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災害に強い家の特徴は?地震・火災を対策した住宅の建て方を紹介

日本の住宅は常に災害の危機に晒されています
日本は、地震・台風などの災害が多いため、災害に備えた家づくりが求められます。いつ起きるかわからない災害に備えるためには、災害に強い家を建てることが重要です。複数の災害を想定して対策すれば、日々を安心して過ごせるようになるでしょう。

本記事では、災害に強い家の特徴と災害に強い家を建てるポイントを解説します。また、家を建てるにあたって災害に備えられるおすすめの設備もあわせて紹介。記事を読むことで、災害に強い家の条件と建てるために必要なことがわかるようになるでしょう。

災害に強い家の特徴

災害に強い家の特徴を解説します
災害に強い家の特徴を解説します

災害に強い家の特徴を考えるにあたって、起こりうる災害の種類を想定する必要があります。日本の代表的な災害は、地震・火災、台風などの強風被害、洪水や浸水などの水害です。それぞれに強い家の特徴を詳しく見ていきましょう。

地震に強い家

日本は世界有数の地震大国であるため、地震への対策が重要になります。住宅における地震への強さの基準になるものは耐震等級で、等級は1~3まであり、3が最高ランクです。

耐震等級 目安
耐震等級1
・数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強〜7相当)に対して、倒壊・崩壊しない程度
・数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)に対して、損傷を生じない程度
耐震等級2
・数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強〜7相当)の1.25倍の力に対して、倒壊・崩壊しない程度
・数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)の1.25倍の力に対して、損傷を生じない程度
耐震等級3
・数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強〜7相当)の1.5倍の力に対して、倒壊・崩壊しない程度
・数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)の1.5倍の力に対して、損傷を生じない程度

耐震等級1は、建築基準法の最低基準を満たす耐震性能。耐震等級3は、数百年に一度発生する大地震でも倒壊・崩壊しない水準であり、避難所などの公共施設と同じ基準です。住宅も耐震等級3の耐震等級で建築できることから、地震への強さを重視するなら3に近い水準で建てることを検討しましょう。

また、家の補強には免震構造・制震構造の導入が効果的。免震構造は建物と基礎の間に装置を入れることで、地面の揺れが建物に直接伝わりにくくなります。制震構造はダンパーを取り付け、揺れのエネルギーを吸収して建物への負担を減らす仕組みです。

地震対策が重要な日本であるからこそ、地震に強い家を作るための手段は複数存在しています。

火災に強い家

火災は、日常生活での火災のリスクを避けることが基本ですが、地震などの災害による二次災害や、隣接する建物からの延焼で発生する可能性もあります。個人の意識のみでは、完全な対策は難しいため、万が一火災が発生した場合に、燃え広がらない構造が重要です。

耐火性能を持つ建材を採用すれば、延焼を防ぎやすくなります。例えば、鉄筋コンクリート・鉄骨は火に強い建材です。木造であっても防火処理を施した木材を使用すれば、一定の耐火性を確保できるでしょう。火が回りにくい設計も考える必要があり、防火壁を設ける、隣家と距離を取るなどの工夫も有効です。

家の間取りも重要なポイントのひとつです。万が一火災が発生した際、玄関から避難できない場合に、窓やバルコニーなどの複数の避難経路を確保できるようにしましょう。さらに消火器を常備すれば、家に火が出ても広げない対策に役立ちます。

台風などの強風に強い家

日本の南の海上では台風が発生しやすく7月~10月の台風シーズンには、毎年のように台風による暴風被害が発生します。このような強風被害の対策で重要なことは、耐風性を考えた構造と飛来物による被害の防止です。

建物・屋根の形状は、できる限りシンプルである家のほうが風を受け流しやすく、耐風性に優れます。台風の影響を考えて、建物の外観を設計する必要があるでしょう。また、台風では、飛来物によるガラス破損が発生することも。台風対策に強化ガラスや合わせガラスを採用した家は、被害を防ぎやすくなります。

洪水や浸水に強い家

日本では、低地や周辺に水源がある地域を中心に、洪水・浸水のリスクがあります。浸水が想定される地域以外に建てることが確実な対策です。しかし、さまざまな理由により、リスクのある土地に家を建てざるをえないこともあるでしょう。

