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注文住宅の頭金はいくら必要?相場と頭金なしで建てる際の注意点

注文住宅を購入する時、多くの人が住宅ローンを検討するかと思います。その際、頭金を入れたほうがいいのか、また、どれくらい頭金を用意すればいいのか迷う人も少なくないのではないでしょうか。

そこでこの記事では、注文住宅を購入する際に用意する頭金について解説します。実際の相場や頭金なしで注文住宅を購入できるか、また、頭金を用意するメリット・デメリットを詳しくまとめました。さらに、頭金の金額によって毎月返済額がどれくらい変わるのかシミュレーションします。

記事の目次

注文住宅の頭金とは

注文住宅の頭金を用意するとどのような利点があるのでしょうか
注文住宅の頭金を用意するとどのような利点があるのでしょうか

注文住宅の頭金とは、注文住宅を購入するために住宅ローンを組む際、自己資金として用意する先払いの現金のことです。頭金を用意することで、住宅ローンの借入額を減らせます。これにより、毎月の返済を軽減することが可能です。

注文住宅の頭金は平均いくら?

注文住宅を建てる際、頭金はどれくらい用意すればよいのでしょうか
注文住宅を建てる際、頭金はどれくらい用意すればよいのでしょうか

注文住宅を購入するために用意する頭金の平均は、どれくらいになるのでしょうか。今回は、住宅金融支援機構が実施した「2023年度フラット35利用者調査」の結果をもとに、注文住宅の建物のみの場合と、土地付注文住宅の場合で、頭金の平均をご紹介します。

注文住宅(建物のみ)

2023年度フラット35利用者調査によると、注文住宅を購入する際の所要資金の全国平均は、3,863万円でした。そのうち手持金(頭金)として用意した金額の全国平均は699万円です。注文住宅の購入に要した資金のうち、約18%を頭金として用意したことになります。

注文住宅(土地を含む)

同じく2023年度フラット35利用者調査によると、土地付注文住宅を購入した際の所要資金の全国平均は4,903万円でした。そのうち手持金(頭金)の全国平均は473.8万円です。土地付注文住宅の購入資金のうち約9.6%を頭金として用意したことになります。

注文住宅を購入する際にかかる諸費用は?

住宅ローンを購入する際には諸費用はいくらかかるのでしょうか
住宅ローンを購入する際には諸費用はいくらかかるのでしょうか

注文住宅を購入する際には、土地の購入や建物の新築工事のほか、住宅ローンの契約時にも、さまざまな諸費用がかかります。ここからは、代表的な諸費用を紹介します。

土地購入

注文住宅を建築する土地を購入する際に必要となる諸費用には、売買契約書の印紙税、不動産取得税、登録免許税などの税金があります。また、不動産会社へ支払う仲介手数料、登記の手続きを依頼する司法書士への報酬があります。

建物の新築工事

注文住宅の新築工事に要する諸費用には、建築工事契約書の印紙税や不動産取得税、登録免許税などの税金があります。さらに、登記関連を依頼する司法書士への報酬、地盤調査や建築確認申請費用、設計監理費などがあります。このほかライフラインの引き込み工事費や地鎮祭、上棟式などの費用も必要です。

住宅ローン

住宅ローンの契約時には、印紙税や抵当権設定のための登録免許税などの税金、司法書士への報酬のほか、融資手数料やローン保証料、団体信用生命保険料、火災保険料などを金融機関へ支払う必要があります。

注文住宅の諸費用の詳細は、下記の記事をご覧ください。

注文住宅は頭金がなくても購入できる?

頭金がなくても住宅ローンは組めるのでしょうか?
頭金がなくても住宅ローンは組めるのでしょうか?

