シングルマザーが利用できる家賃補助とは?助成金・手当・支援制度もまとめて紹介
結論からお伝えすると、国が直接的に現金を支給する全国一律の家賃補助制度はありません。しかし、市区町村が独自に設けている家賃補助や、公営住宅への優先入居など、住まいの負担を軽くするための選択肢は複数あります。
また、家賃の支援策だけでなく、児童扶養手当や医療費の助成、税金や年金の減免など、ひとり親家庭の家計を支える公的な制度は数多く用意されています。
この記事では、シングルマザーが利用できる家賃補助の実例から、知っておくべき手当や助成金、各種支援制度の仕組みまでをまとめて解説します。ご自身が利用できる支援策を把握し、生活を安定させるための参考にしてください。
記事の目次
シングルマザー(母子家庭)が利用できる家賃補助制度は?

シングルマザーに対して自治体が実施する家賃補助制度があり、お住まいの地域によっては独自の支援策を活用できる場合があります。
ここではシングルマザーが利用できる家賃補助制度を解説します。
国からの家賃補助はないが「自治体独自の手当」がある
日本では、シングルマザーなどのひとり親家庭に対して、国が直接現金を支給する形の家賃補助制度は設けられていません。
ただし、母子世帯の収入はふたり親世帯の半分程度にとどまる傾向があり、多数の市区町村が独自の財源による家賃助成や住宅手当の制度を導入しているのが実情です。
自治体独自の家賃補助制度には以下のような特徴があります。
- 自治体ごとに制度の名称や支給金額が異なる
- 居住期間や児童の年齢などの受給要件に違いがある
- 所得制限など細かな条件が設定されている
お住まいの市区町村、あるいはこれから引越しを検討している地域にどのような家賃補助制度があるのかを、まずは個別に確認する必要があります。
家賃補助(住宅手当)を導入している市区町村の例
自治体が独自に実施する家賃補助制度は、対象者や支給条件がそれぞれ異なります。ここでは、いくつかの市区町村の実例を紹介します。
【東京都世田谷区】ひとり親世帯家賃低廉化補助事業
東京都世田谷区の「ひとり親世帯家賃低廉化補助事業」は、入居者への直接給付ではなく、区が家主に対して補助金を交付することで、家賃負担を間接的に減額する仕組みです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助額 | 最大4万円(最長10年間) |
| 対象物件 | 区指定の民間賃貸住宅 |
| 主な入居要件 |
・契約時点で世田谷区内に1年以上在住
・婚姻関係の解消・配偶者との死別などの要件を満たし、かつ18歳到達後最初の3月31日までの子どもを養育
|
| 所得制限 | 世帯合算所得が月額214,000円以下(多子世帯は緩和あり) |
現在住んでいる住宅にそのまま住み続ける場合は対象外となる点に気をつけてください。
【東京都国立市】ひとり親家庭住宅費助成
国立市の助成制度は、民間アパートを借りて家賃を支払っているひとり親世帯に対し、家賃負担の一部を直接現金で補助する仕組みです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助額(月額) | 実際に支払った家賃の3分の1(上限1万円) |
| 主な入居要件 |
・国立市内に引き続き3年以上居住している
・満18歳未満の児童のみと同居し、かつ扶養しているひとり親
|
| 所得制限 | 児童扶養手当が全額支給の方、および前年の所得が同等の方 |
制度を利用するにあたり、居住要件に注意が必要です。「国立市内に継続して3年以上住み続けている」ことが、条件として定められており、ほかの市区町村から転居してきてすぐに申請できるわけではありません。
【神奈川県鎌倉市】ひとり親家庭等家賃助成制度
鎌倉市では、民間賃貸住宅にお住まいのひとり親家庭等を対象に、月額家賃から15,000円を差し引いた金額を助成しています(上限9,000円/月)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助額(月額) | 家賃から15,000円を控除した額 (上限9,000円) |
| 対象住宅 | 月額15,000円以上100,000円以下の 民間賃貸住宅 |
| 主な入居要件 |
・鎌倉市内に1年以上在住
・児童の年齢が20歳未満の母子・父子家庭 など
|
|
所得制限
※扶養親族の 数で変わる |
(扶養親族が1人の場合)
・申請者:2,460,000円未満
・扶養義務者(同居親族):
