
リノベーションマンション事例「52㎡全体を使って大勢のゲストを迎えるワンルーム仕様の家」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都渋谷区の小池啓介さん、平賀恵子さんご夫妻の事例をご紹介します。寝室を仕切る建具や可動式の壁、壁面に造作した扉付きの収納、ガラス張りの浴室などの工夫で、コンパクトな空間をフレキシブルに使いこなす。(text_Yasuko Murata photograph_Kai Nakamura)
52㎡の縦長の空間をワンルーム状につなげ、専用庭まで連続させた開放的なプラン。この家に住む建築家の小池啓介さん、平賀恵子さんご夫妻は、築36年の中古マンションをフルリノベーションし、3DKに分かれていた間取りを、端から端まで見渡せる空間に一新した。

寝室からダイニング、リビング、庭までを見渡す。天井、梁、柱、間仕切りの壁はコンクリートの躯体を白いペンキで塗装。
「お客さまが来る機会が多く、ときには40人近くが集まることも。そのため、全部屋つなげて広く使えるようにし、寝室は仕切ることもできるプランを考えました」(小池さん)
庭に面した2つの個室をリビングとし、その隣にコンパクトにまとめたダイニングとキッチンをつなげて配置。水まわりの位置は変更せず、ダイニングの一角に洗面、隣にガラス張りの浴室を設けた。

「ダイニングと浴室を同時に使うことはないので、隣接していても不便はありません。開放的で居心地がよく、つい長風呂をしてしまいます」(平賀さん)

寝室は引き戸で仕切る個室とし、一部に設けた壁は90度回転させることや、取り外して引き戸と一緒に収めることもできる。さらに大勢の来客時には、書籍を脚代わり、この壁を天板代わりにして、大きなテーブルとして使うこともある。


すぐに本が手に取れるリビングの本棚。シナ合板の棚板と丸柱でやわらかな印象に。
引き戸を開けて可動式の壁を取り外せば、庭から寝室まで見渡せる大空間となる。この開放感をさらに際立たせているのが、フラットな壁面収納だ。ものは隠して収納し、広々とした印象を保てればと、本棚をのぞいて、すべてシナ合板の扉で隠す収納に。把手や金具などが見えないように造作を工夫して、シンプルな壁が連なる印象を強調している。

「壁式構造だったので、壊せない構造壁を手がかりに、できるだけ多くの収納をつくりました。ワークスペースもリビングの収納の一角につくり、使わないときは扉を閉じて隠せるようにしています」(小池さん)

リビングの一角にあるワークスペース。収納と同じ扉を付け、使用時のみオープンに。

平賀さんは間もなく第一子を出産予定。お子さまが小さい間はこの家に住み、その後は住み替えを考えているという。
「将来的に賃貸に出すことも考え、空間はプレーンにつくり、本や家具などを飾って、色味を足していくことにしました」(小池さん)
コンパクトだが都心に立地し、庭の緑も満喫できるこの家は、積み重ねられた設計の工夫により、今後10年~15年を見据えた家族の暮らしにぴったりの形となっている。


専用庭ではグリーンを育てる楽しみも。デッキは、室内と同じ杉の無垢フローリング。
建物データ
〈物件名〉代官山のアパートメント〈所在地〉東京都渋谷区〈居住者構成〉夫婦〈建物規模〉地上5階建て(1階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1977年〈専有面積〉52.04㎡〈バルコニー面積〉6.0㎡〈設計〉K2YT〈設計期間〉2ヶ月〈工事期間〉3ヶ月〈竣工〉2012年

※この記事はLiVES Vol.90に掲載されたものを転載しています。
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