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リノベーションマンション事例「身の丈サイズが心地いい。20代施主が求めたひとつながりの空間」

雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都港区の山本さんの事例をご紹介します。ひとり暮らしに過不足のない広さと柔軟な間取り。都心のど真ん中で、友人らとくつろいだり、実り多い自分だけの時間を楽しむ。(text_ Eri Matsukawa photograph_ Osamu Kurihara)

「壁が斜めだったり、フロアが雁行していたり、住戸のかたちが面白くて。この個性を活かして面白いものがつくれるんじゃないかと思いました」

そう話す山本さんは、当時25歳という若さで住宅取得を実現。スマサガ不動産に物件探しから依頼し、都心に建つ中古マンションをリノベーションした。目指したのは、背伸びをしない等身大の家づくり。43・5m2のフロアを間仕切りのないワンルーム状の空間にして、バスルームと冷蔵庫・洗濯機を背中合わせに固め、まわりに各スペースを配置。キッチンとリビング、寝室は床の高さと仕上げにそれぞれ変化をつけている。
いちばん高い位置にあるのがフローリング張りの寝室で、2番めに合板張りのキッチン、コンクリートを露出させたリビングの床がもっとも低い。寝室からリビングを見ると少し俯瞰するような感じになり、立体的な空間の広がりがある。寝室の床とバルコニーに敷いたウッドデッキの高さを揃え、外への連続感を生み出したことも広さを感じさせる要因だ。

小上がりの寝室は床レベルを掃き出し窓の下端に合わせた。フローリング張りなので腰もかけやすい。
コンクリートの質感を活かした無機質なリビングと木調のキッチンのコントラストが鮮やか。ダイニングテーブルは、TENOHA代官山の什器だったものを購入。

集成材で造作したキッチンにはアクセントにスチールの幕板を添えた。下に収まる左右のボックスは山本さんがDIY。床は構造用合板でラフな表情に。

室内の床と高さを合わせたデッキ張りのバルコニー。

寝室の片隅にはコンパクトな洗面コーナー。スチール板にステンレスのボウルを組み合わせ、動線の邪魔にならないよう斜めに削いだかたちにデザイン。

苦心したのがバスルームのあり方。リビングや寝室の広さを確保するため、バスルームをいかにミニマムに抑えるかが課題だった。そこで、ユニットバスを用いず、寸法を自由に設定できるFRPで造作。快適性や使い勝手を保てるギリギリのサイズを追求し、脱衣スペースにもバスルームにも扉を付けないことに。すると脱衣スペースはバスルームの延長空間になり、寝室からクローゼットへと抜ける通路としても利用でき、回遊性が生まれて便利さが増す結果になった。

左・キッチン横のFIX窓は東南に面していて明るい。壁の塗装は山本さんがDIYで行った。/右・左手前が洗面、右側が浴室。通路の奥にWICと玄関が続き、行き止まりがない。
フォンテトレーディングのシンプルなバスタブを置いたFRPの造作バスルーム。小さなスペースなので、間仕切りや扉は付けず、通路の面積も取り込んだ。

キッチンの背面に洗濯機と冷蔵庫をコンパクトに収めた。

WICと玄関を隔てる壁は構造用合板。この壁を飾って楽しめる程度にゆとりがある。白いドアはトイレで、位置は以前のままだが玄関土間側にドア位置を変更。

「広すぎても狭すぎても気持ちが悪い。この家はスペースや機能にまったく無駄がないので、すごく気持ちがいいんです」

コスト面でも「身の丈に合う」ことを目指し、家具のつくり込みはせず、合板などのラフな素材も利用。塗装を自ら行い費用を抑えた。無機質な中にもぬくもりのある落ち着いたトーンに仕上がり、心静かな時間を過ごせる住まいになっている。 「プライベートな時間の質を高めたい」と始めた家づくりは、場所選びにも成功したようだ。

「以前は電車通勤でしたが、歩いて通える場所に引っ越すことで心理的な負担が減り、時間の使い方も変わりました。街を含めた“間取り”もうまくいったんじゃないかな」

明るい窓辺のリビングはソファを置いて読書コーナーに。

建物データ

〈専有面積〉43.54㎡〈バルコニー面積〉11.24㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1980年〈リノベーション竣工〉2018年〈設計期間〉5ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月〈プロデュース・設計〉スマサガ 不動産〈施工〉BACON

※この記事はLiVES Vol.104に掲載されたものを転載しています。
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