2,740,000円未満 ※養育費の8割を加算
|
対象となる児童の年齢が、多くの自治体では18歳を上限とするなかで、鎌倉市では20歳未満に設定されています。なお、所得制限の判定では、申請者本人だけでなく受給者と生計を一にする扶養義務者の所得も対象になります。また、受け取った養育費の8割が加算される点に注意が必要です。
【千葉県浦安市】ひとり親家庭住宅手当
浦安市では、ひとり親家庭に対して月額最大15,000円の住宅手当を支給しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助額 (月額) |
家賃10,000円を超えた額に対し、最大15,000円支給 |
| 対象住宅 | 家賃10,000円/月以上の賃貸住宅 |
| 主な入居要件 |
・浦安市の住民基本台帳に世帯主として登録されている
・20歳未満の児童を扶養するひとり親家庭
|
|
所得制限
※扶養親族の 数で変わる |
(扶養1人の場合)2,300,000円 (扶養2人の場合)2,680,000円 |
申請時に気をつけたい点は、賃貸借契約の形態に関するルールです。3親等以内の親族や元配偶者が所有する物件を借りる場合は対象外です。また、不動産会社などの宅地建物取引業者を仲介しない個人間での賃貸借契約も対象となりません。
【兵庫県神戸市】ひとり親世帯家賃補助制度
神戸市の制度は、家賃負担の軽減と併せて、対象住宅の広さや築年数の要件が設けられています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助額(月額) | 最大15,000円支給(最長6年間) |
| 対象住宅 |
・居住面積25平方メートル以上
・1981年6月1日以降の建築(新耐震基準適合)
|
| 主な入居要件 |
・一人親であり、かつ18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子どもと同居している
・申請時の住所に住み替える前から神戸市内に在住または勤務している
・公営住宅に落選したこと
|
| 所得制限 | 世帯全員の所得合計額が、収入基準(政令月収158,000円以下)であること |
この制度を利用するうえで注意が必要な点は、公営住宅への応募実績です。転居する直前の3年以内に、神戸市営住宅や神戸市内の兵庫県営住宅に申し込みをおこない、落選した経験があることが必要です。
【大分県大分市】住宅支援資金
大分県が実施する住宅支援資金は、これまで紹介してきた給付型の家賃補助とは異なり、条件を満たすことで返済が免除される貸付制度を採用しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助額(月額) | 上限70,000円(家賃実費) ※無利子で最大12カ月間貸付 |
| 償還免除の条件 |
・就業していない方が、貸付から1年以内に就職し、1年間就労を 継続したとき
・就業している方が、貸付から1年以内に母子・父子自立支援プログラム 策定時より高い所得が見込まれる転職等をし、1年間就労継続をした時
|
| 主な入居要件 | ・申請日前1年以内に「母子・父子自立支援プログラム」の策定を受けている |
| 所得制限 | 大分県内の児童扶養手当を受給している、または児童扶養手当支給水準の方 |
大分県の支援制度は、毎月の家賃負担を軽減しつつ、シングルマザーの住まいの確保と経済的な自立を達成するための支援策となっています。
家賃補助以外の住居支援策(公営住宅の優先入居・貸付制度)
家賃補助制度以外にも、シングルマザーの住居をサポートする公的な支援策が用意されています。代表的なものとして、公営住宅への優先入居や、条件付きで返還が免除される貸付制度などが挙げられます。
公営住宅への優先入居制度
国土交通省の指針に基づき、多くの自治体でひとり親世帯(子育て世帯)が公営住宅に入居しやすくなる優遇措置がとられています。具体的には、以下の3つの方式が代表的です。
-
・倍率優遇方式:一般の応募者よりも当選確率を高く設定する
-
・戸数枠設定方式:募集する住戸のなかに、ひとり親世帯などの専用枠を設ける
-
・ポイント方式:住宅の困窮度を点数化し、点数の高い世帯から優先して入居を決定する
例えば、兵庫県営住宅では、毎月ひとり親世帯向けの優先入居枠が設定されているほか、子育て世帯が当選した場合には初期費用となる敷金(家賃3カ月分)が免除されます。また、入居基準となる政令月収の上限が259,000円まで緩和されており、入居のハードルを下げる工夫がみられます。
