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不動産投資における雑費の目安はいくら?雑費になる費用や計上する際の注意点を押さえよう

不動産投資において雑費をどれくらい計上しても問題ないのでしょうか
不動産投資をしていると、細々とした出費が発生するでしょう。しかし、帳簿を付けても問題ないのか、迷うこともあるのではないでしょうか。また、どれくらいの金額なら問題がないのか、気になる方もいるかもしれません。そこで本記事では、雑費にあたる費用や目安、雑費を計上する時の注意点などを解説します。適切に雑費を計上することは、節税対策にもなるため、ポイントを押さえておきましょう。

不動産投資における雑費とは

不動産投資における雑費とはどのような費用なのかを解説します
不動産投資における雑費とはどのような費用なのかを解説します

まず、不動産投資において、雑費とはどのような費用が該当するのかを見ていきましょう。また、よく混同される経費との違いも解説します。

雑費とは

不動産投資における雑費とは、不動産所得を得るために必要不可欠な経費でありながら、主な勘定項目には当てはらないものです。具体的には、交通費や通信費、新聞図書費、消耗品費など。不動産所得を得るための直接的な費用ではないものの、事業に必要な間接的な費用が雑費として認められています。これらの費用は計上できるため、確定申告の際に所得から控除でき、節税効果が期待できます。

雑費と経費の違い

不動産投資において、雑費と経費の違いは何なのでしょうか。経費とは、不動産所得を得るために直接的に必要となる費用のことです。国税庁のホームページでは、必要経費に算入できる金額は、次のように記載されています。

(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額

(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

引用:国税庁「No.2210 必要経費の知識

また、確定申告の際に提出しなければならない収支内訳書には、経費として次のようなものが挙げられています。

  • 給料賃金
  • 減価償却費
  • 貸倒金
  • 地代家賃
  • 借入金利子
  • 租税公課
  • 損害保険料
  • 修繕費

これらに当てはまらず、不動産投資において必要な経費を雑費としています。つまり、雑費は経費のなかの一つで、不動産所得を得るために間接的に必要な費用といえるでしょう。それぞれどのような費用なのか、のちほど詳しく解説します。

不動産投資の雑費として計上できる費用

不動産投資の雑費として計上できる費用を解説します
不動産投資の雑費として計上できる費用を解説します

本章では、どのような費用を雑費として計上できるのかを詳しく解説します。節税効果を上げるためにも、しっかり把握しておきましょう。

旅費交通費

不動産投資における旅費交通費は、雑費として経費計上できます。不動産投資では、物件探しや不動産会社への訪問など、さまざまな場面で移動をともなうでしょう。これらの移動にかかった費用は、雑費として計上することが可能です。具体的には、次のようなものが挙げられます。

  • <旅費>
    ・宿泊代
  • <交通費>
    ・電車代
    ・バス代
    ・タクシー代
    ・駐車場代
    ・ガソリン代

例えば、遠方にある物件を見学するために、ホテルに宿泊した場合。この時の宿泊代も旅費交通費として計上できます。ただし、プライベートの旅行を兼ねた際には、不動産投資に関するもののみ計上しなければなりません。

また、物件の見学をはじめ、不動産会社や金融機関との打ち合わせをするために支払った交通費も、計上が可能です。しかし、公共交通機関の場合、領収書が発行されないため、必ず記録するようにしておきましょう。

通信費

通信費も、不動産投資における雑費として計上が可能です。例えば、不動産会社や金融機関とやりとりをする際、電話やメールなどを利用するでしょう。この電話料金やインターネットの利用料金などを計上できます。通信機器を不動産投資のみに利用している場合は、全額計上が可能ですが、プライベートと併用している場合、不動産投資に関連するもののみを計上しなければなりません。

この際は、事業分のみを計上するために、費用を事業割合で分ける家事按分を利用します。例えば、不動産投資でインターネットを利用する時間が1日1時間、週に5日の場合。一週間でインターネットを利用する時間は、5時間となります。一週間は168時間のため、約2%となります。

家事按分をすることで、プライベートと併用している場合でも、不動産投資に関する費用のみを計上することが可能です。ただし、適切に計上しなければ、意図的に税金の負担を軽くするために計上しているとみなされるおそれも。そのため、合理的な範囲で計上するようにしましょう。

接待交際費

不動産投資における接待交際費も、雑費として計上が可能な費用です。例えば、次のようなケースが考えられます。

  • 不動産会社との契約交渉の際に、昼食を一緒にした時の飲食代
  • 内見希望者に渡した交通費

接待交際費はその性質上、プライベートな支出に結びつきやすく、節税のための不正利用のリスクが高いとされています。回数が多かったり、あまりに高額な場合、税務調査が入るおそれも。そのため計上する際には、目的や取引先など、領収書とともに記録するようにしましょう。

