土地の購入のみでも住宅ローンは利用できる?活用できるローンと注意点を解説

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土地購入のみの場合は住宅ローンを利用できない

住宅を建築する際には、土地を購入する必要がありますが、土地購入だけでは住宅ローンの利用はできません。住宅ローンは、住宅を建築したり、購入したりするための資金を対象とした融資であり、土地のみの購入は要件を満たせないためです。
ただし、土地購入と住宅建築をセットで計画している場合には、特定の条件下でローンを利用できる場合があります。そのため、土地を先行して購入する際には、利用可能な融資方法を事前に確認しておくことが重要です。
土地購入後に家を建てる計画がある場合
土地のみの購入に対しては住宅ローンを利用できませんが、将来的に住宅を建築する計画がある場合、利用可能な融資方法があります。このようなローンを活用することで、土地購入のための資金調達や、住宅建築に必要な着工金や中間金の支払いに充てることが可能です。
特に自己資金が不足している場合には、こうした融資制度を利用することで、スムーズに住宅建築を進められるでしょう。
土地購入時に住宅ローンを活用できる2つの方法

土地購入後に住宅を建てる際には、以下の2つの方法で住宅ローンを活用できます。
- つなぎ融資
- 土地先行融資
それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
つなぎ融資の特徴とメリット
つなぎ融資は、住宅ローンが正式に実行されるまでの一時的な資金調達の手段です。住宅ローンは通常、建物の完成後に融資が実行されます。しかし、土地の購入や工事費用など建物が完成する前にもまとまった資金が必要な場面があるでしょう。
この時、自己資金が不足している場合に役立つ融資がつなぎ融資。住宅ローンの融資額の一部を前借りする形で利用でき、建物完成前の土地購入費や建築代金の支払いに充てることができます。
利用中は、元金の返済は不要で、利息のみを支払う仕組み。そのため、建物が完成して住宅ローンが実行されるまでの間の資金繰りがスムーズになるでしょう。
土地先行融資の特徴とメリット
土地先行融資は、土地購入に必要な資金を事前に調達する方法で、建築計画を含めたトータルで審査をおこないます。土地先行融資では、土地購入費に加え、建物が完成した際に支払う建築費用も追加で融資されます。
土地先行融資を利用する際には、土地に関する書類と建築予定の住宅の資料(設計図や見積書など)を提出しなければなりません。
必要な書類を提出すると、土地と建物の総額をもとに融資可能額が決定されます。そのため、建物に関する審査が通らないリスクを事前に回避できる点が特徴です。
土地先行融資では、希望する土地を先に確保できることが大きなメリット。注文住宅を建てる際には、まず土地を選び、その購入資金を準備する必要がありますが、多額の資金をすぐに用意することは難しい場合もあるでしょう。
土地先行融資を活用することで、自己資金が不足していても気に入った土地を押さえられるため、その後の住まいづくりをスムーズに進められるでしょう。
つなぎ融資と土地先行融資の違い
前述でご紹介したつなぎ融資と土地先行融資では、どのような違いがあるのでしょうか。詳しく解説します。
つなぎ融資では、無担保で利用できますが、金融機関にとってリスクが高くなるため、金利が高い傾向にあります。
また、住宅ローンとは別で契約する必要があるため、諸費用として印紙税や事務手数料が2回必要になる点も注意が必要。さらに、つなぎ融資の場合、住宅ローン控除は適用されないことにも注意しましょう。
一方、土地先行融資では、土地を担保にするため、抵当権の設定にかかる費用が必要です。しかし、担保がある分リスクが減るため、金利が低い傾向にあります。また、一定の条件を満たせば住宅ローン控除が適用される点が大きな魅力でしょう。ただし、こちらも諸費用が2回分発生するため、注意が必要です。つなぎ融資と土地先行融資、それぞれ特徴を理解して、適切な融資方法を選びましょう。
土地の評価方法4選

