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診療所リノベーション事例「ブリコラージュ的思考で200㎡超の空間を遊び倒す」

雑誌「LiVES」に掲載された診療所リノベーション事例から、今回は東京都日野市の髙木さんご家族の事例をご紹介。自宅のリノベーションを機にDIYに目覚め、廃材を使ってあらゆるものを創作。古いものに囲まれた不思議で楽しい唯一無二の住まい。
(text_ Kiyo Sato photograph_ Osamu Kurihara)

築40年の元診療所をリノベーション

郊外の住宅街に家族5人で住む映像クリエイターの髙木聡さん。「こんなに面白い物件はなかなか売りに出ないだろう」と、リノベーション前提で購入したのは、住宅と調剤薬局が併設された築40年ほどの診療所。延べ床面積が200㎡以上あり、仕事場も確保できる十分な広さがあった。

1階にオープンなLDKと仕事場、2階に個室を並べたプランは、始めに設計を依頼したフィールドガレージの原直樹さんが担当。その後の実施設計や施工までをハンディハウスプロジェクトの坂田裕貴さんが引き継いだ。

「面白いお客さんがいるからと原さんに紹介されて。そこから不思議なコラボレーションが始まり、お互いにアイデアを出しながら進めていきました」(坂田さん)

元診療所の待合室だったスペースは、PVや映画などを手がける映像クリエイターのご主人が編集作業を行う仕事場に。壁のコラージュ写真は過去に携わった作品。

隠れ家のような仕事場。機材や骨董品などコレクションするものが無造作に置かれ、独特の世界観をつくっている。OSBの壁やパインの床材はLDKと同じもの。

壁を撤去して梁を補強し、奥行き11mの広々としたLDKへと変更。コンクリートブロックのキッチンは家族で集まれるようカウンターを設けたアイランド型に。

●Let’SDIY!

天井は既存の仕上げを剥がして木造の梁を現し、白く塗装した。

二人三脚で進めた家づくりは、施工過程も実にユニーク。着工後一ヶ月で、それまで住んでいた家を引き払う必要があり、寝室のある2階を優先的に改修し、1階はユニットバスだけ設置した。キッチンもなく、ガスコンロで煮炊きしつつ何とか暮らしをスタートさせ、大部分を住みながら整えていったという。

階段最下段は試しに外した踏み板が元に戻らず、代わりにピッタリ合った和箪笥を使用。

手すりにサルスベリの木を用いた階段。踏板の間に板を渡して棚を追加。

●Let’SDIY!

カラフルな階段は色付きのステイン塗料で踏み板を一段ずつ塗装。

自分たちも一緒に参加する家づくり

「坂田さんが現場に来ると、今日はどこをつくろうか? こんな素材があるけど何に使う? そんな話ばかりで楽しかったですね」(髙木さん)

ベースとなる部分は大工にお任せする一方、壁の塗装やOSB張りなど、できる施工は子どもたちも交えて参加した。趣味で洋服のリメイクをする作業は好きだったという髙木さんだが、これを機にすっかり家のDIYハマってしまったという。

LDKと仕事場を仕切る開き扉はご主人が初めてDIYしたもの。撮影現場で拾った存在感のある耳付きの木を取手に、棚やアートなどを思いつくまま組み合わせた。

ハンガーパイプにリメイクした洋服がずらり。必要なものは自分でつくるご主人は今もDIYを継続中。

ドラムやギターなどの楽器とDIY用の建材置き場。7年前に施工を手伝った次男は現在高校生へと成長。

●Let’SDIY!

インパクトを使ってOSBを張るなど、できる範囲で施工した。

天井いっぱいに設けたリビングの書棚、アートのような扉、遊び心あふれる照明など、アイデアが湧くたびに試行錯誤を繰り返しながら自作したものは数知れない。製作に用いた材料は解体現場から出た廃材に加え、仕事の撮影先で拾ってきたユニークな形の木、アンティークショップを営む奥さまが骨董市場で見つけたものなど、規格品は一つもない。アンティーク中心の空間に、存在感を放つ創作物たちが合わさり、唯一無二の空気感をつくっている。

洋服のリメイクが趣味でもあるご主人が縫ったカーテン。

玄関の照明は4×5カメラの蛇腹がシェードになっている。

ギターをアレンジした照明。家中の照明はほぼ手作り。

アンティークショップを営む奥さまもご主人も、とにかく古いものが好き。家の中に新品はほとんどなく、テーブルやイス、棚などは長年使っている骨董品が中心。

●Let’SDIY!

当時小さかった子どもたちも解体作業や塗装などに加わった。

遊び心と発想を形にした住まい

「映像の仕事も洋服のリメイクも、既にあるものからどうつくるかを考える行為は同じ。手元にある素材を組み合わせてコラージュや再構築したり、遊び心を持って面白いと思えるものができればいい。この家に完成はなくて、いつまでも遊んでいたいし、そもそも“住む”ってそういうことだと思います」(髙木さん)

「住み手と一緒につくる面白さは図面通りだと半減する気がします。そういう意味では、今回のコラボは本当に楽しい経験でした」(坂田さん)

型にとらわれない独自の発想で育てられていく髙木邸。手を動かしてつくるだけではなく、“考えることの楽しさ”も教えてくれる住まいだ。

床壁天井にさまざまな色の絵の具を塗り重ねたトイレ。

玄関周りをアクリル絵の具でご主人が塗装。外観はまだまだ未完成なのだそう。

「秘密基地みたいな場所にしよう」とご主人が子どもたちを誘って一緒につくったテラス。

建物データ

〈敷地面積〉不明〈建築面積〉不明〈床面積〉1階 123.5㎡、2階 90.7㎡、合計 214.2㎡〈用途地域〉第一種低層住居専用地域〈主要構造〉木造〈既存建物竣工〉不明〈リノベーション竣工〉2013年〈設計期間〉3ヶ月〈工事期間〉4ヶ月〈設計〉 フィールドガレージ、 HandiHouse project〈施工〉HandiHouse project

※この記事はLiVES Vol.112に掲載されたものを転載しています。
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