建て替えとは?新築・リフォームとの違い、費用や流れ・スケジュールを解説

本記事では、建て替えの定義や新築・リフォームとの違い、費用相場を詳しく解説します。費用を抑える方法や流れも紹介するので、ぜひ参考にして理想の住まいを実現しましょう。
記事の目次
建て替え・新築の定義

住宅を新しく建てる際は、新築と建て替えの言葉がよく使われますが、この2つには明確な違いがあります。それぞれの定義や特徴を見ていきましょう。
建て替え
建て替えは、既存の建物を解体してから新しい家を建てることです。解体工事にともなう手続きや仮住まいが必要で、完成までに時間を要します。
所有している土地で建て替えをおこなう場合は、土地購入費用がかかりません。
新築
新築は、更地に新しく建てる家のことです。解体工事がないため、建て替えよりも工事期間が短い傾向にあります。
建て替えとリフォームの違い
建物全体を解体して新しく建てる建て替えとは異なり、リフォームは建物の部分的な修繕や改修を指します。例えば、外壁塗装やキッチンなど水回り設備の交換が挙げられます。
工事範囲にもよりますが、リフォームは短期間で費用を抑えられることが多いでしょう。建物の老朽化が進んでいない場合や予算に成約がある場合は、リフォームが適しています。
ただし、老朽化が進んでいる場合や大幅な間取り変更が必要な場合は、建て替えのほうが適しているでしょう。
建て替え・新築・リフォームの費用相場
国土交通省「令和5年度・住宅市場動向調査報告書」によると、建て替えにかかる費用の平均は5,745万円。新築の注文住宅で5,811 万円という結果に。
家の間取りや階数、広さによって費用は大きく変わるため、2つの費用を比べたところでどちらがお得かは一概とはいえません。
一般的な一戸建てを想定して比較してみると、建て替え・新築・リフォームそれぞれの費用相場は、以下のとおりです。
工事方法 | 費用相場(地代は除く) |
---|---|
建て替え | 3,000万~4,500万円 |
新築 | 2,500万~4,000万円 |
リフォーム(家全体) | 500万~2,500万円 |
建て替えは解体工事や仮住まいが必要なため、新築よりも費用が高くなる傾向にあります。
リフォームは、既存の家の状態により大きく変動します。一戸建てで耐震改修など構造部分を含めてリフォームしなければならない場合は費用が高くなるでしょう。
建て替えにかかる費用の内訳

建て替えは建築費用だけでなく、さまざまな諸費用がかかるため、以下の費用を考慮しておかなければなりません。おおよそいくらかかるのかそれぞれ解説します。
解体工事費用
解体工事費用は、建て替えをおこなううえで避けられない費用です。木造や鉄骨造、RC造など建物の構造や規模によって変動します。120万~400万円が一般的な費用相場ですが、立地条件や廃材の処理方法によっても、解体工事費用は左右されます。
特にアスベストが使用されている場合は専門的な作業が必要なため、追加費用が発生する可能性が高くなります。また、解体には事前調査が必要なため、その費用も考慮しておかなければなりません。
地盤改良工事費用
建て替えをおこなう際は、地盤改良工事費用も考慮しておいたほうがよいでしょう。地盤の強度が不足している場合は建物の安全性を確保しなければならないため、地盤改良工事が必要です。
費用相場は30万~200万円と幅広いうえに調査しなければわからないため、建て替えを計画する段階では高めに見積もっておくとよいでしょう。
滅失登記
建物を解体したあとは、法務局で滅失登記をおこなわなければなりません。滅失登記とは、建物が存在しなくなったことを登記簿に記録する手続きです。
自分で手続きする場合は1,000~3,000円程度で、土地家屋調査士に依頼する場合は4万~5万円程度の費用が発生します。なお、滅失登記は新しい建物の登記をおこなう前に完了させておく必要があります。
仮住まい費用
現在住んでいる家を建て替える場合、工事中は住み続けられないので仮住まいを用意しなければなりません。建て替えは一般的に完成まで半年以上を要するため、例えば家賃10万円の賃貸住宅を借りる場合、60万円以上の費用がかかります。
仮住まい費用は建て替え期間中の大きな出費になるため、全体の費用に含んでおきましょう。
税金
建て替えの際は、以下の税金が発生します。
- 印紙税
- 登録免許税
- 不動産取得税
契約書を結ぶ際や所有権・抵当権の登記、不動産を取得する際に、それぞれ費用がかかります。各税金を合わせた費用相場は、数万~数十万円が目安です。
建て替えにかかる費用を抑える方法

