犬のしつけはいつからできる?しつけの基本や順番などを解説
新たに犬を家族に迎えた方、これから迎えたいと考えている方も少なくないでしょう。一般社団法人ペットフード協会によると、2021年の全国の新規飼育頭数(推計)犬が39万7,000匹、猫は48万9,000匹となりこれまでにないほどの増加を見せています。
ただし、ペットを飼うということは、決して短期的な取り組みではありません。
特に犬は寿命の長い動物なので、迎え入れる際には10年、15年と、遠い将来のことまでしっかり考えるべき一大決心をしなければなりません。犬と家族が快適で楽しく暮らし、周囲の方や犬のお世話を依頼する方に迷惑や危険を及ぼすことのないよう、犬のしつけについて基本的な内容を知っておきましょう。
記事の目次
犬のしつけはなぜ必要?
犬のしつけと聞くと、警察犬や大型犬など、周囲に恐怖や危険を感じさせる可能性のある一部の犬にだけ必要な行為と考えている方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、トイプードルやチワワのように片手で軽々と抱きあげることのできる小さな犬であれば、しつけは必要ない、簡単なしつけだけで十分だと誤解をしている方もいらっしゃると思います。しかし実際には、どのような犬にもしつけが必要です。
そもそも、なぜ犬のしつけが必要なのかを考えてみましょう。犬のしつけが必要な理由には、以下のようなものが挙げられます。
- 騒音トラブルを防止するため
- 周囲に危険や不快感を与えないため
- 犬が原因となる交通事故やトラブルを回避するため
- 犬嫌いな方へ不快感や負担を与えないため
つまり犬のしつけは、人間と犬がともに暮らすうえで欠かせない大切な約束ごとなのです。
私たちも日々の暮らしや仕事の中に、たくさんの約束ごとがあるものです。お互いがスムーズかつ快適に暮らすために、これを守ることが常識とされています。犬も人間社会でともに暮らすのですから、人間と同じ約束ごとを守らなければなりません。
人間社会にはどんなルールがあるのか、どのような場面で守らなければならないのかを、犬に教えることが「犬のしつけ」です。つまり、犬のサイズや種類に関わらず、すべての犬にしつけが必要となります。これは子犬でも保護犬でも、小型犬でも大型犬でも同じこと。犬を飼う家族には、しつけへの十分な予備知識と、しつけにかける時間や費用、体力が求められます。
犬のしつけはいつからできる?
「犬のしつけは、いつから始めるべきなのかわからない」
「まだ小さな子犬を叱るのは可哀そう」
「何度教えても、なかなかしつけを覚えてくれない」
このようなご家族の声が、しつけ相談の場ではたびたび聞かれます。犬のしつけの絶対的な基本は、「暮らしはじめた日」から開始することです。犬が自宅に到着したその日からしつけをはじめることが、結果的に家族と犬の両者にとって、もっともストレスフリーな結果を招きます。
犬のしつけは、叱ることや厳しく制限を課すことだけではありません。褒めること、ご褒美のおやつをもらえること、家族と一緒に楽しむこともしつけです。つまり、しつけをはじめることは可哀そうなことではありません。可哀そうなしつけとは、誤った方法で犬を叱り、怯えさせ、体罰を与える行為です。
では、なぜ犬のしつけを「暮らしはじめた日」からはじめるべきなのでしょうか。
例えば、私たちが知人の家を訪問する場面を想像してみてください。初めて訪問する場所では地図を調べて向かい、室内ではトイレやキッチン、室内の物の置き場所を家主に確認するでしょう。家主から案内されたトイレを来客用と理解し、使用します。
しかし、数回同じ家を訪問したあとで「トイレは別の場所を使用して欲しい」、「訪問中の過ごし方を変えて欲しい」と家主からいわれたら、戸惑いを覚えるのではないでしょうか。
この考え方は犬も同じです。暮らしはじめてから数日、もしくは数カ月はトイレの場所は自由気ままでよしとされ、家の中での無駄吠えやイタズラも、子犬や環境に慣れていないという理由ですべておとがめなしで暮らす。しかし、数カ月したある日からトイレの場所を1カ所に限定され、家の中では吠えてはいけない。
これまでのようにトイレの場所を勝手に犬が決めたら叱られ、大声で吠えると家族にお仕置きをされるような場面で、犬が家族の想像する以上の戸惑いを感じるのも当然です。
家族にとって「今日からしつけをはじめる」「暮らしはじめてから1カ月が経った日」であっても、犬にはそのタイミングが理解できません。ある日、いきなり暮らし方のルールがガラッと変わるのですから、これでは何度教えても覚えてくれないという結果を招くのも当たり前でしょう。
このような戸惑いを予防するために、犬のしつけは暮らしはじめた初日からはじめるのが適切です。
子犬に必要なしつけは?
