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単身赴任になったら住民票は移す?移さないデメリットと移し方について解説

単身赴任になったら住民票は移す?移さないデメリットと移し方について解説
単身赴任の場合、ある程度の期間は一定の場所に住居を移すことになりますが、そこからまた転居する可能性は高いでしょう。例えば次にいつ転勤になるかわからなかったり、そもそも単身赴任の期限が決まっていたり……。いざ引越しをしたとしても、もし再び住所変更になる見込みがあるなら、住民票を移すのもなんだか手間に感じてしまいますよね。

では実際のところ、単身赴任のように住む期間が限られているケースでは、住民票はどのように扱うべきなのでしょうか?今回は単身赴任にともなう住民票について、移さないままだとどういった問題が生じるのか、詳しく解説していきます。

単身赴任でも住民票を移さないといけない?

単身赴任でも住民票を移さないといけない?

引越しとともに住民票を移すのが基本

国が定める「住民基本台帳法」では、異なる居住地に転居・転入した場合、住民票の届出をするのが義務とされています。住民票は単純な住所情報ではなく、例えば健康保険などの社会保障や税金など、各自治体による行政サービスと紐づいているためです。住まいが異動することによって、管轄する行政機関も変わるので、引越しにともなって住民票を移すのは基本とされています。

ちなみに正当な理由がなく、住民票異動の届出をしないと、5万円以下の過料が発生する可能性も。ただ「知らなかった」「忘れていた」というだけで、住民票の届出をしないのは違法になるので注意しましょう。

単身赴任の条件次第では住民票を移さなくてOK

基本的に住民票の異動は義務化されていますが、先ほども出てきた“正当な理由”に該当する場合、例外として住民票を移さなくても問題ないとされています。なかでも短期の単身赴任だと、前述にもある“正当な理由”に当てはまるケースも。具体的には、次のような条件による転居なら、住民票の異動の必要がないと考えられています。

  • 元々の居住地に戻ることを予定している、一時的な転居の場合(目安は1年以内)
  • 住居が複数ある場合に、本格的な生活の拠点とせず行き来する居住地(定期的な帰省が発生する)

例えば学生の進学にともなう転居や別荘などは、上記に当てはまるので新しく住民票の手続きをする必要はないとされています。同様に単身赴任でも該当する可能性があり、必ずしも住民票を異動させなければならないわけではありません。

このように単身赴任では、住民票を移さなくても違法にはならないケースがあります。とはいえ今までとは別の土地に長期間住む際には、住民票を移しておかないと不便に感じる点も少なくありません。特に住所情報が大きく関係する場面では、デメリットが生じることもあります。ではまず居住地が関わる行政関連の部分で、住民票を移さないとどうなるのか、以下から見ていきましょう。

住民票を移さない場合、住民税や住宅ローン控除はどうなる?

住民票を移さない場合、住民税や住宅ローン控除はどうなる?

住民税

住民税に関しては、その年の1月1日時点で、現住所のある地方自治体より課税されます。例えば元々はA市に住んでいて、2023年2月にB市へ転居した場合。2023年度の納税通知書は、A市から引越し先の住所に届くようになっています。

なお住民税は、通常なら住民票の情報をもとに課税されるのが基本です。引越しのタイミングにもよりますが、一般的には住民票のある居住地でしか課税されないため、二重に請求されることはありません。つまり住民票を移す・移さないに関係なく、1つの地域に限定して課税される仕組みになっています。住民票の異動をしていないことで、発生する問題は特にないと考えていいでしょう。

ちなみにその居住地に住んでいる実態があれば、住民票を移していなくても、現住所のある地域から納税の通知を受ける場合があります。このケースにおいては、納税を請求した地方自治体から旧住所のほうに課税する旨が通知されるので、いずれにしても住民税は重複しません。

住宅ローン控除

住宅ローン控除を受けるには、マイホームを取得した日から6カ月以内に住み始め、なおかつその年の12月31日まで居住し続けるのが条件になっています。つまり住民票で考えるなら、住宅ローンが適用される自宅のある居住地から、基本的には変更せずに住み続ける必要があるといえます。

