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リノベーションマンション事例「機能美が際立つシステム収納から発想する家づくり」

雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、神奈川県横浜市の高橋さんご夫妻の事例をご紹介します。ヴィツゥのシステムシェルフを中心に、間取りとインテリア、収納を計画。整った白い空間に家具が映える住まいをつくり上げた。(text_ Satoko Hatano photograph_ Takuya Furusue)

「家は家具が収まる箱だと思っているので、できるだけすっきりとシンプルな空間を目指しました」

インテリア会社に勤める高橋遼平さんは、奥さまの真奈さんの実家近くに建つ築17年のマンションを購入し好みの空間にリノベーションした。

床と天井で支えるシェルフをリビングとダイニングの間に配して緩やかに空間を分けた。造作のキッチンカウンターと面材を揃えた吊戸棚は既存を再利用している。

傾斜地に位置する3面採光の住戸は明るく眺望も抜群。広さは約60m2で、3LDKだった間取りを広い玄関土間のある1LDKに変えている。天井と壁を白で仕上げたLDKで目を引くのは、遼平さんが選りすぐった家具や小物たち。なかでも、英国の家具メーカー、ヴィツゥのシステムシェルフは主役級の存在感だ。

PCと文具が収まるヴィツゥのデスク。引き出しの仕切りもオリジナル。
シェルフは幅と奥行を選べる。アートや本のみを置くのがご夫妻のルール。

「長く愛されている家具を家づくりに取り入れたいと思っていました。ヴィツゥのシェルフを中心にゾーニングや壁の大きさを決めています」

遼平さんのイメージを実際のプランに落とし込んだのは、空間社の宮本泰則さんと羽室早瑛さんだ。

「ご夫妻の具体的な要望を受けて、私たちは動線計画や、見せたくないけれど必要な物をどう収めるかという実用面の調整を行いました」

広い玄関にはオープンシェルフの靴収納を設置。居室へ続く通路の両脇にご夫妻のクローゼットを配置した。動線上に収納があるので、コートやカバンを居室に持ち込まずに済むという。

個室をひとつ潰して広い玄関土間をつくった。ガラス入りの内扉で雰囲気と空調効率もアップ。靴は造作棚に、コートはマシュー・マテゴのハンガーシェルフに掛ける。

玄関と居室をつなぐ通路の両側がご夫妻のクローゼット。

そのほか、日用品や掃除機、調理家電など、見せたくないものはキッチンの奥に設けたパントリーに収納。また、コスト調整と使い勝手から、既存や既製品と造作を組み合わせる収納も採用している。キッチンの吊戸棚は既存品の扉を変えて利用し、造作のキッチンカウンターはダイニングから見えない内側をオープンにして無印良品の棚を入れた。

左・ナラ材で仕上げたキッチンカウンター下部は、無印良品のスチールシェルフに合わせたオープン収納で食器が収まる。奥は洗濯機や調理家電が収まるパントリー。/右・水まわりのデザインにも定評のある空間社の提案を受けてシンプルにまとめた洗面室。収納は扉なしでミニマムに。壁はキッチンと同じサブウェイタイルを採用。
よく使う調理道具は吊り下げて収納。天板はタモの集成材。壁はサブウェイタイルを使用。

いっぽう、窓が多く明るいLDKでは、増設や組み換えができるシステムシェルフのために白壁を確保。リビングとダイニングを緩やかに区切るのも、衝立のように使えるヴィツゥだ。シンプルなデザインで建築に馴染むシステムシェルフで整えた空間には、ヴィンテージの北欧家具や小物類など、遼平さんの眼に適った良品だけがレイアウトされている。

リビングの壁はヴィツゥのシェルフに合わせて面積を確保。扉の奥には水まわりが収まる。

シンプルな仕上げに徹した白く明るい部屋で静かな存在感を放つのは、北欧ヴィンテージのチェストとドイツの女性陶芸家、ヘドヴィッヒ・ボルハーゲンの陶器

さて、若くしてヴィツゥのある理想の空間を叶えたご夫妻だが、将来家族が増えたときの住まいについて、

「これからも物の所有は収まる分量だけ。固定された部屋を増やす代わりに、システムシェルフを組み替えて場所を区切ることも考えています」

と、家具への愛を貫くのだった。

寝室のガラスブロックは玄関の明かり採り窓になっている。

建物データ

〈物件名〉a new day〈所在地〉神奈川県横浜市〈居住者構成〉夫婦〈建物規模〉地上6階建て(4階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉2000年〈専有面積〉約60㎡〈設計・施工〉空間社 〈設計期間〉2ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月 〈竣工〉2016年

※この記事はLiVES Vol.93に掲載されたものを転載しています。
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