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リノベーションマンション事例「すべてのものを一目瞭然に見せる。好きなものに囲まれて暮らす幸せ」

雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都世田谷区のMさんご家族の事例をご紹介します。厳選した愛着のあるものを大切に手入れし、オープンに収納する。ものが視界に入る日常は、インスピレーションをもたらしてくれる。
(text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue)

築30年オーバーの71㎡の中古マンションをリノベーションしたMさんご家族。ファッションデザイナーであるご主人は、ヴィンテージの洋服、靴、アクセサリーなどをコレクションし、収納には強いこだわりをもっていた。

「すべてのものが一目瞭然で把握できるオープンな収納を希望していました。夫婦ともにものが多く、趣向する世界観が違うので、収納は分けたい。いっそのこと、真ん中に壁を設け、自分専用の場所として、収納とアトリエのような場所を兼ねた夫婦それぞれの部屋をつくろうと思いました」(ご主人)

窓際には厨房などで使うステンスの作業台を置いて、デスクとして活用している。この場所で洋服のデザインを考えたり、ミシンを使ったりすることもある。

Tシャツを掛けるハンガーは、古着店でよく使われているタイプをセレクト。ボトムには業務用のクリップハンガー、ジャケットには幅が広めのハンガーを使用。

奥さまの部屋は壁面のクローゼット、ハンドメイドの雑貨をつくるための大きめの作業台で構成。ご主人の部屋は、壁一面に前後に高さをずらしたパイプハンガーを2列つくり付け、大量の洋服を掛けられるオープンクローゼットを設けた。

「手持ちの洋服の寸法をあらかじめ測って、収まるように設計してもらいました。上段がジャケットなどのアウター、下段の奥がパンツ、手前がTシャツなど。左右で夏物と冬物を分け、主に素材別に分類して収納しています」(ご主人)

ご主人の部屋。真鍮の9ピンや洋灯吊りを壁に刺し、ネックレスやサングラス、デニムなどお気に入りのアイテムを飾って見せる収納に。

ベルトなどの小物、下着、靴下は船舶用のトランクに収納。

さらに、窓側にはステンレスの作業台を置いてワークスペースに。この空間にこもって洋服をつくったり、ときにはお酒を飲んだりすることもあり、その時間が至福だという。 一方、南に面したバルコニー側に広めに取ったLDKには、床から梁までを埋める本棚をつくり付けた。この本棚の裏側には寝室と子ども室がある。

真ん中を通る構造の太い梁に沿って本棚を造作。本棚の背面には寝室と子ども室がある。LDKの床は英国の古い建物をイメージしてミモザのフローリングを選択。

ゆるやかに全体がつながり、動線的には回遊性も備えているプランだ。本棚は大判の写真集などに合わせた正方形のグリッドで統一。家族の本をすべてこの本棚に集め、大まかに場所を分けて収納している。

大判の写真集や画集などを基準に大きめの正方形のグリッドで造作した本棚。余裕のあるサイズ感なので、雑貨やフォトフレームを飾ってもすっきりと収まる。

「好きなものに囲まれて暮らしたいんです。リビングに本棚があると、目に入った背表紙からアイデアが生まれたりする。ものが常に見えている空間が、デザインのインスピレーションをもたらしてくれると考えています。見せても恥ずかしくないものを選んでいて、とても大切にしているので、我が家に隠すものは何もないですね(笑)」(ご主人)

ものが多くても美しく収納することで快適な空間をつくることはできる。隠す場所をつくらないことで、大切に手入れされた愛着のあるものたちは、さらに輝きを増している。

キッチンの吊り戸棚はサイドの壁に。出し入れしやすい低めの位置に設置した。扉には中が丸見えにならないチェッカーガラスを採用。
キッチンの壁には光沢のある黒のタイルを張り、高級感のある雰囲気に。日常的に使うフライパンは、S字フックに吊るしている。
左・ご主人のデスク上。器に雑多な小物類を無造作に詰め込んで。/右・土間を仕切るドアのフックには子どもの道具を引っ掛けている。

建物データ

〈専有面積〉71.82㎡〈バルコニー面積〉6.96㎡〈主要構造〉 鉄骨鉄筋コンクリート造〈設計〉ブルースタジオ〈施工〉シグマテック〈設計期間〉2.5ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈既存建物竣工〉1977年〈リノベーション竣工〉2010年

※この記事はLiVES Vol.93に掲載されたものを転載しています。
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