では、実際に子犬を飼いはじめたらどのようなしつけが必要となるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
生活環境
子犬にとって新しい家で暮らしはじめるということは、未知の世界に足を踏み入れるほどの恐怖と不安でいっぱいです。家族は子犬のペースを尊重しつつ、見守りながら新しい暮らしでの約束ごとを子犬に教えていきましょう。
新しい暮らしに慣れる
子犬は環境の変化が苦手で、想像以上のストレスを抱えます。このストレスは、食欲不振や下痢などの体調面の変化だけなく、夜鳴きなど精神面でも変化をもたらします。家族に迎えてから数日、数週間、数カ月と、環境に慣れるまでに要する期間は犬によって異なるもの。この期間、夜間や留守中に大声で鳴き続ける、「夜鳴き(夜泣き)」という行為が続く場合があります。
夜鳴きを解消する、万能な方法はありません。家族とのコミュニケーションや触れ合いの時間、日中の十分な運動などを繰り返すことで、少しずつ新しい環境に慣れさせてあげてください。
家族の顔を覚える
子犬が一日でも早く新しい暮らしに慣れるためには、家族の顔を覚えさせることも大切なしつけの1つです。暮らしはじめから数週間~1カ月程度は、家族以外の人を家に招いたり、子犬を他人に預けたりせず、家族が誰で、どのようなお世話してくれるのかを覚えさせましょう。
自分の名前を覚える
犬に名前を付けたら、名前を呼ばれる意味もあわせて理解させましょう。愛犬の名前を呼び、振り向き、家族の元へ駆け寄るよう呼び戻しのしつけを繰り替えします。おもちゃやフード、おやつなどを見せながら名前を呼ぶと効果抜群です。名前を呼ばれるたびに家族の顔を見る習慣が付いていると、しつけの習熟度があがるうえ、屋外での事故防止の効果にも期待できます。
自身の生活エリアを覚える
サークルの場所や食事をする場所、トイレの場所などだけでなく、家の中で立ち入り禁止の場所はどこかなど、犬に生活エリアを覚えさせます。特に、キッチンは拾い食いやゴミ箱のイタズラなどの危険が多い場所なので、子犬のうちから立ち入り禁止エリアであることを認識させましょう。
トイレの場所を覚える(トイレトレーニング)
トイレは犬の行動範囲内、食事する場所から数歩でたどり着ける場所に設置します。子犬のうちはサークル内をベッド、トイレ、食事をする場所と区切り使用すると、トイレトレーニングがスムーズに進みます。
人間に慣れさせる
犬が人間社会で暮らすうえで何より大切なしつけは、人間を過度に警戒しないことです。人間に触れられる、抱っこされる、行動を制限されることは必要なことであって、危険なことではないと認識させます。
触れられることに慣れさせる(ボディコントロール)
しつけやお手入れ、トリミングなどをスムーズに済ませるためにも、日ごろから犬の体に積極的に触れるよう心がけ、少しずつ警戒心を解いていきましょう。ただし、犬は以下の場所が急所であり、条件反射的に望遠意識が働きます。
- 口周り
- 頭部
- 爪先
- 喉
- 尾
- 腹部
これらの場所は無理強いしたり突然触れたりすることで、むしろ犬の警戒心を増大させてしまう危険があります。そのため、様子を見つつ触れることが大切です。
コマンドを覚えさせる
ともに暮らすうえで、お互いの意思疎通のために共通の言語が欠かせません。この言語を「コマンド」といい、家族と犬とのしつけのうえでの合言葉と理解しておきましょう。
待て
飛びつきや脱走などを防止できるうえ、家族が犬に急かされずに行動ができ、安全確保に欠かせないしつけです。
おすわり
興奮や無駄吠えを制止する際に効果的な指示です。散歩中は交差点など立ち止まるときにお座りさせることで、他者とのトラブル防止につながります。
ふせ
犬は伏せた状態では、大声で鳴き続けることができない骨格構造をしています。そのため、興奮時や無駄吠えの抑止に効果的です。
おいで
飼い主の元へ自ら戻るしつけが身についていると、屋外での危険回避、日常のお世話、さらにはドッグスポーツなど様々な場面で活用できます。
