6月期
家と街と父と
私は勘違いをしていることに気が付いた。我が家がここにあるから父が帰ってくるのだと思っていた。私は学校へ行くと、当たり前のように三階まで上り、一番奥の自分の教室へと足を向ける……それに似たものだと思っていた。そうじゃなかった。みんながいるから帰ってくるんだ。みんながいるから家があるんだ。人がいるから街があるんだ。
そっと戸を閉め、私は静かに部屋へと戻り、私は私が眠るためのベッドへと体を預けて、目を閉じた。
鍵盤の上を歩いたみたいに階段は小刻みに音を鳴らし、私を目覚めさせた。
部屋のレースカーテンから部屋に光が差し込んでいるのを見て、ああなるほど、と思った。お母さんや弟が目覚めたときには、もう姿を消している。
みし、みし、みし、みし、みし、みし――ガチャン。
また、いつも通りの生活が始まった。
家と街と父と