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金消契約とは?意味や住宅ローンとの関係、契約までの流れをわかりやすく解説

金消契約とは?意味や住宅ローンとの関係、契約までの流れをわかりやすく解説
住宅を購入する際に、よく耳にする「金消(きんしょう)契約」。言葉の意味や契約内容をいまいち理解できていないまま、不動産会社や銀行から案内されて契約を交わしている方も多いのではないでしょうか。金消契約は、住宅ローンを組むうえで重要な契約です。そのため、しっかりと契約内容を把握しておく必要があります。
そこで、本記事では住宅購入時の住宅ローンの流れや、金消契約について詳しく解説します。ローンを利用した住宅購入を検討している方や、金消契約の取り交わしに不安がある方はぜひ参考にしてください。

金消契約とは?

金消契約とは?

金消契約とは「金銭消費貸借契約」の略称で、銀行から住宅ローンを受ける際に銀行と結ぶ契約のことです。住宅購入時に、不動産売買契約などのさまざまな手続きと並行して金消契約の手続きも引渡しまでにおこなわれます。不動産会社が斡旋する金融機関で住宅ローンを組むこともあるため、金消契約までの手続きの案内を不動産会社がおこなうことで、不動産会社と取り交わす契約だと勘違いする方がいるかもしれません。しかし、金消契約は金銭の貸し借りに関する契約であり、不動産会社ではなく銀行との契約です。契約を結ぶことによって、貸主と借主には以下のような効力が生じます。

【貸主】借主に対して金銭を交付する義務が生じる
【借主】貸主からの借入額と同額の金銭(利息付きの場合は利息を含める)の返還義務を負う

2020年4月に施行された民法改正では、「諾成的金銭消費貸借契約」 というものが認められるようになりました。 この契約は書面上で契約する場合に限り、金銭の交付がなくても貸主が金銭を交付することを約束し、借主が金銭を返還することを約束することで契約が成立します。

住宅ローンと金消契約は違う?

「住宅ローンの契約=金消契約」と考える方も多いですが、正しくは金消契約も含んだ契約のことです。住宅ローン契約は「金銭消費貸借契約」と「抵当権設定契約」をセットにしたもので、「金銭消費貸借抵当権設定契約」とも呼ばれています。ほかにも、住宅ローンの条件によっては保証委託契約なども同時におこなう場合もあるため、条件や必要な契約を事前に確認しておきましょう。

抵当権とは?

抵当権とは、住宅ローンを組む際に購入する不動産の土地や建物に対して金融機関が設定する権利のことをいいます。住宅ローンを受ける住宅購入者(買主)が万が一ローンの返済ができなくなってしまった場合に備え、抵当権が設定されている期間中(住宅ローンが完済されるまでの期間)、金融機関が不動産を担保に金銭を貸している状態です。つまり、抵当権が設定されている不動産の住宅ローンの返済が滞り、それが継続した場合には不動産が差し押さえられ、競売にかけられるため返済計画には注意しましょう。

要物契約・不要式契約とは?

要物契約とは、当事者同士の合意以外に、物の受け渡しなどの給付があり成立する契約です。消費貸借や使用貸借、寄託などが該当します。一方、不要式契約とは特別な方式を必要とせず、口頭のみでの合意でも成立する契約のことです。賃貸借契約・売買契約などほとんどの場合が不要式契約ですが、後々トラブルになることを避けるために契約書を作成しています。

住宅ローンを組む流れ

住宅ローンを組む流れ
  • STEP 1銀行による事前審査
  • STEP 2重要事項説明
  • STEP 3申し込み
  • STEP 4金銭消費貸借契約
  • STEP 5決済・引渡し

住宅ローンを組んで不動産を購入する際、上記のような流れが一般的です。まず、購入を希望する物件が見つかった場合、物件に申し込みを入れるのと同時に対象物件で住宅ローンを組めるかどうかの事前審査をおこないます。事前審査は年収や自己資金額、勤続年数などをもとに1週間ほどおこなわれ、事前承認後に物件の売買契約を締結します。売買契約の前に重要事項説明書の読み合わせを挟み、売買契約を結んだ後に金融機関の本審査に進みます。本審査には2週間~1カ月程度かかると想定しておきましょう。

