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住宅ローンと家賃の支払いがかぶる?起こりえるケースやかぶらないための方法は?

家賃の支払いと住宅ローンの返済がかぶるケースやかぶらないための方法を解説します
今まで住んでいた賃貸から夢のマイホームへの引越し。「家賃の支払いと住宅ローンの返済がかぶってしまうのでは?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。本記事では、どういう時にかぶるのか、かぶらないようにするための方法などを解説します。住宅の購入は人生のなかでも大きな買い物です。少しでも費用を抑えられるところは抑えておきたいですよね。

住宅ローンの返済開始はいつから?

住宅ローンの返済は約定返済日を基準に決まります

まず住宅ローンの返済はいつから始まるのかを理解しておきましょう。返済開始日は「約定返済日」を基準に決まります。約定返済日とは、「金銭消費貸借契約書」に定められている返済日のことで、金融機関によって異なります。なかにはauじぶん銀行のように自分で決められる場合もあります。

例えば、auじぶん銀行の場合は下表のようになっています。(約定返済日を27日とした場合)

【借入日の翌月応当日が約定返済日より早かった、もしくは同日だった場合】
翌月の約定返済日が初回返済日になり、口座から返済額が引き落とされます。

  借入日の翌月応当日が
約定返済日より早い
借入日の翌月応当日が
約定返済日と同日
借入日 9月15日 9月27日
翌月応当日 10月15日 10月27日
初回返済日 10月27日 10月27日

【借入日の翌月応当日が指定した返済日よりも遅かった場合】
翌々月の返済日が初回返済日になります。

借入日 9月30日
翌月応当日 10月30日
初回返済日 11月27日

ソニー銀行の場合は借入日の翌月の約定返済日が初回返済日となります。(約定返済日を2日とした場合)

借入日 9月1日 9月30日
初回返済日 10月2日 10月2日

※約定返済日が土日・祝日に該当する場合は翌営業日が返済日

場合によっては、借入日からすぐに返済しなければならない可能性もあります。約定返済日と初回返済日について、事前に確認しておきましょう。

住宅ローンの返済と家賃の支払いがかぶるケース

住宅ローンの返済と家賃の支払いがかぶるケースは4つあります

どういった場合に住宅ローンの返済と家賃の支払いがかぶるのかを確認しておきましょう。具体的には次の4つのケースで起こりえます。

  • 土地先行融資を利用する場合
  • 利息部分のみ毎月返済するつなぎ融資を利用する場合
  • 引越し日が返済開始日よりあとになる場合
  • 賃貸の退去連絡を忘れていた場合

それぞれ詳しくみていきましょう。

土地先行融資を利用する場合

「土地先行融資」とは、土地を購入して住宅を建築する際、先に土地の購入代金を借り入れるローンのことです。通常、住宅ローンは住宅の引き渡し時に融資が実行されるため、土地の購入代金だけ先に借り入れることはできません。しかし、土地先行融資では、住宅とは別に先にローンを組むことで、つなぎ融資の高い利息を避けつつ、土地の購入代金を借り入れることが可能です。
土地の所有権を持った時から返済が始まるため、土地のローン返済と家賃の支払いが重なる可能性があります。

例えば、次の条件で三井住友銀行の土地先行融資を利用した場合、月々約10万円の返済となります。

<条件>
土地の購入代金:3,000万円
金利:2.08%(全期間固定)
返済期間:35年
返済方式:元利均等方式

住宅が完成するまでの間が半年間と見積もっても、約60万円が家賃の支払いと同時にかかることになります。

利息部分のみ毎月返済するつなぎ融資を利用する場合

注文住宅を建築する際に「つなぎ融資」を利用する場合も、住宅ローンと家賃の支払いがかぶることがあります。注文住宅では、土地の購入時をはじめ、住宅の着工時や上棟時など、何回にも分けて費用を支払わなければなりません。この時払わなければならない金額はそれぞれ工事費用の約30%が一般的となっており、かなり高額です。この際につなぎ融資を利用することで、自己資金が少ない場合でも購入が可能となります。

