リノベーションマンション事例「大きなカウンターと土間で趣味を存分に楽しむ至福の家時間」

パンパス、ミナヅキ、バラ、アジサイ…キッチン前のカウンターは花尽くし。広々としたカウンターは料理はもちろん、ドライフラワーを嗜む奥さまがアレンジを手がけることもあれば、ご主人が趣味のコーヒーを挽き、時には友人たちと団欒することも。「クラフトカウンター」と名付けられたこのカウンターは、さまざまな愉しみを受け入れる「居場所」なのだ。

幅1.8m×奥行1.1mのクラフトカウンター。料理はもちろんドライフラワーやワイヤーアートなど趣味のものづくりをする場。ゲストを招いた時は団欒の中心にも。

Kさん夫妻が築40年のマンションをリノベーションするにあたって、建築家の石本輝旭さんがコンセプトに掲げたのが、夫妻がいそしむ多彩な趣味を楽しめる家だ。ご主人は長年にわたり革靴の蒐集・手入れを嗜み、アウトドアやワイヤーアートも愛好する。一方、奥さまは料理やフラワーアレンジメントを楽しみたいという意向が。寝室や書斎は最小限の広さにとどめ、その分LDKを広く確保し、そこで二人が時間を共有しながら、それぞれ好きなことに取り組めることを願い、多目的に使えるカウンターを設けた。また、ご主人のアウトドア用品の収納や革靴の手入れのために約7畳の玄関土間を計画。奥さまが制作したドライフラワーやご主人のワイヤーアートが飾られ、ギャラリーのような空間になっている。

土間で革靴の手入れをするご主人。蒐集は大学生の頃から。棚にオープンに並べているのは、好きなものを目にする喜びに加え、湿気を飛ばす効果も。

LDKにゆとりをもたせるため、書斎の面積は最小限に。床も壁もミモザフローリングのヘリンボーン仕上げで統一。職人が１枚１枚手仕事で張り合わせた労作だ。

リビングから土間を見通す。右手の室内窓の先には、約2畳のご主人の書斎が。

ポートランドで出会ったワイヤーアートの愉しみ。モチーフは猫。

空間のディテールを詰める上でキーワードとなったのが、年月とともに成熟してゆく空間。手入れを重ねることで味わいを増していく革靴や、時間をかけて乾燥させるドライフラワーなど夫妻の趣味に着想を得て、玄関土間のモルタルのクラックに金継ぎを施したり、真鍮の照明や蝋引きのカーテンを用いるなど、美しく経年変化する素材使いを心がけた。

土間のモルタルはご主人手ずからクラックに金継ぎを施した。

土間からリビングを見通す。収納の目隠しカーテンは皺が刻まれる蝋引きの頒布を使用。

LDKは白を基調とし、無垢の木 の家具のあたたかみを引き出すように。プレーンな白い壁や「クラフトカウンター」とデザインを統一した壁際の収納棚も、夫妻の思い出の品々を飾れる場所として位置付けている。

と笑う夫妻。手を動かすたびに思い出がどんどん蓄積されていく。愛着のある家へと育てる愉しみに満ちた住まいだ。

鹿の角にドライフラワーをあしらってオブジェに。

建物データ

〈専有面積〉104.14㎡〈バルコニー面積〉42.5㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1982年〈リノベーション竣工〉2019年〈設計期間〉4ヶ月 〈工事期間〉4ヶ月〈設計〉CURIOUS design workers 一級建築士事務所〈施工〉鳳建築

※この記事はLiVES Vol.113に掲載されたものを転載しています。
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