リノベーションマンション事例「土間を第二のリビングに活用。大空間を多目的に使いこなす」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、奈良県奈良市の藏本さんご夫妻の事例をご紹介します。部屋数を最小限にとどめ、スムーズな動線を確保し、ゆとりを生み出す。過ごし方の幅が広がる多面性のある住まいにリノベーション。（text_ Makiko Hoshino photograph_ Takashi Daibo）
藏本さんご夫妻が暮らすのは、四辺がきれいに東西南北に向いた正方形のマンション。光の注ぐ南側の辺をいっぱいに使ってLDKに。水まわりを挟み、北側に土間と和室を配している。対極に置かれたLDKと土間・和室は、ほぼ同じ面積だ。
リノベーション会社でデザイナーとして仕事をする傍ら、料理にアウトドア、植物アレンジ、DIYと、趣味に事欠かないご主人は、その好奇心を大らかに受けとめてくれる家を望んでいた。昨春リノベーションした物件は日当たりが抜群。正方形だと部屋や動線を描きやすいと、可能性を感じたという。
「多様に過ごせる面白い家にしたくて、趣向の違うLDKを南北につくり、二面性を持たせた構成にしています。細かく区切らず、少数の部屋をゆったりとつくり、互いがゆるくつながるようにしました」（ご主人）
和風住宅に親しみを持っていたご夫妻。土間の向かいは縁側を備えた和室に。「ベッドを置くと寝るだけの部屋になるし、布団の方がいい」と、寝室兼用にして、シーンによって客間や日中の居室として使っている。各部屋を結ぶ通路の幅には余裕があり、引き戸を開ければワンルームのような一体感も得られる。
「各空間の面積は滞在時間に合わせる」という考えのもと、無駄なスペースを徹底して省いたのもポイントだ。トイレや脱衣所は最小限に。所有物はWICに集約し、居室に収納を設けずに済むように努めた。
合理的な動線もこだわりの一つ。WICと水まわりを中心に据えて、どの部屋からも行き来しやすく。直線上に並べることで「顔を洗い、着替えてLDKへ」といった、日常で集中する生活動線がシンプルかつ最短距離になるようにした。さらに浴室と洗面室は離して配置。どちらかが入浴中でも気軽に手を洗ったり、歯を磨いたりすることができる。
キッチンは油はね防止と省スペースの観点から壁付けに。北欧の食器や民芸のコレクションを作業台やオープン棚にディスプレイ。
「空間にゆとりがあると心がおだやかに。北側の土間は朝に射し込む光がやわらかで、夏は涼しいので、こちらがリビングです。縁側でお茶を飲んでは和んでいます」（奥さま）
「土間では植物の手入れやDIYのほか、本を読んだり、アウトドア風にテントを張ったり。開放的な空間になり、インテリアを変える喜びも増えました」（ご主人）
ますます発想を湧かせ、暮らしを楽しんでいる。
引き込み戸の戸袋の厚みを利用してトグルスイッチを設置。
縁側にはなぐり加工の木材使用。ドアレールは真鍮製。
建物データ
〈専有面積〉88.69㎡〈バルコニー面積〉23.10㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1981年〈リノベーション竣工〉2018年〈設計期間〉3ヶ月 〈工事期間〉3ヶ月〈設計〉藏本恭之／リノベる。〈施工〉ディライトハウス
●Madori Memo「趣向の違う3つの空間を南北に配置」
滞在時間の少ないトイレや脱衣室をコンパクトにまとめて広めのLDKと和室、土間を確保。水まわりを境に、これらを南北に振り分けた。それぞれ表情の違うゆったりとした空間で、さまざまな過ごし方ができる。
※この記事はLiVES Vol.104に掲載されたものを転載しています。
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