テーマ:ご当地物語 / 愛知県西尾張地方

やっぱ赤だがね

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読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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 車を駐車し鳥居をくぐると、其処彼処に「串カツ、どて、ビール」などと書かれた、提灯やら暖簾が見られる。川魚料理、取り分けナマズの蒲焼なんかも有名である。今回竜男達は金ピカトイレで有名な玉屋へ入った。家族四人、立食いでなく店内で頂くことにした。混雑していたが、運良く、ちょっと待って座ることが出来た。串カツの味噌とソース、どて焼き、とそれぞれ十本づつ頼んだ。ビールも頼んだ。やがて注文の品が運ばれてきた。言い出しっぺの竜男が真っ先に、サクッとしたころもに赤い味噌を纏った、串カツを口に運んだ。それからビールをグイッと喉にながす。
「やっぱ味噌だがね」と竜男の口から言葉が出た。そして、串の先にキャベツを刺して食べた。
 梅雨に入った頃、用事で新幹線に乗って東京へ行くこととなった竜男は、ホームできしめんを食べた。久しぶりだった。美味かった。蒸し暑い梅雨の最中、辛い物が食べたくなった竜男は、家族を連れて台湾ラーメンを食べに行った。これもまた久しぶりだった。辛かった。美味かった。スープが赤かった。
七月下旬四人は、糸子の実家がある隣街で毎年開催される、七夕まつりへと足を運んだ。車でさっと気楽に行ける距離にあるが、駐車場の事なども考え、なんとなし今回は電車に乗った。急行であっと言う間に目的の駅に着いた。普通に乗っても然程かからない。それぐらいの場所にある。
 正面からパッと見立派だが、其の実薄っぺらな駅ビルを東に出ると、大勢の祭り客で賑わっていた。太陽が照りつける。
「お母さん、熱い、、、」駅前の道を商店街の方へ渡ろうと、信号待ちする人混みの中、楓が言う。
「夏だから」糸子が当然を、短な言葉で返す。
「いやあ、それにしても熱いよなあ」竜男が楓を味方する。
「はやく帰ろうね」来たばかりだと言うのに。既に松一は帰りたいと見える。
 信号が青に変わり、四人は人混みに紛れ、横断歩道を渡る。ずらっと数多くの屋台が出ている。食べ物や色々な匂いが入り混じり、ゲロ臭い。
「お母さん、くさーい、、、」
「ほんと早く帰ろうね」
「せっかく来たんだから、一通り飾りとか見ていきましょうよ」
「そうだよな、せっかく来たんだからな。おい、なんか屋台で買ってやるぞ。なんか食べたいものとかないか?」
「僕、どっか店入って食べたい」
「熱いし、わたしもそれが良い」
全く乗り気でない二人の子供をなんとか促し、商店街のアーケードのなか吹き流しや飾り付けを見て歩いた。

やっぱ赤だがね

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