個人事業主は賃貸を借りられる?入居審査や部屋探しのポイントを解説

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個人事業主は賃貸を借りられる?

少し手続きが複雑になりやすい部分もありますが、個人事業主も賃貸を借りること自体は可能です。賃貸の契約時には、物件を問題なく使用してもらえるか判断する意味でも、一般的には入居に向けた審査がおこなわれます。この入居審査に通りさえすれば、個人事業主でも賃貸を借りることができます。ただし後述しますが、個人事業主は入居審査に通過するのが難しい一面もあり、賃貸を借りづらいイメージも。また、個人事業主が賃貸を借りる場合、各物件の用途には幅広いパターンが考えられますが、よくあるのが「SOHO」と呼ばれる自宅兼事務所として入居するケースです。ちなみにSOHOとは、次のようなワークスタイルを指します。
SOHOとは?
SOHOは、個人事業主のなかでも居住用物件で仕事をするワークスタイルです。個人事業主の
ワークスタイルは、例えば自宅とは別のオフィスや店舗で事業をおこなったり、取引先に常駐して業務を遂行したりなど幅広くあります。そのうちSOHOは、自宅を事務所として使用する形態を指し、おもにデスクワークで完結する仕事が該当します。ちなみにSOHOは居住用として物件を借りるため、事業用の看板を出したり、不特定多数の来客を受け入れたりはできません。例えば飲食店としてお客さんを呼ぶような営業をするには、事業用として賃貸を借りる必要があります。
個人事業主が賃貸を借りる方法は2種類

個人事業主が賃貸を借りる場合には、その物件の使用目的に応じて契約方法が異なります。具体的には、次のような2種類に分けられます。
個人契約
個人契約は、自身が居住する自宅として賃貸を借りる方法です。個人事業主が住居用に物件を借りて入居する際には、個人契約に当たります。なお個人契約では借主自身の家賃の支払い能力を中心として入居審査がおこなわれ、物件を借りる際には、おもに以下のような書類の提出がもとめられます。
- 身分証明書
- 収入証明書
- 住民票、印鑑登録証明書
個人事業契約
個人事業契約は、事業をおこなう拠点として賃貸を借りる方法です。個人契約では物件用途が自身の住居専用に限定されるのに対し、個人事業契約ではオフィスや店舗などの営業拠点とする目的で借りることになります。もしくは個人事業主が雇っている従業員を住まわせる場合にも、個人事業契約をします。なお個人事業契約では、事業そのものの収益性や安定性、信頼度などを軸とした入居審査がおこなわれるため、おもに以下のような営業関連の資料も含めた書類提出が必要です。
- 身分証明書
- 収入証明書
- 住民票、印鑑証明書
- 事業計画書、収支計画書
- 確定申告書
- 課税証明書
個人事業主が賃貸を借りづらい理由

個人事業主が賃貸を借りる際には、おもに次のような理由から、入居審査に通りづらい一面もあります。
収入面を不安視されやすいから
個人事業主は、一般的な会社員などのように決まった給与で雇用されているわけではありません。収入額は個人の実績などに左右されやすく、毎月安定して確保できる保証がないため、継続して家賃が支払えるのか不安視されやすい一面があります。特に独立して日が浅い段階では、まだ事業の収益性が確立しきれていないケースも多いと考えられやすく、入居審査が通りづらい傾向が見られます。
セキュリティ上の問題があるから
仮に営業拠点となる事業用として物件を借りる場合、不特定多数の来客がある可能性も不安視されやすい部分です。人の出入りが多くなればなるほど、不法侵入や強盗などのリスクも高まるため、セキュリティ面に問題があると判断されやすい一面があります。もし来訪者が多くなる業態であれば、不特定多数の来客にも対応できそうな、建物自体の防犯性が高い物件を選ぶのが無難です。
大家さんの税金負担が増えるから
居住用の物件は、住宅用地の特例措置により、その建物がある敷地にかかる固定資産税や都市計画税は軽減されます。つまり居住用物件として賃貸に出すことで、その建物の所有者となる大家さんが負担する固定資産税や都市計画税は、減税されることになります。これを個人事業主の事業用として賃貸契約をしてしまうと、住宅用地の特例措置が適用されなくなり、税負担が増えてしまうケースも。そのため物件によっては、事業用として借りることができない場合があります。
建築基準法に違反する恐れがあるから
建築基準法では、各建物の用途に応じて、建てられる場所などの規制を設けています。例えば居住用物件と事業用物件では、その建物を建てることが許可される土地などは異なってきます。そのためもともと居住用として建築されている物件を事業用で賃貸に出してしまうと、違法になってしまうリスクも。こうした建築基準法に抵触してしまうことから、物件によっては事業用としての賃貸契約をしていないケースもあります。
個人事業契約の場合、書類の準備が大変だから
先ほども出てきたように、個人事業契約を結ぶ場合には、事業に関する資料なども用意しなければなりません。そもそも入居審査を受けるまでに、必要な書類を準備するハードルが高い一面も。こうした手続きの複雑さも、個人事業主が賃貸を借りにくいと感じやすい部分でもあります。
個人事業主が入居審査で見られる項目

