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ペットの防災対策、役立つ防災グッズやペット可の避難所について

いまや、子どもの数より多いといわれているペット。共存型のマンションやペットと一緒に泊まれる旅館なども増え、ペットとの暮らしを身近に感じられるようになりました。世話やしつけなど大変なこともありますが、飼い主さんたちは、ペットも大切な家族の一員と大切に育てていることと思います。
ペットを飼っているのであれば、地震や台風などの災害にあった際でも、きちんとペットを守る方法を事前に考えておかなければなりません。そこで、この記事では、ペットの防災対策について解説します。

ペットの防災対策は大丈夫?

まずは飼い主さんたちの、防災対策への意識を調査してみました。

ペットの防災対策、できている人の割合は?

20~70代の男女512人を対象に、「ペットの防災対策はおこなっているか」アンケート調査を実施しました。すると、約8割の方が防災対策について、具体的に行動していないことがわかりました。

ペットと一緒に避難した経験は?

「ペットと一緒に避難をしたことがある」と答えた方は4%と非常に少数でした。日本は地震や台風などの災害が多い国です。しかし避難指示が出るほどの大災害に遭遇することは珍しいため、ついペットの防災対策は怠りがちになってしまうようです。

ペットと避難したことがある

ペットと一緒に避難をされた経験がある方に、避難する際どのようなことが大変だったのか聞いてみました。

    みんなの声
  • 地震で怯えて隠れてしまい、キャリーケースに入ってもらいたかったが思うようにいかなかった。小さいころから有事の際にはキャリーケースに入るようしつけをするのが理想的だが、病院に行く際にも使っていることもあり、キャリーケースを安心できる場所として認識させづらい。(20代/女性)
  • 熊本地震の時、パウチもカリカリもたくさん持って避難し、最終的に動物病院で猫とすごしていましたが、途中から水が不足し物資はオレンジジュースしかなく心配でした。人間はなんでも摂取できるので猫用のお水をもっと持っていくべきだった。(20代/女性)
  • ペットとの避難は認めてもらえたが、避難時3日間の排泄で臭いや場所に困った。(20代/男性)
  • 阪神大震災のとき飼っていたワンちゃんと家族で団地の集会所に避難しました。ワンちゃんも怖がっていて可哀想なのと、犬が苦手な方もいたりするし、犬は話せないので不安だと思うし人間より疲れが出ていると思いました。(30代/女性)
  • 熊本地震で車中泊し犬を狭いゲージに入れて過ごした。(50代/男性)
  • 猫と一緒に避難しましたが、環境の変化で鳴き続けたので、他の人から苦情がでました。できればペットだけは別の場所に避難場所を設けて欲しいです。(50代/男性)

実際に避難場所がペット同伴OKの場合でも、排泄物の処理や鳴き声に困ったりすることが多いようですね。なかには、動物病院で過ごしたという方もいらっしゃいましたが、ペットに持病があるようであれば、あらかじめ預かってもらえるのか確認しておいた方がいいかもしれません。

ペットと避難したことがない

一方、まだ大きな災害がなくペットと避難した経験はないけれど、災害にあった際の対処法を決めているという方に意見を聞いてみました。

    みんなの声
  • 人見知りな子なので、災害時は避難先に行けないと思い自宅での避難を計画しています。災害時の備えは念入りにしています。(30代/女性)
  • 被災しても体育館とかは行けないとおもうので、自宅か車内だと考えている。人間も含め食料備蓄やトイレ問題などは必要だと思う。(30代/女性)
  • いざというときの同行避難のために、普段から3階建てのケージに慣れさせ、ケージが入るSUVの車に乗っています。(40代/女性)
  • 臆病な猫なので避難所は無理だと思います。実家に避難するつもりです。(40代/女性)
  • 拡張機能が有るキャリーバッグや簡易トイレ、1カ月分の食料等は用意している。(50代/男性)
  • ペットを飼いだしてからは自宅での避難対応に甘んじています。(60代/男性)

飼い主さんたちは、ペットの性格も考慮して避難方法を考えているようでした。
もしもの時を考えて、いざというときにペットを預かってくれる親戚や友人を探しておくといいかもしれません。