償還免除付きの住宅支援資金貸付制度
大分県の事例で触れた「住宅支援資金」と同様の仕組みが、大阪府や神戸市などでも実施されています。これは自治体の「母子・父子自立支援プログラム」と連動した貸付制度です。
例えば、大阪府では家賃の実費として月額上限70,000円が最大12カ月分、無利子で貸し付けられます。さらに、1年以内の就職や転職と、その後1年間の就業継続の条件を満たすことで、貸付金の返済が全額免除される仕組みです。制度の有無や貸付の条件は自治体によって異なるため、詳細はお住まいの市区町村の窓口へ確認してください。
出典:県営住宅における子育て支援について|兵庫県
出典:住宅支援貸付制度のご案内|社会福祉法人 大阪府母子寡婦福祉連合会
シングルマザー(母子家庭)が利用できる助成金制度

シングルマザーの生活を支える制度は家賃に関するものだけではありません。児童の養育費や医療費、教育費などをサポートするために、国や自治体は多岐にわたる助成金制度を用意しています。
ここではシングルマザーが利用できる助成金制度を紹介します。
児童扶養手当
児童扶養手当は、ひとり親世帯の生活の安定と自立を促進するために支給される国の制度です。離婚や死別などで、父または母と生計を同じくしていない子どもを養育している場合に受け取れます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給対象者 | 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)を監護する母など |
| 手当額 |
・全部支給:月額46,690円
(2人目以降加算:1人につき11,030円)
・一部支給:月額46,680円〜11,010円
(2人目以降加算:1人につき11,020円〜5,520円)
※親の所得などに応じて「全部支給」と「一部支給」に分かれる
|
| 所得制限限度額 |
・全部支給(2人世帯):190万円
・一部支給(2人世帯):385万円
※収入ベース 前年の所得に基づき算定
|
| 支給期月 | 年6回(奇数月) |
児童扶養手当の所得制限の計算は、自身の就労収入だけでなく、別れた配偶者から受け取った「養育費の8割相当額」も所得として加算のうえ審査される点に注意してください。
児童手当
児童手当は、ひとり親家庭に限定されず、子どもを養育するすべての方に定額が支給される国の制度です。
2024年(令和6年)10月支給分から大規模な制度改正がおこなわれ、手当の仕組みが拡充されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給対象 | 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童 |
| 手当額 |
【3歳未満】 ・第1子、第2子:15,000円 ・第3子以降:30,000円 【3歳~高校生年代】 ・第1子、第2子:10,000円 ・第3子以降:30,000円 |
| 所得制限限度額 | なし(2024年10月以降) |
| 支給期月 | 年6回(偶数月) |
特別児童扶養手当
特別児童扶養手当は、精神または身体に障害がある20歳未満の子どもを在宅で養育している方に支給される手当です。支給額は障害の程度(等級)によって異なり、それぞれの基準に応じた額を受け取れます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給対象 | 20歳未満で精神または身体に障害を有する児童を家庭で監護、養育している父母など |
| 支給月額 |
1級:56,800円 2級:37,830円 ※2025年(令和7)年4月より適用 |
| 所得制限 |
あり
※受給資格者本人と受給資格者の配偶者および扶養義務者について、
扶養親族の数に応じた所得制限が設定 |
| 支給期月 | 原則:4月・8月・12月 |
利用するうえで注意したいのが、受給者本人だけでなく、その配偶者や同居するご家族(扶養義務者)に対する所得制限が設けられている点です。前年の所得が基準を上回っている場合は、手当の支給が停止されます。
ひとり親家庭等医療費助成制度
ひとり親家庭等医療費助成制度は、ひとり親とその子どもが医療機関を受診した際の医療費を、自治体が助成する仕組みです。助成される範囲や、受診時に支払う一部負担金の金額は、お住まいの自治体によって分かれます。
