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家賃は手取りの何割が目安?3割は無理?シミュレーションから家賃を抑える方法まで

家賃は手取りの何割に抑えるといいのでしょうか
原材料価格の高騰と、円安による輸入コストの増加を受け、食費や光熱費など、生活するうえで欠かせないものの値段が年々上がっています。特に家賃は、毎月支払いが必要なもののなかでも、大きな割合を占めるものです。そのため、「家賃を見直したい」「収入に対する適切な割合を知りたい」と考える方は多いでしょう。

本記事では、家賃は手取りの何割が目安なのかを解説します。また、手取り別の家賃シミュレーションや家賃の目安を考える際の注意点も解説。家賃相場や一人ひとり優先したい支出も異なります。自分に合った最適な割合を知るために、一つの参考としてご覧ください。

家賃は手取りの何割が目安?

家賃は手取りの何割が理想なのかを解説します
家賃は手取りの何割が理想なのかを解説します

以前は「家賃は手取りの3割が目安」と、よく言われていました。しかし、なぜ3割が妥当なのか、はっきりとした根拠があるわけではありません。また、昔はインターネットやスマートフォンなども現在のように普及しておらず、固定費も少なかったため、家賃を3割にしても家計に余裕があったと考えられます。それでは、現在は手取りの何割が理想なのでしょうか。

手取りの2割が理想

家賃は、手取りの2割程度に抑えることが理想です。2割までに収められれば、住居以外の費用を無理なく賄える可能性が高まります。しかし、地域によって家賃の相場は異なるため、2割に収めることが難しい場合もあるでしょう。その場合は、家賃以外の費用を抑えるなど、バランスを取ることが大切です。

支出における家賃の割合と全国の家賃相場

ここからはさまざまなデータを通して、家賃をどれくらい支払っているのかを見てみましょう。

支出における家賃の割合

収入に対する家賃の割合のデータはありませんが、支出に対する割合のデータはあります。統計局の「家計調査報告(家計収支編)」(2024年調査)のデータを見てみましょう。なお、これは単身かつ勤労世帯で、賃貸住宅を借りている人のデータのため、実態に近いと考えられます。

項目 支出額 全体の支出額に対する割合
消費支出 18万7,628円
食料 4万2,015円 22.39%
住居 5万3,135円 28.32%
光熱・水道 1万1,619円 6.19%
家具・家事用品 4,218円 2.25%
被服および履物 5,221円 2.78%
保健医療 7,751円 4.13%
交通・通信 2万170円 10.75%
その他の消費支出 2万3,373円 12.46%

支出が約18万7,000円に対し、住居費は約5万3,000円でした。全体の支出に対して約28%となっており、3割程度であることがわかります。また、他の支出と比較すると、家賃がもっとも大きな割合を占めていることもわかりました。

全国の家賃相場

次に、家賃の相場を見てみましょう。今回は、5大都市におけるマンションとアパートの家賃をまとめました。なお、30平方メートル以下を一人暮らし向き、30〜50平方メートルをカップル向きとしています。

地域 マンション アパート
一人暮らし
向き
カップル
向き
一人暮らし
向き
カップル
向き
北海道
札幌市
4万2,762円 6万2,563円 3万4,055円 4万6,082円
東京都
(23区)
9万9,083円 16万3,554円 6万7,126円 11万3,807円
愛知県
名古屋市
6万752円 8万1,912円 5万2,077円 6万7,972円
大阪府
大阪市
6万7,153円 10万5,659円 6万724円 7万7,630円
福岡県
福岡市
5万7,865円 8万4,860円 4万3,424円 6万8,629円

出典:不動産情報サイト アットホーム「全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2025年3月)

どの地域においても、アパートより設備の整っているマンションのほうが、家賃が高いことがわかります。また、地域で見ると東京都が一番高く、一人暮らし向きのマンションでは、10万円に近い金額です。特にカップル向きは、共働きでなければ支払いが厳しくなるケースがほとんどでしょう。