建て替えをおこなう場合は解体や仮住まいが必要なため、できる限り費用を抑えたいとお考えの方も多いでしょう。ここでは、建て替えにかかる費用を抑える方法を紹介します。
相見積もりをとる
建て替えをおこなう際は、最低でも3社以上のハウスメーカー・工務店に相見積もりをとりましょう。複数社から見積もりをとることで、適正価格を把握できます。
全体の金額だけでなく、見積もりの内訳も確認して同じ条件で比較することで、より価格相場を掴みやすくなります。また、解体工事と建築工事が別の会社の場合は、それぞれ相見積もりをとりましょう。
メーカー標準仕様の設備を選ぶ
メーカー標準使用の設備を選ぶことで、費用を抑えることが可能です。水回り設備のグレードアップや標準仕様外のメーカー採用は、大幅なコストアップになることもあります。
特にキッチンやバスルームは、グレードアップすると数十万~数百万円の差が出ることもあります。本当に必要なオプションだけ選び、あとから交換できる設備は余裕ができた時にグレードアップすることも検討しましょう。
引越しのタイミングを調整する
引越しのタイミングを調整すれば、費用を抑えられます。3~4月や9~10月の引越し繁忙期は料金が高くなるので避けましょう。
引越し費用は時期によって大きく変動することもあるので、タイミングの調整は大きな節約につながります。また、引越し会社も相見積もりをとることで、費用を抑えられる可能性が高まります。
仮住まいの費用を抑える
建て替えで仮住まいの費用は大きな負担になりますが、抑えられるケースもあります。建て替え中の仮住まいサービスを提供しているハウスメーカーもあるので、相談してみましょう。
親族宅に一時的に住まわせてもらえる場合は、大幅に費用を抑えられます。勤務先に社宅や寮があれば、仮住まいができないか相談してみるのも選択肢のひとつです。
補助金・助成金を活用する
建て替えでは条件を満たすことで、国が用意している以下の補助金を利用できます。
補助金・助成金制度 | 補助金額 |
---|---|
子育てグリーン住宅支援事業 | 最大160万円 / 1戸 |
戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ ハウス(ZEH)化等支援事業 |
最大90万円 / 1戸 |
出典:国土交通省「住宅の省エネ化への支援強化に関する予算案を閣議決定!」
出典:環境省「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」
補助金・助成金の申請条件(例:省エネ性能向上)はあるものの、満たしていれば建て替え費用を抑えられます。ほかにも地方自治体が補助金・助成金を提供しているケースもあります。
各自治体のホームページで確認しましょう。
解体費用を節約する
解体費用は、建て替えで大きな出費のひとつです。解体前に不用品を処分しておくことで、解体会社から請求される産業廃棄物処分費を節約できます。
ハウスメーカーと提携している解体会社に依頼するのではなく、自分で探すことでも費用を抑えられるかもしれません。
建て替えのメリット

建て替えにはさまざまなメリットがあります。それぞれひとつずつ見ていきましょう。
住み慣れた環境で暮らしを維持できる
建て替えの場合、以下のようにこれまでと同じ暮らしができます。
- 近隣との人間関係を維持できる
- 子どもの通学環境や生活圏を変えずに済む
- 買い物など日常生活の利便性をそのまま維持できる
- 地域のコミュニティとのつながりを保てる
住み慣れた環境で暮らしを維持できるのは、建て替えで一番のメリットではないでしょうか。
自由度の高い間取り・デザインにできる
建て替えは既存の建物を解体して新たに建てるため、新築と同様に間取りやデザインを自由に決められます。リフォームと違いデザインの制約がないため、好みの外観や内装デザインを実現できるのは建て替えのメリットです。
資産価値が上がる
建物が新しくなることで資産価値が上がるのもメリットでしょう。木造住宅の場合は22年で建物の価値がゼロになってしまいますが、建て替えることで資産価値となり、将来手放す場合に高く売却できます。
新たな引き込み工事の費用を抑えられる
建て替えをおこなう場合は、すでに整備されている水道や電気、ガスなどのインフラを活用できるため、新たな引き込み工事の費用を抑えられます。
建て替えのデメリット

ここからは、建て替えのデメリットを解説します。
解体・撤去費用がかかる
建て替えは既存の建物を完全に解体・撤去するため、その費用が発生します。建て替えをおこなう場合に避けられないデメリットです。
新築よりも工期が長くなることがある
建て替えは解体工事が必要なため、新築よりも1~2カ月程度工期が長くなる傾向にあります。一般的には半年~1年程度の期間を要するため、余裕を持って計画を立てましょう。
建築基準法の制約がある
既存の建物が古い場合、建て替えをおこなう際に建築基準法の制約があります。
例えば、建ぺい率や容積率の規制が厳しくなっている場合や、接道義務のルールを満たしていない場合は土地や建物が狭くなる可能性があります。最悪の場合、建物を立てられないこともあるでしょう。
仮住まいが必要になる
建て替えでは仮住まいが必要になるのも、大きなデメリットです。
仮住まいのための賃貸住宅や引越しに費用が発生します。また、仮住まいを探す手間と時間もかかります。
建て替えの流れとスケジュール