土地を購入する際の融資額は、その土地の評価額に基づいて決定されます。評価額を算出する際には、主に以下の4つの方法が用いられます。
国土交通省が公表する公示地価
「公示地価」は、地価公示法に基づいて設定された基準値であり、毎年3月下旬に、国土交通省から公表されます。この基準値は都市計画区域内の土地を対象としており、エリア外の土地は算出されません。
公示地価は、不動産鑑定士という資格を持つ専門家によって評価がおこなわれるため、精度の高さが特徴です。そのため、金融機関が土地評価をおこなう際の主要な参考指標として利用されています。
都道府県が公表する基準地価
「基準地価」は、国土利用計画法施行令に基づき、各都道府県が毎年発表する土地評価額です。公示地価と異なり、対象範囲が都市計画区域外にも広がっている点が特徴の一つ。工業地や商業地など特殊なエリアなどにも、評価額が設定されます。
特に公示地価が設定されていない地域の土地評価では、基準地価が重要な指標として活用されます。そのため、金融機関が土地の価値を算出する際にも利用されるケースが多いです。
国税庁が公表する路線価
「路線価」は、道路に面する1平方メートルあたりの宅地の評価額を示したもので、国税庁が毎年発表しています。路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があり、一般的には固定資産税路線価が「路線価」と呼ばれています。
この評価額は主に税金計算のために使用されるもので、公示地価や基準地価より低く設定される傾向に。そのため、金融機関では補助的な参考値として取り扱われることが一般的です。

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市町村が算出する固定資産税評価額および過去の取引事例
「固定資産税評価額」は、土地に課税するための基準額として市町村が3年に1度算出します。この評価額は、地価の変動が激しい地域では適正な指標にならないことがあり、金融機関ではあくまで参考程度に使用される場合が多いです。
また、過去の取引事例をもとに評価額を算出する方法もありますが、取引内容や条件によって公平性に欠ける場合も。そのため、この方法も補助的な位置づけに留まっています。
土地購入のためのローン利用の流れ

ここからは、土地購入の際につなぎ融資や土地先行投資を利用する時の流れを見ていきましょう。スムーズに利用するためにも、それぞれのステップのポイントと注意点も理解しておくことが大切です。
- STEP 1土地の買付申し込み時に建築計画を提出する
- STEP 2土地の売買契約とローン契約を締結する
- STEP 3土地の引き渡し時に融資を受ける
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステップ1.土地の買付申し込み時に建築計画を提出する
土地購入を検討する際には、事前に住宅の建設計画を立てておくことが重要です。金融機関でのローン審査では、建設計画書の提出が求められるため、購入前に詳細な建築プランを準備しておきましょう。
特に土地先行融資の場合、この段階で本審査を受けることが一般的です。建築計画を具体的に示すことで、金融機関の審査がスムーズに進むでしょう。
ステップ2.土地の売買契約とローン契約を締結する
次に、土地の売買契約を結び、ローンの本審査と契約手続きをおこないます。この段階では、土地の購入資金の確保と並行して、住宅の設計を進める必要があります。
住宅の仕様や費用の見積もりを明確にしながら手続きを進めることで、スムーズな融資実行が期待できます。
ステップ3.土地の引き渡し時に融資を受ける
土地購入に関する融資は、土地の引き渡し時に実行されます。現居の住宅ローンを支払いながら、新たな融資を返済する場合、二重の支払いが発生します。
この期間を短縮するためにも、建築計画を効率的に進め、手続きを迅速におこなうことが重要です。
なお、つなぎ融資を利用する場合には、着工金や中間金など、建築途中の資金も融資を受けることができます。上記の仕組みを活用することで、自己資金の不足を補いながら建築を進められるでしょう。
土地購入時にローンを利用する際の注意点