かつては、住宅ローンを利用する時に頭金を用意するのが一般的でした。しかし、現在では頭金がなくても住宅ローンを組めるようになっています。また、金融機関によっては、物件価格の100%を借りられるフルローンや、住宅ローンと諸費用を合算した額を借り入れできるオーバーローンを取り扱うところもあります。

このように頭金がなくても注文住宅を購入することが可能です。しかし頭金があれば借入額を減らし、毎月の返済負担も軽減できます。頭金を入れるかは、月々の返済シミュレーションをしたうえで決めることをおすすめします。

注文住宅にかかる頭金・住宅ローン・返済額のシミュレーション

住宅ローンの返済額についていくつかのパターンでシミュレーションしていきます
住宅ローンの返済額についていくつかのパターンでシミュレーションしていきます

ここで、注文住宅にかかる頭金の額により住宅ローンの毎月返済額がどのように変わるのかをシミュレーションしてみましょう。

今回のシミュレーションでは、共通する試算条件を以下のように設定しています。

  • 全期間固定金利
  • 金利1.5%
  • 元利均等返済
  • ボーナス払いなし
  • 返済期間35年

シミュレーション例1:総予算2,000万円

物件価格2,000万円の注文住宅を購入する場合の頭金、住宅ローン借入額、毎月返済額のシミュレーション結果は以下のとおりです。

頭金 住宅ローン借入額 毎月返済額
0円 2,000万円 61,236円
200万円 1,800万円 55,113円
400万円 1,600万円 48,989円
600万円 1,400万円 42,865円
800万円 1,200万円 36,742円
1,000万円 1,000万円 30,618円

頭金を200万円増やすごとに、毎月の返済額を約6,000円減らせます。この借入額であれば、頭金を増やせば毎月の返済額が賃貸の家賃よりも少ない金額にできそうです。

シミュレーション例2:総予算3,000万円

物件価格3,000万円の注文住宅を購入する場合の頭金、住宅ローン借入額、毎月返済額のシミュレーション結果は以下のとおりです。

頭金 住宅ローン借入額 毎月返済額
0円 3,000万円 91,855円
200万円 2,800万円 85,731円
400万円 2,600万円 79,607円
600万円 2,400万円 73,484円
800万円 2,200万円 67,360円
1,000万円 2,000万円 61,236円

3,000万円を借り入れると毎月の返済額が家計に影響を与えそうですが、頭金を200万円増やすごとに毎月の返済額を約6,000円減らせます。賃貸の家賃と比較しながら、家計に負担を与えない程度の返済額を計画するとよいかもしれません。

シミュレーション例3:総予算4,000万円

物件価格4,000万円の注文住宅を購入する場合の頭金、住宅ローン借入額、毎月返済額のシミュレーション結果は以下のとおりです。

頭金 住宅ローン借入額 毎月返済額
0円 4,000万円 122,473円
200万円 3,800万円 116,350円
400万円 3,600万円 110,226円
600万円 3,400万円 104,102円
800万円 3,200万円 97,979円
1,000万円 3,000万円 94,855円

借入額が4,000万円になると毎月の返済額は高くなり、家計に占める住居費の割合が増えます。現在の家賃と同額程度であれば返済できそうですが、毎月の負担を減らしたい場合は頭金を入れることを検討するとよいでしょう。

シミュレーション例4:総予算5,000万円

物件価格5,000万円の注文住宅を購入する場合の頭金、住宅ローン借入額、毎月返済額のシミュレーション結果は以下のとおりです。

頭金 住宅ローン借入額 毎月返済額
0円 5,000万円 153,092円
200万円 4,800万円 146,968円
400万円 4,600万円 140,844円
600万円 4,400万円 134,721円
800万円 4,200万円 128,597円
1,000万円 4,000万円 122,473円

借入額が5,000万円になると毎月の返済額がかなり増えるので、家計への負担が大きくなりそうです。できれば頭金を入れて、毎月の返済負担を減らすのがよいかもしれません。

シミュレーション例5:総予算6,000万円

物件価格6,000万円の注文住宅を購入する場合の頭金、住宅ローン借入額、毎月返済額のシミュレーション結果は以下のとおりです。

頭金 住宅ローン借入額 毎月返済額
0円 6,000万円 183,710円
200万円 5,800万円 177,586円
400万円 5,600万円 171,463円
600万円 5,400万円 165,339円
800万円 5,200万円 159,215円
1,000万円 5,000万円 153,092円

