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高気密高断熱は後悔する?気持ち悪い?デメリットとメリットを解説

高気密高断熱は後悔する?気持ち悪い?デメリットとメリットを解説
電気代の値上げや厳しい気候などが注目される昨今、より快適なマイホームを実現するためのキーワードとして知っておきたいのが、高気密・高断熱住宅です。省エネかつ居心地のいい住まいを叶えるべく、近年は気密性や断熱性に優れた住宅建築が広がり、こうしたエコ性能の高い家は国からの補助金などの対象にもなっています。では実際に高気密・高断熱のマイホームによって、どのような暮らしにつながるのか、その実態について詳しく解説していきます。

高気密・高断熱とは?

夏は涼しく快適に、冬は暖かく過ごせるのが高気密・高断熱住宅の特徴です(編集部にて作成)

高気密・高断熱とは、空気や熱の密閉性・遮断性が高く、外気の影響を受けにくくする仕組みを指します。屋外からの空気を入りにくくしたり、反対に室内の熱を逃しづらくしたりする建築方法により、年中快適に過ごしやすい空間を叶えるのが高気密・高断熱住宅です。例えば夏なら屋外の熱気を取り込まないので涼しく、冬なら室内の暖気を維持できるため暖かいのが特徴。こうして気候の厳しい季節でも、高気密・高断熱の住まいなら冷暖房が効きやすく、暑さや寒さのストレス感なく生活しやすいのが大きな魅力です。

高気密・高断熱は住宅省エネ基準の評価対象のひとつ

政府では特に近年で建物にともなうエネルギー消費量が増えている背景から、2015年より建築における省エネ対策を求めた、「建築物省エネ法」を施行しています。そのなかで2022年に公布された改正法では、すべての新築建造物で、国が定める省エネ基準適合が義務化されました。例えばマイホームを建てる個人に対しても、一定の住宅省エネ基準に合致した、エコな住まいの建築に努めることが必須とされています。

こうした住宅省エネ基準のなかで、高気密・高断熱に関わる性能も評価の対象となっており、マイホームの新築時には必ず検討すべき要素になっています。これからの資源確保のためにも、高気密・高断熱の住まいは欠かせない存在といえます。

高気密・高断熱住宅を建てると後悔する?

高気密・高断熱住宅を建てると後悔する?
高気密・高断熱住宅を建てると後悔する?

ここまでに見てきた内容を踏まえると、高気密・高断熱住宅は地球にも家計にもやさしく、長所しかないように見えるかもしれません。しかしなかには、「そんなに家が密閉されていると空気が淀みそう」「実際の効果がわからないし後悔するかも」といった、不安や疑問の声があるのも事実です。

たしかに住み心地の感覚は人によって異なりますし、高気密・高断熱の性能品質も、施工会社ごとに変わってきます。もちろん高気密・高断熱住宅にも、省エネ機能を高めることで生じてしまう欠点もあり、あらかじめ注意しておきたい部分も少なくありません。

そうなると「本当に高気密・高断熱住宅を建てるべきなの?」と感じてしまいそうですが、どのような住まいにも、メリット・デメリットの両方が付きもの。まずは高気密・高断熱住宅について理解を深めて、検討材料を増やしておくことが重要です。ではここから、高気密・高断熱住宅のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。

高気密高断熱のデメリット

高気密高断熱のデメリット
高気密高断熱のデメリット

まず、高気密・高断熱住宅で気を付けておきたいデメリットをご紹介します。ちなみにそれぞれの解決に向けた対策もあり、のちほど詳しく解説するので、ぜひ最後まで読み進めてみてくださいね。

空気がこもりやすい

高気密・高断熱住宅では、外気による室温の変化を防ぐために、家の基礎構造や建具などのすき間がなるべく少なくなる建築方法が採用されます。そうなると、やはり室内の換気しづらくなってしまい、どうしても空気がこもりやすくなる一面も。例えばイヤなニオイが残る、新築時の建築材料が発する化学物質から体調不良を引き起こす、シックハウス症候群になりやすいなどの難点が考えられます。また密閉性が高いことから、ハウスダストなどが屋外に排出されにくく、アレルギーなどの疾病につながる可能性も。ちなみに高気密・高断熱住宅では、空気がこもりやすい点から、一酸化炭素中毒の恐れがある石油ストーブや石油ファンヒーターなどが使いづらい部分もあります。

息苦しさ、気持ち悪さを感じることがある

前述にもあるような密閉性の高さから、淀んだ空気に息苦しさや気持ち悪さを感じる可能性もないとはいいきれません。とはいえ室内の換気は、意識的におこなえば空気がこもることもなく、さほど大きな問題にはならないでしょう。空気が淀みやすいことはデメリットではあるものの、きちんと効果的な換気対策をすれば解決できる部分でもあり、あまり心配する必要はないといえます。