平屋の場合、浸水した際に逃げ場がなくなってしまうため、浸水リスクがある地域の建物は2階建て以上が望ましく、寝室やリビングを2階以上に設けると安心でしょう。建物の基礎を通常より高くする工法である高基礎の採用や、住宅を持ち上げて基礎を高くするかさ上げ工事も対策になるでしょう。

以上の対策を取り入れた家が、各災害に強いと考えられます。すべての対策の採用は難しいため、予算の範囲内でバランスよく必要な対策を盛り込むことが重要です。

災害に強い家を建てるポイント

災害に強い家を建てるポイントを解説します
災害に強い家を建てるポイントを解説します

災害に強い家を建てるポイントを見ていきましょう。

安全な土地を選ぶ

災害に強い家を建てるには、できる限り安全な土地を選ぶことから始めます。どれほど強固な建物を建てても、危険な場所であれば、災害の被害に遭うリスクが高まってしまうためです。災害対策を十分に備える場合でも、災害が多発している土地を選ぶことはなるべく避けるようにしましょう。

また、土地の安全性は、立地だけではなく地盤によっても左右されます。。地盤が弱ければ、地震で建物が傾く場合や液状化によって沈下するリスクも。地盤の弱い土地を選ばないことが基本になりますが、地盤改良工事をすれば安全性を高めることは可能です。適切な土地を選べば、被害に遭う確率を大きく減少させられるでしょう。

災害を意識した建物の構造にする

災害に強い家を建てるためには、日本の自然災害リスクに対応できる構造設計が重要です。地震を意識するなら耐震性の高い構造、火災を意識するなら耐火性の高い構造を選びましょう。

工法や技術で災害に強い構造を採用できれば、より効果的な災害対策が期待できます。例えば、免震構造・制震構造などの地震の対策に特化した構造の採用で、リスクを効果的に減らせるでしょう。

災害に備えた間取りにする

災害時の被害を最小限にするには、災害に備えた間取りを考えることが重要です。例えば、水害のリスクがある地域では、寝室やリビングを上階に設けることが基本になります。加えて災害用の水や食料、防災グッズの収納も同じ階に設けられる間取りを考える必要があるでしょう。

また、間取りは複雑な形状であるほど、一か所に負荷がかかりやすく地震による倒壊リスクが高まります。反対に、四角形のシンプルな間取りは、耐震性を維持しやすいでしょう。災害対策を重視するなら、大きな吹き抜けや大開口は避けたほうがよいです。

耐久性を重視して家を建てる

災害に強い家は、長期的に性能を維持できる耐久性を持っていることが前提になります。例えば、建材の選択は、建物の耐久性に大きな影響を及ぼします。優れた建材を選ぶことで複数の災害に強くなるでしょう。

ただし、住宅の耐久性を維持するには、メンテナンスを日常的におこなうことが大切です。そのため、簡易的なメンテナンスで耐久性を維持できる素材を選ぶほうが、長期的な耐久力を期待できるでしょう。家の耐久性が高ければ毎日を安全に過ごすことができます。

災害後を想定した設備を用意する

万が一災害が起きてしまった場合に備えて、設備を用意しましょう。建物の構造だけでは防げないリスクを、設備によって補うことができます。災害が起きた場合は、停電対策・断水対策・備蓄が重要になります。具体的には、電力・生活用水の確保、食料・飲料水や救急用品の収納が必要です。

例えば、雨水タンクを設置すると、飲料水には適しませんが、生活用水の確保ができるため、断水対策になるでしょう。家の構造だけでなく、災害発生後の状況を想定して問題解決のための設備を整えることで、さらに災害に強い家が完成します。

災害に強い家を建てるために役立つおすすめの設備

災害に強い家を建てるために役立つおすすめの設備を紹介します
災害に強い家を建てるために役立つおすすめの設備を紹介します

災害に強い家を建てるために役立つおすすめ設備の一例を紹介します。

太陽光発電・蓄電池

実際に災害が起きた際に、共通して発生する可能性がある事象が、停電です。大規模地震や台風、豪雨災害で電柱や変電所が被害に遭うと、広域的な停電が発生し、復旧までに数日から数週間かかることも。そういった場合の停電対策におすすめの設備が、太陽光発電と蓄電池です。