ペットの安全のために日頃から備えておきたいこと

防災対策といっても難しいものではありません。日常的な心配りが大切なペットの安全を守ります。以下、ペットの安全のためにすぐできることをいくつか挙げましたのでぜひ参考にしてください。

ペットの居場所を把握しておく

いざというときスムーズに避難できるよう、ペットがよく立ち寄る場所を把握しておきましょう。寝床や遊び場、トイレの場所などペットの行動範囲を知っておけば、災害が来てもすぐペットを見つけられます。さらに、ペットが逃げ遅れないよう、居場所周辺の障害物を取り除いておくことも大切です。

基本的なしつけをおこなう

犬の場合は最低限、「吠えない」「急に走り出さない」「むやみに噛まない」などのしつけはしておくべきでしょう。避難時にペットがパニックに陥ったとしても、飼い主のかけ声で落ち着かせられるよう訓練しておいてください。避難先で迷惑をかけないためにも、しつけは重要です。

ペットの健康管理をおこなう

健康を損なった状態だと、緊急時にペットが逃げ遅れたり、連れ出せなくなる可能性もあります。また、災害に遭ってから診察を受けたり薬をもらおうとしたりしても、思うようにいかない場合もあります。
普段からペットの健康には気を配り、適切な治療をしておきましょう。特に夏は熱中症になりやすいので、こまめな水分補給と日差し対策は必須です。

マイクロチップなど迷子対策をしておく

災害時には、ペットと離れ離れになってしまう可能性があります。そのようなときのために、マイクロチップをペットにつけておくケースが増えてきました。マイクロチップを追えば、ペットがどこに行っても探し出しやすくなります。

2022年6月1日に「改正動物愛護管理法」が施行され、ペットショップなどで販売(譲渡)される前に犬と猫にはマイクロチップを装着することが義務化となりました。
すでに飼っている場合にも努力義務が生じるので、大きな災害に合う前に対応しておいた方がいいかもしれません。

ペットの防災グッズを用意する

人間用の防災グッズを家庭に備えておく方が増えている一方で、ペット用の防災グッズも用意している!という方はそこまで多くありません。ペット用の防災グッズも、日常的にストックしておけば避難するときに安心です。避難所でもペットに無理をさせず、健康的に過ごせるでしょう。

これで安心!ペット用の災害グッズ10選

続いて、ペット用の災害グッズとして備えておいたほうがいいものをピックアップしました。避難時に素早く持ち出せるように、決まった場所に置いておくことをおすすめします。

ハーネスやリード

いずれも動物の体に取り付けて、行動をコントロールするための手綱です。
災害時、人間と同じようにペットもパニックになる可能性があります。もしかしたら、驚いて走り出したり暴れたりすることもあるでしょう。ペット自身はもちろん、周囲の安全を守るためにもハーネスとリードは重要です。

迷子札

どんなに気をつけていても、避難の際はペットとはぐれてしまうことがあります。そのようなときのために、普段から首輪に迷子札をつけておきましょう。ペットの住所や飼い主が分かるようになっていれば、再会できる可能性は高くなります。
また、さきほどお伝えしたようにマイクロチップを装着しておくと、万が一ペットが迷子になってしまった際にも見つけやすくなります。まだペットにマイクロチップを装着していないのであれば、獣医師に一度相談してみるといいかもしれません。

ケージやキャリーケース

ケージは側面と床、天井が柵で覆われているタイプの檻のようなもので、キャリーケースはペットと一緒に移動するときに使うかごのことです。
避難所までの移動中に逃げられないためにも、ケージやキャリーケースに入れて移動すると良いでしょう。避難ルートや避難所で、ペットが周囲に迷惑をかけないためにも必要です。

ペットフード、水

避難所では基本的に、物資が不足していると考えておきましょう。人間の食事さえ不十分なとき、ペットに割いている分はほとんどありません。ペットフードや水は、飼い主自身で蓄えておくのが賢明です。避難所に行く際は、最低でも5~7日分のフードを持っていくようにしましょう。人間と同じく、ペットフードもローリングストックしておくと良いかもしれませんね。

ペット用の食器

衛生面を考えて、ペットフードや水を入れる容器も防災グッズに含めておきましょう。外出時にも使えるシリコン製の折りたためるフードボウルなどもあるので、用意しておくと便利ですよ。

