リノベーションマンションとお金の話[4]住宅ローン減税の活用と注意点
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リノベーションマンションの購入でも利用できる住宅ローン減税とは?

住宅ローン減税(正式名称「住宅借入金等特別控除」)とは、一戸建てを建てたりマンションを購入したりして住宅ローンを借りた場合、一定の条件を満たす場合に住宅ローン残高(元金)から算出した金額を、一定期間の所得税・住民税から控除する制度です。
ぜひ活用したい制度ですが、具体的にどのくらいの金額が控除されるのでしょうか? また、利用のための条件は? そこで今回は住宅ローン減税の控除額を解説するとともに、リノベーションマンションにおける住宅ローン減税の適用ポイントを解説します。
そもそも住宅ローン減税を使うと、どのくらいおトク?
住宅ローン減税を利用すると、購入した住宅に住んだ年(※1)から10年間、毎年末のローン残高の1%にあたる金額が、所得税・住民税から控除されます。
※1:平成33年12月31日までに入居した場合
なお、控除金額の上限についていくつかポイントがあります。それは、どんなことでしょうか?
1.控除金額の上限は40万円
「ローン残高のうち1%」が控除金額になるため、上限の40万円の控除を受けられるのは4000万円以上借りている人です。
実際には、返済をスタートする月や端数処理によっても変わってきます。ちょっと概算をシミュレーションしてみましょう。
●ローン借入額が2,000万円の場合
借入額 ¥20,000,000
返済期間 35年
金利 全期間固定/1.33%
返済方法 元利均等
ボーナス払い なし
返済総額 ¥25,025,736
毎月の返済額 ¥59,585
1年の返済総額 ¥715,020
ローン残高 | 控除金額 | |
---|---|---|
1年目 | ¥19,962,582 | ¥199,600 |
2年目 | ¥19,548,231 | ¥199,600 |
3年目 | ¥19,090,418 | ¥190,900 |
4年目 | ¥18,626,478 | ¥186,200 |
5年目 | ¥18,156,330 | ¥181,500 |
6年目 | ¥17,679,891 | ¥176,700 |
7年目 | ¥17,197,076 | ¥171,900 |
8年目 | ¥16,707,801 | ¥167,000 |
9年目 | ¥16,211,979 | ¥162,100 |
10年目 | ¥15,709,522 | ¥157,000 |
【控除金額の合計……¥1,788,300】
●ローン借入額が3,000万円の場合
借入額 ¥30,000,000
返済期間 35年
金利 全期間固定/1.33%
返済方法 元利均等
ボーナス払い なし
返済総額 ¥37,538,604
毎月の返済額 ¥89,378
1年の返済総額 ¥1,072,536
ローン残高 | 控除金額 | |
---|---|---|
1年目 | ¥29,943,872 | ¥299,400 |
2年目 | ¥29,322,348 | ¥293,200 |
3年目 | ¥28,635,627 | ¥286,300 |
4年目 | ¥27,939,717 | ¥279,300 |
5年目 | ¥27,234,495 | ¥272,300 |
6年目 | ¥26,519,837 | ¥265,100 |
7年目 | ¥25,795,615 | ¥257,900 |
8年目 | ¥25,061,702 | ¥250,600 |
9年目 | ¥24,317,968 | ¥243,100 |
10年目 | ¥23,564,282 | ¥235,600 |
【控除金額の合計……¥2,682,800】
なお、「認定長期優良住宅」または「認定低炭素住宅」の場合は、控除額の上限が50万円となり、ローン残高が5,000万円以上の場合、上限の50万円分が控除されます。
2.控除を受けられる金額の上限はその年の所得税と住民税の範囲内
住宅ローン減税は、まず控除額が所得税から差し引かれます。その上で、控除額が残っている(控除額より所得税の方が低い)場合は、さらに住民税から差し引かれる、という仕組みになっています。つまり、所得税や住民税の金額以上に控除を受けることはできません。
【計算例:平成29年末時のローン残高が3,000万円の場合】
住宅ローン減税の控除額は30万円