太陽光発電は、日中に電力を生み出せる設備です。悪天候では使用できませんが、蓄電池で電力を貯めておけば、停電時に安定して電力の確保が可能になります。

蓄電池を備えておけば、停電をしている間も自宅での不便を減らせるでしょう。さらに平時も電気代を削減できるため、経済的なメリットもあります。

シャッター

台風や強風災害による窓ガラスの破損を防ぐうえで、有効な設備がシャッターです。強風のなかで飛来物が当たって窓が割れれば、雨や風が室内に吹き込み、家財道具の被害が広がるだけでなく、建物全体の耐久性が低下することも。シャッターがあれば強い衝撃に弱い窓ガラスを覆って、破損を防げるでしょう。さらにシャッターは防災性能だけではなく、防犯効果と断熱効果を期待できる設備です。外から家の中を覗くことができないようにするだけでなく、室内の空調効率も高められるでしょう。

住宅用スプリンクラー

火災はいかに初動で消火できるかで、被害の大きさが変わります。初期消火に有効な設備のひとつが住宅用スプリンクラー。住宅用スプリンクラーは火災を感知した段階で自動的に稼働し、消火してくれます。

万が一火災が夜間や留守中に発生した場合、火の手に気付くのが遅れ、被害が拡大する恐れも。しかしスプリンクラーがあれば、人が火元に気付く前に対処が可能です。導入にはコストがかかるだけでなく、定期的なメンテナンスが必要になりますが、命や財産を守ることを優先するためにメリットの大きい設備でしょう。

災害に強い家を建てる際の注意点

災害に強い家を建てる際の注意点を解説します
災害に強い家を建てる際の注意点を解説します

災害に強い家を建てるうえで気を付けるべき注意点を見ていきましょう。

ハザードマップを確認する

ハザードマップは、都道府県や市区町村が公開している災害リスク情報を示した地図です。洪水・内水氾濫・高潮・津波・土砂災害・地震時の揺れやすさなど、地域ごとの危険度が色分けされて表示されています。

ハザードマップを見て事前に災害のリスクを知ることで、家の設計・防災設備を考えるうえで役立ちます。例えばハザードマップで家を建てようとしている土地の水害のリスクが高いことがわかれば、基礎を高くするなどの水害対策を強化できるでしょう。
購入前にリスクの少ない土地を選ぶ場合も、すでに購入・建設が決定している土地のリスクを知るためにもハザードマップの確認は重要です。

複数のリスクを総合的に想定する

災害には複数の種類があり、それぞれのリスクに対する対策が必ずしも一致しないことから、複数のリスクを総合的に想定した設計が重要です。地震対策を十分におこなっていても、火災で火がすぐに燃え広がり全焼する家は、災害に強い家とはいえません。

災害ごとに異なる対策を組み合わせることが重要です。ただし、災害リスクは地域によって異なるため、対策の優先度を考える必要があります。低地や水源に近い土地では、洪水の被害に遭う可能性が高くなり、住宅が密集している都市部では延焼による火災のリスクが高まるでしょう。

地域ごとの災害のリスクを確認したうえで、総合的に判断してバランスよく災害対策に取り組みます。すべての対策を取り入れると予算をオーバーにつながるため、予算の範囲内で効率的な対策を立てる意味でも、優先順位を考えることが重要です。

定期点検を欠かさない

災害に強い家を建てることに成功しても、家は年月が経つにつれて劣化します。メンテナンスを怠れば耐震性・耐久性・防災性能は確実に低下していくでしょう。よって、建ててからも定期点検を欠かさず、維持することが重要です。

特に屋根や外壁の劣化、基礎部分のひび割れ、各種設備の動作などを定期的に確認しましょう。点検は建物の安全性を守るだけでなく、資産価値の維持でも有効です。住み続ける限り、災害対策は続けていくものと認識して、災害に強い家を維持するようにしましょう。

まとめ

災害に強い家の建築は、ハザードマップなどを参考にした土地選びから始まり、定期的なメンテナンスで災害に対する強度を維持することで完成します。災害対策のためには、長期的な視点で設計する必要があるでしょう。

災害リスクの少ない地域を選んでも、日本に住む限りは、地震を中心にどこにいても災害に見舞われる可能性があります。災害に過度に怯えることなく、安心して生活するために十分な災害対策を講じるようにしましょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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