一例として、横浜市のひとり親家庭等医療助成制度を紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給対象者 | 横浜市内に住所があり、健康保険に加入しているひとり親(父母、養育者)と児童 |
| 対象児童 |
18歳に達する日以降の最初の3月31日まで
※中程度以上の障害や高校在学中などの場合は20歳未満まで延長
|
| 助成内容 | 健康保険が適用される診療の自己負担額 |
| 所得制限 |
あり
※扶養親族の数に応じて、父・母等の所得および
扶養義務者の所得に上限額が設定されている |
医療機関を受診する際は、窓口で健康保険証などと一緒に福祉医療証を提示することで、自己負担なしで診療を受けられます。また、医療証の更新には毎年決められた期限までに現況届の提出が必要です。
こども医療費助成
こども医療費助成制度は、子どもが病院などを受診した際の医療費(保険適用内の自己負担分)を、地域の自治体が助成してくれる制度です。ひとり親家庭に限定されず、すべての子育て世帯を対象としています。
一例として東京都目黒区の助成制度を紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 区内在住で国内の健康保険に加入している0歳から18歳到達後最初の3月31日までの方 |
| 助成内容 | 健康保険の対象となる診療や投薬の自己負担分、入院時食事療養標準負担額 |
| 医療証の種類 |
・乳幼児医療証(0歳〜6歳到達後最初の3月31日まで)
・子ども医療証(小学1年生〜中学3年生相当の期間)
・高校生等医療証(高校1年生〜高校3年生相当の期間)
|
目黒区の制度では、子どもの成長段階に合わせて3種類の医療証が用意されており、毎年10月1日に自動で更新される仕組みです。
利用するうえで気をつけたいのが、助成の対象外となる費用です。例えば、保育園や学校の管理下でのケガなどで「日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度」が適用される場合は、区の助成制度を利用できません。
障害児福祉手当
障害児福祉手当は、精神や身体に重度の障害があり、日常生活で常に介護を必要とする20歳未満の子どもを在宅で養育している方に向けた手当です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象児童 | 精神または身体に重度の障害があり、常時の介護を要する在宅の20歳未満の者 |
| 支給額(月額) | 16,100円(※2025年(令和7年)4月より適用) |
| 所得制限 |
あり
※受給者本人や配偶者、扶養義務者の所得が基準を超えると支給停止
|
| 支払い時期 | 年4回(2月、5月、8月、11月) |
障害児福祉手当で気をつけたいのが、受給資格者だけでなく、同居するご家族(父母などの扶養義務者)の所得にも制限が設けられている点です。
乳幼児や義務教育就学児(小・中学生)の医療費
乳幼児や小・中学生が病院を受診した際の医療費自己負担分を助成する制度です。通称「マル乳(乳幼児医療費助成制度)」や「マル子(義務教育就学児医療費助成制度)」と呼ばれています。東京都などで広く知られている名称ですが、全国の多くの自治体で同様の制度があります。
以下、東京都の助成制度を紹介します。
| 項目 | 乳幼児医療費助成制度(マル乳) | 義務教育就学児 医療費助成制度 (マル子) |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 0歳から6歳到達後最初の3月31日まで | 小学1年生から中学3年生まで (15歳到達後最初の3月31日まで) |
| 助成の範囲 | 健康保険の自己負担分 |
・入院:自己負担分
・通院:自己負担分から1回最大200円を控除した額
|
| 所得制限 | あり ※区市町村によって異なるため要確認 | |
| 対象外 | 健康診断や予防接種、差額ベッド代、学校等の管理下でのケガなど | |
出典:医療費助成制度|東京都
ひとり親家庭等医療費助成制度など、複数の医療助成制度の対象となる場合でも、同じ人が複数の医療証を重複して持てません。ご自身の状況においてどの制度を優先して利用するのがよいか、各市区町村の窓口へ相談するようにしてください。
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度は、20歳未満の子どもを扶養しているひとり親(母子・父子)や寡婦を対象とした公的な貸付制度です。