手取り別の家賃シミュレーション

手取り別に家賃をシミュレーションしてみました
手取り別に家賃をシミュレーションしてみました

前章では、統計局の「家計調査報告(家計収支編)」のデータから、一人暮らしにおける家賃や食費などの各費用の支出割合を求めました。手取り別に、理想と実際のデータに基づいた家賃、主な項目の金額を見ていきましょう。

手取り15万円の場合

項目 理想の支出額 統計調査の割合に基づいた支出額
住居 3万円 4万2,000円
食料 3万円 3万3,000円
光熱・水道 9,000円 9,000円
家具・家事用品 3,000円 3,000円
被服および履物 3,000円 3,000円
保健医療 6,000円 6,000円
交通・通信 1万2,000円 1万5,000円
教養娯楽 1万5,000円 1万5,000円
その他の消費支出 1万5,000円 1万8,000円
貯金・予備費 2万7,000円

まずは、手取り15万円の場合を見ていきましょう。理想の家賃は3万円程度、データに基づいた家賃は4万2,000円程度です。先ほどご紹介した家賃相場と比較すると、地方では物件を借りられそうですが、三大都市では厳しいといえるでしょう。

家賃が4万2,000円を超える場合、残りの約10万円で他の生活費を賄わなければなりません。そのため、高い節約意識が必要になるでしょう。もし家賃を3万円に抑えられれば、他の生活費に回す金額も多少は増えますが、住む地域によっては生活が苦しくなる可能性もあります。

手取り20万円の場合

項目 理想の支出額 統計調査の割合に基づいた支出額
住居 4万円 5万6,000円
食料 4万円 4万4,000円
光熱・水道 1万円 1万2,000円
家具・家事用品 4,000円 4,000円
被服および履物 4,000円 4,000円
保健医療 8,000円 8,000円
交通・通信 1万7,000円 2万円
教養娯楽 1万7,000円 2万円
その他の消費支出 2万円 2万4,000円
貯金・予備費 4万円

手取り20万円の場合、理想の家賃は4万円程度、データに基づいた家賃は5万6,000円程度です。4万円にした場合、地方であれば一人暮らし向きのアパートを借りられる可能性があるでしょう。5万6,000円にした場合、地方では一人暮らし向きのマンションを借りられるかもしれません。手取り15万円の時と比較すると多少は余裕が出ますが、貯蓄に回せる金額は限られるでしょう。

手取り25万円の場合

項目 理想の支出額 統計調査の割合に基づいた支出額
住居 5万円 7万円
食料 5万2,000円 5万5,000円
光熱・水道 1万2,000円 1万5,000円
家具・家事用品 5,000円 5,000円
被服および履物 5,000円 5,000円
保健医療 1万円 1万円
交通・通信 2万2,000円 2万5,000円
教養娯楽 2万2,000円 2万5,000円
その他の消費支出 2万7,000円 3万円
貯金・予備費 4万5,000円

手取り25万円で一人暮らしをする場合、理想の家賃は5万円程度、データに基づいた家賃は7万円程度です。家賃を5万円に抑える場合、都市圏であれば、駅から離れた物件やワンルームなどの物件を探すと、借りられる可能性が高まります。7万円まで引き上げた場合、東京以外の都市部でも、一人暮らし向きのマンションを借りられるでしょう。また、他の生活費に十分な金額を充てることができ、貯蓄にも回す余裕も出てくるでしょう。

手取り30万円の場合

項目 理想の支出額 統計調査の割合に基づいた支出額
住居 6万円 8万4,000円
食料 6万5,000円 6万6,000円
光熱・水道 1万5,000円 1万8,000円
家具・家事用品 6,000円 6,000円
被服および履物 6,000円 6,000円
保健医療 1万2,000円 1万2,000円
交通・通信 2万7,000円 3万円
教養娯楽 2万7,000円 3万円
その他の消費支出 3万3,000円 3万6,000円
貯金・予備費 4万9,000円