部分的に内部結露が発生する可能性がある

高気密・高断熱住宅では、室内自体には外気が入りにくく、また空気を留まらせる性能も高い構造になります。そのため一般的に結露が生じやすい、窓などで水分が発生するのを防ぎやすく、湿気やカビ対策にも効果的とされています。ただし施工方法によっては、外壁など基礎部分の内部にすき間ができていて、そのなかに外気が侵入してしまうケースも。仮に基礎部分の内側で、室内の暖まった空気と冷たい空気が接触してしまうと、そのなかで結露が生じてしまう可能性があります。例えば壁の内部をはじめ、床下や天井裏などでも注意が必要。こうしたリスクを避けるには、高気密・高断熱住宅の経験と実績が豊富な施工会社を選ぶことも重要です。

建築コストがかかる

高気密・高断熱住宅を建築するには、特殊な施工技術や、機能性の高い資材・設備などが求められます。やはり建物自体の省エネ性能を向上させるためのコストがかかってしまうので、初期の建築費用は高くついてしまう一面も。高気密・高断熱を重視しない住宅に比べると、どうしても高額になってしまう部分は頭に入れておきましょう。

空気が乾燥しやすい

密閉性が高く、外部の湿気も取り込みにくいので、室内の空気が乾燥しやすい一面もあります。特に暖房などを使う際には、かなり湿度が下がりやすく、あえて洗濯物を置いたり加湿器を使ったりなどの対策をするのが無難でしょう。

高気密高断熱のメリット

高気密高断熱のメリット
高気密高断熱のメリット

高気密・高断熱住宅では、省エネ生活がしやすいのはもちろん、他にもさまざまなメリットがあります。ぜひ以下のようなメリットも含めて、高気密・高断熱住宅での暮らしをイメージしてみましょう。

冬は暖かく夏は涼しい

今までにも出てきている大前提ではありますが、季節を問わず快適に暮らしやすいのは、高気密・高断熱住宅の大きなメリットです。室内の空気が外に逃げにくく、室温も維持しやすいため、例えば冷暖房を使わない時間帯でも一定の涼しさ・暖かさを保ちやすい一面もあります。居心地のいい空間づくりができれば、自宅で過ごす時間も充実しやすい住環境を整えられるのが魅力です。

光熱費を抑えられる

先ほどもふれたように、高気密・高断熱住宅では一定の室温を維持しやすいので、冷暖房効率は非常に高くなるメリットがあります。設備として、部屋を冷やしたり暖めたりするのに大きな電力を使わずに済むうえに、利用頻度も低くなります。冷暖房が使う電力が少なくなる分、当然ながら電気代も減るため、光熱費の節約がしやすいのも利点。建築の初期費用は高くなるかもしれませんが、日常のランニングコストは抑えることが可能です。

結露・カビを抑えられる

高気密・高断熱住宅では、内部結露が起きやすい一面はあるものの、部屋自体には湿気が生じにくいメリットがあります。ここまでにも出てきているように密閉性が高いので、部屋の暖気と屋外の冷気が接触しにくく、結露にもなりにくいのが利点。結露による水分が発生しなければ、カビの原因も防げるので、衛生面での効果も見込めます。

ヒートショックのリスクを低減する

高気密・高断熱住宅は、建物自体が外気を通しにくく内部の空気を逃がしにくい仕組みになるため、家全体の室温を一定に保つことが可能です。どの部屋もほぼ均一の温度感になるので、特に冬場には寒くなりやすいトイレやバスルームも、リビングなどと同じような室温になります。室内の寒暖差による急激な血圧変動で、ヒートショック(脳卒中や心筋梗塞など)が起きる例はよく見られますが、高気密・高断熱住宅ならそれを防ぎやすいのも利点。冬なら家全体が暖かいので、部屋ごとの温度差も出にくい特徴があります。

遮音性が高い

室内の空気を外部に出しにくく、建物全体の密閉性も高いため、音を遮断する効果も見込めます。例えば小さなお子さんが泣いたり遊んだりする声や、ペットが吠える音も屋外に漏れづらく、防音につながるのもメリット。騒音によるご近所とのトラブルを防ぐのにも、高気密・高断熱住宅が役立つ一面があります。

洗濯物が乾きやすい

前述のデメリットでも出てきたように、高気密・高断熱住宅では空気が乾燥しやすい反面、洗濯物が乾きやすいメリットもあります。天気に関係なく洗濯物が干しやすいのも、高気密・高断熱住宅の利点です。例えば雨が多くなる梅雨の時期や、花粉や黄砂などが気になる春など、シーズンを通して洗濯がしやすい一面もあります。

高気密・高断熱住宅では、快適な室温が保ちやすく電気代節約にもつながるうえに、余分な湿気を防いだり遮音できたりなどの効果が見込めます。また家のなかでの寒暖差ができにくいので、急な温度変化によるヒートショックのような、健康被害を防止できる利点も。こんなふうに高気密・高断熱住宅には、さまざまなメリットがあり、今後長く住むマイホームだからこそ取り入れたい要素もたくさんありますよね。

