テーマ:ご当地物語 / 箱根

すぐりの卵

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読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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「なあに? 泣いてるの?」
 すぐりの左手が、僕の右手をそっと握った。年がら年中冷たい手が、陽だまりに触れているかのようにじんわりとぬくもっている。これが、あの子の手のぬくもりか。熱に溶かされて、内側から湧き出るもので身体が満たされるのを感じた。熱いものが喉元まで溢れて、ほろほろと涙がこぼれる。
すぐりはおかしくなってしまったのかもしれない。こんなに変なことを言われて納得しそうになっている僕も、どうかしているのかもしれない。
でも。それでもいいと思った。
あの子は確かに、僕たちの子だ。

すぐりの卵

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