トイレ用品(ペットシート・新聞紙・ビニール袋など)

避難所にはペット用のトイレがありません。そのため、飼い主がペットの便や尿を処理するのは最低限のマナーです。ペットシートや新聞紙を使い、周りに迷惑にならないように片づけましょう。犬の散歩と同じ要領で、ビニール袋に便を入れておいて処理する方法もあります。
また、気温や湿度が高い時期には、雑菌が繁殖するためペットの糞尿のにおいがきつくなりがちに。ペットの健康に配慮されたペット用の消臭スプレーや防臭ペットシーツなどもあるので、利用するとよいでしょう。

常用薬

ペットによっては、薬を常用している場合もあるでしょう。避難所でペット用の薬までは手に入りません。ペットの健康を守るために、少なくとも3~4日分の常用薬は防災グッズに入れておきたいところです。

ワクチン接種証明書・動物病院の診察券

避難所によっては、病気のペットを入れてくれないこともあります。そうでなくても、犬や猫と一緒に過ごすことで「病気をうつされたくない」「本当に安全なのか」と疑ってくる人もいるかもしれません。避難所に向かうときは、ワクチン接種証明書や動物病院の診察券も持参しましょう。

おもちゃ

普段から使っているおもちゃも持参すると良いでしょう。なぜならペット用のおもちゃには2つのメリットがあります。
1つ目はストレス解消になるので、ペットが暴れたり精神的に病んだりすることを防げること。そして2つ目は、飼い主自身も避難所でペットと戯れる時間が貴重な癒しになることです。
避難所内では常に一緒にいられるとは限りません。ペットとのコミュニケーションをはかるためにもおもちゃは有効なアイテムですので1~2個用意しておきましょう。

タオルや毛布

念のため、ペット用のタオルや毛布も持っていきましょう。なぜなら避難所では、ペットに配れるほどの余裕がないときもあるからです。また、普段使っているタオルや毛布で家のにおいを感じさせれば、ペットにとっても少しは安心して眠れるかもしれません。

その他

上記以外に、ペット用のおやつがあると便利です。避難所では、ケージやキャリーバッグからなかなか出られないためペットもストレスがたまるでしょう。おやつをあげることでペットのストレスも少しは解消されるかもしれません。
さらに、避難所でもペットの体を清潔に保ってあげなくてはなりません。ペットの体拭きシートやドライシャンプーがあると便利です。
体が汚れているとペット自身も不快を感じるでしょう。毛並みを整えてあげられるブラシで、ケアしてあげればペットも喜んでくれるでしょう。

避難所までのルートを決める

ここからは、ペットと一緒に避難する際の重要なポイントを解説します。具体的に、「持ち運び」「所要時間」「迂回ルート」の3点を見ていきましょう。

避難所までの持ち運びを想定する

ペットと一緒に避難するときは、基本的にお散歩のときのような並走ではなく「持ち運び」での移動となります。自分たちも周囲もパニック状態に陥っているなか、ハーネスやリードでペットを誘導するのは難しい場合が多いことや地面にガラス片などの危険物が落ちている可能性があるためです。そのため、ペットを抱きかかえるか、ケージに入れて避難することになるでしょう。
そのような体勢だと、どうしても移動のスピードは落ちてしまいます。さらに、ペット以外にも多くの荷物を持たなくてはなりません。災害時と同じ量の荷物で予行演習してみると、必要最小限の防災グッズを絞り込みやすくなるはずです。
そのうえで、避難所までのルートに障害物がないか、狭い道で通りにくくないかなど調べましょう。

避難所までの所要時間

次に、避難所までの所要時間を想定します。緊急時には、ペットを連れた状態で少しでも早く避難しなくてはなりません。多くの地域では、家の近所に避難所が設けられています。しかし、ペットを連れて防災グッズを抱えた状態で移動するのは、思っている以上に大変なことです。災害時と同じ条件で、どれくらいの時間がかかるのかしっかり把握しておきましょう。

通行できなかった場合の迂回ルート

予行演習してみると、ペット連れでは最短距離を進めない可能性が生じるかもしれません。そのときは、すぐに別の迂回ルートを考えましょう。迂回ルートを決めるときの基準は「距離」と「通りやすさ」です。迂回するのは仕方ないとして、大幅に距離が遠くなるのは避けたいところ。また、ペットが通れないほどに険しく、狭いルートも厳禁です。安全で、なおかつ通りやすい迂回ルートを考えてください。

避難所での注意点

ペットを避難所に連れてきた後も、気をつけたいポイントはたくさんあります。以下、具体的に注意点を説明していきます

同行避難と同伴避難の違いは?

