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平屋リノベーション事例「昭和のレトロ感が心地いい。郊外の平屋をリノベーション」

雑誌「LiVES」に掲載された平屋リノベーション事例から、今回は神奈川県鎌倉市の濱さんご家族の事例をご紹介します。広い庭付きの環境が気に入って、築60年の平屋をリノベーション。古いままの味わいを大切にした古建具や素材使いに、懐かしさが漂う。(text_ Eri Matsukawa photograph_ Kai Nakamura)

出合ったのは広い庭付き 昭和の懐かしさに包まれる築60年の平屋

漆喰の壁に古びたドアや木枠の窓、障子を透過したやさしい光…。昨年8月にリノベーションを終えたばかりの濵さんの家は、時が止まったように昭和の頃の懐かしさに包まれている。

天井板を外した開放的なリビングダイニング。掃き出し窓はアルミサッシを古い木製建具に付け替えた。サイズがぴったりのものが見つかったのはラッキー。

ご夫妻が鎌倉に住み始めたのは6年ほど前。二人とも古い家が好きで文化住宅を借りて暮らしていたが、湿気とカビに悩まされ、娘の誕生で手狭にもなったことから家の購入を思い立った。この物件は敷地が162坪と広く、価格も予算より低め。敷地の半分以上が山だが平地も70坪ほどあり、いろいろできそうな大きな庭があるのが魅力だった。道路よりかなり高い場所にあり、周囲を気にせず暮らせることも気に入った。

リビングの奥をゆるく仕切って子どものスペースに。「子どもはいずれ自立して家を出てしまうと思うので、間取りは夫婦二人の生活を軸に考えました」(ご主人)

平屋の素朴さを残しつつ建物の基礎補強工事から行った

理想通りの平屋だが、建物の傷みはひどく、購入前に建築家の宮田一彦さんに見てもらった。

「屋根の板金は錆びて、壁のベニヤはベコベコ。ひと通り手直しする必要があることと、予測できるコストをお伝えしました」(宮田さん)

既存の天井板をはがして切妻屋根の傾斜を現し、ラワン合板で仕上げた。床は幅の広い無垢のスギ板。室内に残る柱の数を減らすため、既存梁に補強材を加えた。

寝室からもダイニングが近いのは、コンパクトな平屋の暮らしやすさ。漆喰を塗って仕上げた壁・天井を背景に、古建具と既存の柱のヴィンテージ感が引き立つ。

敷地の一部が沈下し、その上の建物は基礎が折れ、10㎝も傾いていた。そこで建物をジャッキアップして基礎コンクリートを打ち直し、水平に戻すとともに強い布基礎に変更。床下・壁・天井に断熱材を充填し、間仕切りや柱を減らしつつ、必要な耐震補強を行った。

「カッコよくしすぎてしまうと照れくさいので、生活の匂いや素朴さを残したかったんです」(奥さま)

玄関は元トイレだったスペースも取り込んで土間を広げた。下駄箱は新たに設置。

構造上撤去できなかったキッチンの柱には、釘を打って袋物を提げている。棚に収まるボックスは、お菓子屋さんのガレージセールで1個50円で買ったもの。

戦後のモダニズム住宅をイメージしたリノベーション

リノベーションのイメージは、戦後のモダニズム住宅を念頭に置きつつ尖り過ぎないよう、「品のいいおばあちゃんが住み続けている家」を目指した。キッチンや洗面台のタイルに10㎝角の白を選んだのも、てらいのなさを求めてのことだ。

戦後のモダニズム住宅のイメージをなぞり、掃き出し窓には障子を新設。上の小窓は元々付いていたもの。ダイニングの円卓はイギリス製アンティーク。

購入した古建具を付けたキッチン。朝、庭を眺めてガーデニング計画を妄想するのが奥さまの楽しみ。「カッコよくならないように」と選んだタイルは10㎝角。

外周に面していない洗面室は、天窓から採光してさわやかに。

ハーフバスを採用し、腰から上をタイルで仕上げた清潔感のある浴室。

数々の古いドアや窓は、濵さんがネットオークションで手に入れたもの。リビングのアルミサッシは、古い木製の窓に付け替え、建てられた当初の姿を取り戻した。

「引っ越して間もないのにずっと前から住んでいる感じがします。設備は新しくて快適ですが、古いものと新しいもののつぎはぎ感がないのは宮田さんのセンス」(ご主人)

リビングにある2枚のドアは、古建具を購入し調整して取り付けた。左が洗面室、右が寝室への入口。
長女の部屋ではリンゴやワインの木箱を本棚にして、絵本を収納。

購入時は正確な築年数がわからなかったが、解体中屋根裏から発見された木札で築60年だとわかった。この先何十年と、老後も住み続けることを目指したリノベーション。昭和の佇まいのまま、100年住宅を目指せるポテンシャルは備わった。

リビングのサイドボードはデンマークのヴィンテージ。

多肉植物好きの夫妻。窓際をインドアグリーンのコーナーに。

建物データ

〈敷地面積〉535.54㎡〈建築面積〉73.65㎡〈床面積〉合計 73.65㎡〈主要構造〉木造〈用途地域〉第一種低層住居専用地域〈既存建物竣工〉1963年〈リノベーション竣工〉2018年〈設計期間〉3ヶ月〈工事期間〉3ヶ月〈設計〉宮田一彦アトリエ〈構造設計〉宮田一彦アトリエ〈施工〉五十嵐工務店

※この記事はLiVES Vol.103に掲載されたものを転載しています。
※LiVESは、オンライン書店にてご購入いただけます。amazonで【LiVES】の購入を希望される方はコチラ

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