用途に合わせて多様な資金が用意されており、民間の金融機関よりも有利な条件で借り入れできます。
■ 貸付の基本ルール(金利について)
- 連帯保証人を立てる場合:無利子
- 連帯保証人を立てない場合:年1.0%
※ただし、子どもの教育に関する資金(修学資金・就学支度資金・修業資金)は、保証人の有無に関わらず無利子
■ 資金の種類と限度額の目安
多岐にわたる支援メニューを、目的別に分類してまとめました。
【子どもの教育に関する資金】(すべて無利子)
- 修学資金(授業料や通学費):月額52,500円〜183,000円(進学先による)
- 就学支度資金(入学時の被服費等):64,300円〜590,000円
- 修業資金(子どもが技術を習得する費用):月額68,000円など
【親の就労や事業に関する資金】
- 事業開始資金:3,260,000円
- 事業継続資金:1,630,000円(現在営んでいる事業を継続する場合)
- 技能習得資金(資格や運転免許の取得):月額68,000円、運転免許460,000円
- 就職支度資金(通勤用自動車やスーツ代など):105,000円(自動車は340,000円)
【住まいと生活に関する資金】
- 住宅資金(住宅の購入、補修、増築など):1,500,000円(特別2,000,000円)
- 転宅資金(引越しのための貸借費用):260,000円
- 生活資金(資格取得中やひとり親になって間もない期間の生活費):月額最大141,000円
【その他の資金】
- 医療介護資金:医療340,000円、介護500,000円
- 結婚資金(子どもの結婚費用):310,000円
子どもの進学費用のほか、引越し費用(転宅資金)や一時的な生活費の補填など、支出が増える時期を乗り切るための幅広いメニューが揃っています。
出典:母子父子寡婦福祉資金貸付金制度の利用方法|男女共同参画局
自立支援教育訓練給付金
自立支援教育訓練給付金は、シングルマザーなどのひとり親が就職に有利な技能や資格を取得するために、対象となる教育訓練講座を受講・修了した際、経費の一部が支給される制度です。
■ 対象者と必須要件
20歳未満の子どもを扶養しており、受講が適職に就くために必要と認められる方が対象です。重要な点は、母子・父子自立支援プログラムの策定を受けていることが必須要件となっている点です。まずは自治体の窓口へ足を運び、相談員と自立に向けた計画を立てることが必要になります。
■ 支給額の目安
受講する講座の種類によって、支給される金額の上限が異なります。
| 講座 | 支給額の目安 |
|---|---|
| 一般教育訓練・ 特定一般教育訓練 |
経費の60% (上限20万円) |
| 専門実践教育訓練 | 経費の60% (修学年数×40万円、最大160万円) |
| 専門実践教育訓練 (修了後1年以内に 資格取得・就職等) |
経費の85% (修業年数×60万円、最大240万円) |
詳細な要件や対象講座は地域によって異なるため、ご自身の自治体で個別に確認してください。
シングルマザー(母子家庭)が利用できる支援制度

これまでシングルマザーを支援する制度として、家賃補助のほか現金給付や貸付制度を紹介してきました。ここでは、税金や公共料金の負担を軽くすることで、手元に残るお金を増やす制度を解説します。
ひとり親控除(寡婦控除)
ひとり親控除(または寡婦控除)は、適用条件を満たすことで一定の金額を所得から差し引けて、所得税や住民税の負担を軽減できる税制上の優遇措置です。
主な適用要件と控除額は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用条件 |
・婚姻をしていない、または配偶者の生死が明らかでない
・生計を一にしている子どもがいる
※子どもの総所得金額は58万円以下
・合計所得金額が500万円以下
※2026年分以降1,000万円以下に拡充予定
|
| 控除額 |
・所得税:35万円(2027年(令和9年)分から38万円に拡充予定)
・住民税:30万円(2038年(令和10年)分から33万円に拡充予定)
|
ひとり親控除と似た仕組みに寡婦控除があります。寡婦控除は、夫と死別または離婚したあとに再婚していない女性で、扶養親族がいる場合などに適用される制度です(ひとり親控除との併用はできません)。
両者の違いは、対象者の要件です。
| 項目 | ひとり親控除 | 寡婦控除 |
|---|---|---|