つなぎ融資には2種類の返済パターンがあり、利息部分のみ毎月返済するタイプでは、融資が実行される度に返済が始まり、最終的に住宅の引き渡し時に実行される住宅ローンの融資で完済します。このタイプの場合、家が完成するまでの間、つなぎ融資の返済と家賃の支払いがかぶる可能性があります。

引越し日が返済開始日よりあとになる場合

引越し日が返済開始日よりあとになる場合も、住宅ローンの返済と家賃の支払いがかぶる可能性があります。これは、中古一戸建てや建売住宅を購入した場合に起こりえるケースです。一般的に、賃貸の家賃は翌月分を当月末までに支払うことになっています。そのため、引越し日が返済開始日よりあとになってしまった場合、引越しした月の家賃も支払わなければならないため、支払いがかぶるでしょう。

具体的な日付を入れながらシミュレーションしてみましょう。例えば次の場合には住宅ローンと家賃の支払いがかぶりません。

<家賃の支払いとかぶらないケース>
引き渡し日:9月20日
引越し日:9月22日
返済開始日:9月27日

引越し日が返済開始日よりも前に設定されているため、9月22日までの日割りでの家賃を支払うだけで済みます。しかし、次の場合には住宅ローンと家賃の支払いがかぶってしまいます。

<家賃の支払いとかぶるケース>
引き渡し日:9月20日
引越し日:10月2日
返済開始日:9月27日

引越し日が返済開始日よりあとの月に設定されているため、月割りの場合は10月分の家賃全額を、日割りの場合は引越し日までの日割り家賃を支払わなければなりません。支払いがかぶらないようにするには、返済開始日に合わせて引越しのタイミングを決めるようにしましょう。

賃貸の退去連絡を忘れていた場合

賃貸を退去する際には、管理会社に退去連絡をする必要があります。一般的に、退去したい日の1カ月前までに連絡をするよう決められているところが多いです。物件によっては2カ月前としている場合も。いつまでに連絡をしなければならないかは賃貸借契約書に記載されているため、必ず確認しましょう。住宅を購入する際はやらなければならない手続きも多く、忘れてしまいがちなので気をつけてください。

住宅ローンと家賃の支払いがかぶらないようにする方法

住宅ローンと家賃の支払いがかぶらないようにする方法は4つあります

住宅を購入する際には、借入金だけでなく、諸費用などいろいろな費用がかかります。なるべくローンの返済と家賃との支払いがかぶらないようにし、同じタイミングで必要になる費用を抑えられるところは抑えましょう。

初回返済日をできるだけ遅らせる

住宅ローンの返済と家賃の支払いをかぶらせないために、初回返済日を遅らせるという方法があります。住宅ローンの返済日は約定返済日が基準となるため、借入日と約定返済日の間が長ければ、支払いがかぶる可能性が低くなります。引き渡し日が決まってから約定返済日を決める、もしくは約定返済日に合わせて引き渡しの日を考えるといいでしょう。

先ほども例に挙げたauじぶん銀行の場合、借入日の翌月応当日が指定した返済日よりも遅かった場合、翌々月の返済日が初回返済日となります。

借入日 9月30日
翌月応当日 10月30日
初回返済日 11月27日

上記の場合、2カ月近く間が開くことになるため、家賃とかぶる可能性は低いです。金融機関によって、初回返済日の決まり方が違うため、どのように決まるかよく確認しましょう。

ただし、初回返済日を遅らせるためだけに希望日を設定すると、のちの返済を給与が振り込まれる前にしなければならない恐れもあります。あとから変更できる場合もありますが、手数料がかかる可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。

計画的に引越しの手続きを進める

中古一戸建てや新築建売を購入する場合には、引越し日を返済開始日より前に設定すると、ローンと家賃の二重払いを防ぐことができます。先述したように、退去の連絡をしなければならない期限は物件によって異なります。賃貸借契約書を確認し、忘れずに管理会社に解約の申し出の連絡をするようにしましょう。

金融機関に相談する

金融機関に相談するのも一つの方法です。金融機関によっては、住宅の引き渡し時に合わせてローンの返済をスタートしてくれる場合もあります。また、元金をそのままにして利息だけ払う「元金据置」に応じてくれる金融機関も。例えば、三井住友銀行の土地先行融資では、融資実行から最長1年間元金据置が可能です。また、JA兵庫六甲の住宅ローンでは最長6カ月を据置期間としています。ただし、まったく払う必要がないわけではなく、利息部分は払う必要があることを理解しておきましょう。

