住宅ローンの借り換えは同じ銀行でできる?返済負担を減らす方法を解説

そもそも借り換えは同じ銀行でできるのでしょうか?本記事では、住宅ローンの借り換えが同じ銀行でできるのか、同じ銀行で返済負担を軽くする方法や借り換えで得する条件も解説するので、ぜひご一読ください。
記事の目次
住宅ローンの借り換えは同じ銀行でできる?

住宅ローンの借り換えは同じ銀行で可能なのでしょうか?まずは、住宅ローンの借り換えがどういったものなのかを理解しておきましょう。
住宅ローンの借り換えとは
住宅ローンの借り換えとは、新しく住宅ローンを借り入れ、現在返済している住宅ローンを一括で返済することです。住宅ローンの借入額は大きいため、今より条件のいい住宅ローンに借り換えることで、返済負担を軽減できます。
原則として住宅ローンの借り換えは同じ銀行でできない
現在借り入れている銀行の金利が、住宅ローンを契約した時よりも低くなっていることもあるでしょう。しかし、原則として住宅ローンの借り換えは同じ銀行でできません。なぜなら、銀行にとってメリットがないからです。借り換え後の金利が低くなるため、銀行の利益が減ってしまいます。
同じ銀行で借り換えができるケース
前項で同じ銀行で住宅ローンの借り換えはできないとお伝えしましたが、銀行によってはできる可能性もあります。それは次の2つのケースです。
- 通常の住宅ローンからフラット35へ借り換える
- フラット35からフラット35へ借り換える
フラット35とは、銀行と住宅金融支援機構が提携して提供している住宅ローンです。一口に住宅ローンといっても、銀行でさまざまな商品を取り扱っている場合があります。その場合、通常の住宅ローンからフラット35へ、フラット35からフラット35への借り換えができる可能性があります。例えば、今から15年前の2009年、フラット35の最低金利は約3%でした。現在は1.82%(融資率9割以下の場合)となっており、借り換えることで返済負担は軽減できるでしょう。
同じ銀行で住宅ローンの返済条件の変更は可能
基本的に同じ銀行で住宅ローンの借り換えはできませんが、返済条件の変更は可能です。具体的な方法は次の3つです。

-
・金利タイプを変更する
・返済期間を変更する
・金利を引き下げる
銀行側からすると、金利を引き下げれば利益が減ってしまうため、メリットはありません。しかし、せっかくの顧客を手放したくないという思いから、引き下げ交渉に応じてくれる場合があります。詳しくは次章で解説します。
同じ銀行で住宅ローンの返済負担を減らす方法

同じ銀行で住宅ローンの借り換えはできませんが、条件を変更すると返済負担を減らせます。本章では返済負担を減らす具体的な方法を4つ解説します。
金利タイプを変更する
住宅ローンの返済負担を減らす方法として、金利タイプを変更する方法が挙げられます。返済負担が大きく減る可能性がある金利タイプの変更パターンは固定金利から変動金利に変更することです。現在、変動金利は低金利の傾向にあるため、金利タイプを変更することで金利が低くなり、返済負担が軽くなるでしょう。しかし、5年、10年などの一定期間固定金利である固定期間金利を利用している場合、固定期間中は変更できません。固定期間が終わってから手続きをしましょう。
金利の引き下げ交渉をする
先述したように、金利を引き下げることは銀行にとって利益がありません。しかし、顧客を逃したくないという思いから、金利の引き下げに応じる可能性があります。銀行へ直接交渉する前に、他の銀行で事前審査を受けておきましょう。なぜなら、他の銀行の審査を受けると借り換える意向があることを示せるからです。ただし、住宅ローンの返済やクレジットカードの支払いなどが問題なくできている方に限られます。金利の引き下げ交渉を成功させるために、事前審査の結果を見せるなど、具体性を持たせるようにしましょう。
返済期間を延長する
返済期間を延長すると、毎月の返済額を減らせます。ただし、元金の減りが遅くなる分、総返済額が増える点に気をつけましょう。返済期間を10年間延ばした場合、どのように返済負担が減るのかシミュレーションしてみました。
借入金額:3,500万円
返済方式:元利均等方式
金利:2.17%(全期間固定)
返済期間 | 25年 | 35年 |
---|---|---|
月々の返済額 | 15万1,262円 | 11万9,018円 |
利息の総額 | 1,037万8,712円 | 1,498万7,758円 |
総返済額 | 4,537万8,712円 | 4,998万7,758円 |
上記の条件で返済期間を25年から35年にした場合、月々の返済額は約3万円減らせます。3万円減らせれば、家計にも余裕が出てくるでしょう。ただし、元金の減りが遅くなることから、利息と総返済額が約460万円増えました。また、今回は固定金利でシミュレーションしましたが、変動金利の場合は利率の変動によって、変更した当初は返済負担が減らせても将来的には増える可能性もあります。メリット・デメリットを踏まえて慎重に判断しましょう。
繰り上げ返済をする
資金に余裕がある場合は、繰り上げ返済をすることも、返済負担を減らす方法の一つです。繰り上げ返済をすると、借入残高が減らせるため、将来払わなければならない利息が少なくなります。繰り上げ返済には次の2つの方法があります。
- 期間短縮型
- 返済額軽減型
期間短縮型とは、毎回の返済額を変えずに、返済期間を短縮する方法です。短縮した期間の利息分がカットされるため、利息の軽減効果が大きくなります。一方、返済額軽減型とは、返済期間を変えずに毎回の返済額を減らす方法です。月々の返済額が減るため、家計にも余裕が出るでしょう。しかし、返済負担を減らしたいからといって、必要以上に繰り上げ返済することはやめましょう。病気やケガで収入が減った時などに対応できるよう、万一のために手元にある程度の資金は残しておくのがおすすめです。
住宅ローンを借り換えるメリット・デメリット

