空が一面暗くなって、黒紫色に渦巻き出した。これはもうそういうことだろうとセイタカアワダチ村のみんなは合意した。魔王が復活したのだ。急いで、勇者さまがこの村にやってくるのに備えなければならない。
善明は義理の家族と共に箱根の観光名所、大涌谷を目指す。旅行の目的は流産を経験した妻すぐりの心の傷を癒すこと。大涌谷の売店で見知らぬ少女に手を握られたすぐりは、その少女こそが自分たちの子どもではないかと言う。真偽は確かではないけれども、若い夫婦は空の下で失った子どもに別れを告げる。
冬の北海道で暮らす「私」は、ある雪の日、家に迷い込んできた虫を見つける。湖の下にあるという、その虫が住む「宮廷」。そこを抜け出し、骨の折れる長旅をして、地上に出てきた虫が欲しかったものは…。
「わかばニュータウン」の開発とともに設置されたすべり台が見守る、町の始まりそして終わり。少女は気づかずりぼんを落とし、少年はたえず結び続ける。町は老い、人は巣立ち、すべてが消え去ったかのように思えた「夢のあと」で、すべり台が見たものとは。
ある日、私は父と過ごした神戸の記憶を思い出していた。どうしてか私の中で父と神戸は表裏一体の存在であった。回想と現実の中から編み出される真実とは・・・
鈴花は愛読していたweb小説の作者ダイキに興味を持つ。そして自分も同じ小説投稿サイトに地元鎌倉を舞台とした作品を書き始めた。何の接点もないはずのダイキも鎌倉を舞台とした作品を書き始める。交差する二つの物語。主人公と作者が次第に重なっていく。