不動産管理に資格は必要?賃貸不動産経営管理士は意味ない?資格の必要性やメリットを解説

本記事では、不動産の管理業務にはどういったものがあるのか、管理に関する資格はどのようなものがあるのかを解説します。また、適切な不動産管理をするうえで大切なポイントも解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
記事の目次
不動産管理とは

まず不動産管理にはどのような業務があるのでしょうか。本章では、不動産管理の業務内容について詳しく解説します。
不動産管理の業務内容
不動産管理は、大きく「建物管理」と「賃貸管理」の2つに分けられます。それぞれどういった内容なのか見ていきましょう。
建物管理
建物管理とは物件そのものの管理のことで、具体的には、次のようなものが挙げられます。
- 建物や設備のメンテナンス
- 清掃業務
- 長期修繕計画の策定
建物は築年数が経つと劣化していきます。定期的にメンテナンスや清掃をおこない、入居者が快適に過ごせる物件を維持することで、高い入居率が期待できます。
賃貸管理
賃貸管理とは、入居者とのやりとりがメインとなる管理のことです。具体的には、次のようなものがあります。
- 入居者の募集
- 賃貸契約の手続き
- 家賃の集金
- 修繕工事の手配
- クレーム対応
- 退去の立ち会い
賃貸管理では、入居者が入居してから退去するまでの管理をおこないます。戸数が多いほど、対応しなければならない業務も増えます。例えば、入居者から修繕の依頼があった場合、すぐに対応できれば満足度も高くなるでしょう。しかし、なかなか対応できなかった場合、入居者の不満が募り退去してしまう可能性もあります。入居者と直接関わる部分であるため、迅速で丁寧な対応が求められます。
不動産管理の資格を取得する必要性とメリット

不動産管理には建物管理と賃貸管理があり、さまざまな業務内容があることがわかりました。それでは、不動産の管理に関する資格を取得する必要性はあるのでしょうか。また、資格を取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか。本章では、この2つの疑問についてそれぞれ解説します。
不動産管理に関する資格を取得する必要性
不動産投資において、管理に関する資格の取得は必須ではありません。しかし、大規模な不動産投資や複雑な物件を扱う場合は専門的な知識が必要となり、資格の有無が大きな差となる可能性があります。
資格を取得するメリット
不動産投資において管理に関する資格は必須ではありませんが、資格を取得することでさまざまなメリットが得られます。具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
専門性が向上する
不動産管理に関する資格を取得すると、不動産に関する専門知識が深まり、より的確な判断ができるようになります。
例えば、家賃を滞納されたときの対応や、賃貸経営にはどういった税金がかかるのかなど、知識があれば適切な対応や節税対策が可能になるでしょう。管理を委託する場合でも、知識があることで適切に管理されているかが判断できるようになります。資格を取得していれば、管理の良し悪しが判断でき、よりよい不動産管理会社の選択もできるでしょう。
取引先との交渉が有利になる
不動産管理の資格を取得すると、さまざまな取引先との交渉がスムーズになり、有利な条件で取引を進められます。
もし資格がなく専門的な知識がなければ、オーナーにとって不利になるような取引を持ちかけられるかもしれません。また、持ちかけられても、「プロが言っていることだから」と信頼し、騙されてしまうおそれもあります。資格を取得すると、取引先から専門的な知識を持っているオーナーとして認識され、信頼関係を築きながら、安定した賃貸経営が可能となるでしょう。
不動産管理における重要な3つの国家資格

