6月期
すぐりの卵
「なあに? 泣いてるの?」
すぐりの左手が、僕の右手をそっと握った。年がら年中冷たい手が、陽だまりに触れているかのようにじんわりとぬくもっている。これが、あの子の手のぬくもりか。熱に溶かされて、内側から湧き出るもので身体が満たされるのを感じた。熱いものが喉元まで溢れて、ほろほろと涙がこぼれる。
すぐりはおかしくなってしまったのかもしれない。こんなに変なことを言われて納得しそうになっている僕も、どうかしているのかもしれない。
でも。それでもいいと思った。
あの子は確かに、僕たちの子だ。
すぐりの卵