| 対象となる性別 | 男女問わず | 女性のみ |
| 婚姻歴 | 問わない (未婚も対象) |
必要 (離婚や死別など) |
| 扶養の要件 | 生計を一にする子どもがいること | 離婚の場合は、子ども以外の扶養親族が必要 ※死別の場合は不要 |
寡婦控除は、過去に結婚歴がある独身女性に向けた制度です。シングルマザーの方で両方の要件にあてはまるケースでは、より控除額の大きいひとり親控除が優先して適用されるルールになっています。
国民年金・国民健康保険の免除・減額
ひとり親家庭(母子・父子家庭)に限定された制度ではありませんが、所得の減少や失業などにより、保険料を納めることが困難になった方は、国民年金・国民健康保険料の免除・減額が受けられます。
以下は、東京都の保険料免除制度の概要です。
| 免除の種類 | 所得基準 ※前年度の所得(1~6月までに 申請する場合は前前年度の所得) |
|---|---|
| 全額免除 | ((扶養親族等の数+1)×35 万円+32 万円)以下 |
| 4分の3免除 | (88 万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等)以下 |
| 半額免除 | (128 万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等)以下 |
| 4分の1免除 | (168 万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等)以下 |
地方税法上のひとり親に該当する場合は、この所得基準が変わる仕組みになっています。そのため、適用条件の詳細は、年金事務所や市区町村の窓口で確認することが大切です。
遺族年金
遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入していた方(夫など)が亡くなった際、残された家族の生活を支えるために国から支給される年金です。
シングルマザーとなる原因には大きく離婚と死別がありますが、遺族年金は死別によってシングルマザーになった方に向けた経済的支援となります。
亡くなった方の生前の働き方(加入していた年金制度)によって、受け取れる年金の種類が異なります。要件を満たせば、2つの年金を併せて受け取ることも可能です。
| 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 | |
|---|---|---|
| 受給要件 | 国民年金に加入していた方が亡くなった場合 | 会社員など厚生年金に加入していた方が 亡くなった場合 |
| 受給対象者 | ・子のある配偶者 ・子 |
・子のある配偶者 ・子 ・子のない配偶者※ ・父母 ・孫 ・祖父母 |
| 年金額 |
【子のある配偶者が受け取る場合】
・昭和31年4月2日以降生まれ:
831,700円+子の加算額 ・昭和31年4月1日以前生まれ:
829,300円+子の加算額 【子が受け取る場合 】
次の金額を子の数で割った額が、 1人あたりの額となります。 831,700円+2人目以降の子の加算額 |
亡くなった方の老齢厚生年金の 報酬比例部分の4分の3 |
※ここでの子どもとは、原則として18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、または20歳未満で障害等級1級・2級の子を指します。
遺族年金を受け取るためには、亡くなった方が生前に一定の期間年金保険料を納めていたこと(納付要件)や、残された家族によってクリアしなければならない条件があります。
要件にあてはまる可能性がある場合は、早めに最寄りの年金事務所または年金相談センターへ個別に相談しましょう。
出典:遺族年金|日本年金機構
水道料金・下水道料金の減免
毎月の生活に欠かせないインフラである水道料金や下水道料金も、ひとり親家庭の経済的負担を軽くするための減免制度を設けている自治体があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 「児童扶養手当」や「特別児童扶養手当」を受給している世帯 など |
| 減免の内容 | 基本料金の全額免除、あるいは一定水量(例:1カ月あたり10立方メートルまで)の料金免除など |
制度を利用するための要件は自治体によって異なるため、お住まいの自治体で個別に確認してください。
母子・父子自立支援プログラム