不動産管理に関する資格は多種多様です。本章では、特に重要な3つの国家資格について解説します。
宅地建物取引士
試験日 | 10月第3日曜日 |
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試験の方法 | 50問・四肢択一式による筆記試験 |
受験資格 | 誰でも受験可能 |
受験手数料 | 8,200円 |
合格率 | 15~18% |
宅地建物取引士は「宅建」とも呼ばれ、不動産取引の専門知識があることを示す国家資格です。宅地建物取引士には、不動産取引において重要な独占業務があります。具体的には次の3つです。
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書への記名
- 契約書への記名
宅地建物取引士の資格を取得すると、物件に違法性がないか、権利関係はどうなっているかなどがわかるようになります。不動産管理会社と対等に話せるため、悪質な会社に騙されるリスクを抑えられるでしょう。
賃貸不動産経営管理士
試験日 | 11月第3日曜日 |
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試験の方法 | 50問・四肢択一式による筆記試験 |
受験資格 | 誰でも受験可能 |
受験手数料 | 1万2,000円 |
合格率 | 27~36% |
賃貸不動産経営管理士とは、賃貸住宅管理の専門家です。民間資格としてスタートしましたが、2021年から国家資格として認められており、比較的新しい資格となります。人気が高まっていることから、詳しくは後ほど解説します。
マンション管理士
試験日 | 11月下旬 |
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試験の方法 | 50問・四肢択一式による筆記試験 |
受験資格 | 誰でも受験可能 |
受験手数料 | 9,400円 |
合格率 | 7~11% |
マンション管理士とは、管理組合の運営や建物の構造などマンションの管理に関して専門知識を有し、アドバイスやサポートをおこなう資格です。マンションの管理に関わる資格として、「管理業務主任者」も存在しますが、こちらはマンション管理会社に在籍します。一方、マンション管理士は管理会社から独立した立場で、マンションの管理に関するアドバイスをおこないます。
出典:公益財団法人マンション管理センター マンション管理士試験
賃貸不動産経営管理士は意味がない?

先ほども取り上げた「賃貸不動産経営管理士」は2021年に国家資格として認められました。宅地建物取引士と違い独占業務もないことから、「意味がない」と言われることもあります。また、賃貸不動産経営管理士は、業務管理者の要件の一つ。業務管理者は、賃貸住宅管理会社の事務所ごとに一人以上の設置が義務付けられています。しかし、業務管理者として認められる方法は他にもあるため、こういったことから取得するメリットが低いとされています。
賃貸不動産経営管理士の役割
それでは、賃貸不動産経営管理士には、どのような役割が求められているのでしょうか。賃貸不動産経営管理士には、次の2つの役割が求められています。
- 業務管理者としておこなう業務の実施
- 賃貸住宅管理業者としておこなう業務の実施
業務管理者としておこなう業務とは、重要事項の説明や書面の交付、オーナーへの定期報告などのこと。契約内容を明確にし、賃貸住宅の管理方法が妥当かどうか、円滑な賃貸経営の実施がされているかどうかを管理・監督します。
次に、賃貸住宅管理業者としておこなう業務とは、特定賃貸借契約の締結時における重要事項説明や長期修繕計画の策定などを指します。特定賃貸借契約とはサブリースのことで、オーナーから不動産管理会社が不動産を一括で借り上げ、入居者に転貸する契約を指します。サブリースでは契約内容の誤認によるトラブルが多発したことから、サブリース新法が制定され、公正で円滑な経営が求められています。
賃貸不動産経営管理士を取得するメリット
賃貸不動産経営管理士の資格を取得すると、賃貸経営に関する幅広い知識を体系的に学べるため、より専門的な視点から賃貸物件の管理・経営ができるようになります。例えば、効果的な入居者の募集方法を学ぶことで、空室期間を短縮し安定した家賃収入を得られるでしょう。
また、管理会社から提案された長期修繕計画が妥当かどうかなども判断できるようになります。現在、空き家が増えていることからリノベーションをして再利用し、有益な物件に変えることも可能となるでしょう。管理会社に委託する場合、自身で管理する場合のどちらにとっても、メリットとなります。
賃貸不動産管理士の試験概要
賃貸不動産経営管理士試験は、賃貸不動産経営に関する幅広い知識を問われる国家資格試験です。試験の内容としては、以下のとおりです。
- 管理受託契約に関する事項
- 管理業務としておこなう賃貸住宅の維持保全に関する事項
- 家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関する事項
- 賃貸住宅の賃貸借に関する事項
- 法に関する事項
- その他の管理の実務に関する事項
合格するためには、一定の学習時間と努力が必要ですが、その分、得られるものは大きいといえるでしょう。
賃貸不動産経営管理士の難易度
賃貸不動産経営管理士の試験内容は幅広いため、難易度は高いといえるでしょう。2023年の合格率は28.2%となっています。前章で取り上げた宅地建物取引士、マンション管理士と比較すると、一番合格率が高くなっています。しかし、合格率が30%前後となると、ある程度勉強しなければ合格は難しいでしょう。まったく知識のない状態で勉強を始める場合には、100〜250時間の勉強時間が必要とされています。
不動産管理で役立つ6つの資格