土地購入にあたってローンを利用する際には、いくつかの注意点を事前に理解しておく必要があります。以下では、特に注意すべき点を詳しく解説します。
賃貸住宅の賃料と住宅ローン返済が重なる可能性がある
土地先行融資を利用する場合、購入した土地に住宅を建てるまでの期間、賃貸住宅に住み続けることが一般的でしょう。上記の場合、賃料と住宅ローン返済が同時に発生し、家計への負担が大きくなる可能性があります。
自己資金に余裕がない場合は、住宅ローン融資前まで、利息のみの支払いでよいつなぎ融資を活用することを検討しましょう。
また、住宅ローンの返済計画を立てる際には、無理のない範囲で返済を続けられるよう、収支バランスをしっかりと見極めることが重要です。事前の計画が、資金面でのトラブルを回避する鍵となります。
住宅ローン申請時に必要な設計図を準備する
つなぎ融資や土地先行融資を利用して土地を先に購入する場合、金融機関への融資申請時に住宅の建設計画を提出する必要があります。設計図がない場合、スムーズに手続きが進まず融資が受けられないことがあります。
土地購入後に確実に住宅が建設されることを確認するため、金融機関から建設計画書や設計図の提出を求められます。仮の設計図でも提出可能な場合が多いため、事前にハウスメーカーや設計士に依頼しておくとよいでしょう。
正式な設計図がまだ完成していない場合でも、仮の設計図を用意して申請手続きを進められます。ハウスメーカーに相談して、申請に必要な書類を準備してもらいましょう。
エリアの条件によって追加費用がかかる可能性がある
土地購入を検討する際には、建設予定地が都市計画法や防火関連の規制を受けるエリアかを確認する必要があります。
都市計画法により、防火指定や準防火指定がなされているエリアでは、建物の玄関ドアや窓のサッシなどに耐火性の高い素材を使用する義務があります。そのため、建築費が他のエリアよりも高くなる可能性も。
防火仕様のサッシやドアの導入は、地域の安全性を高める重要な取り組みですが、その分費用がかさむ点には注意が必要です。
土地を購入する前に、建設予定地の情報を十分に確認しましょう。都市計画法や建築基準法の規定を把握し、建築条件による追加費用がどの程度発生するのかを調べておくことが大切です。
ハウスメーカーや不動産会社に相談することで、規制の内容や必要な対応に関して、アドバイスを受けられるでしょう。
地盤改良工事やインフラ整備が必要なケースもある
土地を購入して住宅を建てる際、地盤の状態やインフラの整備状況によっては、地盤改良工事や水道・ガス管の整備が必要になることがあります。地盤改良工事やインフラ整備の工事が発生すると、数百万円単位の追加費用がかかるケースも珍しくありません。
特に地盤が軟弱な土地の場合、住宅を安全に建築するために地盤改良工事が不可欠です。また、上下水道や電気、ガスなどのインフラが整っていない土地では、別で配管工事をおこなう必要があります。これらの費用が予算に含まれていないと、購入後に大きな負担となる可能性も。
土地購入前には、地盤調査を依頼するとよいでしょう。万が一地盤調査が難しい事情がある場合には、ハウスメーカーの担当者と相談することで、地盤の状態や追加工事のリスクに関して一定の見通しを立てられるでしょう。
必要な金額を借り入れるためにも、予想される工事の内容と費用を事前に把握し、総予算に組み込んでおくことが重要です。
つなぎ融資の場合は金利が高い
先ほども出てきたように、つなぎ融資は無担保ローンのため通常の住宅ローンよりも1〜2%程度金利が高い傾向にあります。金利が高いと、毎月の返済額や最終的な返済総額が増加します。
この金利差が家計に大きな負担を与えることも。そのため、つなぎ融資を利用する際には、返済計画を詳細に立てることが重要です。
金利負担を軽減するためには、低金利の金融機関を選んだり、可能な限り自己資金を多く用意したりなどの方法が効果的です。
事前に複数の金融機関を比較し、金利や手数料が有利な条件を提供してくれるところを選びましょう。また、自己資金を増やすことで、融資額そのものを減らし、返済負担を軽減することも可能です。
住宅ローン控除を受けられないケースがある
土地先行融資と住宅ローン控除を併用する場合、いくつかの条件を満たす必要があります。その主な条件として、土地を取得してから2年以内に住宅を建築することや、土地と住宅の名義人を同一にする必要があることなどが挙げられます。
上記の条件が守られていない場合、住宅ローン控除を受けられない可能性があります。そのため、土地の購入計画と住宅建設のスケジュールを綿密に立てることが重要です。
住宅ローン控除を確実に適用するためにも、税制に関する知識を深めたり、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
本記事では、土地の購入のみでも住宅ローンは利用できるのかに関して、詳しく解説しました。土地の購入のみでは、住宅ローンの利用はできません。しかし、代わりとなる「つなぎ融資」や「土地先行融資」を利用できます。
利用することで土地の購入費用に充てられますが、融資方法によって特徴や注意点が異なるため、比較・検討して慎重な判断をすることが大切。本記事を参考に、ライフスタイルや経済状況にあったローンを活用しましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