テーマ:ご当地物語 / 愛知県西尾張地方

やっぱ赤だがね

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 さてと、席についた竜男はメニューを眺める。何種類ものモーニングがある。ランチサービスもある。一体何なんだ?とセット内容を調べる。どちらかと言うとモーニングサービスのほうが、お得感がある。気がする。だけどなんでわざわざ、モーニングとランチとを分けるのだ。訳が分からない。よくよくセット内容を精査したところ、モーニングは各種飲料にサービスで食事が付き、ランチは各種食事にサービスで飲料が付くと理解した。理解した後、一体何なんだ?と再び、竜男は首を捻った。そして、「どうでもいいや」に帰着した。
 どれにしようかと色々悩んだ末、竜男はモーニングのBセットをオーダーすることに決めた。先ほどのウエートレスが側を通りかかったので、呼び止めた。
「モーニングのBセット、飲み物はホットコーヒーで頼む。コーヒーは食後によろしく。あ、あと味噌汁は赤でね」
 Bセットとは飲み物代にプラス五十円で、焼きそば、おにぎり、味噌汁、おしんこ、緑茶、がついてくるモーニングサービスである。味噌汁は、赤か、合わせか、選べる。無論竜男は、赤をチョイスした。ウエートレスは注文を言葉に繰り返し確かめた。彼女が最後、味噌汁は赤で、と確認すると直ぐ彼は、そう赤で、と赤を殊更強調して返した。
 食事を終えコーヒーを飲み、竜男は昼のモーニングを終えた。直ぐには席を立たず、雑誌をぱらぱらめくっていると、最後の最後に昆布茶のサービスが出てくる。梅昆布茶であった。彼の好物である。竜男は梅昆布茶を御代わりしてから店を出た。

  年度末、子供達が終業式を終え通知表を持って帰ってきた。これで次年度から松一は小学六年生、楓は小学三年生となる。通知表を見ると、二人とも二学期より成績が上がっていた。先生からのコメントも良いものだった。ご褒美に二人を、どこか外食にでも連れて行ってやろうと、竜男と糸子は考えた。
「お前たち頑張ったから今日の夕飯は外に食べに行こうと思う。何が食べたい?遠慮なく言ってみろ」
「僕ココイチのカレー食べたい」
「おいおい松一、ココイチかよ。ほんと遠慮しんでいいんだぞ」
「そうよ。それなら楓は何か食べたいものない?何でもいいのよ言ってごらん」
「わたし若鯱屋のカレーうどんか、あんかけスパが良い」
「はっ、カレーうどんにスパゲティかよ。スパイシーだね。もっとこう他にないのか?焼肉とか寿司とかフレンチとか」
「じゃあ僕、うなぎが食べたい」
「おっ、いいねえ。いいんじゃない、ひつまぶしといこめいか。で、楓はどう思う?」

やっぱ赤だがね

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