高気密・高断熱住宅で快適に住むための対策

高気密・高断熱住宅で快適に住むための対策
高気密・高断熱住宅で快適に住むための対策

高気密・高断熱住宅では、やはり密閉性が高く自然に換気しづらい点には注意が必要です。とはいえ以下のような対策をしておくことで、きちんとキレイな空気が保てるうえに、高気密・高断熱ならではの利点を活かした住環境をつくることができます。

効率的な換気システムを選ぶ

建築基準法の改正により、どの建物でも24時間換気できるシステムの設置が義務化されたこともあり、高気密・高断熱住宅でも必ず導入されます。そこで注意したいのが、24時間換気システムの種類。24時間換気システムは、建物の用途などに応じて、主に3つの種類に分かれています。そのなかで高気密・高断熱住宅に適しているのは、空気の給気・排気の両方をコントロールできる、第1種換気システムです。室内に空気を取り込むのも、押し出すのも換気扇で強制的にできるため、効率的かつ確実な空気循環が可能。密閉性が高くなる高気密・高断熱住宅では、なるべく空気を循環させやすい、第1種24時間換気システムを使うのがおすすめです。

石油ストーブに注意

もし一酸化炭素が生じやすい石油ストーブなどを使用するのであれば、必ず窓を開けて換気するようにしましょう。ただ窓を開けてしまうと、外気を取り込まずに熱を逃さない、高気密・高断熱住宅ならではのメリット感はなくなってしまうかもしれません。できれば石油ストーブなどは避けて、エアコン・電気ストーブ・床暖房などを活用するのが無難でしょう。

明るさも欲しいなら窓は大きめに

気密性・断熱性をできるだけ高めるために、外気の影響を受けやすい窓は、小さめに設計されるケースも見られます。ただし窓が小さくなってしまうと、外からの採光がしづらく、開放的な雰囲気がつくりづらい可能性も。日光が入りやすい明るい室内にしたい場合には、窓は大きめにしたほうがいいかもしれません。窓のサイズ感は確保したうえで、例えばガラスやサッシなどの建具や施工によって、気密性・断熱性を向上させるのがベストです。

ローコストの高気密・高断熱住宅を選ばない

コストがかかっていない分、省エネ性能に必要な施工や資材など、家の機能性を補うべきものがカットされている可能性もあります。どうしても高い品質を確保するには、高い費用がかかることは避けられません。低予算では思うような気密性や断熱性には期待できませんし、建物としての耐久性にも影響するような、質の低い施工になってしまうケースも考えられるでしょう。きちんと快適で住みよい高気密・高断熱住宅にしたいのであれば、なるべくコスト面は妥協しないようにしましょう。

よりよい高気密・高断熱住宅を選ぶ際には、上記のようなポイントに加えて、依頼する施工会社にも注意が必要。通常の住宅よりも特別な技術などが求められるからこそ、高気密・高断熱の建築を得意とする会社に任せるのがベストです。まずは信頼できる施工会社なのか、しっかりと把握することからスタートしましょう。

高気密・高断熱住宅を買う・建てる際の補助金制度は?

高気密・高断熱住宅を買う・建てる際の補助金制度は?
高気密・高断熱住宅を買う・建てる際の補助金制度は?

高気密・高断熱は、国が定める省エネルギー住宅の基準に関連する要素で、各性能に長けた住まいでは政府からの補助を受けることが可能です。ちなみに住宅の省エネルギー基準では、高気密・高断熱に加えて日射熱を遮る外皮性能と、使用エネルギー量の主に2つの要件を設定。できるだけエネルギー消費を軽減する外皮性能と、使用エネルギーを抑える各種設備を備えた住まいを、政府では省エネルギー住宅としています。さらに太陽光発電によって、家庭の消費エネルギー収支がゼロ以下になる、ZEH(ゼッチ)と呼ばれるエコ住宅もあります。

なお高気密・高断熱の省エネルギー住宅では、国による支援制度として、ローンの低利融資などの補助が受けられるケースも。必要な条件などは年度ごとに替わりますが、省エネルギー住宅に該当することで、優遇措置がされる可能性があります。また先ほども出てきたZEHでは、国からの補助金制度が設けられています。詳しくは以下の記事でも解説しているので、ぜひチェックしてみてください。

まとめ

いかがでしたか?高気密・高断熱住宅は、主に外気の防止・室温の維持に優れた省エネ性能の高い住まいで、国からの支援対象にもなるほど高い注目を浴びています。空気が換気しにくいなどのデメリットはあるものの、いずれも十分な対策をしておけばさほど心配はなく、長い目で見れば高気密・高断熱住宅のメリットはかなり多いでしょう。今後さらに気候変動や資源不足などが進む可能性もある現状では、高気密・高断熱住宅を考えておいたほうが、未来への備えになるかもしれませんね。

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執筆者

たけなつ

2019年よりフリーで活動しているWebライター。
広告会社でのコピーライターを経て、現在は幅広いジャンルのコラム記事などを執筆。
愛知・東京・北海道と各地を渡り歩き、19歳からの10年で7回引越しを繰り返す好奇心旺盛人。

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