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住宅ローンがまだ残っているけど引越したい!解決法や注意点を徹底解説

転勤や離婚、近隣住民とのトラブル、あるいはローンが返せなくなった……など、たとえ住宅ローンが残っていても何らかの事情で引越さなければならない事態は、誰にとっても起き得ることです。そんなときどのように考えて行動すればよいのか、いざとなって困らないよう、この記事で詳しく解説していきます。

まずは住宅ローンの契約内容を確認

住宅ローンを残したままで引越すことになった際には、まず現在の住宅ローンの規約をはじめとした契約内容や残高、そして必要な手続きについて確認しましょう。

住宅ローンが残っていても引越しできる?

住宅ローンは住宅の取得に資金の使い道を限定しており、資金の使い道に制限がないフリーローン等に比べて審査の基準も厳しく、低金利で借りることができるローンです。そのため、それ以外の用途に資金を使うことはできず、引越しする際にもさまざまな制限があります。

しかし、制限はあっても条件を満たせば、住宅ローンが残ったままでも引越しすることは可能です。ここでは、どのような場合に注意すべきかを解説します。

すぐに引越しできる場合

  • 転勤や転職で単身赴任する場合
  • 離婚で夫(もしくは妻)が家を出ていく場合
  • 二世帯住宅でどちらかの世帯が残る場合
  • 介護で夫(もしくは妻)が住まいを離れる場合
  • 離婚を前提として別居するケース

このように、夫婦のどちらかや本人の家族が引き続き居住するケースでは、ローンの契約者本人や親族が住んだままになるためローンの規約違反にはなりません。こうした場合はすぐに引越しすることが可能です。

すぐに引越しができない場合

  • 転勤や転職で家族全員が引越す
  • 実家に家族全員で引越す
  • 海外に家族全員で引越す

ローンの契約者本人や家族が不在となるケースにおいては、金融機関との協議が必要になります。ローンが滞りなく支払いされていることや、引越しの理由や状況によって金融機関から認められた場合には、住宅ローンが残っていても引越しできることが多いようです。

なお、金融機関に相談なく無断で引越すと、ローンの規約違反になります。そのため、家族全員で引越しする場合には、必ずあらかじめ金融機関に相談しましょう。規約違反と知らずに引越してしまったり、「黙っていればわからないだろう」と考えて引越したりしてしまうと、ローンの一括返済を求められることもありますので注意が必要です。

住宅ローンが残っていても引越しをする方法

住宅ローンが残った状態で引越しが必要な場合、どのようにしたらよいでしょうか?いくつかの方法を取り上げて解説していきます。

家を売却する

まず、家を売却するという選択肢があります。離婚がきっかけで住宅ローンが払えなくなってしまったり、転勤や転職などによって戻る予定がなかったりする場合は、家を売却するのが一般的です。

大切なマイホームを売却するというのは抵抗があるでしょうし、できるならば手放したくないと思われることでしょう。しかし、そのまま所有し続けて住宅ローンを払っていくよりも、早期に売却した方がよい場合もあります。

このケースでは、家を売却して得たお金で住宅ローンの残債を返済します。ただし、ローンの残債をすべて返済できるとは限りません。そうなれば、自己資金でローンの残債を返済する必要があります。もし手持ちの資金がなく、残債をすべて完済できない場合には、任意売却という方法があります。任意売却については後ほど解説します。

家を賃貸物件として提供する

原則として、住宅ローンを利用して購入した家を賃貸に出すことはできません。しかし金融機関の許可を得られれば、家を賃貸に出すこともできます。一時的に家族全員で引越ししなければならない状況などでは、その間だけ貸すことも一つの手段です。

また、賃貸物件にする際には、賃貸物件用のローンに借り換える必要があります。賃貸物件用のローンは通常の住宅ローンに比べて金利が高めに設定されているため、金利負担も増えることが一般的です。それだけのコストを掛けて賃貸とするべきなのか、十分に検討したうえで行いましょう。

なお、金融機関に無断で住む予定のない家を賃貸していた場合には、住宅ローンの規約違反で一括返済を求められる場合もありますので注意が必要です。

任意売却や競売で手放す

もしマイホームを売却しても残債が残り、預金等で一括返済することができない場合は、マイホームを売却することはできません。これは、住宅ローンに抵当権 が設定されているためです。この場合、金融機関の同意を得て家を売却し、返済に充ててローンの残債を返済していくことになります。これを任意売却といいます。

金融機関に相談し、任意売却をおこなう場合にはその査定を不動産会社に依頼して売却に向けて動き始め、買い手が見つかり次第売却します。金額が決まり次第、金融機関と残債の部分を毎月いくらずつ返済していくのか打ち合わせのうえ、返済額を決定。買い手が見つかるまでの期間によりますが、任意売却の完了までは大体2カ月~3カ月程度かかるのが一般的です。

