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ひとり暮らし

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読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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 部屋の解約も、引越しもバカみたいに簡単だった。荷物を車に積んでしまうと、うす茶色のカーテンと、安っぽい蛍光灯の照明だけが残って、私が住んでいた痕跡はあとかたもなくなった。電気ポットとテーブルと座布団とブランケットはリサイクルショップに持って行った。全部で2,500円になったので、その日の晩ご飯はすき焼きにした。夫も子どもも私もたくさん肉を食べた。
 今でも時々、あのアパートの前を通ると思い出す。四畳半のなかにあった私のすべてを。そして、窓の外に埋まっているマグカップに入ったネズミを。
 私は、いつかまたどこかでひとり暮らしをするだろうか。そのときがとても楽しみで、私はそらおそろしい。

ひとり暮らし

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