借入額が6,000万円になると毎月の返済額が大幅に増えます。場合によっては、現在の家賃よりも負担が増えるかもしれません。可能であれば頭金を入れて、少しでも毎月の返済負担を減らすことをおすすめします。

注文住宅で頭金を用意するメリット・デメリット

頭金を用意することには、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか
頭金を用意することには、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか

注文住宅を購入する際、頭金を用意するメリットとデメリットを説明します。

頭金を用意するメリット

注文住宅の購入で住宅ローンを組む際、頭金を用意することで、次のようなメリットが得られます。

  • 毎月の返済額を減らせる
  • 借入額を減らせる
  • 利息分の支払いを減らせる
  • 住宅ローンの審査に通りやすくなる

なんといっても一番のメリットは、毎月の返済額を減らせることです。返済額が減れば、家計の負担を抑えられ、家計に余裕が生まれるため、急な出費にも対応できるでしょう。また、借入額を減らせるので、その分利息の支払いを減らせます。それに、頭金を入れて借入額を減らすことで、比較的ローンの審査にも通りやすくなるでしょう。

頭金を用意するデメリット

住宅ローンを組む時に頭金を入れるメリットは大きいですが、反対にデメリットになる部分もあります。

  • 頭金を貯めるのに時間がかかるので、注文住宅の購入が遅くなる
  • 住宅ローンの完済時期が遅くなる
  • 住宅ローンの金利が上がる可能性がある

頭金の目標額を高く設定していると、貯まるまでに時間がかかり、注文住宅を購入する時期が遅くなります。また、頭金が貯まるのを待つことで住宅ローンの完済年齢が上がり、定年退職を過ぎてもローンが残る場合があるかもしれません。さらに購入タイミングが遅くなると、場合によっては住宅ローンの金利が上がる可能性があります。

注文住宅の頭金を預金・贈与で支払う際の注意点

貯金や贈与で頭金を払う際の注意点とは?
貯金や贈与で頭金を払う際の注意点とは?

ここでは、注文住宅の頭金を預貯金や両親や祖父母などから受けた贈与で支払う際の注意点を解説します。

生活資金は残しておく

その時点で持っている預貯金をすべて頭金に使ってしまうのはおすすめしません。病気やケガで働けなくなるなど、事情により収入が大きく減少することがあるかもしれないので、もしもの場合に備えて生活費の6カ月分は預貯金で残しておきましょう。

将来に備えて預貯金もする

生活していると、他にもまとまったお金が必要になる時があるかもしれません。特に、住宅ローンの返済と子どもの教育費が必要になるタイミングが重なるケースは多いようです。近い将来、教育費など他にまとまったお金が必要になる場合は、そのお金を残せるよう預貯金の計画を立てましょう。

入居費用がかかることも考慮する

注文住宅を購入すると、入居する際にさまざまな費用がかかります。例えば、新居で必要になる家具・家電、カーテン、生活雑貨などの費用、新居への引越し代なども別途準備が必要です。

住宅取得資金贈与の非課税制度の活用を検討する

注文住宅を購入する際、両親や祖父母から資金援助を受けられる場合があるかもしれません。その時は「住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税措置」の利用をおすすめします。

これは、父母や祖父母など直系尊属から住宅を新築、取得、増改築するための資金を援助してもらった場合、一定の要件を満たせば、贈与された資金のうち以下の金額までにかかる贈与税が非課税になる制度です。

  • 省エネ等住宅:1,000万円まで
  • その他の住宅:500万円まで

非課税措置の適用期間は、2024年1月1日から2026年12月31日までです。父母や祖父母などから注文住宅の購入資金を援助してもらう時は、この非課税制度の利用を検討するとよいでしょう。

住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税措置の詳細は、以下の国税庁ホームページでご確認ください。

国税庁│No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

注文住宅を頭金なしで建てる際の注意点

頭金なしで注文住宅を建てる際に気を付けるべきことは?
頭金なしで注文住宅を建てる際に気を付けるべきことは?