平成29年の所得税は15万円、住民税は30万円(年収約600万円・単身者など)
住宅ローン減税30万円-所得税15万円=所得税は全額控除、控除残額15万円 控除残額15万円のうち、住民税からも一定額(上限136,500円)の減税をうけることができます。その結果、納税する住民税は16.35万円(本来の30万円-住民税減税分13.65万円)に抑えられます。
返済を進めてローン残額が少なくなれば、それだけ毎年の控除金額も減っていきます。返済をスタートした月や端数処理の計算方法などで多少金額が変わることもあります。自分の場合の控除金額がいくらになるのか、借入先の金融機関や各不動産会社にも問い合わせてみましょう。
リノベーションマンションで住宅ローン減税を利用する時のポイント1【築25年以下かどうか】
ここからは、リノベーションマンションの購入で住宅ローン減税を検討している人のために、注意すべきポイントを解説します。
リノベーションされたものを含む中古マンションで住宅ローン減税を受ける条件のひとつに、「家屋が建築された日からその取得の日までの期間が20年(マンションなどの耐火建築物の建物の場合には25年)以下であること」というものがあります。
風呂内さん「リノベーションされている・いないを問わず、築年数が25年超の中古マンションは、住宅ローン減税を受けることができません。ただ、築年数が長い物件はそのぶん価格が安くなる傾向があるので、減税と価格の安さ、どちらを取るかはその人の価値観と言えますね。
リノベーションマンションで住宅ローン減税を利用する時のポイント2【床面積は「内法」で「50平方メートル」以上あるか】
住宅ローン減税を受ける条件のひとつに、「取得した住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものであること」があります。マンションの場合「専有部の床面積が50平方メートル以上」が、減税の対象になるわけですが……。
風呂内さん「ここでのポイントは、住宅ローン減税適用の条件は「“内法(うちのり)”で床面積50平方メートル以上」であることです。内法とは「建物の床面積を測定する際に壁の厚みを考慮せず、壁の内側の部分の面積だけを床面積とする考え方」です。それに対して「壁の厚みの中心線を想定し、この中心線に囲まれた面積を床面積とする考え方」のことを「壁芯(かべしん・へきしん)」と言います。
内法に比べて、壁芯は壁の厚み分だけ床面積が増えます。つまり、壁芯で50平方メートルの場合、内法で見た場合は47平方メートルくらいになってしまうのです。内法で50平方メートルを確保するには、壁芯で53平方メートルくらいは必要ですね。
実は、物件のチラシなどに載っている床面積は壁芯の数字がほとんどなのです。都心のマンションには床面積50平方メートル前後の物件がけっこうありますので、もし住宅ローン減税制度の利用を考えているなら、「内法50平方メートル」=「壁芯53平方メートルくらい」を踏まえて探してみてください。」
今回のまとめ
住宅ローン減税を利用すれば毎年の負担を軽減できます。家計の管理に利用するもよし、固定資産税の支払い費用に充てるもよし。自分に合った方法で賢く利用するのがポイントです。住宅ローン減税を利用できるかどうかは、各不動産会社にお問い合わせください。
リノベーションマンションで住宅ローン減税を考えるなら、「築25年以下」「内法で床面積50平方メートル以上」がポイント。「25」と「50」、覚えやすい数字ですね。その他にも、住宅ローン減税には細かい条件がいくつかあります。国税庁のサイト「No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」を確認してみてください。
住宅ローン減税を適用できない物件は、そもそも築年が古かったり、床面積が狭くコンパクトな住戸だったりして、販売価格が低いケースが多いはず。住宅ローン減税を使わず、そもそも安い物件を選ぶ、という選択肢もありますね。

●アドバイザー:風呂内亜矢
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、
CFPR認定者、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー。近著に「その節約はキケンです」(祥伝社)、「デキる女は『抜け目』ない」(あさ出版)など。
http://www.furouchi.com/