場合によっては、住宅ローンを他の銀行に借り換えたほうが返済負担を減らせる可能性もあります。本章では、住宅ローンを借り換えるメリット・デメリットを解説します。
住宅ローンを借り換えるメリット
住宅ローンを借り換えると以下のメリットが得られます。
返済負担を軽減できる
住宅ローンを借り換えるメリットとして、返済負担が減らせることが挙げられます。金利の低い住宅ローンに借り換えられた場合、利息の負担が減り、総返済額を減らせます。また同時に、月々の返済額も減らせるため、家計にもゆとりが出るようになるでしょう。
団体信用生命保険の保障内容を見直せる
団体信用生命保険の保障内容を見直せることも、住宅ローンの借り換えるメリットです。団体信用生命保険とは、契約者が亡くなった時や所定の高度障害になった時など、住宅ローンの残債が免除されるものです。住宅ローンを契約する際には、団体信用生命保険の加入を求められることが一般的です。借り換えによって、保障内容を充実させられる可能性があります。ただし、加入する際には健康状態を告知しなければなりません。健康状態によっては加入できず、住宅ローンの借り換え自体できない可能性があることも留意しておきましょう。
住宅ローンを借り換えるデメリット
住宅ローンを借り換えると以下のデメリットが生じます。
諸費用がかかる
住宅ローンの借り換えのデメリットは、諸費用がかかることです。諸費用として大きく次の3つに分けられます。
- 現在の住宅ローンを完済するための諸費用
- 新しく借り入れる住宅ローンを契約するための諸費用
- 抵当権を変更するための諸費用
銀行によって異なりますが、住宅ローンを完済するためには全額繰上返済手数料が必要になります。また、新しく借り入れる住宅ローンの手続きには、最初に契約した時と同様、融資事務手数料や保証料などがかかります。さらに、抵当権を現在の銀行から新しく借り入れる銀行へ変更する費用も負担しなければなりません。これらの費用がいくらになるのかを計算したうえで、借り換えた場合にメリットがあるのかをシミュレーションしましょう。
審査が厳しくなる
住宅ローンの借り換え時の審査が厳しくなる点もデメリットでしょう。厳しくなる要因として、物件の担保評価が低くなることが挙げられます。万が一の際、物件を競売にかけて住宅ローンの残債を回収できるようにするため、住宅ローンの審査では物件の担保評価も見られます。例えば、国土交通省の「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」によると、一戸建て住宅の場合、築20年で市場価格はほぼゼロになるとされています。貸し倒れのリスクを回避するため、銀行は審査を厳しくするのは当然でしょう。
また、契約者の状況が変化していることも審査が厳しくなる要因の一つです。順調にキャリアアップをし収入が上がっている場合は問題ないでしょう。しかし、転職を繰り返していたり、クレジットカードの支払いを延滞したりなどする場合は、返済能力に問題がないか厳しく審査されます。借り換えを検討する際には、ご自身の属性や返済能力を今一度確認しましょう。
手続きに手間と時間がかかる
住宅ローンの借り換えは手間と時間がかかる点を理解しておきましょう。一般的に、借り換えが完了するまでに1カ月程度かかります。また、新しい住宅ローンを借り入れるにあたって、必要書類も準備しなければなりません。書類に不備があった場合には、さらに時間がかかってしまいます。手続きをする際には、不備がないように慎重におこないましょう。
住宅ローンの借り換えで得する3つの条件