住宅ローンの本審査の申し込みに無事通ったら、金融機関と金消契約を結びます。金利や融資期間、融資額などの条件は本審査に通過した時点で確定するため、金消契約を交わす前に確認しておきましょう。金消契約は物件の引渡し日よりも前におこないます。残代金の支払い時(決済)が物件の引渡し日となり、同時に融資実行されるケースがほとんどです。

金銭消費貸借契約に一般的に定められている事項

金銭消費貸借契約に一般的に定められている事項

金銭消費貸借契約の内容として、一般的に定められている事項は以下のとおりです。

  • 借入金額・利率・返済期日・遅延損害金
  • 返済の延滞や債務者の信用状況の悪化が生じた場合の措置
  • 不動産に対する抵当権設定
  • 不動産の滅失等の場合における追加担保の差し入れ
  • 不動産の売却・賃貸借等の制限
  • 火災保険への加入
  • 保証人または保証会社による保証

基本的な事項である借入金額に加え、元本額に応じた利率や利息の計算方法などを明記しなければなりません。また、一括返済と分割返済の種類別に応じた返済期日を設定のうえ契約書に明記し、返済が遅れた場合に備えて定めがない限り法定利率による遅延損害金を設定します。
他にも、返済が遅れた場合の措置内容や、被担保債権の内容や登記手続きなどについて明記が必要です。火災保険の加入や保証人または保証会社を立てることも金消契約を交わすうえで必要なことなので、その内容について記載されています。契約時に一つひとつの項目についてしっかり内容を確認し、わからない点は説明を受けて理解するようにしましょう。

金銭消費貸借契約の前に準備すべきもの

金銭消費貸借契約の前に準備すべきもの

不動産の売買契約時にもたくさんの書類を準備しますが、住宅ローンの本審査に通ったら、金消契約に向けて再度書類等を揃える必要があります。売買契約時と似ているものもありますが、一つひとつ確認のうえ準備しておきましょう。

  • 印鑑証明書
  • 住民票
  • 本人確認資料(運転免許証・パスポートなど)
  • 健康保険証
  • 実印(印鑑証明書登録印と同一のもの)
  • 収入印紙(金銭消費貸借契約用・その他の書類用)
  • 契約書の原本
  • マイナンバーカード

印鑑証明書

印鑑証明書とは、登録された印鑑が本物であることを証明する公的書類です。紙媒体の重要な契約書を作成する際、実印による押印が求められます。実印を押す契約の際に印鑑証明書をあわせて提示することで、契約書が「本人が実印を使って押印した書類」と認められます。印鑑証明書は、役所や証明サービスコーナーなどの窓口によって取得可能です。自治体によっては、マイナンバーカードがあればコンビニで発行することもできますので、自分がやりやすい方法で取得しましょう。

住民票

住民票は住民の居住関係を証明する公的書類で、居住場所が変わる度に変更手続きが必要になります。各種手続きで求められることが多いため、一度でも取得したことがあるという方は多いのではないでしょうか。ただし、金消契約の際に必要な住民票は、購入物件の住所である新住所に変更後のものが請求されることがほとんどです。事前に住所変更手続きが必要な点や、世帯全員分が求められる点には注意しましょう。

本人確認資料(免許証・パスポートなど)

本人確認資料は、契約書本人であることを証明する書類です。主に運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど顔写真付きのいずれかが求められます。金融機関によっては本人確認資料として認められる書類が異なる可能性があるため、事前に確認しておきましょう。

健康保険証

健康保険証とは、健康保険組合に加入したことの証明として交付される書類です。主に病院で医療費の手続きをする際に提示するものとして利用されますが、その他に公的な身分証明書としても利用されます。金消契約の際は、前述の本人確認資料に含まれることも多いですが、顔写真が付いていない健康保険証のみでの身分証明が難しいこともあります。そのため、運転免許証などのほかの書類とあわせて提示を求められることが多いでしょう。

実印(印鑑証明書登録印と同一のもの)

重要な契約をする際には、実印を使用して契約書に押印します。実印は市区町村に登録した印鑑のことで、登録されていない印鑑を実印とすることはできません。居住する市区町村に印鑑登録をおこなうことで、印鑑証明書の取得が可能になります。金消契約などの実印を押印する契約の場合は、印鑑証明書とセットで必要になることを覚えておくとよいでしょう。

収入印紙(金銭消費貸借契約用・その他の書類用)