新聞図書費

新聞図書費も、不動産投資における雑費として計上が可能な費用です。安定した不動産投資をおこなうためにも、最新の市場情報や法改正などの把握は欠かせません。具体的には、情報収集をするための専門誌や書籍の購入費、セミナーの参加費などが挙げられます。繰り返しになりますが、計上できる費用は不動産投資に関するもののみとなります。趣味で購入した小説や漫画、自己啓発本などの購入費は計上できないため、注意しましょう。

消耗品費

不動産投資における消耗品費も、雑費として計上ができます。不動産投資では、事務作業が必要になる時もあるでしょう。その際に使用する備品の購入費用は計上が可能です。具体的には、次のようなものが挙げられます。

  • パソコン
  • コピー機
  • コピー用紙
  • インクカートリッジ
  • ボールペンなどの文房具
  • 名刺

プライベートでの使用を目的としている場合や、過剰な場合は認められません。なお、購入費用が10万円を超える場合は、固定資産として減価償却が可能です。税制を理解して、どちらのほうが、より節税効果を得られるのか考えてみましょう。

その他の費用

上記に挙げた費用以外でも、不動産所得を得るために必要となった費用であれば、雑費として計上できる可能性があります。具体的には、次のようなものが挙げられます。

  • 収益物件に設置した防犯カメラの購入費用
  • 収益物件の鍵交換費用
  • 確定申告を依頼する際の税理士への支払報酬料

繰り返しになりますが、不動産投資をするうえで必要なものであると客観的に認められなければなりません。判断に迷う場合は、税理士や税務署の職員などの専門家に相談しましょう。

不動産投資の経費として計上できる費用

不動産投資の経費として計上できる費用を解説します
不動産投資の経費として計上できる費用を解説します

不動産投資の経費として計上できる費用を6つ解説します。正しく申告するためにも、忘れないようにしましょう。

減価償却費

建物や設備などの固定資産は、時間が経つと、価値が減少していきます。そのため、購入した年に全額を費用として計上すると、その年に大きな損失が発生し、他の年との収支バランスが崩れてしまいます。そこで、固定資産の耐用年数に応じて、購入にかかった費用を経費として計上できるものが減価償却費です。減価償却費を計上することで、課税所得を圧縮し、節税効果を期待できるでしょう。耐用年数は建物の構造によって異なります。具体的には次のとおりです。

建物の構造 法定耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
鉄筋コンクリート造(RC造)
47年
金属造(4mmを超えるもの) 34年
木造 22年
木骨モルタル造 20年

(2007年4月1日以降取得のもの)
参考:国税庁 減価償却資産の償却率表(PDF)

なお、土地は価値が減少しないため、減価償却の対象とならない点に注意しましょう。

委託管理費用

委託管理費用も、不動産投資における経費として計上できます。委託管理費用とは、管理業務を管理会社に委託する際にかかる費用のこと。管理会社は、入居者の募集や契約、家賃の回収などのさまざまな業務を、オーナーに代わっておこないます。これらは不動産投資に直接関わる必要経費であることから、経費として計上が可能です。管理会社からの明細書や領収書はきちんと保管しておきましょう。

損害保険料

不動産投資における損害保険料も、経費として計上が可能です。損害保険料の具体例として、火災保険や地震保険の保険料が挙げられます。火災保険は収益物件を購入する際、金融機関から加入を求められることが一般的です。加入することで、火災によって収益物件が損害を受けた場合に、補償してくれます。

地震保険の加入は任意ですが、日本は地震大国のため、いつ被災するかわかりません。万が一の際に、加入しておくと安心でしょう。これらの保険料は、複数年分をまとめて契約した場合、1年分に分割して計上します。例えば、5年分の保険料が20万円だった場合、1年に計上できる金額は4万円となります。毎年継続して計上できるため、忘れないようにしましょう。

租税公課

租税公課も、不動産投資の経費として計上ができる費用です。具体的には、次の税金が挙げられます。

<不動産の購入時にかかる税金>

  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 印紙税

<不動産の所有時にかかる税金>

  • 固定資産税
  • 都市計画税

これらの税金は、経費として計上が可能なため、領収書を保管しておきましょう。なお、所得税や住民税は経費として計上できません。なぜなら、所得に対して課税されるものであり、不動産投資において必要な経費ではないからです。どの税金が経費として計上できるのか、きちんと理解しておきましょう。

投資用ローンの利息

不動産投資において計上できる経費として、投資用ローンの利息が挙げられます。なお、投資用ローンの元本は経費に当たりません。投資用ローンは、不動産投資をおこなうために金融機関から借り入れたものであり、返済しなければなりません。また、収益物件の購入費用は減価償却費として計上するため、経費とすると二重計上になってしまいます。そのため、経費計上できる費用は、投資用ローンの利息のみである点に注意しましょう。