しかし単身赴任のようにやむを得ない事情がある場合、配偶者や扶養家族といった親族が居住し続けるのであれば、住宅ローン控除はそのまま適用されます。要するに家族をマイホームに残して単身赴任をするなら、住民票を移す・移さないに関係なく住宅ローン控除は継続されるので、特に影響はありません。住民票を異動しないことで、発生するトラブルはないと考えて問題ないでしょう。

ただ海外への単身赴任だと、住宅ローンの取り扱いが異なるケースもあるため要注意です。

児童手当(子ども手当)

生計をともにしている両親の場合、基本的には所得の高いほうが児童手当の受給者になります。また児童手当は、受給者の住民票がある地方自治体から出ているので、居住地の異動にともなって支給元も変わってきます。つまり単身赴任するパートナーが受給者になっていて、なおかつ住民票も移す場合には、児童手当に関する手続きも同時に進めなければなりません。住民票が異動しても児童手当はもちろん受給できますが、転居した旨を申請する必要があります。

ただし住民票を移さないのであれば、継続して、今までどおりに児童手当を受けることが可能。もしくは元の居住地に残るパートナーが受給者になっていれば、単身赴任によって住民票を移したとしても、変わらずに児童手当は支給されます。

児童手当にともなう住民票の手続きは、単身赴任する側と残る側のどちらが受給者なのか次第で異なる点に注意しましょう。

住民票を移さないことによる5つのデメリット

住民票を移さないことによる5つのデメリット

住民票を移していないと、基本的には、その居住地に住んでいるという証拠がないことになります。そうなると、実際のところは困ってしまう場面もあり、次のようなデメリットも出てくるので要注意です。単身赴任期間が長くなればなるほど、住民票を移さないことによるトラブルや面倒事も増えやすく、特に以下のような点には気をつけておきましょう。

身分証明書が使えなくなるケースがある

各種身分証明書には、個人を特定できる重要な情報が記載されています。そのうちの住所が実際の居住地と異なっていると、身分証明書として使えない場合もあるので注意しましょう。

例えば運転免許証なら、住所変更に住民票や居住地を証明できる書類が求められるのが一般的です。そのため住民票がないと、運転免許証はずっと旧住所のままになってしまい、適切な身分証明書として認められない場合もあります。またマイナンバーカードなら、転入・転居届と並行して住所変更をするのが通常です。住民票の異動をしていないと、こちらも旧住所のままになってしまうので、単身赴任先では居住地の証明にできないケースも。とはいえ住民票のある地域に戻れば、今までと変わらず使用できます。

なおパスポートに関しては、住所が変更になった場合における、公的な手続きはありません。所持人記入欄にある旧住所を、二重線で消して訂正するだけでOKです。

単身赴任先の選挙に投票できない

単身赴任先の選挙に投票できない

選挙権が与えられるには、満18歳以上の日本国民・各市区町村に住民票がある・各市区町村の住民基本台帳に3カ月以上記録されている、という3つの条件を満たす必要があります。

つまり住民票を移動していないと、旧住所地での選挙権しかないため、新たな居住地では投票できません。住民票を移していないと、例えば県知事や市長などはもちろん、衆議院・参議院選挙といった国会レベルの投票も単身赴任先では対応できないことになります。

選挙では、各地域の決められた場所に行かないと投票ができないので、住民票を移さないとわざわざ旧住所地まで足を運ばなければなりません。特に単身赴任先が遠方だったり、なかなか帰省の時間が取れなかったりすると、投票ができない可能性も出てくるので注意しましょう。

公的書類が届かない

住民票を移していないと、運転免許証の更新通知やワクチン接種券など、公的な重要書類も旧住所のほうに届いてしまいます。家族に受け取ってもらえば問題ないかもしれませんが、直接自分の手元に届かない分、タイムラグが生じる点には注意が必要です。