建て替えの際、どのように進めるべきかわからない方も多いのではないでしょうか。ここからは、建て替えの流れとスケジュールを解説します。
建て替えの計画を立てる
建て替えを検討する際、まずは計画を立てます。予算や時期、どのような家に建て替えたいのかをある程度決めておくと、スムーズに進められます。
ハウスメーカー・工務店を選ぶ
建て替えの計画を立てたら、ハウスメーカー・工務店を選びます。建てたい家の性能や雰囲気、予算がマッチする会社を複数比較して検討するとよいでしょう。
設計プランの打ち合わせをする
ハウスメーカー・工務店が決まれば計画した内容を詳しく伝え、設計プランの打ち合わせをします。
打ち合わせは何度もおこなうことになりますが、妥協せず細部まで決めましょう。現状だけでなく将来のライフプランも考慮することが、長く快適に暮らせる家を建てるコツです。
建築請負契約を結ぶ
建て替える家の仕様がある程度決まれば、建築請負契約を結びます。契約書には工事内容や費用、工期、支払条件などが明記されます。
契約内容を確認し、不明点は質問しておきましょう。
設計プランを決める
建築請負契約を結んだあとは、設計プランを詰めていきます。内装・設備の色や仕様、コンセントの位置など細かい部分を決めていきましょう。
住宅ローンに申し込む
住宅ローンを利用する場合は、このタイミングで本審査に申し込みます。
万が一審査に通過できなかった場合を想定して、工事請負契約の際にローン特約をつけておくと安心です。ローン特約とは、ローンの本審査に通過できなかった場合に契約を白紙に戻す条項です。
仮住まいに引越す
解体工事がはじまる前に、仮住まいへ引越します。
住む期間が短いと物件がなかなか見つからない可能性があるため、早めに準備しておきましょう。ハウスメーカーや工務店が仮住まいを用意してくれる場合は、探す手間が省けます。
解体工事を開始する
仮住まいへ引越したあと、解体工事が始まります。解体工事の期間は既存の建物の構造や規模によりますが、1週間~1カ月程度が一般的です。
音や振動が発生して近隣に迷惑をかける可能性があるため、トラブルにならないよう工事前にあいさつを済ましておきましょう。
地盤調査をする
解体後は新しい建物を建てる前に地盤調査をおこないます。地盤の強度が不足している場合は、地盤改良工事をしなければなりません。
建て替えの工事を開始する
地盤に問題がない場合、もしくは地盤改良工事を終えたら、いよいよ建て替え工事を開始します。
工事中は定期的に進捗を確認し、現場へ通うことをおすすめします。現場の職人とコミュニケーションをとることで、細かな要望をくみ取ってもらえるかもしれません。
引き渡しをする
建て替え工事が完了したら家全体をチェックし、問題がなければ引き渡しです。この時点で住宅ローンの融資が実行され、工事費用の残金を支払います。
建て替えに関するまとめ
それでは、今回の建て替えをテーマにした記事をまとめていきます。
建て替えとリフォームの違いは?
建て替えは既存の建物を解体してから新しい家を建てることで、リフォームは建物の部分的な修繕をおこなうことです。老朽化が進んでいる場合や大幅な間取り変更を希望する場合は、建て替えが適しています。
建て替えにかかる費用の内訳は?
建て替えにかかる費用は、解体工事費用・地盤改良工事費用・滅失登記費用・仮住まい費用・税金の5つが挙げられます。建て替えを計画する段階で予算に含んでおきましょう。
建て替えのメリット・デメリットは?
建て替えは住み慣れた環境で暮らしを維持できるほか、間取り・デザインの自由度の高さや資産価値の向上などがメリットです。一方で、解体・撤去費用や建築基準法の制約、仮住まいが必要になる点はデメリットでしょう。
建て替えは計画から引き渡しまでしなければならないことが多く、解体や仮住まいの費用が発生するデメリットがあります。しかし、住み慣れた場所に新しく建てる家で過ごせるのは大きな魅力ではないでしょうか。この記事を参考にしてスムーズに建て替えを進め、快適な住まいを実現しましょう。
注文住宅を建てる