なお「利息だけだから……」と甘くみていたらと意外と金額が大きかったという可能性もあります。三井住友銀行の土地先行融資を利用し、先ほどと同じ条件で元金据置にして利息だけ払う場合を見てみると、初回の利息は5万2,000円となります。

<条件>
土地の購入代金:3,000万円
金利:2.08%(全期間固定)
返済期間:35年
返済方式:元利均等方式

借入金額や金利によっては、家賃を払うより高い場合もあります。事前によくシミュレーションしておきましょう。

注文住宅の場合は一括で返済するタイプのつなぎ融資を利用する

つなぎ融資には、元金と利息を住宅ローンの融資実行時に一括で返済するタイプと、利息部分のみ毎月返済するタイプの2種類あります。一括で返済するタイプのつなぎ融資を利用した場合、住宅の引き渡し時に融資が実行され、そのあとに返済が始まるため、家賃の支払いとかぶることがありません。つなぎ融資を利用する際には、どちらのタイプか確認しましょう。

住宅ローンの返済と家賃の支払いがかぶる時の対策

資金に余裕を持って用意しておくと住宅ローンの返済と家賃の支払いがかぶっても対処できます

住宅ローンの返済と家賃の支払いがかぶっても問題ないよう、余裕を持って資金を用意するようにしましょう。特に注文住宅はスケジュール通りに建築が進まず、据置期間が過ぎてしまう可能性もあります。土地先行融資や毎月利息を返済するタイプのつなぎ融資を利用し、元金を据え置いても、借入金額や金利によっては、利息の支払いが家賃と大差がないかもしれません。

住宅ローンの返済と家賃の支払いがかぶる前提で資金を用意しておくと、経済的にも精神的にも余裕が持てます。ある程度の二重払いは覚悟し、余裕持って資金を用意しておきましょう。

この記事のまとめ

住宅ローンの返済はいつから始まる?

住宅ローンの返済は、「金銭消費貸借契約書」に定められている約定返済日によって決まります。約定返済日は金融機関によって異なります。

住宅ローンと家賃の支払いがかぶるのはどういう時?

次の4つのケースでかぶる可能性があります。

  • 土地先行融資を利用する場合
  • 利息部分のみ毎月返済するつなぎ融資を利用する場合
  • 引越し日が返済開始日よりあとになる場合
  • 賃貸の退去連絡を忘れていた場合

引越し日の設定や退去連絡については事前に防ぐことが可能です。スケジュールをよく確認するようにしましょう。

住宅ローンと家賃の支払いがかぶらないようにするには?

次の4つの方法でかぶらないようにすることが可能です。

  • 初回返済日をできるだけ遅らせる
  • 計画的に引越しの手続きを進める
  • 金融機関に相談する
  • 注文住宅の場合は一括で返済するタイプのつなぎ融資を利用する

しかし、土地先行融資やつなぎ融資は手数料が発生する場合があります。よくシミュレーションをし、家賃を払うよりも負担が少ないのか確認しましょう。

今回の記事では、住宅ローンの返済と家賃の支払いがかぶるケースや、かぶらないようにするための方法をご紹介しました。中古一戸建てや新築建売を購入する場合は、初回の返済日より前に引越しを済ませておくことで、二重払いを回避できます。しかし、注文住宅で土地先行融資や毎月利息を返済するタイプのつなぎ融資を利用した場合、一般的に融資が実行された翌月に返済が始まるため、家賃とかぶる可能性が出てきます。また元金を据え置いたとしても、場合によっては家賃と変わらない、もしくはそれ以上の金額を払わなければならないかもしれません。

住宅ローンの返済計画は慎重に立てる方が多い一方、返済が始まるまでの資金繰りを見落としてしまう方が多いようです。事前にある程度の知識を持っておくことで、ローンの返済と家賃の二重払いを避けることができます。この記事を参考に、できるだけかぶらないようスケジュールを立てましょう。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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