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築年数の古い家でも住宅ローン控除は受けられる? 条件と注意点を解説

築年数の古い家でも条件を満たせば住宅ローン控除は受けられます
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用して住宅の購入をおこなった時に条件を満たせば税金の控除が受けられる制度ですが、築年数の古い家でも受けられるのか疑問に思う方もいるでしょう。住宅ローン控除にはさまざまな条件があるため、条件を満たしている必要はありますが、築年数の古い家でも控除を受けられる可能性はあります。

本記事では、築年数の古い家で住宅ローン控除を受けるための条件と、控除額のシミュレーション、控除を受けるための注意点を解説します。

住宅ローン控除を受けるには条件がある

住宅ローン控除は、築年数に関わらず条件を満たす必要があります
住宅ローン控除は、築年数に関わらず条件を満たす必要があります

住宅ローン控除を受けるには条件があり、それを満たさなければなりません。新築であっても、築年数の古い中古住宅であっても、条件にいくつかの違いはありますが、条件を満たさなければ控除を受けられないことは共通しています。

中古住宅を取得した場合の住宅ローンの制度の概要と主な条件を以下にまとめました。

<住宅ローン控除の基本的な概要>

控除率 0.7%
控除期間 10年

<住宅の種類ごとの控除限度額>

住宅の種類 控除限度額
認定長期優良住宅 3,000万円
低炭素住宅
ZEH水産省住宅
省エネ基準適合住宅
一般の中古住宅
(その他の住宅)
2,000万円

<住宅ローン控除を適用するための主な条件>

  • 中古住宅の取得日から6カ月以内に居住している
  • 住宅ローン控除の適用を受ける年分の合計所得が2,000万円以下であること
  • 住宅の床面積が50平方メートル以上であり、かつ、床面積の2分の1以上が居住用である
  • 住宅ローンの返済期間が10年以上である
  • 中古住宅の取得が贈与でないこと

住宅ローン控除は所定の条件を満たしたうえで、初年度は確定申告をし、翌年度以降は給与所得者であれば年末調整、個人事業主は引き続き確定申告をすれば住宅ローン控除を受けられます。築年数の古い住宅でも住宅ローン控除を受けられますが、新築住宅の場合は認定長期優良住宅で控除額が5,000万円(2024年以降は4,500万円に引き下げ)になるため、控除額に差があることは理解しておきましょう。

中古住宅で住宅ローン控除を受ける場合の築年数の条件

住宅ローン控除を受ける場合、築年数の条件はあるのでしょうか
住宅ローン控除を受ける場合、築年数の条件はあるのでしょうか

中古住宅における築年数の条件は、1982年(昭和57年)1月1日以後に建築されたもので、現在の2023年時点から考えれば、築年数は40年より浅い住宅です。

また、築年数が40年以上の場合でも、以下の条件に該当する場合は控除が受けられます。

  • 建築基準法の耐震基準を満たした耐震住宅であること
  • 耐震改修をおこない建築基準法の耐震基準を満たすことが証明されている

基本的には1982年以降に建設された中古住宅または、耐震基準を満たしている住宅であれば、条件を満たすと考えて問題ありません。
ただし、耐震改修をおこなった条件のみに適合する場合は、自動的に「一般の中古住宅」の要件が適用され、控除限度額は2,000万円になります。

2022年度に築年数要件は撤廃されている

中古住宅の築年数が意識されなくなった理由は、2022年度の税制改正で築年数の要件が撤廃されているからです。築年数の明確な年数規定は、現在の住宅ローン控除からはなくなっています。築年数の古い家でも住宅ローン控除を受けやすくなったことから、築年数の古い家の需要が高まりました。

築年数の古い家で住宅ローン控除を受けるシミュレーション

2つのケースにわけて、築年数の古い家の住宅ローン控除の控除額を求めます
2つのケースにわけて、築年数の古い家の住宅ローン控除の控除額を求めます

築年数の古い家で住宅ローン控除を受ける場合のシミュレーションを2つ紹介します。

<ケース1>

  • 住宅の種類:認定長期優良住宅(中古住宅)
  • 控除額の上限:3,000万円
  • 控除率:0.7%
  • 住宅ローン残高:2,500万円

控除額の上限をローン残高が超えていないことから、住宅ローンの控除額は「住宅ローン残高×控除率」で計算するため、控除額は「2,500万円×0.7%=17万5,000円」です。翌年、返済を進めて住宅ローン残高が2,400万円に減少した場合は、「2,400万円×0.7%=16万8,000円」に控除額は減少します。