修繕費

修繕費も、不動産投資における経費として計上できる費用の一つです。修繕費かを判断する基準は、国税庁のホームページに次のように記載されています。

(1)おおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良などであるとき、または一つの修理、改良などの金額が20万円未満のとき。

(2)一つの修理、改良などの金額のうちに資本的支出か修繕費か明らかでない金額がある場合で、その金額が60万円未満のときまたはその資産の前年末の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下であるとき。

引用:国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定

いずれかに該当する場合は、修繕費として経費計上が可能です。なお、資本的支出とは、資産の価値を増やしたり、使用可能期間を延長させたりするような支出のこと。具体例としては、用途を変更するために模様替えをしたり、収益物件に避難階段を取り付ける際にかかった費用などが挙げられます。

不動産投資における雑費の目安

不動産投資における雑費の目安はどれくらいなのでしょうか
不動産投資における雑費の目安はどれくらいなのでしょうか

不動産投資における雑費の目安は、区分マンション1室で年間25万円程度とされています。雑費の上限は、明確に定められているわけではありません。また、不動産投資によって得られる所得は収益物件の規模によって異なります。規模が大きければ、その分必要となる雑費も多くなるでしょう。しかし、不動産投資において必要不可欠な費用であると認められるためには、客観的に証明できなければなりません。領収書を保管し、適切に記録するようにしましょう。

不動産投資で雑費を計上する時の注意点

不動産投資の雑費は適切に計上するようにしましょう
不動産投資の雑費は適切に計上するようにしましょう

交通費や新聞図書費など、不動産投資において必要なものであれば、雑費として計上が可能です。それでは、雑費を計上する時に気を付けなければならないことはあるのでしょうか。本章では、不動産投資で雑費を計上する時の注意点を解説します。

雑費は適切に計上する

不動産投資における雑費は、適切に計上するようにしましょう。過剰な場合には租税回避のための行為とみなされ、税務調査が入るおそれがあります。例えば、接待交際費や消耗品費は、プライベートの支出と混同してしまうケースも。接待交際費であれば、目的や取引先など、不動産投資に関連するものであると客観的に証明できるよう、記録しておきましょう。

不動産投資に関するもののみ計上する

雑費として計上する際は、不動産投資に関するもののみ計上しましょう。繰り返しになりますが、プライベートでの支出や他の事業に関する費用は計上できません。インターネット料金や電話料金など、プライベートと併用している場合は、家事按分をしましょう。家事按分する割合は、どのような理由をもとに設定したのか、根拠を提示できるように記録しておきましょう。また家事按分の割合は、年間を通して同じでなければなりません。不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。

不動産投資の雑費に関するよくある質問

不動産投資における雑費に関するよくある質問をまとめました。

不動産投資で雑費が多いとバレる?

不動産投資で雑費が極端に多い場合、税務署から詳しく調べられるおそれがあります。税務署は、申告内容の正確性や合理性をチェックしています。特に雑費は金額が曖昧になりやすく、不正に利用される可能性があることから、注意深く見ています。例えば、年間の不動産収入が100万円で雑費が50万円計上されている場合、適切に計上されているのか、税務署から詳細な内訳を要求される可能性があるでしょう。雑費を計上する際は、根拠となる領収書などの資料を保管しておき、必要に応じて税理士などの専門家に相談しましょう。

不動産投資で雑費100万円は多い?

不動産投資における雑費の金額は、収益物件の種類や規模などによって大きく異なります。そのため、「雑費100万円は多い」と断言することはできません。しかし、一般的な相場を大きく上回る場合は、税務調査の対象となる可能性があります。金額ではなく、その金額が不動産投資の規模や内容に見合ったものになっているかが重要です。また領収書など、根拠となる資料をしっかり保管しておきましょう。判断に迷った場合は、税理士などの専門家に相談し、適切な処理をおこなうようにしましょう。

不動産投資の雑費に関する裏ワザはある?

不動産投資の雑費に関する裏ワザはありません。むしろ、不正な経費計上は脱税行為とみなされ、ペナルティが科せられるおそれがあります。雑費や経費を適切に計上し、正しく申告することが、節税対策となるでしょう。

まとめ

本記事では、不動産投資における雑費について解説しました。雑費とは、不動産所得を得るために不可欠ですが、収支内訳書の勘定項目に該当しないものを指します。具体的には、交通費や新聞図書費、接待交際費など。区分マンション1室あたり、年間25万円程度が雑費の目安とされています。しかし、あくまで目安であり、収益物件の種類や規模によって異なるでしょう。金額そのものではなく、不動産投資の規模や内容に見合ったものになっているかが重要です。客観的に証明できるよう領収書を保管し、記録しておきましょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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