ここでは頭金を準備せず注文住宅を購入する際の注意点をご紹介します。

諸費用は現金一括払いになる

原則として、諸費用は住宅ローンに含みません。また、諸費用は現金による一括払いとなります。頭金を用意しない場合でも、現金で諸費用を用意する必要があります。

諸費用ローンは金利が高くなる

金融機関によっては、現金で諸費用を用意できない人に向けて諸費用ローンを提供しているところがあります。ただし、住宅ローンに比べると金利は高くなります。また、住宅ローンとは別にローンを組むことになるため、月々の負担が増える点は留意しておきましょう。

フルローン、オーバーローンの違いを理解する

フルローンとは、頭金を用意せず、物件価格の全額を借り入れるローンのことです。諸費用は別途、現金で用意します。反対に、オーバーローンとは諸費用を組み込んで物件価格以上の金額を借り入れるローンのことです。フルローンやオーバーローンを利用したい時は、取り扱う金融機関を事前に調べておきましょう。

注文住宅で頭金が少ない場合は「繰り上げ返済」がおすすめ

繰り上げ返済のメリットは?
繰り上げ返済のメリットは?

繰り上げ返済とは、毎月の返済額とは別に、前倒しで返済額の一部または全部を返済することです。繰り上げ返済の資金はすべて元金に充てられるので、利息分の支払いを減らせます。

準備できる頭金が少ない場合、頭金が貯まるのを待ってから住宅ローンを組むよりも、頭金が少なくても住宅ローンを組んで、返済中に資金を貯めて繰り上げ返済に回したほうが総支払額を減らせます。なぜなら、繰り上げ返済は支払利息を減らす効果があるからです。

毎月ローンを返済しながら貯蓄をするのは大変ですが、家計状況が許せば繰り上げ返済を上手に利用することをおすすめします。

注文住宅の頭金に関するまとめ

注文住宅の頭金をテーマに記事をお届けしてきましたが、今回のまとめです。

注文住宅の頭金の平均は?

「2023年度フラット35利用者調査」によると、注文住宅の建物のみを購入する場合の頭金は、平均が699万円で、購入価格の約18%になります。また、土地付注文住宅の場合、頭金の平均は473.8万円で、購入価格の約9.6%となっています。

注文住宅は頭金なしでも購入可能?

注文住宅は頭金なしでも購入できます。ただ、頭金を入れたほうが借入額を減らせるので、家計の負担は抑えられます。頭金なしで購入する場合は事前に返済シミュレーションをして、家計への影響を確認しておくことをおすすめします。

注文住宅の頭金を用意するメリットとデメリット

注文住宅の頭金を用意すると、借入額が減ることで毎月の返済額が抑えられるので、利息分の支払いが減り、ローンの審査に通りやすくなるメリットがあります。

ただし、頭金を用意するまでに時間がかかるため、注文住宅を購入するタイミングが遅くなり、場合によっては金利が上がったり、ローンの完済が定年退職を過ぎたりするデメリットもあります。

注文住宅を購入する際、住宅ローンの頭金は用意したほうが返済の負担が軽くなるのでおすすめです。ただ、最近では頭金を入れずに住宅ローンを組めます。
頭金を入れない場合は返済シミュレーションをして、毎月の返済額が家計に負担をかけないか確認しましょう。また、頭金を入れる場合は、預貯金のすべてを頭金に使ってしまうのではなく、もしもの時に備えて生活費の半年分と、教育費をはじめ近い将来必要になる資金を残しておきましょう。

前佛 朋子

執筆者

前佛 朋子

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者 家計コンサルティングZEN 代表

以前ライターだった頃、専門分野を持とうと考え、興味のあった金融知識を活かせるファイナンシャル・プランナーの資格を取得。Webコラムやメルマガなど金融関連記事を執筆するかたわら、家計見直しやライフプラン、保険見直しなどの相談業務を行う。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。保険や金融商品を売らないファイナンシャル・プランナーとして活動中。

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