これまでに紹介した資格以外にも、不動産管理で役立つ資格はいろいろあります。本章では、不動産管理で役立つ6つの資格をご紹介します。
管理業務主任者
試験日 | 12月第1日曜日 |
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試験の方法 | 50問・四肢択一式による筆記試験 |
受験資格 | 誰でも受験可能 |
受験手数料 | 9,680円 |
合格率 | 18~24% |
管理業務主任者とは、マンションの管理会社が管理組合に対して、管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務の報告をおこなう際に必要な国家資格者のこと。管理業務主任者には、次のような独占業務があります。
- 管理受託契約締結時の管理組合への重要事項説明
- 重要事項説明書への記名
- 管理受託契約書への記名
- 管理事務に関する管理組合への報告
不動産投資を検討する際、規模の小さいワンルームマンション投資を選択肢に入れる人もいるでしょう。投資を成功させるためには、物件選びも欠かせませんが、適切な管理がされているかも重要です。マンション管理に関する知識があれば、適切に管理されているかどうかを判断でき、物件選びの際にも役立つでしょう。
不動産鑑定士
試験日 | 短答式試験 5月 論文式試験 8月上旬頃(3日間) |
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試験の方法 | 短答式:80問・五肢択一式 論文式:記述式 |
受験資格 | 誰でも受験可能 |
受験手数料 | 電子申請の場合:1万2,800円 書面申請の場合:1万3,000円 |
合格率 | 短答式試験 33~36% 論文式試験 14~17% |
不動産鑑定士とは、不動産の価値を客観的に評価する専門家です。不動産鑑定士の資格を取得すると、不動産の適正価格を判断できるため、相場より高い価格で購入する「高値づかみ」を防げるでしょう。
また、相続税を申告する際にも役立ちます。相続税を申告する際に物件価格を査定しますが、税理士がおこなう場合は「相続税路線価×土地の面積」で求められることが一般的です。相続税路線価とは、国が定めた道路に面した土地の一平方メートルあたりの価額のこと。税理士によって求められる物件価格は、相続税路線価に基づいたものであるため、不動産市場において適正な時価が評価されているわけではありません。不動産鑑定士の資格を取得することで、適正な時価がわかり相続税の節税になるでしょう。
土地家屋調査士
試験日 | 筆記試験 10月第3日曜日 口述試験 1月中旬(筆記試験合格者のみ) |
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試験の方法 | 筆記試験:30問・多肢択一式 3問・記述式 口述試験:1人15分程度 |
受験資格 | 誰でも受験可能 |
受験手数料 | 8,300円 |
合格率 | 8%~9% |
土地家屋調査士とは、不動産の登記をおこなう際に必要な土地や家屋に関する調査、測量をおこなう専門家です。例えば、投資物件を売買する際に所有権が移動するため、不動産登記をしなければなりません。土地家屋調査士の資格を取得すると、ご自身で手続きができるようになるでしょう。
不動産コンサルティングマスター
試験日 | 11月第2日曜日 |
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試験の方法 | 50問・四肢択一式、記述式による筆記試験 |
受験資格 |
・宅地建物取引士資格登録者
・不動産鑑定士資格登録者
・一級建築士資格登録者
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受験手数料 | 3万1,500円 |
合格率 | 40%~50% |
不動産コンサルティングマスターとは、不動産に関わる法律や税制などの幅広い知識とノウハウを持ち、顧客が最善の選択をできるように企画、提案をおこなう資格者のこと。これまでに解説した資格は、いずれも誰でも受験が可能です。しかし、不動産コンサルティングマスターは、受験者が次の3つの国家資格者に限られています。
- 宅地建物取引士
- 不動産鑑定士
- 一級建築士
コンサルティングの資格ということもあり、不動産の価値を最大限に引き出すための知識が身に付けられます。資格を取得すると、物件の調査方法やその土地にあった活用方法などがわかるようになるでしょう。
出典:公益財団法人不動産流通推進センター 公認 不動産コンサルティングマスター
ファイナンシャル・プランニング技能士
試験日 |
3級:2024年4月からCBT試験に完全移行し随時受検が可能 2級:年3回 1月・5月・9月 |
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試験の方法 | 3級:学科60問 実技20問 2級:学科60問(マークシート式) 実技40問(記述式)
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受験資格 | 3級:誰でも可能 2級:3級合格者・FP実務経験者(2年以上)
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受験手数料 | 3級:学科4,000円 実技4,000円 2級:学科5,700円 実技6,000円 |
合格率 | 3級:学科40%〜80% 実技40%〜90% 2級:学科13%〜60% 実技40%〜70% |
通称ファイナンシャルプランナー(FP)は、資産運用や相続、不動産など、お金に関する専門家です。正式名称は、ファイナンシャル・プランニング技能士といいます。資格を取得すると、資金計画の作成や自己資金の必要性など、安定した賃貸経営に必要な知識を得られるでしょう。また、不動産会社や金融機関から受けた資金計画の提案が妥当かどうかも判断できます。
出典:特定非営利活動法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会 FP技能検定
ホームインスペクター(住宅診断士)
試験日 | 年4回 3月・6月・9月・12月 |
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試験の方法 | 50問・四肢択一式 |
受験資格 | 誰でも可能 |
受験手数料 | 1万5,000円 |
合格率 | 20%~46% |
ホームインスペクターは、建物の構造や設備の状態を調査し、アドバイスをおこなう専門家です。資格を取得すると、投資物件の欠陥や修繕が必要な箇所を事前に把握し、適切な価格交渉ができるでしょう。また、リフォーム計画を立てる際に、必要な工事内容や費用を見積もることも可能です。ホームインスペクターの資格を取得することで、リスクを軽減し、より安全な不動産投資ができるでしょう。
出典:NPO法人日本ホームインスペクターズ協会 ホームインスペクター(住宅診断士)になるには
適切な不動産管理をおこなうためのポイント