前述したように、入居審査ではさまざまな証明書などを確認したうえで、入居を許可して問題がないかの判断がおこなわれます。なお入居審査でチェックされるポイントとしては、おもに次のような項目があります。
本人確認の書類
まずは正式に契約できる身元であるかのチェックに向けて、身分証明書による本人確認がおこなわれます。なお本人確認書類として求められるのは、一般的には顔写真付きの身分証明書で、運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなどを提示するのが通常です。
収入がわかる資料
家賃の支払い能力に問題がないか確認するために、入居審査では契約者の収入を示す資料が求められます。個人事業主が居住用の個人契約をする際には、確定申告書・納税証明書・課税証明書・所得証明書・取引先による支払調書などを提示します。また個人事業契約になると、事業計画書や収支計画書などの資料を提出して、毎月家賃が確保できる経営状況を証明します。
住民票や印鑑証明書
不動産会社や物件オーナーによっては、なりすまし契約防止などの目的で、身分証明書に加えて住民票や印鑑証明書が求められる場合も。自治体が発行する住民票や印鑑証明書を提示してもらうことで、本人による正式な契約である証拠とするケースも見られます。
保証会社による審査
物件のなかには、家賃滞納などのトラブル対応に向けて、保証会社が入っている場合も多くあります。保証会社では、入居者がどうしても家賃などを支払えない場合に、代わりにその債務を担うことになります。そのためきちんと滞りなく家賃が支払えることを示すために、前述にもあるような収入証明書などの確認がおこなわれます。
緊急連絡先の通知
賃貸契約では、災害時の安否確認や家賃滞納・失踪などのトラブル対応のため、緊急連絡先の提示を求められるのが一般的です。どうしても入居者本人と連絡がつかない時など、万が一の備えとして必要になるもので、通常は両親をはじめとした親族(成人)などを緊急連絡先として設定します。
個人事業主が賃貸を借りる際のポイント

では個人事業主が問題なくスムーズに賃貸を契約するために、知っておきたいポイントも見ていきましょう。
家賃を収入の20~25%に抑える
収入に見合わない賃料の物件を借りようとすると、やはり家賃の支払い能力の問題から、どうしても入居審査は通りづらくなってしまいます。家賃が高くなればなるほど、当然ながら入居審査は厳しくなるので、自分の状況に適した賃料の物件を選ぶのが無難です。なお入居基準となる大体の目安として、収入の20~25%までの賃料といわれています。自分の収入に対して、実際に住みたい物件の家賃がどれくらいの割合になるのか、一度確認してみましょう。
不動産会社や大家さんに相談する
現状の収入面に不安があったり、家賃の支払い能力を示すのが難しかったりする際には、あらかじめ不動産会社や大家さんに相談しておくのも一つの方法です。場合によっては事情を理解してくれて、入居を許可してもらえる可能性もあります。例えば今後どう収益していくのか、しっかりと説明することで信頼を得られるケースも少なくありません。自分の事情をごまかさずに伝えることも、入居を認めてもらいやすくするためのポイントです。
貯金額を提示する
例えば独立や開業をしたばかりの段階や、収入の安定性を示すのが難しい場合でも、銀行の残高によって家賃の支払い能力が認められるケースもあります。実際に一定期間の家賃をまかなえる貯金があることを示して、入居を許可してもらう方法を「預貯金審査」と呼びます。ある程度の資産を保有している時には、この預貯金審査によって契約するのも一つの手段です。
連帯保証人を立てる
滞りなく家賃などの支払いができることを示す意味では、信用性の高い連帯保証人を立てるのも有効な方法です。万が一の時に家賃などの負担ができる連帯保証人を付けておくことで、収入面に不安があっても、入居審査が通過できる可能性があります。もし十分に収入を確保できる、両親や兄弟・姉妹などの親族に頼れるのであれば、連帯保証人をお願いしてみるのもよいでしょう。
身だしなみを整え誠実な態度を心がける
入居審査では、近隣住民とのトラブルなどの問題を起こさない人物か、入居希望者の人柄もチェックされています。不動産会社や大家さんとやり取りする際には、きちんとした身だしなみで、なるべく丁寧な対応を心がけることも大切。しっかりと誠実な姿勢で受け答えをして、確かな信頼を得ることも、より入居審査を通りやすくするためのコツです。
登記可物件を探す
もし将来的な法人化を検討しているのであれば、登記ができる物件を探してみるのもいい方法です。登記ができる物件なら、そもそも事業をともなうことを前提としており、個人事業主でも契約がしやすい可能性も高いでしょう。また物件によっては、事業用になっていても登記が許可されていない場合もあります。ゆくゆくは法人化するのであれば、あらかじめ登記可の物件を選んでおくのもベターです。
個人事業主が賃貸物件を契約できなかった場合の対処方法