手取り30万円の場合、理想の家賃は6万円程度、データに基づいた家賃は8万4,000円程度です。家賃を6万円に抑える場合、地域によっては一人暮らし向きのマンションも借りられる可能性が高いでしょう。アパートであればカップル向きの物件も選択でき、広々と過ごすことが可能です。残りの生活費は24万円となるため、貯蓄に回せる金額も増やせるでしょう。

これまでに紹介したシミュレーションは、あくまで理想です。住む場所によっては、冬に光熱費が高くなったり、車関連の費用が欠かせないところもあるでしょう。生活するうえで欠かせない支出やご自身にとって大事な支出を見極め、適切なバランスを取ることが大切です。

適正な家賃の計算方法

適正な家賃の計算方法を2通りご紹介します
適正な家賃の計算方法を2通りご紹介します

手取りから適正な家賃を計算する方法を見てみましょう。家賃の金額を決める方法は、2つあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

生活費から家賃に使える金額を把握する

適正な家賃を決める方法として、生活費から家賃に使える金額を把握する方法があります。一人ひとりのライフスタイルや価値観によって、食費や趣味に使うお金など、家賃以外の生活費は大きく異なります。まずは食費や通信費など、何にいくら使っているのかを把握しましょう。例えば、家賃以外の必要な生活費が15万円だった場合。手取り20万円であれば、5万円を家賃に充てることが可能です。

家賃を決めたあとに生活費を合わせる

もう一つの方法は、家賃を決めたあとに生活費を計算し直す方法です。駅の近くに住みたい場合や広い物件に住みたい場合など、住まいの優先順位が高い時に利用するといいでしょう。例えば、家賃相場が9万円のエリアに住みたい場合。手取りが25万円だとすると、残りの生活費は16万円です。この16万円を食費や水道・光熱費などに割り振っていきます。

ただし、家賃ばかりを優先すると、人によっては家計が苦しくなり、生活の満足度が下がってしまう恐れもあります。無理のない金額を設定することが大切です。

手取りから家賃の目安を考える際の注意点

適正な家賃を決める際には生活の質とのバランスを考えることが大切です
適正な家賃を決める際には生活の質とのバランスを考えることが大切です

手取りから適正な家賃を計算する方法を2つご紹介しました。家賃は家計のなかでも大きな割合を占めるため、無理のない金額にしなければ、家計が苦しくなってしまう可能性があります。反対に、家賃が低すぎると生活の質も下がるおそれがあるため、バランスを見極めることが大切です。本章では、家賃の目安を考える際の注意点を解説します。

家賃以外の住居費を計算に含める

家賃の目安を考える際には、家賃以外の住居費を計算に含めるようにしましょう。賃貸物件を借りる際に支払わなければならない費用は、家賃だけではありません。他にも共益費や管理費、更新料、火災保険料などがかかります。

共益費・管理費は、エントランスや廊下など、入居者が共用する部分の維持管理費用のことです。例えば、光熱費や修繕費、清掃にかかる費用などが挙げられます。また、車を所有している方であれば、駐車場代も必要になるでしょう。

家賃を計算する際は、これらの費用も踏まえて計算するようにしましょう。更新料や火災保険料は、更新時のみにかかるものですが、月割りで計算し、日頃から貯めておくと余裕を持って支払いができます。

住居費以外の固定費を計算に含める

手取りから家賃の目安を考える際には、住居費以外の固定費も計算に含めましょう。例えば、インターネットの通信料や保険料、奨学金の返済など、家賃以外にも毎月決まって支払う固定費があります。これらの固定費の合計額を把握し、手取りから差し引いた残りの金額で、食費や光熱費などを賄う必要があります。固定費があまりにも多い場合には、削れるものはないかを探してみましょう。固定費を削減できれば、家賃や食費など、他の費用に充てることができます。