ハウス
自らハウスに戻ることができれば、危険回避はもちろん、イタズラ防止にも効果的です。
屋外・家族以外の人間・他犬に慣れさせる
散歩ルートや近所の公園、交通量の多い道路、コンビニやカフェなど、家族にとって当たり前の場所も子犬にとっては未知の世界です。もはや、家の中とはまるで別の世界といえるでしょう。だからこそ、何度も繰り返し体験させることで、恐怖心を払拭していくことが大切です。
お散歩に慣れさせる
ワクチンを打ち終わったら、いよいよお散歩デビューです。初めてのお散歩では屋外のにおい、気温、騒音、家族以外の人間、もちろん他犬の存在など、溢れんばかりの情報が一気に子犬に届きます。意気揚々と歩けないのも当然と理解し、まずは抱っこやキャリーバッグで屋外を見学することからはじめ、子犬の様子を見ながら徐々に歩けるよう挑戦していきましょう。
ドッグランを体験させる
生後半年未満の子犬にとって、他犬と触れ合い、遊ぶ機会は何より効果的な社会化トレーニングです。積極的にドッグランへ足を運び、さまざまなサイズ、年齢、性格の犬と触れ合う機会を作りましょう。犬同士でじゃれ合いながら遊ぶ経験を通じて、子犬は他犬への恐怖心を解消でき、無駄吠えや威嚇行動の抑止につながります。
トリミングを体験させる
トリミングサロンを利用し、シャンプーやカット、爪切り、耳掃除などを経験しましょう。家族以外の人間の指示を聞くこと、体に触れ、お手入れされることをこの時期に経験しておくと、将来のお手入れがスムーズになります。また、トリマーへの噛みつきや危険行為の抑止にもつながるでしょう。
成犬でもしつけはできる?
子犬からではなく、飼育放棄や多頭飼育崩壊などが原因で、保健所や保護犬シェルターに保護されている犬を迎える場合もあるでしょう。この場合、過去にしつけを受けたことがない、あるいは受けていても忘れてしまっていることも少なくありません。
成犬のしつけは、子犬と比べれば難しくなります。これについては、十分に理解しておきましょう。まずは信頼関係を築くことが優先されますし、保護犬などは過去の経緯などにより、怯えたり無駄吠えしがちだったりすることもあります。しつけが難航する場合には無理せず、ドッグトレーナーなどに任せるのも一つの方法です。
犬を上手にしつけるポイントは?
犬は人間の3~7歳程度の知能を持つといわれています。個々の性格や運動能力、これまでの環境、遺伝的要素など、さまざまな要因からしつけの覚えにも差が生じるでしょう。ただ、しつけはともに暮らすうえで必要な約束ごとです。そのため、安易に諦めず、根気強く教え続けましょう。しつけの効果をより確実にするためのポイントを、ここでご紹介します。
家族間でしつけのルールを決める
子犬が戸惑うことのないよう、家の中で出入り禁止の場所、噛んではいけないものなど、決まりごとは家族間でルールを統一しましょう。
無暗にしつけのルールを変更しない
いったん決めたルールはもちろん、サークルやトイレの場所が何度も変わると、犬は戸惑いを覚えます。しつけが十分にできたと実感するまで、無闇なルール変更は控えましょう。
良いこと、悪いことを明確に伝える
家の中には、犬にとって危険な場所や物がたくさんあります。犬が安全に暮らせるよう、してはいけないことは明確に叱り、しつけを守れたときは大いに褒めるなど、わかりやすく犬に伝えましょう。
犬のしつけがうまくいかない時は?
犬のしつけは、犬それぞれで対処法が異なります。間違った方法でしつけを続けると、問題行動を悪化させる原因になりかねません。犬のしつけがうまくいかず、不安や問題を感じた場合には、早急にドッグトレーナーや獣医師などの専門家にアドバイスを受けましょう。
まとめ
犬と快適に楽しく暮らすためには、周囲に迷惑とならないよう犬のしつけが絶対的な必要事項です。しつけをはじめるタイミングやしつけるべき内容をしっかりと意識し、根気よくしつけに取り組みましょう。
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