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奨学金があっても住宅ローンは組める?審査に与える影響と対策方法

奨学金が住宅ローンの審査にどういう影響を与えるのかを解説します
大学生のおよそ2人に1人が借りているといわれている奨学金。奨学金の返済は長期間に渡るため、住宅を購入したいと考えた時にも、返済が続いている方も多いでしょう。

奨学金の返済があっても、住宅ローンを借りることは可能ですが、状況によってはできない場合もあります。 今回は、奨学金が住宅ローンの審査にどう影響を与えるのか、また、住宅ローン審査に通りやすくするためのポイントを解説します。住宅ローンが借りられない時にはどうすればいいのかもあわせてお答えしていますので、ぜひ参考にしてみてください。

奨学金は住宅ローンの審査に影響する?

返済義務のある貸与型の奨学金は住宅ローンの審査に影響を与えます
返済義務のある貸与型の奨学金は住宅ローンの審査に影響を与えます

奨学金の返済があることは住宅ローンの審査に影響を与えます。まず、奨学金にどういった種類があるのか、ご自身が借りているのはどれに当たるのかを確認しましょう。

奨学金の種類

奨学金には大きく分けて「給付型」と「貸与型」の2種類があります。給付型とは、返済義務がない奨学金のことです。一方、貸与型とは返済義務がある奨学金のことで、返済中である場合、返済能力が低下するため、住宅ローンの審査に影響を与えます。

奨学金が住宅ローンの審査に与える影響

日本学生支援機構の奨学金受給状況の変化(%)(出典:日本学生支援機構)
日本学生支援機構の奨学金受給状況の変化(%)(出典:日本学生支援機構

日本学生支援機構によると、日本学生支援機構での貸与型の受給率は38.9%で、給付型の受給率10.2%よりも多いことがわかりました。おおよそ4割の人は大学の卒業後に奨学金を返済することになりますが、一般的に奨学金の返還は15年~20年続きます。ここでは、奨学金の返済がどのように住宅ローンの審査に影響を与えるのか、具体的にみていきます。

返済負担率

奨学金の返済額は、住宅ローンの返済額と合わせて、返済負担率に含まれます。返済負担率とは、収入に対して借入が占める割合のことです。返済負担率が高すぎると、返済能力が低いと判断され、住宅ローンの審査に落ちる可能性があります。

例えば、住宅金融支援機構の「フラット35」では、返済負担率が審査基準に盛り込まれており、次のように示されています。

年収 総返済負担率
400万円未満 30%以下
400万円以上 35%以下

この返済負担率には、奨学金をはじめ、カードローンやマイカーローンなど、すべての借入が含まれます。他の金融機関にも同様に、返済負担率の基準が設けられています。しかし、明記されているわけではないため、申し込んでみなければわかりません。

一般的に、無理のない返済負担率は20%以内といわれています。奨学金を利用している方は、返済負担率に注目してみましょう。

延滞・滞納履歴

奨学金の延滞・滞納履歴がある場合、住宅ローンの審査に落ちる可能性があります。

例えば先述の日本学生支援機構の奨学金に申し込む際には、必ず個人信用情報への登録に同意する必要があります。個人信用情報とは、ローンの返済状況や返済額などの情報が記録されているものです。住宅ローンの事前審査では、返済能力を確認するため、個人信用情報を管理している個人信用情報機関に問い合わせがおこなわれます。

日本学生支援機構によると、現在奨学金を返還している方は、延滞3カ月以上の場合に個人情報が登録されます。登録される情報内容は下記のとおりです。

個人情報 信用情報
 氏名
 住所
 生年月日
 電話番号
 勤務先
 貸与額
 最終返還期日
 延滞・代位弁済・完済などの返還状況

金融機関が照会した際にこの情報が登録されていると、奨学金が延滞・滞納していることがわかるため、返済能力が低いと判断されてしまいます。一度でも延滞すると、記録が5年間残るため、住宅ローンの審査に通るのは難しいでしょう。

なお、日本学生支援機構が個人信用情報機関へ加盟したのは2008年11月です。これ以前に奨学金を利用した場合は、延滞していても登録されていない可能性があります。手数料を払う必要がありますが、開示請求でご自身の信用情報を確認できるため、不安な場合は確認しておきましょう。

奨学金の返済があっても住宅ローンの審査に通りやすくする方法

奨学金の返済中であっても、返済負担率を抑えれば住宅ローンの審査に通る可能性は十分あります
奨学金の返済中であっても、返済負担率を抑えれば住宅ローンの審査に通る可能性は十分あります

返済負担率と奨学金の延滞・滞納履歴が、住宅ローンの審査に影響を与えます。本章では、これらが与える影響を少しでも抑える方法を解説します。

返済負担率を抑える

奨学金が住宅ローンの審査に与える影響を抑える方法の1つは、返済負担率を抑えることです。具体的な方法としては、住宅ローンの借入金額を減らすこと、他の借り入れがある場合には返済することの2つです。借入金額を減らせば、必然的に住宅ローンの返済額も減るため、返済負担率を下げることができます。