母子・父子自立支援プログラムは、ひとり親が安定した就労と経済的な自立を果たせるよう、自治体が個別にサポートする制度です。離婚が成立する前段階であっても、支援が必要な状態であれば対象になります。
■支援の主な内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況把握(面談) | 個別面接を通じ、本人の生活や子育て、健康、収入の状況に加え、自立や就業を阻害している要因の洗い出し |
| プログラムの策定 | 課題を克服するための支援策や目標を設定し、個々に応じたオーダーメイドの計画(自立支援プログラム)を作成 |
| 自立に向けた支援 | 策定したプログラムに沿って、「自立支援給付金」や「母子父子寡婦福祉貸付金」などの支援メニューを活用しながら、就業による自立をサポート |
仕事探しやスキルアップに悩んだ際は、まずお住まいの自治体の窓口へ相談してみてください。
シングルマザー(母子家庭)の家賃補助でよくある質問
最後に、シングルマザーの家賃補助や生活支援制度を利用する際によくある疑問をQ&A形式でわかりやすく解説します。
シングルマザーの平均年収はどれくらい
厚生労働省が公表している「全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、母子世帯の母自身の平均年間収入は272万円です。
ただし、この金額には、働いたお給料だけでなく、児童手当や児童扶養手当の各種手当、別れた配偶者からの養育費などが含まれます。就労による収入のみに限定すると、平均年間収入は236万円まで下がります。また、母子世帯の平均年間収入は、373万円です(平均世帯人員3.18人)。
手当・補助金を受けるための注意点は?
手当や補助金を受ける際は、以下の点に注意が必要です。
・すべて自分で申請が必要
支給条件を満たしていても自動的に支給されるわけではありません。情報を収集し、役所の窓口などへ自ら足を運んで手続きをおこなう必要があります。
・実家暮らしは減額や支給停止の可能性がある
親と同居している場合、親の収入も審査の対象になります。ご自身の収入が低くても、同居している親(子どもの祖父母)に一定以上の給与や年金収入があれば、児童扶養手当などが支給停止になるケースがあります。
・住んでいる自治体によって利用できる制度が異なる
国の制度とは別に、市区町村が独自に実施している家賃補助などの手当は、お住まいの地域によって内容や金額、実施の有無そのものが異なります。
児童手当と児童扶養手当はどう違う?
児童手当と児童扶養手当の主な違いは、給付対象と支給額の決まり方にあります。
児童手当は、ひとり親かどうかに関わらず、高校生年代までの子どもを育てる全世帯の養育者に支給されます。原則として、支給額は子どもの年齢や人数に応じて定額です。
一方の児童扶養手当は、シングルマザーなどのひとり親家庭などに限定して支給される制度です。児童手当と比べて所得制限が厳しく設けられており、申請者の所得に応じて受給額が変わる仕組みになっています。
家賃補助が受けられないケースは?
自治体の家賃補助は、一般的に以下のケースに当てはまる場合、受けられないことがあります。
・生活保護を受給している
生活保護には家賃に充てる住宅扶助制度があり、そちらが優先して適用されるためです。
・親や祖父母と同居している
同居している家族の収入も合算して審査されるため、世帯としての所得制限に引っかかり、対象から外れる可能性が高くなります。
・自治体が定める所得制限を超えている
ご自身の収入や親族などから受けている援助を合わせた金額が、自治体の定めた基準を上回っている場合は対象外となります 。
まとめ
この記事では、シングルマザーの生活を支える家賃補助や各種支援制度を解説しました。
特に押さえておきたいポイントは以下の点です。
- 国からの家賃補助はないが、自治体独自の手当や公営住宅の優遇制度が利用できる
- 児童扶養手当や医療費助成など、子育てにかかる費用を助成する制度が多数ある
- ひとり親控除や免除制度を活用することで、税金や保険料などの支払いの負担を減らせる
- すべての手当や補助金は、自分で申請する必要がある
シングルマザーの家計を安定させるためには、こうした公的な支援をうまく活用することが欠かせません。ご自身がどの制度の対象になるのか、またお住まいの地域にどのようなサポートがあるのかは状況によって異なります。
一人で悩まずに、まずは最寄りの役所の窓口へ足を運び、どのような支援を受けられるか相談してみてください 。