<ケース2>

  • 住宅の種類:一般の中古住宅
  • 控除額の上限:2,000万円
  • 控除率:0.7%
  • 住宅ローン残高:2,500万円

控除額の上限をローン残高が上回っているため、「控除額の上限×控除率」で実際の控除額を計算するので、控除額は「2,000万円×0.7%=14万円」です。翌年度以降も住宅ローン残高が控除額の上限を下回らない限り、14万円の控除が続きます。

住宅ローン控除を受ける場合の注意点

繰り上げ返済をする場合は控除額の上限を考えておこなうとよいでしょう
繰り上げ返済をする場合は控除額の上限を考えておこなうとよいでしょう

築年数の古い家で住宅ローン控除を受ける場合の注意点を3つ紹介します。

  • 繰り上げ返済は慎重におこなう
  • 実際に控除される額は所得に依存する
  • 譲渡所得の課税に関する特例と併用できない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

繰り上げ返済は慎重におこなう

住宅ローンの繰り上げ返済とは通常の返済とは別にまとまった金額を返済することですが、「返済期間短縮型」では返済期間が短縮され、「返済額軽減型」では毎月の返済額が減少します。住宅ローンの利息を減らすメリットが大きいため繰り上げ返済を検討する方は多いですが、繰り上げ返済をすれば住宅ローン残高が減少するため、控除額も減少してしまいます。

中古の認定長期優良住宅(控除上限は3,000万円)で2,800万円の住宅ローン残高がある時、500万円の繰り上げ返済をすると、控除額は19万6,000円から16万1,000円に減少します。繰り上げ返済は住宅ローンの控除期間が終わった時など、タイミングを考えた方がより控除を有効に活用することができるでしょう。

ただし、繰り上げ返済をしても10年の控除期間中に3,000万円のローン残高を下回らない場合では、繰り上げ返済をおこなっても控除額に影響はないため、必ずしも住宅ローン控除を受ける場合に繰り上げ返済をしてはならないわけではありません。

また、返済期間短縮型で繰り上げ返済する場合は、残りの返済期間が10年未満になると住宅ローン控除の適用外になってしまいます。住宅ローン控除を受ける場合は繰り上げ返済を慎重におこなうようにしましょう。

実際に控除される額は所得に依存する

住宅ローン控除は所得にかかる税金を控除する制度であるため、退職や休職などの影響で所得がなく、かかる税金がない場合は控除されません。住宅ローン控除は、所得税から税金の控除をおこない、控除しきれなかった場合に翌年の住民税から控除できる仕組みです。所得税からも住民税からも控除したうえで、控除額が余る場合は、計算上の控除額と実際に控除される額は異なります。

譲渡所得の課税に関する特例と併用できない

中古住宅を購入する前に、居住していた住宅を売った場合、譲渡所得から最高3,000万円が控除できる特例制度があります。これは、住宅を売却して利益が出た場合に利用したい特例ですが、この特例制度を利用してから3年以内に居住した住宅に対しては、住宅ローン控除を適用できません。

基本的には、譲渡所得の課税に関する特例と住宅ローン控除のどちらかを選択して適用を受けることになります。そのため、どちらのほうが税金を節約できるか考えたうえで、利用することをおすすめします。

住宅ローン控除の改正における築年数の古い家への影響

住宅ローン控除の改正によっては築年数の古い家が控除を受けられなくなる可能性があります
住宅ローン控除の改正によっては築年数の古い家が控除を受けられなくなる可能性があります

住宅ローン控除は定期的に改正されており、今後も施行されるのか、なくなってしまうのかはわかりません。改正内容によっては、築年数の古い家が控除対象外となってしまう可能性も。住宅ローン控除全体の改正であれば、控除上限額・控除率の引き下げなどもあるかもしれません。

改正の影響で、2024年からは、新築の場合「その他の住宅」に区分される住宅は控除が受けられなくなりました。しかし、中古住宅の場合は、「一般の中古住宅(その他の住宅)」に区分され、2024年~2025年において住宅ローン控除が受けられるため、混同しないように気をつけましょう。

今後も定期的な改正が予想されます。毎年住宅ローン控除を受けたいと思っている場合は、国税庁や国土交通省などの信頼できる公的機関から最新の情報をチェックすることを心がけましょう。

まとめ

築年数が住宅ローン控除に影響するのは2022年以前のことであり、現在は1982年1月1日以降に建築された建物や、耐震基準を満たしている住宅であれば、築年数の古い家であっても住宅ローン控除を受けられます。ただし、中古住宅は新築住宅と比較すると各種住宅の控除上限額が低くなっているため、控除額を高めたい場合は新築のほうが有利です。
住宅ローン控除の仕組みを理解して、適切に利用するようにしましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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