「同行避難」とは、誰かと一緒に避難所までくることです。一方、「同伴避難」とは、ペットと一緒に避難所まで来たうえ、避難所内でも一緒に過ごせることです。同行避難だけなら、どのような種類のペットでも認めてもらえるでしょう。しかし、同伴避難となれば話は変わってきます。「避難所には入れられない」ペットもいるので要注意です。
避難所のガイドラインは自治体によってさまざまですので、自治体の公式サイトなど確認するとよいでしょう。

同行できるペットには限りがある

そもそも避難所は人間優先の空間であり、ペットに割くスペースがないこともあります。さらに、鳴き声やにおいが原因で、同行を拒否されてしまうケースもあるでしょう。ペットが不潔だったり、疾患があったりしても拒否されやすくなります。そのため、「避難所には必ずペットを連れて行けるわけではない」という前提を頭に入れておきましょう。
また、自治体によって受け入れ可能のペットの種類は異なるため、こちらも事前にチェックしておくと良いでしょう。

避難所での居場所

原則として、ペットはケージやキャリーケースに入れて世話をしなくてはなりません。避難所にはペットが苦手な人、動物アレルギーの人もいるからです。
さきほどの、ペットと一緒に避難した経験がある方の意見にもあったように、病院に連れていかれるというイメージから、ケージやキャリーケースが苦手なケースもあるようです。ケージやキャリーケースが安心な場所と認識させるためにも、日頃から慣れさせておくことが重要です。

また、避難所で狭いケージの中に居続けることはペットにとってもストレスになることでしょう。ペットがストレスをためこまないよう、定期的に散歩へと連れ出してあげることも大切です。
散歩する前に、避難所周辺の道路は安全か調べておくとよいでしょう。道路が陥没していたり、ガラスの破片が落ちていたりするとペットがケガをしてしまう恐れもあります。避難所でペットが安全でいられるために注意するのも飼い主の役目です。

ペットの世話はどうする?

避難所は、地域住民が一時的に生活する場所です。そのため、残念ながら避難所のスタッフはペットの世話までしている余裕はないと考えた方がよいでしょう。
さらに、たいていの場合ペット向けの物資も不足します。避難所では「飼い主自身でペットの面倒を見る」という気持ちで、ペットに必要な物資も、飼い主自身が家から持っていきましょう。

ペットを避難所に連れていけない場合は?

避難所にペットを連れ込めない場合、災害に遭わなかった親戚や友人などに預かってもらわなければなりません。迎えに来てもらうあいだはキャリーケースやケージに入れて、避難所の外に出しておく必要があります。その他、動物病院やペット専用の避難所が臨時で儲けられる場合も少なくありません。避難所でも情報はこまめにチェックし、安全にペットを預けられる場所を探しましょう。

まとめ

災害は私たち人間だけの問題ではなく、ペットの日常も大きく変えてしまいます。ペットも大切な家族なのですから、防災グッズの中にはペット用の道具や食料も含めておき、いざというときにもきちんと世話し続けられるようにしておきましょう。
災害はいつおとずれるかわかりません。避難所の場所やルート、所要時間なども確認しておくことが大切です。ただし、避難所に必ずペットを連れて行けるとは限りません。拒否された場合も想定し、安全に預けられる先もあらかじめ見つけておいてください。
部屋探しをする際には、「ハザードマップ」はもちろん、引越し先の自治体の避難所におけるペットのガイドラインも併せてチェックしておくほうがいいかもしれませんね。

執筆者

小倉ひろ

京都府在住。フリーライター、イベンター。地元で文化事業の運営をしてきた経験から、地方行政に興味を持つ。まちおこし、一次産業についての記事を数多く執筆。近年では愛猫との生活を経て、ペット関係の文章も手掛けている。

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