ボーナスや家賃補助を頼りにしない

勤めている企業によっては、ボーナスや家賃補助を支給されている方もいるでしょう。しかし、家賃を計算する際には、ボーナスや家賃補助をあてにしないことが大切です。なぜなら、ボーナスは企業の業績や個人の評価によって支給額が変動する可能性があるためです。経営状況が悪化した場合、支給されなくなる可能性もあります。

また、家賃補助も企業の制度変更によって、支給額が減ったり、制度そのものがなくなったりするおそれも。ボーナスや家賃補助はないものとして考え、貯蓄に回しておけば、引越しする際の費用に充てられるでしょう。

家賃を抑える物件選びのポイント

家賃を抑える物件を選ぶポイントを解説します
家賃を抑える物件を選ぶポイントを解説します

家賃相場は地域によって異なりますが、家賃が安くなる物件には共通点があります。本章では、家賃を抑えられる物件を選ぶ際のポイントをご紹介します。

築年数の古い物件を選ぶ

家賃を抑えるための方法として、築年数の古い物件を選ぶことが挙げられます。一般的に、新築や築浅の物件に比べて、築年数が経過した物件は家賃が低く設定されています。これは建物や設備が老朽化し、建物の価値が下がるためです。

しかし、なかには築年数が経っているにも関わらず、リフォームやリノベーションによって、内装や設備がきれいになっていることも。ただし、1981年5月31日以前に建てられたものは、現在の耐震基準を満たしていない可能性があります。築年数の古い物件を選ぶ際には、現在の耐震基準を満たしているかを確認するようにしましょう。

駅から遠い物件を選ぶ

駅から遠い物件を選ぶことも、家賃を抑える方法の一つです。一般的に、駅に近い物件は通勤や通学に便利であるため、人気が高いことから、家賃が高めに設定される傾向にあります。一方、駅から離れるほど利便性が悪くなるため、家賃が安くなる傾向に。

また、駅から遠い物件は、間取りや広さの選択肢も広がりやすくなります。家賃を抑えたい方は、駅からの距離にこだわりすぎず、実際の通勤時間やライフスタイルも考慮しながら物件を選びましょう。

乗り入れる路線が少ない駅の物件を選ぶ

都市部の場合、乗り入れる路線が少ない駅の物件を選ぶと、家賃を抑えられる可能性も。なぜなら、利便性の高さが家賃相場に反映される傾向にあるからです。複数の路線が乗り入れる駅は、さまざまな方面へ移動しやすくなり、乗り換えせずとも行動範囲が広がります。通勤だけでなく、プライベートでの移動にも便利であることから、多くの方にとって魅力的な立地となり、賃貸物件の需要が高まります。

一方、乗り入れる路線が少ない駅は、行き先によっては乗り換えが必要になることも。複数の路線が利用できる駅と比較すると、利便性が低くなることから、家賃相場も落ち着く傾向にあります。

繁忙期を避ける

家賃を抑えたい場合、繁忙期を避けることも一つの方法です。引越しの繁忙期は、新年度を迎える1月〜3月頃。この時期は、就職や転勤などで多くの人が移動する時期であるため、賃貸物件の需要が高くなります。入居者が決まる可能性が高いことから、家賃が高めに設定されることも。一方、閑散期になると需要が落ち着くため、家賃の交渉がしやすくなります。引越しの時期をずらせるのであれば、閑散期を狙うことをおすすめします。

まとめ

家賃は手取りの2割に抑えると理想的といえるでしょう。しかし、物価や家賃相場が高い都市部などでは、難しい可能性があります。駅から遠い場所や築年数が古い物件などは、どの地域においても家賃を抑えられるポイントです。しかし、あまりに家賃を抑えすぎると、生活の質が下がるおそれがあります。ご自身が何を大切にしたいのかを考え、家賃と他の生活費とのバランスを見極めましょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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