このページの一番上へ

リノベーションマンション事例「大きなキッチンテーブルに家族が集まるワンルームの家」

雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、神奈川県川崎市の佐藤さん、佐々木さんご夫妻の事例をご紹介します。斜め張りのフローリングが生み出すリズム感のある空間。家族が好きな場所で過ごしながら囲む大きなテーブルに必要な機能をまとめ、ワンルームに余白を生み出す。(text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue)

面積67㎡、2LDKの間取りだった中古マンションの壁をすべて取り払い、広いワンルームに2つの箱を置いた空間。箱の中には寝室と水まわりが収まる。

「がらんとした空間に、バスタブや寝室をオープンに置いて見せたいと思っていました。閉じる空間をできるだけ少なくし、テレビを観ながら、お茶を飲みながら、ゆっくり入浴したり、寝転んだりできる暮らしがしたかったんです」

そう話すのは、建築設計事務所.8/TENHACHIの佐藤圭さん、佐々木倫子さんご夫妻。5歳の長男とともに暮らす新居として、築34年の中古マンションを購入し、自らの設計でリノベーションした。

左・玄関の壁は足場板と躯体現し。/右・浴室の前の通路を遊び心を取り入れてスロープ状に。

「角部屋で窓が多く、高台にあって抜けが良いところが気に入りました。パイプスペースが一カ所で位置も悪くなく、ワンルームにしやすい自由度の高い物件でした」(佐藤さん)

家の中心となるのは、長さが4.5m近くもある大きなテーブル。IHやシンクが一体となっており、食事、仕事、勉強、打ち合わせなど、家族が思い思いに使うことができる。箱に収まった寝室は、床が一段下がっており、天井も低めになっている。しかし、ベッドに寝転ぶと視点が下がり、家全体を見渡すように視界が開け、圧迫感などはない。天井高を抑えた寝室の上はロフトで、長男のための空間となっている。

間口4.5m、奥行き1.15mの大きなテーブル。シンクやIHと一体化させ、キッチンの作業台やデスクとしても使えるように。
寝室の天井の梁にスクリーンを設置し、ベッドをソファ代わりにして映画を楽しむ。白い壁はこれから絵を描くスペース。
テーブルの下のスペースを活用し、本棚を設置。仕事や打ち合わせのときも、資料となる書籍などをすぐに取り出せて便利。
寝室の上は梯子で上がるロフト。現在はおもちゃが並ぶ長男の遊び場所となっている。大人も横になれる十分な広さがある。

「寝室の天井にはスクリーンが設置してあり、ベッドで映画を観ることができます。扉で仕切っていないLDKの一部のような空間だから、ベッドがソファのような感覚で使えるんです」(佐々木さん)

内装は、壁の一部にコンクリートの躯体を活かしながら、木と白塗装を組み合わせている。木はさまざまな種類を用いているが、木肌が白っぽい材で揃えることで、全体に統一感を持たせている。床はダメージオークのフローリングを斜めに張り、床から立ち上げるように壁まで連続させた。場所によっては方向が逆向きになるが、目地をつなげることで一定の流れを生み出し、空間にリズムをつけている。

床はオークのフローリングを斜めに張った。テレビを設置した壁面も、同じ素材で目地をつなげて施工し、連続性を持たせた。

機能は最小限。でもオープンにすることで体感的な広さや快適さも追求する。合理的に計画されながらも工夫が詰め込まれた空間は、必要な余白はあるけれど、少しの無駄もない、とても清々しい居心地の家となっている。

キッチンの上には足場板と寸切りボルトで吊り棚を設置。パーツを追加して、キッチンツールや食器をオープンに収納。シンクはフィリップ・スタルクがデザインした陶製。

玄関から続くモルタル床の廊下。突き当たりはアウターや靴をしまうクローゼット。

左・バスタブとシャワーブースを分けて配置したバスルーム。/右・照明のスイッチは「Buster+Punch」。調光機能も付いている。

建物データ

〈物件名〉.8HOUSE〈所在地〉神奈川県川崎市〈居住者構成〉夫婦+子供1人〈建物規模〉地上3階建て(2階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1981年〈専有面積〉67.09㎡ +ロフト9.78㎡ 〈バルコニー面積〉17.61㎡〈設計〉佐々木倫子+佐藤圭/.8 / TENHACHI〈施工〉SEAMLESS INC.〈設計期間〉4ヶ月〈工事期間〉2.5ヶ月〈竣工〉2015年

※この記事はLiVES Vol.83に掲載されたものを転載しています。
※LiVESは、オンライン書店にてご購入いただけます。amazonで【LiVES】の購入を希望される方はコチラ

関連する記事を見る
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る