収入印紙は、税金や手数料の納付に使われる証票のことです。契約書や受取書など、経済的な取引に伴って作成した書類に課せられる税金を印紙税といいます。印紙税を納める場合や国家試験の受験手数料、免許の交付手数料を納める場合などに収入印紙を貼り付けて税金を納めます。金消契約では、契約書や領収書などに貼り付けるために必要になります。ただし、課税文書に記載される契約金額によって印紙税が異なるため、金額を事前に確認のうえ準備しましょう。

契約書の原本

金消契約時には、購入する不動産の売買契約書の原本が必要です。住宅ローンは不動産を購入する方に対して貸付けする金銭なので、物件金額の確認や、購入することが事実であることなどを確認するために必要となります。契約書の内容に不備があったり、署名・捺印が済んでいなかったりする場合には、金消契約の手続きを進められません。そのため、契約書に不備がないか事前に確認しておきましょう。

マイナンバーカード

近年では、身分証明としてマイナンバーカードの提示を求められることが増えてきました。本人確認以外にも、マイナンバーカードを取得することで、住民票の写しや印鑑証明書などの公的書類をコンビニで手軽に取得することが可能です。マイナンバーカードはさまざまな面で活用できますが、取得するには時間がかかるため、取得前の場合は申請時期に注意しましょう。

金消契約に関するおさらい

金消契約に関するおさらい

最後に、金消契約に関するおさらいです。金消契約のすべてを把握せずとも、以下の5つのポイントを押さえておけば、納得のいく住宅ローンの返済ができるでしょう。

金消契約って何?

金消契約は、借入額と同額の金銭を返済する約束のもと、借主が貸主から金銭を消費するために借り入れる契約のことです。住宅ローンにおける金消契約の場合、銀行などの金融機関が貸主、不動産購入者が借主となります。

抵当権って何?

抵当権は、住宅ローンを組む際に購入する不動産の土地や建物に対して金融機関が設定する権利のことです。金融機関は対象の不動産を担保に金銭を貸し付け、住宅購入者がローンの返済が難しくなった場合に備えて抵当権を設定します。

金消契約を結ぶ流れは?

金消契約を結ぶには、購入希望の物件を購入できるかローンの事前審査を金融機関がおこないます。事前審査通過後に不動産の売買契約およびローンの本審査をおこない、本審査通過後、物件の引渡し前までに金消契約を結ぶ流れが一般的です。

なお、物件を決める前でも住宅ローンの事前審査をおこなうことが可能な金融機関もあります。事前審査に通っていれば、購入したい物件を逃さずスムーズに契約を進めることができるでしょう。
Web上で借りたい金額や自分の属性などの情報を入力すると、借りられる可能性が高い住宅ローンを比較・提案してくれ、そのまま事前審査までおこなうことができるサービス「モゲチェック」を活用することもおすすめです。

金消契約に必要なモノは?

金消契約の際は、主に印鑑証明書や住民票、運転免許証などの本人確認資料、実印、収入印紙、不動産の売買契約書の原本などが求められます。本人確認資料として健康保険証やマイナンバーカードが求められることもあるため、事前の確認が必要です。

金消契約の注意点は?

金消契約をおこなう際は、借入額や借入年数、金利などの契約内容について事前に確認しておくことが重要です。特に、適用金利は融資実行日の金利が適用されることが多く、実際の返済額が想定していた金額と異なる可能性があります。契約条件によっても異なるため、必ず確認するようにしましょう。

まとめ

いかがでしたか?今回は、金消契約がどのような契約か、住宅ローンの一般的な流れや金消契約をおこなうタイミング、契約の際に準備する必要書類などについて解説しました。金消契約は、夢のマイホームを手に入れるための重要な契約の一つです。不動産の購入後もローンの返済が続く限り関わる契約のため、契約内容や注意点についてしっかり理解を深め、必要書類の準備をして契約をおこないましょう。不安な点は、不動産会社や金融機関の担当者に事前に確認しておくと安心です。

阿孫 沙綾

執筆者

阿孫 沙綾

不動産エージェントおよびWebディレクター兼ライターのフリーランス。8年間で不動産売買・賃貸の仲介業、実需や収益不動産の仕入れ・販売業務を経験し、現在は個人エージェントとして活動中。また、幅広いジャンルの不動産業務に携わった経験を活かし、不動産・宅建ジャンルを中心に執筆や編集も行う。

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