住宅ローンの借り換えで得するのか、具体的に知りたい方もいるでしょう。一般的に、次に挙げる3つの条件を満たす場合、借り換えるといいとされています。本章では本当に得するのかをシミュレーションも交えながら解説します。
借り換え後の金利が1%以上低くなる
借り換えたあとの金利が1%以上低くなる場合、借り換えて得をするとされています。しかし、最近は低金利の住宅ローンが増えているため、0.3〜0.5%差でも得をする場合があります。次の条件でシミュレーションをしてみましょう。
当初借入金額:4,000万円
返済開始からの経過年数:10年
返済金利:現在の住宅ローン2%
借り換え後の住宅ローン1%、1.7%
返済年数:当初35年
借り換え後の返済年数25年
返済方式:元利均等方式
金利が 低くなった時 の比較 |
借り換えない 場合 |
借り換えた 場合 |
|
---|---|---|---|
金利 | 2% | 1.7% | 1% |
月々の返済額 | 13万2,505円 | 12万7,987円 | 11万7,818円 |
総返済額 | 5,565万 2,145円 |
5,429万 6,681円 |
5,124万 5,914円 |
金利が0.3%低くなった場合でも、月々の返済額は約4,500円、総返済額は約135万円減りました。一方、1%低くなった場合は、月々の返済額が約1万4,000円、総返済額が約440万円減りました。借り換え前後の金利差が大きいほど、返済額が大きく減らせるのがわかるでしょう。ただし、先述したように諸費用がかかるため、場合によっては借り換えをしても得をしない可能性があります。不動産情報サイト アットホームでは「借換え試算」で借り換えシミュレーションができるため、ぜひ利用してみてください。
住宅ローンの残債が1,000万円以上ある
住宅ローンの残債が1,000万円以上ある場合も、借り換えによってメリットが得られるでしょう。なぜなら1,000万円未満の場合、借り換えで金利を下げても元金が少ないことから、諸費用のほうが上回る可能性があるためです。
元金が1,000万円以上ある時とない時でどう変わるのか、シミュレーションしてみましょう。
借入金額:4,000万円
返済期間:35年
金利:2%から1%へ
返済方式:元利均等方式
※元金が1,000万円以上ある28年目と、元金が1,000万円を下回る29年目で借り換える場合をそれぞれシミュレーション
借り換え 前後の 比較表 |
借り換えない 場合 |
残高が 1,000万円を 上回る状態 |
残高が 1,000万円を 下回る状態 |
---|---|---|---|
金利 | 2% | 1% | 1% |
月々の 返済額 |
13万2,505円 | 12万7,979円 | 12万8,599円 |
総返済額 | 5,565万 2,145円 |
5,527万 1,898円 |
5,537万 851円 |
元金が1,000万円を上回る時に借り換えた場合、総返済額は約38万円減りました。一方、元金が1,000万円を下回った時に借り換えた場合、総返済額は約28万円減りました。月々の返済額は600円ほどの差しかありませんが、総返済額は10万円近く違います。借り換えに必要な諸費用がいくらかかるかにもよりますが、元金が少ない場合、諸費用のほうが上回る可能性があることがわかるでしょう。
住宅ローンの返済期間が10年以上残っている
住宅ローンの返済期間が10年以上残っている場合も、借り換えることで返済負担が減らせるでしょう。返済期間が長く残っている場合、金利を下げると支払う利息も減らせるため、総返済額が減らせます。わかりやすくするために、シミュレーションしてみましょう。
借入金額:4,000万円
返済期間:35年
金利:2%から1%へ
返済方式:元利均等方式
※返済期間を20年目(残り10年)、30年目(残り5年)でそれぞれ借り換えたと仮定
借り換え 前後の 比較表 |
借り換えない 場合 |
返済期間 残り10年で 借り換えた場合 |
返済期間 残り5年で 借り換えた場合 |
---|---|---|---|
金利 | 2% | 1% | 1% |
月々の 返済額 |
13万2,505円 | 12万6,156円 | 12万9,225円 |
総返済額 | 5,565万 2,145円 |
5,489万 191円 |
5,545万 5,300円 |
返済期間が残り5年の時と比べ、残り10年のほうが月々の返済額、総返済額ともに減っているのがわかります。残りの返済期間が長いほど、借り換えで得られるメリットは大きくなります。
まとめ
今回は、住宅ローンは同じ銀行で借り換えが可能なのかを解説しました。銀行からすると、収益が減ってしまうため、借り換えはできません。しかし、金利の引き下げや返済期間の延長などの、返済条件を変更することは可能です。金利の引き下げなどを交渉する際には、借り換える意思があることを伝えるために、他の銀行で事前審査をおこない、具体性を持たせるようにしましょう。不動産情報サイト アットホームの「借換え試算」では、シミュレーションが可能です。気になる住宅ローンがある場合には、借り換えた時に返済額がどう変わるのか、ぜひ試してみましょう。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