また、住宅ローンを滞納し、債務者が金融機関や保証会社からの連絡を無視して連絡が取れなくなってしまったり、3~6カ月間におよび滞納したりした場合は、住宅ローンの一括返済を求められます。
その際、金融機関が担保となっている自宅を強制的に売却し、住宅ローンの返済に充てることを競売と言います。競売に掛けられた場合、一般的には任意売却をおこなう場合よりも売却価格が大幅に低くなってしまうでしょう。

競売よりも任意売却の方が自宅を高値で売却することができ、ローンの残債も減らすことができます。そのため、もし返済が難しい状況になるようなら金融機関に相談し、ローンを滞納してしまったとき等は金融機関や保証会社からの連絡を決して無視することのないようにして、早期に金融機関へ相談し任意売却の方向で動きましょう。

任意売却の場合は引越しの日程等も相談して決められますが、競売に掛けられると期日になれば退去しなければなりません。競売になれば「百害あって一利無し」ですので、しっかり金融機関と話し合って決めましょう。

また、そのような事態になる前に日々の支出をしっかり把握しておけば、赤字の家計を改善できる場合もあります。マイホームを売却することになった場合にどのような選択肢が最適なのか、ご自身の家計の状況を把握した上で、現状でできる最善の選択肢を選んでください。

住宅ローンが残る家から引越しをする際の注意点

住宅ローンが残る家から引越しする場合、住宅ローンの規約上のことや引越し先の住まいの確保等、注意点がありますので確認しておきましょう。

金融機関に相談をする

まずは金融機関に相談しましょう。単身赴任等で家族が残るなら問題ありませんが、金融機関に相談せず引越ししてしまうと、規約違反となってしまうことがあります。その場合、残金を一括返済することを求められる可能性もあるでしょう。事前に相談することで了承を得ることができる場合も多いため、しっかり金融機関に相談してから動くようにしてください。

計画をしっかり立てる

住宅ローンが残ったまま引越しをすると、次の引越し先の家賃を払いながらローンも払うことも多く、住居費の負担が大きくなってしまうかもしれません。無理せずに返済していけるかどうか、家計の収支を予測しておきましょう。

家計の収支を予測し、返済が難しいようならば住宅の売却等をあらかじめ検討したり、支出を見直したりすることで対策が可能な場合もあります。そうした対策も含め、事前に問題点がわかっていれば金融機関に相談し、あらかじめ対策を考えることが可能です。

売却価格が低くなる可能性があることを考慮する

家は、買ったときよりも売却価格が低くなることが一般的です。特に頭金なしで住宅ローンを組むと、家の価値よりも住宅ローンの残高の方が大きい「オーバーローン」と呼ばれる状態になりがちです。その場合は金融機関に相談し、任意売却をおこなう等の手続きが必要になります。

マイホームを購入する前に、任意売却をする必要がない程度の資産を持つか頭金を増やして借り入れを減らすことで、「マイホームを売ればローンが残らない」という状態を作って購入することが大切です。

住宅ローン控除が受けられなくなる

住民票をそのままにしておいた場合どうなる?

生活の拠点を移した場合などは、原則として住民票も移さなくてはいけません。しかし、単身赴任などでは家族が引き続き住んでいますので、本人が住んでいなくても住宅ローン控除を引き続き受けることができます。

家族全員で住居を離れる場合、住民票は移さなければなりません。そうなると住宅ローン控除を受けることができなくなりますが、再度居住するようになれば、その年以降は再び受けられるようになります。
住宅ローン控除を受け続けるために、住んでいない場所に住民票を置いたままにすると脱税行為となりますので注意が必要です。

海外に単身赴任する場合は要注意

2016年4月1日以降に取得した住宅に関しては、一定の条件を満たすことで海外に単身赴任中にも住宅ローン控除を受けることができます。ただし、海外に単身赴任すると日本の居住者ではなくなり、その国の税金を課せられることになります。その場合は単身赴任でも、日本の所得税の対象となる所得が発生しなければ住宅ローン控除を受けられません。再び居住を開始した年より、控除を再開することができます。

まとめ

ここまで、住宅ローンが残った状態での引越しについてさまざまなケースと対処法を解説してきました。
時には仕事の都合により急に転勤を命じられたり、失業や転職によって今住んでいるマイホームから離れなければならなくなったり、離婚により家を手放さなければならないなど、住宅ローンが残ったまま引越さなければならないケースも想定されます。
そんなとき、知らずに住宅ローンの規約に反する行動をとってしまったり、安易な気持ちで金融機関に知らせないまま違反行為をしてしまったりすると、取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。
また、昨今では働き方改革の影響による残業時間の減少や、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて収入が減少し、ローンを返済できなくなってしまうケースもあります。もしそのような状況に直面してしまったり、仕事の都合によって引越さなければならなくなったりした場合には、本記事で解説した内容をぜひ参考にしてください。

小川洋平

執筆者

小川洋平

合同会社clientsbenefit代表、CFP1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み、6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。住宅ローン相談も得意とし、自身が自宅の新築時に学んだ知識や、工務店のネットワークを活かし住宅購入のアドバイス等もおこなっている。

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