
リノベーションマンション事例「寝台列車のような子どもスペースと機能的な動線が家族を笑顔にする」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都荒川区の濱田さんご家族の事例をご紹介します。コンパクトなマンションを5人家族が快適に過ごせる住まいに整えるには?スムーズな動線を実現しながら楽しさも満載の住まいを拝見。(text_ Satoko Hatano photograph_ Takuya Furusue)
「皆でごはんを食べるといった家族の時間を大切にしたい。とにかく平日はバタバタしているので」
そう話すのは、会社員の濱田卓さんと看護師の綾さんご夫妻。長男で小学1年生の慶太くんと次男の優斗くん、三男の智也くんからなる5人家族の日常はいつも忙しくにぎやかだ。出勤前と帰宅して子どもたちが寝るまでの限られた時間は、身支度と家事で終わってしまうという。自ずと、家事の時間をいかに減らし、家族の時間を確保するかが課題に。
「住んでいた社宅は使い勝手が悪く、新居には快適な動線を求めました」
と話す卓さん。慶太くんの小学校区内で中古マンションを探し、専有面積約67㎡の物件をリノベーションすることに。設計はリノベ事業者のリビタから紹介された、建築家で3児の母でもある江ケ崎雅代さんだ。

「LDKではオープンキッチンとダイニングを一体的に利用できます。出来たての料理をすぐ食卓に並べられて、子どもたちが収納からお箸やお皿を準備して、みんなそろって“いただきます”という具合に」
江ケ崎さんの言葉から、ご家族の生活シーンが目に浮かぶ。キッチンを中心とした回遊動線で配膳も片付けもスムーズ。子どもの手が届く低い棚も用意して手伝いやすくした。また、洗面台も身支度の動線を考えて通路上に配置されている。


キッチンカウンターの面材には、白木の床材に合わせて木目を揃えたタモ材の突き板を使用。壁面収納を充実させて置き家具をなくし、使える床面積を確保する。

LDKの広さを優先しながら残ったスペースで子ども室と寝室のやりくりをする必要があるが、ここにも濱田家ならではの特徴が。綾さんは、
「基本的にドアはいらないです。どうせ子どもが開け放つし、それほど寒くないので。広さや動きまわれること、限られた窓からの光を遮らないことが大事でした」


たしかに、水まわり以外の室内扉がない。玄関とLDKをつなぐ通路の両側では、内窓をもつ袖壁だけで寝室と子どもスペースが緩く分節されている。寝室窓からの光が内窓を抜けて通路や子どもスペースまで届き、家の中に窓の向こうの景色が広がる。3兄弟の子どもスペースは6畳ほどだが、上がベッドで下がデスクになるロフトを造作して空間を立体的に活用。寝台列車や秘密基地のようなこもり感があり、子どもたちのお気に入りの場所になっている。


子どもスペースに造作したロフトは上部がベッドで下部がデスク。デスクは中央の間仕切りの両側から使用できる。袖壁の内窓には棚板があり兄弟の作品が並ぶ。

「風景が記憶に残るような家」を目指したご夫妻と江ケ崎さん。その思いが合理的な動線や採光計画のなかに遊び心のある空間を生んだ。


洗面台の壁には綾さんが選んだモザイクタイルを張った。


ウォークインクローゼット内の引戸はトイレ。空間節約術だ。
建物データ
〈専有面積〉66.90㎡〈バルコニー面積〉8.46㎡〈主要構造〉鉄骨鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1997年〈リノベーション竣工〉2016年〈設計期間〉2.5ヶ月〈工事期間〉2.5ヶ月〈設計〉e do design 一級建築士事務所〈施工〉栗林工務店 〈コンサルティング〉リビタ

※この記事はLiVES Vol.92に掲載されたものを転載しています。
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