方を対象に、介護保険を使った住宅改修費の補助金制度を進めています。例えば段差の解消など、バリアフリーを含めたリフォーム工事が対象となりますが、基本的には支援や介護を必要とする高齢者向けとなります。また自治体ごとで、バリアフリーリフォームにともなう、独自の補助金制度を設けている場合もあります。いずれにしても要支援・要介護者認定をはじめ、さまざまな受給条件があるので、あらかじめ補助金の適用になるのか十分にチェックしておきましょう。

省エネリフォームの補助金

政府では、断熱をはじめとした省エネリフォームに関する、いくつかの補助金制度を推進しています。例えば現在は、「住宅省エネ2025キャンペーン」事業を進めており、窓の断熱改修などのさまざまなリフォームを対象に補助金を支給。そのうちの「子育てグリーン住宅支援事業」では、開口部・躯体の断熱改修とエコ住宅設備の設置工事において、幅広い世帯向けの補助金を設けています。さらに環境省が実施する「既存住宅の断熱リフォーム支援事業」でも、省エネにつながる断熱施工にともなう補助金を出しています。また補助金ではありませんが、各自治体では省エネリフォームによる固定資産税の優遇などをおこなっている場合もあります。

自治体の空き家補助金

一部の自治体では、古民家を含めた、空き家の活用を支援する補助金制度を設けているケースも見られます。では実際に、各自治体で取り組んでいる補助金について、どのようなものがあるのかいくつかピックアップしてご紹介します。

【栃木県栃木市】空き家バンクリフォーム補助

栃木県栃木市では、空き家バンクに登録された古民家の購入者を対象に、住宅の安全性・居住性・機能性を高めるリフォームへの補助金制度を設けています。家財処分なら5万円以上、工事なら20万円以上かかる場合に、必要な費用の半額までの補助金を受け取ることができます(補助額の限度額あり)。

【群馬県みどり市】空き家改修補助金

群馬県みどり市では、市内に現存していて1年以上使われていない空き家において、移住・定住を目的としたリフォームをおこなう際の補助金制度を設けています。工事費の2分の1(上限60万円)に加えて、市外からの転入者の人数に応じて、5万円(総額20万円まで)の補助金を受給できます。

【岡山県岡山市】空家等適正管理支援事業

岡山県岡山市では、居住もしくは賃貸・売却を目的とした、空き家リフォームを支援する補助金制度があります。おもに耐震・バリアフリー・省エネに向けた工事(家財処分など含む)を対象に、50万円以上のリフォーム施工における、必要経費の3分の1を補助金として受け取れます(上限50万円)。

まとめ

古民家リノベーションは、おしゃれな空間演出や心地よい住環境の確保など、住まいづくりに向けたさまざまな魅力にあふれています。もちろん古民家ならではの古さもあり、リノベーションに向けては、あらかじめ気を付けておきたい注意点もいくつかあります。また古民家リノベーションでは、政府や自治体による補助金が使えるケースもあり、費用負担を抑えつつ理想の住まいを実現できるケースも。新たな住まいをお考えの際には、ぜひ本記事も参考に、古民家の活用も検討してみましょう。

執筆者

たけなつ

2019年よりフリーで活動しているWebライター。
広告会社でのコピーライターを経て、現在は幅広いジャンルのコラム記事などを執筆。
愛知・東京・北海道と各地を渡り歩き、19歳からの10年で7回引越しを繰り返す好奇心旺盛人。

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