さらにキャッシュカードやクレジットカードなど、より万全のセキュリティ対策を要する書類の場合、送付元が本人限定郵便を利用しているケースもあります。本人限定郵便では、まず宛先の住所まで、本体ではなく到着通知書が届けられます。そしてその到着通知書を持って、郵送を担当した郵便局の窓口まで行き、郵便物を引き渡してもらわなければなりません。なお本人限定郵便の窓口では、基本的には宛先の本人しか受け取りができない点にも要注意。住民票を移して住所変更をしておかないと、こうした重要書類が受け取れない可能性があるのはデメリットでしょう。

公的証明書を発行できない

例えば印鑑証明書は、基本的には印鑑登録のある住所地でしか発行できません。もし旧住所地で印鑑登録をしている場合には、そこに戻って発行手続きをする必要があります。また課税証明書や所得証明書などは、住民税と同様に、その年の1月1日に住民票があった地域でしか申請できないので注意しましょう。

ただし旧住所を記載した住民票を取得したい場合であれば、広域交付の制度により、全国どこでも発行できます。もちろん単身赴任先での取得も可能です。

自治体のサービスが受けにくい

例えば図書館をはじめ、住民登録が前提となっている公共サービスなどは、利用が制限される可能性もあるので気をつけましょう。もちろん行政サービスのすべてが制限されるわけではありませんが、住民登録がないと料金がかかるなどの場合もあるため、住民票を移していない時には注意が必要です。

ここまでに見てきたように、住民票を移さないとわざわざ旧住所で手続きしなければならないことも多く、何かと手間が発生しやすいデメリットがあります。住民票がなくても問題ないケースもありますが、ごく一部といえるでしょう。

ちなみに運転免許証の更新やパスポートの作成は、住民票がない場所でも、一定の条件を満たせば手続きができます。

例えば運転免許証なら、住民票を移していないと更新通知自体は旧住所に届きますが、単身赴任先で経由申請と呼ばれる特別な方法であれば手続きは可能。ただし経由申請にあたっては、旧住所地の収入証紙が必要・優良運転者限定など、いくつもの条件が設定されています。

なおパスポートについても、単身赴任者のように、特別な事情があれば新規作成できます。ただし勤務先住所がわかる社員証など、居住地を証明する書類がないと申請できません。

いずれにしても住民票を移していないと、煩わしい手続きになりやすいので要注意です。

住民票の移し方

住民票の移し方

単身赴任における住民票の異動は必須ではないですが、住民票を異動させる場合どのようにして住民票を移すか確認しておきましょう。

  • STEP 1 転出引越す前に市区町村の役所に行き「転出届」を提出し「転出証明書」をもらう
  • STEP 2 転入単身赴任先の市区町村の役所に行き「1.でもらった転出証明書」と「転入届」を提出する

【転入手続きに必要なもの】

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 印鑑
  • 転出証明書
  • 転入届

※自治体によって必要なものが異なります。事前に自治体のホームページをチェックしましょう

基本的に転出の際にもらう「転出証明書」には特に有効期限はありませんが、転入届は引越しをして住み始めてから、14日以内に提出しなければなりません。そのため転出届は、早めに取得しておいても問題はないでしょう。ただ転入するには、「転出証明書」がないと手続きできません。保管しておく期間を考えると、スケジュールの目安としては引越しの1週間前までに転出しておく程度がベターでしょう。

まとめ

いかがでしたか?単身赴任で引越しをする場合には、住民票を移すことは義務ではありません。とはいえ住民票を移していないと手続きが面倒になるケースも多く、もし長期間になるのであれば、きちんと居住地を変更しておくほうが無難かもしれません。
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執筆者

たけなつ

2019年よりフリーで活動しているWebライター。
広告会社でのコピーライターを経て、現在は幅広いジャンルのコラム記事などを執筆。
愛知・東京・北海道と各地を渡り歩き、19歳からの10年で7回引っ越しを繰り返す好奇心旺盛人。

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