6月期
ラビリンス
私は空を見上げた。まだ僅かに赤みの残る黄昏の空に、弱弱しいながらも精いっぱい煌めく星が四つ並んでいた。
あのあといくら検索しても、あの奇妙な企画のウェブサイトを探し出すことは出来なかった。優勝者が誰だったのかも分からないが、藤城翁ではないことは確かだ。今日も我が家の右隣から陽気なサックスが聞こえてくる。
冷静に考えれば、東京の高級住宅地にあんな広い敷地を確保できるものだろうか。しかもそれをゲームの賞品として無償で譲渡するなど正気の沙汰ではない。今思えば怪しいことだらけである。小心者のきらいのある私たち夫婦が、何故あんな突拍子もない話に熱狂してしまったのだろうか。
今となっては、もしや夢だったのではと思うこともある。真実はわからないが、今も私のスマートフォンには折れ目のついた家族写真が仕舞われている。
ラビリンス