テーマ:一人暮らし

シンデレラリミット

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読者賞について

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読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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どうしてそんなに飛び続けるの?
それとも何か探しているの?
ねぇ、私の髪にも蝶々がいるのよ。髪留めだけど。
明日つけるの。
ふわふわふわ。蝶は舞う。高く、高く舞い上がる。
「あなたはいいわね、かわいくて」

□■Garden 【Pieris rapae】23:59□■□■□■□
「あなたはいいわね」
そんな台詞を背中ではねのけモンシロチョウは月と戯れる。でも、いつまでもそうしては
いられない。今だけ。もう少しだけ月光浴を楽しんだら、いかなければね。
小奇麗なだけの小さなマンション。全部屋八畳1Kで、換気扇も小さく駐車場もない。
でもエントランスは吹き抜けでオートロック、バスルームは広めで浴室乾燥機付き。
そしてモンシロチョウが舞う程度の生垣。
でも、彼女にとってはそれは旅立つための場所。小さくても。たとえどれだけ小さくても。
やがて蝶は旅立つだろう。
どこかに行き着くところがあるのだから。この、夜の間に。
朝まではまだまだ長い。時刻は24時。遠い遠いどこかの国で、今日が始まる鐘が鳴る。

シンデレラリミット

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