もし個人事業主で事務所にできそうな賃貸が見つからなければ、以下のような方法を検討してみるのもおすすめです。
レンタルオフィスを借りる
レンタルオフィスは、事業用物件を直接借りるのではなく、貸事務所のサービス会社を通じて事業スペースを確保できるものです。一般的には什器やOA機器なども用意してもらえるため、手軽に事業スペースとして利用できるメリットがあります。さらにレンタルオフィスであれば、開業や登記ができる場合も多数。ただし月々の利用料は割高になりやすいので、資金繰りなど十分に検討する必要があります。
シェアオフィス・コワーキングスペースを利用する
シェアオフィスやコワーキングスペースは、一つの空間を複数の個人事業主やビジネスパーソンで共有して、事務所として活用できるサービスです。1日単位や月単位など利用頻度も柔軟で、比較的自由に使いやすいのがメリット。またシェアオフィスやコワーキングスペースでも、登記などに対応している場合もあります。ただし不特定多数の利用者で同じ場所をシェアするため、プライバシーの保護や情報漏えいなどには十分な注意が必要です。
バーチャルオフィスを利用する
バーチャルオフィスは、その名のとおり仮想上の事務所として、住所や電話番号などのオフィス情報のみ利用できるサービスです。物理的な拠点を借りるのではなく、開業や登記上などのデータだけを使うことが可能。どこかの空間自体を利用するわけではないので、料金も比較的リーズナブルに済む特徴もあります。
まとめ
最後に、個人事業主が賃貸を借りる際に、よくある質問をピックアップしてまとめていきます。
個人事業主は賃貸を借りられる?
個人事業主でも、各物件の入居審査に通過できれば、賃貸の契約自体は可能。自宅にするなら居住用の個人契約、事務所にするなら事業用の個人事業用契約というように、物件の用途に合わせて借りることができます。
個人事業主が賃貸を借りる際のポイント
個人事業主が賃貸を借りるには、家賃の支払い能力をしっかりと示して、入居審査に通れるように対策することが重要。収入額に見合った賃料の物件を選ぶのはもちろん、貯金額や連帯保証人の提示など、家賃の継続的な支払いができることを明確にしましょう。また事前に不動産会社や大家さんに相談したり、誠実な対応を意識したりなど、貸主からの信頼を得るための心がけも大切です。
個人事業主が賃貸物件を契約できなかった時はどうすればいい?
もし事業を営むための賃貸契約ができなかった場合には、レンタルオフィス・シェアオフィス・コワーキングスペースなど、仕事用のスペースを借りられるサービスを利用しましょう。また登記や開業のための事業用の住所のみ必要としている場合には、バーチャルオフィスを使うのも一つの方法です。
個人事業主が賃貸を契約するには、一般的に部屋を借りるよりも手続きは複雑にはなりますが、きちんと準備さえしておけば不可能ではありません。いずれにしても入居審査に通ることが重要なので、家賃の保証や収入証明など、万全な用意をしておくことで契約もスムーズにできます。また事務所としての賃貸が難しい際には、レンタルオフィスやコワーキングスペースなどの事業向けサービスを利用する方法もあります。もし個人事業主で賃貸契約をお考えであれば、ぜひ本記事を参考にしながら手配を進めていきましょう。
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