資格を取得すると知識は身に付けられますが、必ずしも適切な管理ができるようになるわけではありません。知識を身に付けたうえで、経験を積む必要があります。本章では、適切な不動産管理をおこなうためのポイントを解説します。
基本的な知識を身に付ける
適切な不動産管理をおこなうためには、基本的な知識を身に付けましょう。管理会社に委託する場合でも、任せきりにしていると不適切な管理をおこなっているかもしれません。基本的な知識を身に付けておき、管理会社の管理方法をチェックしていれば、適切な管理ができているが判断できるでしょう。まったく知識がない状態より、資格を取得して専門知識があるうえで申し出たほうが、管理会社もしっかり対応してくれるでしょう。
信頼できるパートナーを見つける
不動産管理は業務が幅広く、専門知識も必要となるため、一人ですべてをおこなうことは難しいでしょう。豊富な知識や実績を持つ不動産会社や税理士など信頼できるパートナーを見つけることが、成功への近道です。不動産市場は常に変化しているため、最新情報を把握することは簡単ではありません。信頼できるパートナーがいれば、最新情報をもとに、適切なアドバイスをしてくれるでしょう。
まとめ
本記事では、不動産管理に資格が必要なのか、資格を取得するメリットを解説しました。資格を取得することで専門性が高まり、取引先とも対等な立場で取引できるようになるでしょう。しかし、不動産管理に関する資格はさまざまで難易度も高く、取得することは簡単ではありません。基本的な知識を身に付けることも大切ですが、信頼できるパートナーを見つけ、適切なアドバイスを受けながら、投資家としての経験を積みましょう。

執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