リノベーションマンション事例「多彩な木材×左官仕上げ。テクスチャーを楽しむ住まい」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、神奈川県茅ヶ崎市の藤原直樹さん、キリさんご夫妻の事例をご紹介します。古材と新材を織り交ぜながら、質感豊かな空間を実現。木材、左官の壁などさまざまな自然素材を適材適所に使用したリノベーション。(text_ Kiyo Sato photograph_ Osamu Kurihara)
結婚を機に江ノ島を望む約70㎡のマンションをリノベーションした藤原直樹さん、キリさんご夫妻。オープンなLDK、水まわり、寝室というシンプルな間取りだが、内装材や建具、造作家具にイエローパインやチーク、スプルス、ボルドーパインといった多彩な木材が使われている。味わい深い古材も目を引く。
ダイニングの壁一面にもタイのチーク材を使用。ダイニングテーブルは引越し後にイエローパイン材で造作。エイジング加工を施しカウンターの素材となじませた。
設計・施工を手掛けたのは、ティープラスターの水口泰基さん。藤原さんご夫妻は、横浜市内にある同社の工房やガレージを訪れ、あらかじめ使いたい建材を決めた上で、家づくりを進めていったという。
「実は以前の住まいも水口さんにお願いして。その時はアメリカ西海岸風のインテリアでしたが、今回は趣向を変えてみようかと。当初ログキャビンのような明るい空間をイメージしていたのですが、ティープラスターの工房で見て気に入ったチーク材に合わせて、ダークな雰囲気にまとめることにしました」
と話すのは奥さまのキリさん。タイの邸宅で使用されていたという珍しいチーク材は、一枚一枚風合いや色が異なり、存在感も抜群だ。
玄関横が寝室。スプルス材を使用した設計者オリジナルの引き戸はダークな色合いに塗装し、全体の雰囲気と統一している。トイレや廊下の扉も同材で造作した。
「主張が強い分、全面に使うと圧迫感が出てしまうので、リビングとダイニングの壁一面や建具に使ってバランスを取っています。木材はエネルギーが強い素材。モルタルやオリジナルの珪砂入り左官仕上げといった木に劣らない存在感のある自然素材を合わせて、空間全体に統一感を出しました」(水口さん)
洗面スペースの壁は、アメリカやハワイの建物に多く見られる珪砂入りの左官仕上げ。左官業を得意とするティープラスターのオリジナル。
キッチンまわりや玄関収納、テレビボードは味わいのあるパインの古材を使用する一方、ダイニングテーブルに用いた新品のパイン材はエージング加工を施して風合いをなじませている。さらに、ボルドーパイン材張りにした床はダークな色合いに塗装して全体のトーンをそろえた。そうして出来たテクスチャー感のあるラフな空間に趣味のサーフィンボードやハワイアンテーストの雑貨がアクセントになり、湘南らしいおおらかな雰囲気をまとっている。
「サーフィンやフラダンス、ウクレレなど趣味でつながった友人たちを大勢呼んで集まるのが好き。夜になると陰影がきれいでバーみたいな雰囲気になるのも気に入っています」(キリさん)。
木材と左官仕上げをミックスしながら仕上げた藤原さん宅。訪れた人が長居してしまう心地良い住まいが完成した。
インドアグリーンを並べたLDKの窓際のみ床を左官材「モールテックス」で仕上げた。バスルームにも使用できるほど耐水性が高く、水やりもストレスフリー。
寝室は奥さまの要望で、壁一面に味わいのある足場板を使用。アクセントウォールにモンステラのアートが映える。
トイレの扉に知人のステンドグラス作家が制作したガラスを。
【気になる木使いポイント】How to use WOOD
樹種や色味を統一してまとまりをキープ
造作家具や建具の大半はイエローパイン材で、床材もボルドーパインを選ぶなど樹種を統一しているため空間が散らばった印象にならない。
アンティークの木製扉や古材を取り入れる一方で、新しい素材はエイジング加工を施して新旧の素材をうまく調和させている。また、仕上げに着色塗料を用いて全体の色味をそろえるのも統一感を出すポイントの一つ。
建物データ
〈専有面積〉73.66㎡〈バルコニー面積〉9.2㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1986年〈リノベーション竣工〉2018年〈設計期間〉1ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈設計・施工〉ティープラスター
※この記事はLiVES Vol.106に掲載されたものを転載しています。
※LiVESは、オンライン書店にてご購入いただけます。amazonで【LiVES】の購入を希望される方はコチラ