例えば、収入が35万円だった人の場合、借入金額の違いが返済負担率をどう下げるのか、みてみましょう。

<条件>
収入:35万円
金利:固定金利 1.4%
返済期間:35年
返済方法:元利均等返済方式

借入金額 3,000万円 4,000万円
月々の返済額 9万392円 12万523円
返済負担率 25.8% 34.4%

※返済負担率は小数点第2位を切り捨て

このように借入金額を減らせば、返済負担率を下げることができます。

また、他の借り入れがある場合には、優先して返済するようにしましょう。もし資金に余裕があるのであれば、住宅ローンを申し込む前に、奨学金を完済してしまうのも一つの方法です。返済負担率を下げると同時に、返済能力があるという証明にもなります。

奨学金の延滞・滞納履歴がある場合

奨学金の延滞・滞納履歴がある場合でも、住宅ローンの審査を申し込むことは可能です。審査に通るための方法を3つ解説します。

配偶者を契約者にする

奨学金の滞納・延滞履歴のある方を住宅ローンの契約者にするのではなく、配偶者を契約者にしましょう。配偶者に返済能力があれば、審査に通過しやすくなります。ただし、配偶者の年収や勤続年数などが審査されることになり、場合によっては借入金額が減額になる可能性もあることを理解しておきましょう。また、配偶者の個人信用情報に傷がついていないことも前提となります。
自分の配偶者が住宅ローンを借りることは可能なのか、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみるといいかもしれません。

返済履歴を積み上げて信用力を高める

金融機関によって審査基準が異なるため、奨学金の延滞・滞納履歴があっても、場合によっては通る可能性があります。奨学金の返済を続けることで、信用力を高め、審査に通過しやすくなるでしょう。もし延滞・滞納してしまった場合には、すぐに返済することが大切です。

また、日本学生支援機構では奨学金の返済が厳しい場合、返済期限の猶予や返済額を減額する制度があります。一定期間の返済を先送りにしたり、返済額を減らしたりすることで、延滞を防げます。これらの制度を活用し、奨学金の返済を続けることで、信用力を高められ、住宅ローンの審査に通りやすくなるでしょう。

延滞・滞納履歴が消えるまで待つ

過去に奨学金を滞納し、個人信用情報に登録されている場合には、完済して5年経つと記録が削除されます。5年というと長い期間のように感じられますが、収入が上がっている可能性もあり、奨学金もなくなっているため、よりいい条件で融資を受けられる可能性があります。住宅は購入がゴールではなくスタートです。購入後の生活も考えると、いい条件で住宅ローンを借りた方が、満足度が高いでしょう。

奨学金がある場合の住宅ローンに関するよくある質問

奨学金の返済がある方が、住宅ローンに申し込む際によくある質問を集めました。

住宅ローンの審査に奨学金を申告しないとバレる?

住宅ローンの審査では、個人信用情報が確認されます。奨学金をはじめ、他のローンやクレジットカードの返済状況などがわかるため、申告していなくてもバレてしまいます。ただし、日本学生支援機構が個人信用情報機関に加盟したのは2008年11月のため、それ以前に利用していた場合は登録されていない可能性があります。ご自身の信用情報がどうなっているか確認したい場合は、開示請求をしてみましょう。

しかし、事前審査時には申込書に他の借入状況を書くのが一般的です。記載されていない借入があった場合、金融機関に悪い印象を与えてしまうことになります。奨学金を借りていることを隠さず、正直に申告したほうが信用できる人と判断されるでしょう。

配偶者の奨学金も住宅ローンの審査に影響する?

ペアローンや収入合算をして住宅ローンを組む場合、配偶者の奨学金借り入れも審査に影響します。これまで説明した通り、返済負担率や延滞・滞納履歴が確認されます。ペアローンや収入合算をする場合は、配偶者の借り入れ状況や年収などを踏まえたうえで、無理のない返済計画を立てるようにしましょう。

奨学金と住宅ローンをまとめることは可能?

住宅ローンと奨学金はまとめることができません。しかし、数は限られますが、住宅ローンをマイカーローンやカードローンなどとまとめる商品はあります。また、奨学金を借り換える教育ローンもあります。しかし、無利子の奨学金を利用している場合などの条件があるほか、金利が高いため損をしてしまう可能性があります。借り換えてまとめると口座の管理がしやすいといったメリットはありますが、一般的に金利が高いため、デメリットを考慮したうえで判断しましょう。

まとめ

今回は、奨学金が住宅ローンの審査に与える影響を見てきました。返済中であっても、住宅ローンを借りることは可能です。しかし、返済負担率が高かったり、延滞・滞納履歴があると審査に落ちてしまう恐れがあります。借入金額を減らす、奨学金を早めに返済するなどして返済負担率を下げると、審査に通る可能性が高くなるでしょう。信用情報に傷がついてしまった場合でも、契約者の変更や、情報が削除されるまで待つことで、審査を申し込むことができます。住宅ローンを借りることがゴールではありません。その後の生活を無理なく続けるためにも、確実に返済できるか考えてみて住宅の購入時期を判断しましょう。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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