テーマ:お隣さん

隣人田中さん

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読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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「ご飯食べた?」
「まだ~。でも、これからバイト!」
田中さんのご飯食べたかった。無念。
「そっかぁ。残念。」
「また、一緒に食べようね。」
「うん。」
何となく隣同士のせいか、常に距離感計りながら過ごしてしまったのが、今更ながら惜しく感じた。田中さんは、そんな私を気に止める感もなく、マイペースなのが有り難かった。
「またね、ミスミ。」
いつもの、優しい笑顔だ。
「うん。またね。」
田中さんは、自分の部屋へ入っていった。私はアパートの駐輪場へ向い、自分の自転車に乗りバイトへ向い走り出した。

途中、感傷に浸る間もない自分の生活に、ちょっと自嘲的な笑いが込み上げた。いつかは、ゆったり時を過ごす日々を送れる様になりたい。田中さんの部屋みたいな空間で、もっと広いところがいいな。
寂しさで胸に少し痛みを感じつつも、未来の楽しみを描くと心が踊った。夜道のアスファルトを照らしながら、ペダル踏みしめ、私は加速した。
夜風が、気持ちいい。確かに隣人田中さんは、私の歴史の1ページに深く刻まれた、奇跡のお隣さんであった。

またね。田中さん。ありがとう。

隣人田中さん

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